とある箱庭の一方通行   作:スプライター

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少女達が手にした物

 

 

「どっっっかぁあああああああああんッッ!!」

 

「チ、チビッッ!?」

 

あろうことか地面を突き破り、いかにも彼女らしい叫び声を挙げて戦場にやって来た天童アリスに、ネルは珍しく目を丸くして声を荒げた。

 

いくらなんでも破天荒が過ぎる。

そもそも地面をどうやって進んできた。

つうかあまりにもタイミングが完璧すぎるだろ。

 

言いたいことが一気に溢れ出る。

だがそれよりも先に。

 

「右に飛び退けチビッ!!!」

 

アリスが登場した場所は最悪だった。

彼女がいる場所は不幸にもゴーレムの腕が通り過ぎる場所真っ只中。

 

ゴーレムの狙いは間違いなく瓦礫に押し潰されているネルである事には違いない。

しかしその振り下ろす腕の範囲内にアリスは入ってしまっている。

 

モタモタしている時間は無い。

既にゴーレムの腕は振り下ろされている。

 

考える前に逃げる様ネルは大声で指示を飛ばした。

後ろを見ていたら間に合わない。

何をしているかを確認してからでは遅い。

 

天童アリスが咄嗟の反応に対し非常に弱い事を先の戦闘で知っているネルは、無駄な反応をさせる前にその場所から逃げるよう促した。

 

彼女まであの致死的一撃に巻き込まれる必要は無い。

そう思ったネルの心は。

 

「光よ──ッ!!」

 

最大出力で放たれたアリスのレールガンによって一蹴された。

風圧や風切り音から背後から何かが迫って来ている事を過敏に察知してしまったアリスは振り向き様、ゴーレムの迫りくる腕にレールガンの照準を合わせ、叫ぶ。

 

瞬間、ミレニアムを覆う夜の闇が一瞬、レールガンの銃口から迸る眩すぎる閃光に掻き消された。

キュィィィイ……と、いかにもな音と共に銃口から溢れんばかりに輝きを放っていた光がアリスの声と同時、一点へと収束し始め、集まった光が極太の光線となって一直線に射出される。

 

直後、光に呑まれたゴーレムの腕半分が音も無く消し飛んだ。

 

「なッッ!?」

 

間違いなく叩き潰されると思っていたゴーレムの腕が、ネルにもアリスにも当たらず、ただ空を切るだけで終わると言う信じられない光景にネルは思わず息を呑む。

 

どれだけ撃っても破壊出来なかった腕を、アリスは一撃で破壊を通り越して消滅させた。

 

凄まじいと言う次元を超えて恐ろしさすらネルは覚える。

 

「むっ!! 街中でボスバトルが発生してます! ゴーレムは序盤でよく見るボスですが油断はしません! キッチリ討伐して経験値を美味しく頂きます! はッ!? まさか地中にあった道はアリスをここへ導くためのルート案内!?」

 

一方で、華やかにも程がある成果を叩き出したアリスはどういう訳か目をキラキラさせつつ、現実とゲーム空間をごちゃ混ぜにしたかのような事を早口で捲し立てていた。

あらゆるゲームに精通している訳でもないネルはアリスが語った内容の半分も理解出来ない。

 

しかし彼女は口角を吊り上げ、八重歯をこれでもかと覗かせる。

アリスの登場を、嬉しすぎる誤算として受け止める。

絶体絶命のこのタイミングで、喉から手が出るほど欲しかった物がやってきた。

 

攻撃力が、やって来たと。

 

「ぬッぎ、ぎぎぎぎッッ!!」

 

右手のみに力を入れ、瓦礫を退かす為改めてネルは気合を入れ始める。

彼女がやって来た事で尽きようとしていた気力が戻った。

 

全身が訴えて来る。

まだやれると。

ここからが本番だと。

 

何処から湧き上がっているのか自分の身体なのに分からないまま、ネルはその訴えて来る意思に応えようと

今一度、歯を食い縛る。

 

ありったけの力を振り絞るネルの気迫は、ゆっくりとだが己を押し潰している瓦礫を彼女は徐々に押し返し。

 

「だりゃぁあああッッ!!」

 

ゴッゴォォンッッ!! と、鈍い音と共にネルは数トンの重量にも及ぶ瓦礫を片手だけで押し返した。

耐え難い疲労にぜぇぜぇと荒すぎる息を吐き、怪我だらけの身体なのに無茶をしすぎた反動でビキビキと痛む全身にうるせえと一括しながら彼女はゆっくりと立ち上がる。

 

だが。

 

劇的な復活を遂げたネルの裏で、今度はアリスが彼女に向かって驚きの表情を露わにしていた。

 

「え!? た、戦うメイドさんも地面から現れました!?」

「あたしがここにいたの気付いて無かったのかよ……いやまあ確かにチビからじゃあたしは瓦礫に埋もれてて見えなかったかもしれねえが……つかさっきあたし声張り上げたよなぁ!? あれはスルーか!? 気付いてなかった感じかテメチビコラ!!」

「ひぃいいいん!! アリスより身長低いのに怖さがアリスの百倍ありますっっっ!! メイドさんのする顔じゃありません!!!」

 

ネルの怒気に先程までのハキハキとした姿勢はどこへやらと言いたいかのようにアリスがビクビクと怯える。

だがその発言は震えている様子とは裏腹に喧嘩を売ってるようにしか聞き取れない。

 

情けなさ全開の声で言いたいことを言いたいまま言い切ったアリスを問い詰めたい衝動に思わず駆られたネルだったが事態は緩やかな時を進んでいない。

たまたまこの数秒が平和な時間になっているだけだと、ネルはアリスへの追及をせずに今しがた右腕の半分を綺麗に吹き飛ばされたゴーレムの方を見やる。

 

「……あ?」

 

ゴーレムはアリスの一撃によって失った右腕を先程破壊したビルに突き刺していた。その事に怪訝な表情を浮かべたネルだが、アレが何をやろうとしているのかを数秒後に察し、表情を険しくさせる。

 

「クソが……! 何でもくっつけて巨大化し続ける能力があるから、たとえ腕が無くなっても素材さえあればスグに回復しますってかぁ? で。素材は破壊行為で自給自足が可能。実質耐久力は無限とでも言いてえのかよ」

 

あのゴーレムが何をやろうとしているのかをアリスに共有するがてら口頭で事態を不機嫌さを隠す事無く述べる。

彼女の推測が正解である事を示す様に、説明終了と時を同じくしてズルリと言う音と共にビルから引き抜かれたゴーレムの腕は、ゴテゴテとあらゆる物が雑多にくっつけられていた。

 

鉄骨。

鉄製の扉。

角のある瓦礫。

よく見ればパイプなんかも所々飛び出している。

 

ゴーレムが破壊した物全てがゴーレムを強化する素材であり、失った部分を補強する修理材。

相手すれば相手するだけ相手が強くなりこちらが消耗する。

 

面倒にも程があるだろと、相手の能力を評価しているからこそ鬱陶しそうにネルは改めて強く舌打ちした。

 

一方で。

 

「あ、あれはゼルナの伝説の最新作で登場した新機能! 周囲の物を破壊(スクラップ)し、武器として装着(ビルド)させるスクラップコング&ダイヤモンドビルド! 略してゴリラモンド!!」

「スクラップ要素もビルド要素も消えてるじゃねえか! あとゴリラどっから生えたんだよ!? コングはどうしたコングは!!」

「スクラップされたので破壊されました」

「それで出てきたのがゴリラかよ……いや納得しそうになったけど何一つ納得出来ねえよっ!」

 

同じ光景を見ていたであろうアリスからは聞いていて思わず脱力するような感想を零していた。

見た物聞いた物全てゲームに例えて表現し、なおかつ相手の行動に目を輝かせワクワクしている姿をありありと見せるアリスから放たれた発言に、律義にもネルは反射的にツッコミを入れる。

 

「ゴーレムを討伐してレベルアップ&レアドロップ獲得チャンスです! どうやらまだHPは半分も削れていないと見ました。見た感じ途中参戦ですがこれなら報酬は百パーセント頂きです!」

 

グッッ!! と拳を握り締めてアリスは意気込みを露わにする。

どういう訳か彼女はここに現れた瞬間から、より具体的に言えばゴーレムを見かけた瞬間からやる気に満ち溢れていた。

 

瞳に炎を宿す勢いで戦闘態勢を取りながら思いの丈をぶつけるアリスだったが、やはり彼女が何を言っているのかオンラインゲームに疎いネルはその真意を汲み取れない。

ただし、途中で発された単語からある程度は推察出来る。

 

「そのレアドロップ……ってのが何の事を指してるのかは分かんねえがよ」

 

口角を斜めに持ち上げながらネルは面白そうにアリスに話を持ち掛ける。

 

「お宝ならあいつは持ってるぜ。ミレニアムの、もしかしたらキヴォトス全体の今後を左右しかねないトンデモねえお宝があいつの中になぁ!!」

「そんな伝説のアイテムが!? アリスますます見逃せません! 必ず倒して頂きます!」

 

状況は、アリスの参戦で一変する。

絶対絶望の敗北必至の戦いから、勝ちを拾えるかもと思える程度にまで戦局が傾く。

 

相変わらず理解するのに専門的知識を要するアリスの言葉選びに少なからず困惑しながらも、ネルは改めて気分を高揚させながら己の体調を分析する。

 

全力で動けるのは後四分ほど。

全力で戦闘出来るのは恐らく一分程度。

そこが限界。

それを超えたらきっと身体が動かなくなる。

もしかすると、今後一生かもしれない。

 

死ぬ寸前まで、壊れる直前まで身体を酷使する事を前提にしても、絞り出せた猶予時間は極めて厳しいとしか言えない程に僅かな物。

あまりにも苦しいと言わざるを得ない時間を前にしてネルは笑い。

 

充分だな。と、極めて客観的にそう結論を出した。

 

「さあ、反撃開始の時間だぜクソデカブツ野郎ッ!」

「レイドバトル、開幕です!」

 

右手で銃を向けながらネルが吠え、彼女に続くようアリスがレールガンを両手で構える

一時間程前まで激闘を繰り広げた二人は、共通の敵を前にして同じ方向を向き始める。肩を並べ始める。

 

気が付けば、戦いは大きく様変わりを見せていた。

 

始まりはミレニアム生徒同士でのいざこざだった物が、いつしか学園防衛戦へと姿を変え、先程まで敵だった者達が手を組んだミレニアム総力戦へと発展する。

 

戦う場所はそれぞれ違う。戦う相手もそれぞれ違う。

 

かたや魔術師操るゴーレム

かたや『学園都市』の最新鋭無人ヘリ。

かたや空間転移の能力者。

かたやクローン操るオーバーテクノロジー。

 

各々が各々の場所で、タイプの全く違う敵と邂逅する。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

「やばっっっ!!」

 

ミレニアムタワーの最上階に照準を合わせたヘリの機銃が火を噴き始める直前、迎撃の姿勢を見せていたアスナが一転、グルリと身体を反転させ、気絶しているモモイを左手で掻っ攫いつつミドリの方へと駆け寄り始めた。

 

何だろう。と、呑気な事を考える余裕はミドリに与えられなかった。

 

「ビルから飛び降りるよッッ!! 腹蹴るから庇ってッッ!!」

「へっっえっっ!?」

 

ドスンッッ!! と、直後、問答無用とばかりにミドリの身体がアスナによって蹴り飛ばされる。

先の爆発で破壊された窓目掛けて全力で身体を蹴り飛ばされたミドリは、哀れにもビルの外へと真っ先に放り出される。

 

事前宣告によりお腹を庇ったミドリは蹴りによるダメージは入らなかった。

代わりに。

 

「ひっっひああああああああああああああああッッ!?!?」

 

突然襲った浮遊感にミドリは大きな悲鳴を挙げた。

 

ここまでの流れが一秒強。

突然アスナが振り返り、突然蹴り飛ばされ、突然五十メートル弱ある高さから外に放り出される。

どう考えても正気の沙汰では無い流れと、ここから真下まで真っ逆さまに落ちる恐怖でミドリの顔が蒼白に染まる。

 

急速に真下へと落ち始める中、上からガラスが割れる音が響いた後、アスナがモモイを引き連れてビルの外へ飛び出すのが見える。

 

先程までいたエレベータールームが大きく爆発し、破壊し尽くされたのを目撃したのはその直後の事だった。

 

「ッッッッ!?!?」

 

目にしたのはヘリの機銃掃射。

だがしかし機銃による攻撃では決して起きない筈の爆発が、数秒遅れで発生している。

先程のミサイルによる爆撃とは違う種類の、そしてもっと危険さが漂う爆発。

さらにそれを勘で察知し躊躇なく逃げる事を選択したアスナの判断力。

 

どれも今のミドリの脳内で処理出来る内容では無かった。

 

故に。

 

「せ、せせせせんせいいいいいッッ!! このままじゃ死ぬぅううううううううッッッ!!」

 

目の前に迫る落下死の危険に大いに取り乱し始めた。

あの爆発で死ななかったとして、このまま放って置けば待っているのはこれまた死。

 

死ぬのが十秒早いか遅いかの違いだけになってしまう。

 

まずいまずいまずい。と、状況をどうにも出来ないまま落下するしかないミドリはここに居ない先生にメッセージを送る。

 

先生が助けてくれることを前提に作戦を組み立てていたミドリは必死に助けてと叫ぶ。

ミレニアムタワー攻略作戦会議の時点からミドリとモモイが最上階から落ちる事自体は既に決まっていた。

 

一ノ瀬アスナに戦いを挑んでも勝てない。

どれだけ頑張っても時間稼ぎにしかならず、いずれ二人ともアスナの手により撃破される。

 

撃破されて放置されるだけならまだ良いが、そこで捕縛されてしまえば話は途端に終わりを迎え始める。

ミドリ達の最終目標は『ミレニアムプライス』までにゲームを完成させる事。

 

G.bibleはそれを円滑に進める為の手段に過ぎない。

最終的に必要なのは才羽ミドリであり、才羽モモイであり、花岡ユズと言う個人なのだ。

 

つまり、この作戦の前提に彼女達三人全員の帰還及び最低一週間の安全確保は必須事項。

タワー攻略作戦に彼女達の力が必要であると同時に、何が何でも彼女達だけは無事に帰らなければならない。

 

一ノ瀬アスナを足止めする為にモモイとミドリが最上階に昇る。

それは言い換えれば彼女を撃破しなければ生徒会の管理下に置かれてしまう事と同意。

そしてミドリとモモイはアスナを倒せない。

しかし、ここで彼女達を使わなければ作戦は絶対に成功しない。

 

そこで考えられたのが敗北寸前でビルの窓を突き破っての脱出。

充分に時間を稼いだ後、飛び降りる事により捕獲を回避する。

 

なので落ちると言う行為自体は初めから覚悟していたので気にしてはいない。

 

問題は。

 

『お前等が落ち始めたら俺が飛ンで落下を制御してやる。だから躊躇するンじゃねェぞ。無理だと思ったらすぐに飛び降りろ。良いな?』

 

そう強く語り、安心させてくれた肝心の人が何処にもいないと言う事だった。

 

「落ちてる先生! 今落ちてるよ私ぃぃいいいいいいいいいいッッッ!!」

 

想い人がいつまで経っても来てくれない事に涙目でミドリが叫ぶ。

 

落下するのは作戦に組み込まれている。そこまでは良い。

但しそれの解決方法が完全な他人任せな以上、ミドリにこれを打開する術は無い。

 

いぎゃああああああああああッッ!! と、乙女が挙げてはダメな悲鳴を出す中。

 

「今だよ! 行って!!」

 

声が聞こえたと同時、二基の大型ドローンがビルから発進された。

ドローンはミドリと、モモイを抱えているアスナの方に真っすぐに向かうと、下部に伸びているアームで二人をそれぞれ掴む。

 

「ふえ、ふえあぁああ……! た、たすかったぁぁ……!」

 

ドローンに掴まえられ、自由落下から滞空へと変わった瞬間、生還出来た事を実感したミドリから心の底から安堵した声が零れる。

ドローンが飛び出して来たビルからは、ヒビキがこちらに向かって手を振っているのが見えた。

助けてくれたのは先生では無かったが、結果的には作戦通りに飛び降りは成功した。

 

今はそれで良いか。と、今一度深いため息を吐いていると。

 

「ダメ!! 切り離して早く!! ヘリは私達が落ちた事に気付いてる!!」

 

掴んでいるドローンを自分で破壊し、十メートル以上はある高さからモモイを抱えて地面へと落下しながら叫んでいるアスナの声が聞こえた。

 

当然、そんな事を言われても即座にミドリは動けない。

危機察知能力及び判断能力がアスナ程に高くないミドリは、まずアスナの言動に対し正気を疑う事から始める。始めてしまう。

 

確かに死なないギリギリの高さではあるだろう。

だからと言ってそこから何の策も無しに飛び降りれるかと言われたらそんなの無理に決まっている。

 

躊躇するのが当然だった。

だが。

 

「どりゃっっっ!!」

 

バガンッッ!! と、未だ滞空を続けているミドリを追い抜いて落下するアスナが彼女とすれ違いざま、モモイを抱えながらと言う最悪の悪条件にもかかわらず正確にミドリのドローンをアスナは銃撃で破壊した。

 

あまりにもぶっ飛んだ正確な射撃に驚く事さえも許されなかった。

アスナの手に寄り破壊されたドローンは浮遊能力を失い、これによりミドリの運命は決定される。

 

即ち、地面に向かっての命綱無しの十メートルダイビングへと。

 

「うわきゃあぁああぁあああああああああああああああああッッッ!?」

 

今度こそ真っ逆さまに落ちるしか選択肢が無くなったミドリは可哀想さ溢れる悲鳴を街中に轟かせた。

この距離なら確かに死にはしないだろうが、それはそれとして怖い物は怖い。

 

反射的に手を前に伸ばし、地面に頭だけは打ち付けない様にした上で、ミドリはあまりの怖さに強く目を閉じた。

 

落下する感覚と全身に強く打ち付ける冷たい風が一段と恐怖を煽る。

急速に迫って来るコンクリートの地面を見ていたくないと目を閉じたミドリの身体は。

 

「ほいっ! キャッチッッ!!」

 

先に着地していたアスナからお姫様だっこの形で抱き抱えられる事で、痛みを受ける事無く地面へと辿り着いた。

 

そのままそっと下ろされたミドリだったが。瞬間彼女はドサリと地面に手と膝を付き、ぜぇぜぇと荒い息を吐き始める

 

「は……はひ……ひぃ……ひぃ……! に、二回……! 二回……死ぬ思い……した……!!」

 

怖いなんて物では無かった。

今後やるつもりこそ無かったものの、内心でスカイダイビングは絶対やらないと心に決める。

 

そんな折。

 

「……あえ?」

 

四つん這いになった事でジャケットの中身がひっくり返ったのか、パサッと音を立てて、ミドリの懐から錆びて今にも崩れそうな何かが零れた。

 

「何コレ……? ボロボロの……カード? こんなの持ってたかな……?」

 

落ちたソレを拾い、小さく首を傾げる。

全く見覚えのないカードだった。

懐に入れた記憶も無ければ、所持していた記憶も無い。

 

「ナンバー……セブン……?」

 

かろうじて読み取れたのはそれだけだった。

裏面の右下部分にNo7と書かれている。

やはり、思い当たりの無いカードだった。

 

ん~~? と、首を傾げていると。

 

「ッッッ!?」

 

ドックンッ!! と、心臓が一つ大きく鼓動した。

 

反射的にミドリは目をギュっと強く閉じた後、空いてる手で胸を抑える。

 

息苦しさは無かった。

痛いとかも無かった。

ただ何故だか、先の瞬間だけ耐えられ無さを感じた。

 

それが何であるか、理解するより先に。

 

「立って妹ちゃん!! 次が来るよ!!」

 

アスナの大声にハッ! とミドリは顔を上げ。

ヘリの機銃が間違いなく自分の方に向いているのを目撃した。

 

刹那、ミドリは理解する。

あのヘリが標的にしているのは自分であると。

他の誰でも無く、才羽ミドリであると。

 

その答えが正解である事を告げる様に。

地面に落ちたミドリ目掛けて、破壊の銃弾がばら撒かれる。

 

標的を、確実に抹殺するかのように。

 

 

──────────────────────

 

 

そしてミドリが懐からカードを見つけたのと同じ頃。

 

「カード……? 私……こんなのポケットに仕舞ってたっけ……? しかもこんなボロボロな……」

 

ミサカと言う少女が操るロボットに思いきり殴り飛ばされ、窓を突き破ってビルの中へと吹き飛ばされたユウカが頭から流れる血を手で抑える中、ハラリと落ちたソレを見て不思議そうに首を傾げていた。

 

「そう言えば……あの夢を見終わった後から変な感じがずっとしてたけど……これが正体……?」

 

思い当たる節を一つ言葉にする。

あまりにも馬鹿馬鹿しい仮説だった。

 

いくらなんでもあり得ない。

あの悪夢を見終わって現実に戻って来たら、突然これが懐に仕舞われていた。

 

荒唐無稽にも程がある。

だが。

 

「そうとしか考えられないわね……。にわかには信じがたいけど……でも信じられない事が今日ずっと起こってるもの……可能性は高い」

 

自身の中の常識は既に壊されている。

この世界には理解の及ばない物がいくつも存在している。

 

それを今日何処までも痛感させられたユウカは、このカードもその一つとして受け止める。

 

「ナンバースリー……」

 

裏面にNo3と書いてあり、丁寧に扱わなければすぐに崩れ落ちてしまいそうな程に錆びたカードを見てユウカは小さく声を零す。

 

今はそんな事をしている余裕は無い。

すぐにでもここから飛び出して追撃を回避しなければ。

こうしている間にも相手は攻撃の準備を整えている。

最悪あのビルを溶かした熱線を撃って来るかもしれない。

 

だから早く。

早くまずはここから離脱しないと。

 

頭では分かっているのに、どういう訳か自分の心はこのカードを注視するように訴えて来る。

 

「どういう意味……んぐッッッ!?」

 

瞬間。

ドックンッッ!! と、ユウカの心臓が一層強くその存在をユウカに向けて主張した。

 

ミドリと同じように、ユウカも心臓が大きく跳ねた事に息を詰まらせ、思わず胸に手を当てる。

ドクンドクンと、心臓の鼓動が早くなっているのが手に伝わる。

 

浅く断続的な息を繰り返すユウカは、今一度カードをまじまじと見つめた後。

頭の中に浮かんだソレが本当に正しいのかどうかを問いかける様に、ユウカはカードに向かって語り掛ける。

 

「そう……使うの……?」

 

そう使うの? と。

 

 

 

 

 

 

 

 












創作あるあるだと思うのですが、音楽を聴いてると自然とその作品内の描写を歌詞やメロディに合わせがちですよね。私はよくやります。

『frip side』さんの『fortissimo-the ultimate crisis』が最近のお気に入りです。これを聞くと創作するかと言うテンションになります。作品に合う!

ちなみにミレニアム編のOPは『master piece』を頭の中で描いています。こういうの楽しくてずっとやってしまいます。


と言う訳でパヴァーヌ前編でやりたかったこと。ネルとアリスの共闘です。
これをしたいが為に最初は敵対させて戦闘させました。
こういう形から友情は始まるんですよ。可愛いって言ってる。


ミレニアム総力戦。と描写していますが半数は身内のいざこざで既にダウンしていたりそもそも参戦していない始末。

現状のミレニアム戦力はこんな感じですね

セミナー

ユウカ(軽傷)
コユキ(不参戦)
ノア(気絶)


C&C

ネル(重傷)
カリン(健康)
アスナ(健康)
アカネ(健康)


ヴェリタス

チヒロ(健康)
ハレ(気絶)
マキ(気絶)
コタマ(気絶)


エンジニア部

ウタハ(健康)
ヒビキ(健康)
コトリ(健康)


特異現象捜査部

ヒマリ(不参戦)
エイミ(不参戦)


トレーニング部

スミレ(不参戦)


ゲーム開発部

ミドリ(やや重傷)
モモイ(気絶)
アリス(健康)
ユズ(監禁中)


アリスが健康なのはもうチートですね。
一部記載されていない子達もいますが、まあそれはね。まだこの時期的にはね。という事でここはひとつ。



さて、今回の話で散々迷った物を遂に取り扱います。
そう、大人のカードです。

これを取り入れるか取り入れないか、非常に悩みました。と言うか実装に踏み切った今でも悩んでます。

何せ一方通行さんは必要ないんですよねコレ、彼が強いので。

ただこれを腐らせるのは勿体ない……と思っていたらそう言えばアレって七人いて、今作のヒロイン七人だなって事に気付いてしまったので、分割+それぞれ各一回と言う形で実装に踏み切りました。

次回お披露目……かどうかはまだ未定です。
二、三分割して進めている以上パート当たりの進行度合いは遅いので……。




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