ゾンビゲー転生サバイバル百合モノ   作:バルロjp

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24/5/14


都会到着

本当にドックフードが大好きなだけだったという一縷の望みを賭けて「私の方も食べる?」と血の入っていないのも食べさしたが、そっちからは「おいしいけど……さっきのほどじゃない……」と素敵な反応を頂いた。知ってた。

 

まぁ想定通りだからいい。ここでマジでクーがドックフード好きなだけだったら拍子抜けだもん。

それにドックフードという、まぁ探せばクーでも見つけれるようなものよりも、私という有限で管理できる好物の方が操りやすい。最終目標としては、私の血肉よりも私自身に依存させる事だけどね。

 

 

「んー……まぁこんなもんか……」

 

夜。

私はプラスウォッチからメモ帳のホログラムを出現させ、考え事をしていた。

 

クーは隣でおねむだ。昨日と同じように右隣りにいて、壁半分私半分でもたれかかって寝ている。口を半開きにして寝ているのがなんとも可愛らしい。

 

作業の気晴らしにクーの頭に手を置きなでると、半開きの口がにへらとだらしなく歪んで幸せそうな笑顔になった。ふふふ、こっちは起きて作業してんのにむかつくなぁ♡ 寝ていいよって言ってるのは私なんだけどね。

 

顎に撫でる手を移動させ、口内を弄り犬歯の伸び具合を確認してから口を閉じさせると、私は視線を目の前のホログラムに移す。そこには『体幹』『未来視』『過充電』などの、スキルに体質にウィルスに超能力にモジュールにと、私が知る限りの名前が書かれていた。

もちろんこれらは何百何千とある、NZWの要素のひとつだ。大体覚えてるとは言え、私でも全ての要素は書ききれない。

 

ではこれらは何故取り上げられているか。それはここにある要素は全て、とある共通点があるからだ。

 

例えば『体幹』。ゲームではスキルポイント1で取得可能のノーマルスキルで、効果は『一部格闘アクションなどにモーションが追加される』というものだ。ちなみにマジでモーションのバリエーションが増え自キャラがカッコイイ動きをし始めるだけであって、戦闘力は一切変わらない。お遊びスキルだ。

 

例えば『未来視』。ゲームでは一部研究所のイベントやクトゥルフ関係のイベントをこなす事で獲得できるレアスキルで、分類は異能力だ。効果としては『自身が対象として攻撃される時、遠距離攻撃を95%の確率で、近距離攻撃を90%の確率で回避する』というインチキ効果で、初心者ならWikiで効果を見たらまず間違いなくこれは強いと取得を目指すだろう。ちなみに自身が対象としてなので広範囲攻撃だと普通に当たる。

 

例えば『過充電』。これはサイバネ……自身の体を機械化していると選べる強化パーツの一つで、そこそこ頑張って作るモジュールの一つだ。これはサイバネ体を動かす電力を、通常より更に貯蓄できるというもので、過充電状態では体は電気を纏い出力強化と電気での追加ダメージが入る。オプションで髪を逆立てるか選べる。

 

……勘のいい人はもう気づいただろう。

このスキル、異能力、モジュール達は、ゲームからリアルになった今、説明文以外の効果がありそうなものである。

 

ここの制圧をする時、クーはゲームではない性能である、犬タイプの『クッキングケミカリー』による嗅覚で私の『気配察知』以上の精度でゾンビを感知していた。

あの時は「ほぇーやっぱゲームとリアルじゃ差ぁあるなぁクーが更に便利になったし『気配察知』取らなきゃよかった」と吞気に思っていたが、今は違う。

 

はい。私達がそのリアルになった影響を受けるということは、他の人もその影響を受けるということでして……。

忘れてはいけない。この手のゲームで脅威なのは、ゾンビなんかよりも人なのだ。マルチサーバー選んでここに来たんだから、プレイヤーもNPCもイレギュラーありきの対峙になると肝に銘じなきゃ。

 

『体幹』ならば、敵が予測不能な動きをしてくるかもしれない。『未来視』なら私たちがやろうという事が観測され罠を張られるかもしれない。『過充電』なら漏れ出る電気で研究室のPC類が使えなくなるかもしれない。

 

そういった、今後予測できなさそうな事をある程度予測してなんとかしようというのが今していることだ。

 

……そいや私、自分の強化の方向性しっかりと決めてなかったし、なんならクーがウィルス変異だしサイバネでもやるか~と思ってたけど、クーに血肉をあげたい都合上、体機械化できなくない? 今気づいてよかった……。

 

えじゃあ私なにやろう。あんまり被せたくないしなぁ。あいつらともまだなんも方向性決めてなかったし……。『異能力』ルートでもするかぁ?

 

私はそんな事を考えながら、毛布を直し目を閉じ眠気に身を任せていった。

 

 

 

朝。私とクーは腕からなるプラスウォッチのアラームの音で起きた。

 

「……おはようございます」

「おはよーおねーちゃん! ……なんかげんきない?」

「ちょとね……」

 

あぁ。私と違ってマジで元気だねクー。羨ましいよ。

 

現在時刻は6時ちょい。太陽が昇り明るくなってきた頃だ。昨日私は寝たのが10時過ぎくらいだけど、クーは8時には寝てたから10時間寝てんのかこの子。そりゃ元気だわ。

 

昨日は寝てる間にそこそこの人数のゾンビがやってきたので、私はロクに眠れなかったのだ。『イルカの眠り』のおかげで寝込みを襲われる(直喩)こそなかったが、それでも1~3人の訪問を5回捌くのは眠くなる。夜で強化入ってるし複数体いるから油断できないし。やっぱ常にキャンプファイヤーさせてなきゃダメだぁ。にしてもゾンビ君ちゃんの訪問回数が多かったけどさぁ。

 

クー? 全然起きなかったよ。ま手伝わすほどじゃなかったけどさ。危機管理意識どうなってんだこいつ。よく私と会うまで『クッキング・ケミカリー』ありとは言え生き残れたな。

 

……推定10才にあたるのは情けないからあんまりダメな事思うの止めようね、私♡ 普段から思ってる事ってやっぱ行動とかふとした時に言葉に出ちゃうからな。クーは手放すには惜しいから気を付けなきゃ。

 

相手は無知で純粋で幼稚であることを常に念頭に置いておきましょう、はい。

 

 

適当に朝を済まし荷物を積み込み出発。行先はもちろん道の先だ。まぁ昨日のあっち行ってこっち行ってより道をなぞって行く分、1時間もありゃつくでしょ。

 

「うーむ眠い。これもリアルになった影響っちゃ影響か? 道を進むだけっていう単調なのもこれまた眠気が来ちゃうなー」

「おひるねする? くーゾンビが来ないようにみてるよ?」

「あー、や、いい。移動は仕方がないしにしても無駄な時間はなるべく減らしたいし。それよか何か喋ろうよクー」

「うん! くーはねぇ……」

 

この車が音楽でもかけれればよかったんだけどなー。残念ながらそういった機能は付いていなかった。しょうがないのでクーとの雑談で起きることにする。

 

『道』だからかたまーにふらついてるゾンビを避けながら(一般車両なので轢くと損傷が懸念される)ドックフードがー都会がーこのスキルがーと好き勝手喋り合う。話題としてはやはり、身近なものや自分の事が多い。

 

「手ぇ? あクーには言ってなかったっけ。それ『クッキングケミカリー』って言って……ゾンビの……ウィルス………………クーが今まで食べたわんちゃん達が、力を貸してくれるからだよ」

「そうなんだー!」

 

その中には当然自分の体の事も含まれる。幸か不幸か、クーは自分の腕が獣と化したことをおかしいと認識していなかったのでなんか柔らかい表現で誤魔化した。

 

「くー、おねーちゃんとであうまで何かいかあぶない目にあったけど、この手のおかげで何とかなったんだぁ。食べたわんちゃんたちありがとねー」

「はっはっはっ。ちなみにもっと食べたらもっと力を貸してくれるよ」

 

サイコパスかよクー。これが天然モノか。

 

「あ、そういえばクー、昨日役に立ちそうなモノ色々カバンに入れて集めて来てくれたよね。中身見せてくれない?」

「いーよー!」

 

会話が一段落したところで、昨日は飯の反応を優先したから忘れていた戦利品を思い出し見せてもらう。と言っても私は運転しているのでバックミラーでだが。や、昨日とは違って『道』の上にはゾンビが沸くので……。

 

さーて、クーは何を役に立ちそう判定して持ってきたのかなぁ。

 

「えーっとねー、見える? これとかこれとか! んー……『にほんしゅ』? かな? こっちは『あかわいん』って書いてる。『かろすてぃーしゃじまんの、ほうじゅんでかおりだかいわいんをおたのしみください』だって」

「ふっは」

「? どうしたのおねーちゃん」

「いや、何でもない」

 

酒じゃねぇか。

水着マントロリが酒瓶持って商品説明してる姿見て思わず笑っちゃったじゃんか。

そっかー。クーは酒を役に立ちそうなモノとして判定しちゃったかー。

いや、役に立つよ? 『酒』って嗜好品分類だから精神力回復するし(自キャラによっては下がる事もある)、ガソリンや消毒品の代替え品にもなるしNPCに渡すと好感度も取引の質も高くなるし……。

けど、けどさぁ。何で君そう、見た目といい(私がやった)思考といい(半分私がやった)食人癖といい(これは私はやってない)犯罪っぽさを出そうとしてくるの?

 

一人で放浪してる時水がないからって飲酒でもしてたの?

 

「これねー、白いふくの人たちがよく、だいじそうに持ってたんだー。きっといいものなんだよね!」

 

あっなんかごめん。

 

 

「あ! 道のさきに何かある!」

「ん? おー見えてきた見えてきた。そうそう、あれが『都会』」

 

続けて運転すること少し。『道』は無事に私達を『都会』へと送り届けてくれた。もうちょっとだーと私は更にアクセルを踏み込んだ。今最高スピードだから意味なかったけど。

 

『都会』は『町』に比べて10倍以上ものサイズを誇る、人が集まり()()()発展し騒ぎが絶えない、まさにゾンゲーの華とも言える場所だ。プレイヤーも集まるが、NPCだって多数生存しており、それを狙ってゾンビだってやってくる。お祭り会場だってこと。

 

当然建造物だって『町』とは一線を画し、最高80階まで生成されるマンションに『町』一個分を誇るサイズの超大型ショッピングセンター。拠点を作るには最適な公園があれば、最初からそこそこ機材が揃っているオフィスだってあるし、医療品が大体揃う国立病院だってある。

研究所や工場こそ、一定ランク以上は生成されないが……それにしたって、中盤まではここだけで強化できるレベルだ。なんせ民間企業の傭兵会社(人体強化)個人研究所(ウィルス強化)工業大学(サイボーク化)などだってあるのだから。

 

簡易的とはいえ高く分厚い防壁がそびえ立ち、しかし門は閉じず来る者拒まず去る者追わずな雰囲気を感じさせる。中で行われていることなんて大体はNPC・プレイヤーの生存者グループ同士による抗争に数を減らすための暗殺、物資を求めての奪略といった血と怒りと裏切りまみれの血生臭いことだ。

 

しかしもちろん、そういったいざこざはそれが起こりうるほどの魅力的なモノがあるからこそだ(たまに純粋な殺害欲が動機な奴いるけど)。都会一つ手中に収めてしまえば、『ワールドエンド』が起きるまでは安寧を得られるだろう。

 

ま私達プレイヤーにとっては通過点なんですけどね。




『未来視』、使うか迷うよね
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