再編・淡く儚い夢   作:Negima -{}@{}@{}-

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夢の1ページ!

四つ星学園の校門の前に1人の少女が立っていた。

 

真っ白の肌に真っ白の髪。

程よい筋肉が付き、しなやかに伸びる細い手足。

 

儚い見た目であるが、その歩き姿やオーラにはどこか凛とした雰囲気を感じられる。

 

彼女は諸事情で初登校に遅れていたが、入学式から2週間後のこの日初めて制服を身にまとって大きな校門をくぐった。

彼女が初めてアイドル達の学び舎、四ツ星学園に通うこの日は組分けオーディションの結果発表の日であった。

 

 

 

 

 

 

私の名前は星乃雪。

持病もちで、その上心臓の弁が他の人より1枚少ない3枚しかないらしくて、子供の頃は激しい運動をする度に倒れては入院と退院を繰り返してたの。

そんな、私が昔から好きだったのがアイドル。

画面の中の彼女たちはキラキラ輝いていて、誰よりも生きているって感じがした。

10歳ぐらいになると、体が成長して心臓は問題なくなったし、持病も良くなってきたから、中学受験でアイドル育成学校の四つ星学園を受験したの。

入学式の3日前に持病で倒れて入院したから、初登校が遅くなっちゃった。

でも、今日、ここが私のスタートライン!

 

 

 

 

入院中に貰った、校内案内図を見ながら、学園長室までたどり着いた。

 

緊張が表に出ないように、ひとつ深呼吸をして、ドアをノックする。

 

コンコン

 

「入りたまえ」

 

中から許可を得たので「失礼します」と言って入っていく。

 

学園長室に入ると、机の奥の椅子に学園長。

机の前に女性の先生ーー名前は確か、アンナ先生だったはずーーが立って待っていた。

 

「ハロー!星乃!」

 

私を見つけたアンナ先生はウィンクをしながら挨拶をしてくれる。

 

「こんにちは、アンナ先生。お初にお目にかかります、学園長。星乃 雪です。入院中にお送りしたお手紙にも書かせていただきましたが、この度休学期間が終わりましたので、ご挨拶に参りました」

 

「あぁ。手紙は受け取った。休学が明けて何よりだ。そして早速だが、君は鳥の劇組を希望しているという事で良いのだな?」

 

「はい」

 

劇組希望であることは手紙にも書いておいたから、間違いない。

何度かお手紙のやり取りをしたけれど、やっぱり字は人を表してるんだな。学園長が真面目で紳士で優しいのが伝わってくる。

 

「分かった。・・・だが、まだ認められない」

 

キリッとした金色の双眸に見据えられるが、私は目をそらさずに頷く。

このぐらいのことは想定内だ。

 

鳥の劇組…4組ある組の中でドラマや舞台に力を入れている組。年々人気が上がってきていて、今年はS4の如月ツバサさんの影響もあって、希望者が過去最高人数になったという噂を耳にしたほどだ。

そんな中に事情があって遅れたからといってすんなり入れるとは思ってない。

 

それに、本来なら2週間の研究生課程から始めなきゃ行けないところを、最初から組み分けの話をさせてもらえるんだから、文句はない。

 

「先日、一年生に実力テストが実施された。この後その結果発表がある。そこで君には、発表の後、ステージと即興劇を披露してもらい、観客満足度が40%を超えたなら、劇組加入を認めよう。そして即興劇のお題も私から指定させてもらう」

 

40%か…。

 

「学園長!最初のステージで40%なんて…!それに、即興劇のお題も指定⁉︎」

 

アンナ先生が学園長先生に抗議する。驚いているのも大きいけれど、怒っているようだ。

確かに珍しいのかな。

セルフプロデュースが基本の四ツ星学園で、お題の指定。

分からないけれど、40%も高いのかもしれない。

…それでも。

 

「分かりました。」

 

「星乃!?︎」

 

私は構わない。

どんな条件だろうと全力を尽くすのみ。

 

「劇組に入れなかったら、私にはその実力が無かったという事です。学園長、お題を伺ってもよろしいですか?」

 

そう。アイドルは最終的に実力が全て。

言われたことが出来ないアイドルに、仕事は回ってこない。

昔からアイドルを見ていたからこそ、今はあの人たちの大変さがよくわかる。

 

「小道具使った一人劇だ。何を使うかは、その場で教える。」

 

小道具ってなんだろうか。ただの糸とか渡されるのかな?

 

いや、でもステージがあるし、即興劇についてだけ考えていてもダメだな。

 

「分かりました。」

 

「では、残り数時間だがアンナ先生にステージの指導を八千草先生に劇の指導を受けてくれたまえ。君がどれ程のパフォーマンスを披露するのかよく見ておこう」

 

なんだかんだと言っていても、学園長先生は優しい。

私に用意する時間をくれる。

 

「はい。ありがとうございます。では…!」

 

失礼しましたと言いかけて。

学園長先生の机にある花を見て思わず止まってしまった。

 

青い薔薇。あの品種は…『青龍』。

花言葉は、加護・実る努力。

とっても栽培が難しい薔薇で、今現在売られているのは、ほんの僅かなお花屋さん。確か、完全に一から育てているお花屋さんは二件だけだったはず。MiracleFlowerって言うお店と大手企業が経営している薔薇園だったかな…。

いつか見てみたいと思っていたけど、まさかこんな所で見れるなんて!

 

 

「星乃?」

 

アンナ先生が心配そうに私を見る。

いけない。思わずぼーっとしちゃった。

 

「すみません、大丈夫です。学園長先生、その『青龍』とっても綺麗ですね。失礼します」

 

アンナ先生に伴われて学園長室をでる。

 

ステージと劇、楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 .•*¨*•.¸¸  .•*¨*•.¸¸ 

ステージに指定した曲を通しで歌い終わり、吸った空気を大きく吐いて息を整える。これでも体力をつけたつもりだけど、まだまだこれで息が切れてるようじゃ足りないな。

 

でも今はステージのこと考えなきゃ。もうそろそろ…だよね。

 

「うん、良くなったぞ!ベイビー‼︎」

 

パチパチと拍手をしながらアンナ先生が言う。その顔には、ニカッとした笑顔が浮かんでいた。

 

「ありがとうございます!」

 

此処はレッスンルーム。

私は残りの時間で少しでもステージの質を高めようと、アンナ先生から指導を受けていた。

 

(劇の方は八千草先生からコツを聞いて、後は自分を表現するだけ、と言われて終わりだった。)

 

アンナ先生の指示やアドバイスは的確で、最初に通した時よりも目に見えて上達したのが嬉しい。

 

「もう殆ど直すところはない。後は思いっきり楽しめばいい!」

 

楽しむ。

私がパフォーマンスをする上で大切にしていきたい事の一つ。

それに、アイカツをしていく上でも…ううん。何をしていくにしろ、楽しむ事はすごく大事だと思うから。

 

「分かりました。」

 

私の返事を聞くと、アンナ先生はうん、と1つ頷いた。

 

「後は見直しながらステージに向けて少し休んでおけ。その間、私は歌組の方へ行っても良いか?」

 

時間がない中此処まで指導して下さったのに、これ以上引き止めるなんてしない。感謝の想いも込めてアンナ先生にお辞儀をする。

 

「はい。お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。ありがとうございました!」

 

ガチャリと音を立ててドアが閉まった。

 

よし。何分か休んで、残りの時間でもう少し練習しよう。

先ずは、さっき振りが少し甘かった所からかな。

 

 

 

 

 

 

しばらくして、ステージの方の練習は切り上げて、劇のことについて考えていたら、アンナ先生が入ってきた。

 

「星乃、組み分けテストの準備はいいか!」

 

「はい‼︎」

 

まずは他の同学年の子達の組み分け発表。その後、私の組み分け審査。

 

私の初ステージは、どんなステージになるのかな。私の劇はどんなお題が出されるのかな。どれだけ楽しいんだろう。

 

本当に、楽しみ。

 

 

 

 

 

「そして今日は、もう一つする事がある」

 

組み分けの結果発表が終わったあと、学園長が言った言葉にホールの生徒たちがザワザワとしだす。

 

「1年生の中に4月から休学していた生徒がいたが、その生徒が本日晴れて休学開けしたため、今から組分けオーディションを行う!」

 

舞台袖でその言葉を聞いて、自分のことだと思ったら、自分の中でスイッチが入ったのが分かった。

 

ザワザワとした声は落ち着くことなく続いている。

 

「静まりたまえ。勿論、審査はより厳しくする。筆記テストは既に終えており、そちらは基準を満たした。後はパフォーマンスだけだ。希望は劇組!では、ステージから始めよう!」

 

学園長は、皆の気分を盛り上げるのが上手だ。

ホールのボルテージがどんどん上がって行くのが分かる。

 

筆記テストもクリア出来てたみたいだし、後はこのステージのみ!

 

「星乃、ステージだ。行ってこい!」

 

アンナ先生…。

 

「はい!」

 

フィッティングシステムの前に立って、手元にある3枚のカードを見つめる。

 

ソフィスティケコーデ。

藍色の生地をベースにしているドレスで、月白と言われるほんのりと青みがかった白色と、朧月のような薄いレモン色を菱形模様の部分に組み合わせた。

その他の部分は純白のホワイトや漆黒のブラックなど、シンプルな色で形作られている。

ドレスメイクの最後に、全ての色が美しく綺麗に引き立てあうように、様々な所に薄く金色を散りばめた、私のスクールドレス。

自分で言うのは恥ずかしいけど、私の白くて長い髪と合うと思う。

 

初めてのステージ。

初めてのドレス。

 

ここから始まる、私の物語!

 

「泡沫の儚さと煌めきを魅せましょう!…星乃雪、行きます」

 

皆に届けたい。

私の思い。私の願い。

ありったけの想いを乗せて。

今。見ている全ての人の心に、一瞬でも煌めきを灯せるように!

 

 

 

 

ステージに選んだ曲は「Moonlight Destiny」

私のドレスはクールタイプだからタイプが合わないけど、病院で一番練習していた曲だから。

見てくれる人を笑顔にするために!

 

 

 

 

 

 

ーーー巡り会えた love……♪

 

あ、れ……?

沢山の拍手の音が聞こえる。歌い、終わった?その拍手は確かに嬉しい筈なのに、自分がステージを終えた実感がない。

 

 

状況が分からない。でもここはまだ、舞台の上。お客さんが私を見ている。辛そうな顔なんてしてはいけない。顔にやんわりと笑顔を浮かべる。偽りの笑顔だとしても、見てくれている人に不安な気持ちを抱かせないように。

 

「ーーーーの結果、1次ーー通過しーーーーー次は即興劇ーーーます。」

 

学園長先生の声、だよね。

所々聞こえなかったけれど。ステージは合格みたい…。

浮かべた笑顔が、本物に変わった。でも……どこか体が、ふわふわとしている。

 

学園長先生が私にステージ袖に下がるように促した。

 

客席に視線を向けた。

視界が歪んでボヤける。

何だか、…見えない…。

力が、抜けて…。

 

 

・・ダメっ!

 

危なかった。

危うく倒れそうになった。

ぐっと足に力を入れて、お辞儀をする。早く舞台袖に下がらないと、このままじゃ…。客席にいる人達の反応も見れないまま、舞台袖に帰る。

 

舞台の裏には、何段かの階段。

1歩踏み出すけれど、視界はもうおかしくなっていた。

階段、降りれてる…?

足元がぐにゃぐにゃしてて、すごく歩きづらい…。多分、この段で最後。

階段を降りきったところで足に力が入らなくなって座り込んでしまった。

 

「ケホ、ゲホッ!ケホッ!」

 

力が、入らない…!

喉に何か詰まったような感じで、息を整える暇もなく咳が出る。

 

「星乃!大丈夫か⁉︎」

 

アンナ、先生…?

先生が来てくれて肩に手を置いてくれているみたいだけど、全然分からない。

 

「ケホ!だ、だいじょ、です・・」

 

とりあえず、立たなきゃ。

なのに、立とうとしても、立てない…!

 

意識を失いそうになる。

この感覚は()()()()()()()()()けど、いつもと違う。

 

朦朧とした意識の中でハッと気がついた。

このまま、意識を失うと、劇が出来なくなる。

 

 

「星乃!しっかりしろ!俺がわかるか!」

舞台から学園長が駆けつけてきた。

 

「学え、ん、ちょ……ケホッ」

 

声が出ない。

それがわかったのか、学園長は眉根を少し寄せた。

 

「星乃、劇は辞退しろ。」

 

確かに、声が出なければ自分を表現するのは困難だろう。

学園長の言っていることが正しいのかもしれない。

 

でも、ここまで来て、諦める訳には行かない!

 

「やり、ます。声…使わないで。」

足にぐっと力を入れて立ち上がる。

それだけで、頭痛と吐き気が襲ってきた。

でも、学園長から視線はそらさない。

 

「……今回だけだぞ。満足度も20%に下げる」

 

ありがたい。今の状態だと、どんな芝居ができるか分からない。甘えているとは思うけど、好意は受け取っておく。

 

「では、呼んだら来てくれ。」

 

私は大きく頷いて、深呼吸をする。

酸素が体に入ってきて、頭痛が楽になる。

 

「待たせた。それでは劇を始める。お題は『アイカツモバイルを使った一人芝居』だ。星乃!」

呼ばれた。行かなくちゃ。

後ろで、アンナ先生が心配そうな表情でこっちを見ている。

 

しかし、私は止まらない。学園長の前まで行くと、こちらに差し出された電源のないアイカツモバイルを受け取る。

 

「では、始め!」

スタートの合図を聞いて、まずは時間を確認する演技をする。その後、周りを見渡す。同時に視界の歪みも確認しておく。

 

うん、大丈夫、視界はもう歪んでない。

 

そのあとは、メールが来たことに気がついて、メールを確認しているような感じにして……この時に少しずつ表情を強ばらせていく。

 

まあ、こんな大きな会場じゃ後ろの方の人たちには表情なんて伝わらないと思うから体勢を変える頻度を増やして視覚的にも焦りを分かりやすくしてるけど。でも、近い人たちには表情の演技もできることがアピール出来る。

 

そして、動揺した、それでいて鬼気迫る感じで電話をかける。

出なかった演技からもう一度電話をかける。

 

それでも出ない、困惑した表情で画面を見つめてから……覚悟したように立ち去る。

 

「終了!」

学園長の声がホールに響く。

 

ここまで全く音がなかった。

あったとすれば、私が立ち去る時の足音だけ。

 

そんな静寂の世界がその合図を待っていたかのように拍手があるれる世界へと一変した。

 

「オーディションの結果、星乃雪の劇組加入が決定した。これからは劇組のメンバーとして、さらなる成長を期待する。」

 

やった!

これで、夢に見た劇組でアイカツができる!

 

 

 

 

ステージが終わって、待合室に着くとどっと疲れが押し寄せてきた。

意識を失いそうな体調で無理して舞台に立った反動だろう。

待合室のソファに座って一息ついていると、ドアがノックされた。

 

失礼するよ、と言って入ってきたのは劇組S4の如月ツバサ先輩だった。

ツバサ先輩が私のいるソファに歩いてくるので、立とうと思ったのだが、1度座ってしまったからなのか足に力が入らない。

 

「ああ、疲れているだろうからそのままでいいよ。…初めまして。劇組のS4を務めている如月ツバサだ。しばらくしたらアンナ先生がアイカツモバイルを持ってきてくださるそうだから、君がそれを受け取ったら寮に案内するよ。」

 

後片付けなどが忙しかったからなのか、私の体調を気にしてくれたのか、アンナ先生が待合室に来たのは30分以上過ぎた後だった。

その頃には歩けるくらいには回復したので、アイカツモバイルを受け取って、ツバサ先輩に寮まで案内してもらった。

 

四つ星学園の寮は部屋数が200以上あるという巨大な寮。

 

ワクワクしながら足を踏み入れて、寮母さんに挨拶をしたら、部屋の番号を教えてくれた。

 

私の部屋は本来二人部屋だが、もう一人は事情があっていないらしい。

 

部屋に入って、必要最低限の日用品や服だけダンボールから出したところで夜も遅くなってきたので、お風呂に入って寝んことにした。

 

明日からアイカツできることにワクワクして眠れないかと思っていたけど、ベットに入ったら簡単に寝てしまった。

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