とある箱庭の一方通行   作:スプライター

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人に堕ちる

 

 

 

 

吹き飛ばされたビルの中での休憩は終わりであるとユウカに告げたのは、頭上を貫通した一本の赤い赤熱光線だった。

 

「や……ばッッ!!」

 

ドロリと高熱を帯びて溶け始める壁を見て、ユウカは即座に見つめていたカードをジャケットの裏にしまい脱出を図る。

 

大慌てでユウカが飛び出したのと、そのビルが爆発炎上を始めたのはほぼ同時だった。

前方には、先の熱線を放ったであろうミサカ一四五一号と名乗る謎の少女と、その少女操る駆動鎧(パワードスーツ)が銃口を向けているのが見える。

轟々と燃え盛るビルから脱出したユウカは一度だけ振り返り、完全にダメになっていくビルを見て盛大に嘆息してからミサカの方へと顔を向けた。

 

「一応聞いておくけど、今日あなたが破壊したビルや建造物を弁償する気はある?」

「襲撃者に弁償するかどうかを聞くのは流石に野暮ではありませんか? と、ミサカ一四五一号は払う訳ないだろバーカ。と、言外に意味を含ませて言葉を返します」

「知ってたわよ!! あと滅茶苦茶ストレートに言ってるわよそれ!!」

 

ユウカが観測している範囲だけでも被害額は何十億は下らない。

全体の被害額はもう考えたくも無い程に膨れ上がっているに違いない。

この騒動が終わった後のあれこれを考えると非常に頭が痛くなる。

 

とは言え、今はそんな事に気を配っている余裕は無い。

悩むのは、苦しむのは、

この騒動が全部済んでからだ。

 

ギュッッ! と、銃を握る右手に力が入る。

相手との距離はおよそ五十メートル強。

 

イヤな距離だと、ユウカは相手にとって至極有利な距離間である事に面倒臭さを覚えた。

こちらの攻撃が絶妙に通らず、相手の射程範囲にはこちらが含まれている。

走って詰めようにも五十メートルは流石に数秒では到達出来ない。

その間に相手はいくらでも対応しようがある。

 

だがここでまごついていても状況は好転しない。

この距離を保ち続けている限り、戦局は相手に傾くばかり。

 

「戦闘を再開します。と、ミサカ一四五一号はこれ見よがしに先制攻撃を始めます」

 

それを肯定するかのようにミサカ一四五一号が操る、駆動鎧(パワードスーツ)と呼ぶにはあまりにも改造が施された機械兵器、捕食者(プレデター)が行動を開始する。

 

手始めとばかりにガコンッッ! と、背後に装備している無数のミサイル発射装置が駆動し、距離の離れたユウカの耳にも届く程の音を迸らせて連続した発射音が鳴り響いた。

 

夜の闇の中に轟く赤い無数の光が、ミサイルが飛び散るのを見て、ユウカは息を呑む。

その数、百弱。

一人の少女に向けるにはあまりに暴力的すぎる程の無数のミサイルが四方、八方に飛び散る。

ミサイルは僅かな時間射出された方向へ飛行した後。

その全てがユウカに狙いを定め、高速で彼女目掛けて突撃を開始した。

 

「無茶苦茶よそれッッッ!!!」

 

突然目の間に降りかかってきた圧倒的な破壊の力を前に彼女の顔が蒼白に染まる。

どうしたって避け切れる数じゃない。

咄嗟の判断で彼女はその事実に気付く

 

故にユウカは、全速力で捕食者(プレデター)の方へ走った。

 

「う、あ、ああああああああああああッッ!!」

 

叫びながら、ユウカはミサイルの追尾を狂わせるべく危険を承知で敵の懐へ飛び込むように駆ける。

 

後ろに下がったら間違いなく的になる。

遮蔽物を見つけて身を隠しても、あのミサイルの物量に耐えられる物は周囲一帯には存在しない。

 

そのような状況下の中、ユウカに残された最後の手段はたった一つだけだった。

ただひたすら敵の懐目掛けて走る。

 

一か八かだったユウカの作戦は奇跡的に功を奏した。

 

既にある程度射出し距離を進んでいたミサイルは、自ら飛び込んで来るユウカを捕捉し突撃するも、補足した時に着弾せんとしていた場所には既に彼女の姿は無い。ユウカは既にその数歩以上前を走っている。

 

結果。

 

ゴガガガガガガッッッ!! と、連続的な爆発音こそ真後ろで響く物の、ユウカは直撃全てを回避した。

 

「恐ろしく危険な賭けです。と、ミサカ一四五一号は早瀬ユウカの行動に驚嘆します」

「危険な賭けをさせてるのはそっちでしょうがッッ!!」

 

百以上ものミサイルを避ける事こそやり遂げた物の、状況は依然悪いまま。

現に相手からお褒めの言葉こそ授かる物の、その行動に一切の容赦は無い。

 

ガチャリと、ビルを溶かした熱線を放つ銃口が立ち止まる事を許されないユウカに向けられた。

 

嘘でしょと叫びたくなる気持ちを喉元で抑えつつ、ユウカは右足を強く踏み抜いて強引に走る進路を斜め右方向へと変更する。

 

ビュッッ!! と、先程まで走っていた場所を熱線が通過したのはその直後の事だった。

一瞬でも判断を鈍っていたらアレが直撃していた事実に背筋が恐ろしい程に冷えるが、ミサイルの爆発は今も続いている。

ビビって立ち止まったが最後、数十の爆発に呑まれてしまう。

震えている時間なんてどこにも無い。

数度コンクリートにけつまづき倒れそうになるが、それを気力で懸命にカバーし、ミサカ一四五一号の猛攻を躱しながらユウカは相手との距離を着実に縮める。

 

但し状況は芳しくない。

ビルをも溶かした熱線への対策も近接戦闘に持ち込んだ時の巨大な腕を掻い潜る糸口も掴めておらず、どうすれば良いのかと走りながら打開策を考えるも、この土壇場の状況で妙案が浮かぶと言った奇跡が起きる筈も無い。

 

「くっっっ!!」

 

結局、今のユウカが出来ることと言えばこれしか無かった。

すなわち、サブマシンガンによる徹底攻撃。

駆動鎧(パワードスーツ)のみを狙い、兵器を操っているミサカに当てるのだけは避けるようにユウカは撃ち始めるが、彼女の弾丸は強固な防御力に全て弾かれ、ろくな有効打を与えられない。

 

だが少なくともここまではユウカにとって織り込み済みの出来事だった。

サブマシンガンによる射撃は囮。

ユウカの狙いはたった一つ。

 

(あの子を撃てないなら殴り飛ばして意識を奪うッ!)

 

銃の攻撃力が高すぎて使えないなら、それよりも威力が低い手段で彼女を攻撃すれば良い。

おあつらえ向きに彼女の身体は剥き出し。弾丸を弾く鎧は彼女の身体を何一つ守っていない。

 

ユウカがヘイローを持たない彼女目掛けて撃つのを躊躇した最大の原因であり、この兵器の設計自体が相手がそうやって迷う事を前提とし、ためらった隙に兵器の破壊力を叩き付ける為、敢えて操縦者の身体を剥き出しにさせたのではと開発者の陰湿さを恨んだユウカだったが、見方を変えればあの兵器を無理に破壊する必要は無いと言う事であり、逆にありがたさすら覚えられる。

 

どうにかして敵の攻撃を全て回避して彼女の下まで辿り着ければその瞬間勝利が決定する。

これはそういう戦闘なのだと、ユウカは認識した。

とは言え、その課題を達成するための壁は未だ高い。

 

ユウカは近接戦闘に持ち込むしか勝ち目が無い。

だがその際に間違いなく飛んでくるであろう巨大な殴打用の腕に対して有効的な防御策が無い。

今は無策のまま突っ込んでいるに等しい状況だった。

 

戦況と言う名の向かい風はさらに強くユウカに吹き付ける。

互いの距離は縮まって行く一方。ユウカの中で具体的な策は浮かんでいない。

もう直に腕の射程範囲に入る。早く何かを思いつかなければならない。

 

だがそれよりも先に。

 

前面部から生えている複数の銃口から壁と見紛うような量の弾幕がユウカ目掛けて放たれ始める。

避けられる量では、無かった。

 

「ぐッッッッ!?」

 

全身に銃弾が直撃する。

それはユウカに無視出来ないダメージを与えるばかりか、動きを止めることさえ強要する。

身体が、絶えず押し寄せる弾幕によって押し戻された。

 

その後に待っている物は何かと言われれば簡単だった。

マシンガンを撃つ最中に発射された数十に及ぶミサイルの第二派が、ユウカを襲う。

真上から、正面から。

 

「~~~~~~~~~ッッ!!」

 

先程見せた無茶な前進による回避はマシンガンの弾幕により封じられた。

かと言ってこのまま黙って着弾するのを待つ訳にもいかない。

 

答えはもう、一つしか無かった。

足を止めてガチャッ! と、音を鳴らしながら自身最大の火力を出せるよう二丁のサブマシンガン。『ロジック&リーズン』を取り出し、右手と左手でそれぞれ構える。

 

マシンガンによる猛攻を己の肉体で受け止める道を選んだユウカは銃口を両方とも真上に向け。

 

「はぁああああああああああッッッッ!!」

 

飛んでくるミサイル目掛けてがむしゃらにぶっ放し始めた。

目標を定めず、腕を小さく振って銃弾を多方面にばら撒き、当たらなくて当然、当たれば儲けの質ではなく量でミサイルを撃墜するスタイルをユウカは披露する。

 

作戦がある程度の成果を出しているのか、上空でいくつかの爆発音が響く。

だがユウカは一瞬もその視線を上に向けない。

どのミサイルを撃墜したのかを、彼女は一切情報に入れない。

ユウカの目線は正面から飛んでくるミサイルのみを見据えていた。

飛来する速度から彼女は自分に着弾するまでの時間を精密に計算する。

そこのみに意識を集中させる。

 

計算結果を、ユウカは僅か一秒弱で叩き出した。

着弾までジャスト二秒であると、正確な時間を算出する。

 

得られた時間を、ユウカは最大限活用する。

一秒。変わらずユウカは前方のミサイルの飛行ルートをひたすら目で追い続けながらひたすら上から飛んでくるミサイルを量で迎撃する。

そして着弾までの猶予が一秒を切った瞬間、ユウカは目線を上に向け。銃口を前に向けて正面から飛んでくるミサイルの撃墜を始めた。

 

どのルートで飛来しているかは見て覚えた。

後は予測した場所に銃弾を置いておくだけ。

これこそが早瀬ユウカの真骨頂。

弾丸やミサイルの着弾地点を計算で導き、どう避けるのが最適なのかを理論を用いて予測する。

 

前方から計算通りの爆発が響く。

故にユウカは意識を前に割かない。

ユウカは計算結果を算出していない上方向に意識を向ける。

確認されたミサイルの数は、八。前方から飛んで来ているのを含めると、十七。

どれだけ撃墜したのかは不明だが、それを抜きにしても飛んで来るミサイルの量は一人の少女に向けるにしてはあまりにも度が過ぎている程に多い。

 

それでもユウカの表情に絶望は無かった。

計算が告げる。結果が告げる。

 

(……いけるッ!!)

 

と。

 

着弾までの時間がゼロになる。

答え合わせの時間が始まる。

 

瞬間、ユウカは銃撃を止め、身体を真後ろに三歩後退させた。

撃ち漏らしたミサイルが飛来し、巨大な爆発が連鎖を始めたのはその直後からだった。

耳を覆っても突き抜けるような轟音が連続して響き、全身を覆い尽くす程に爆炎が昇る。

 

普通ならこの時点で戦闘終了。

ミサイルの波状攻撃に晒された少女は成す術も無く気絶。

 

但し。

 

「命中を確認しました。と、ミサカ一四五一号は……ッ!?」

 

ユウカが出した計算結果は現象を裏切らない。

導き出した答えは、正確に彼女を窮地から救い出す。

ミサイルの着弾する範囲状で最も攻撃から逃れられる場所はどこかを完璧に突き止めたユウカは、自身に被る被害を最小限のダメージに抑えつつ、再びミサカ一四五一号目掛けて走り出す。

 

マシンガンによる掃射は先のミサイルによる爆発で決着が付いたと勘違いしてくれた影響か止まっている。

戸惑っている様子から後数秒は猶予があるとユウカは見込む。

 

捕食者(プレデター)と名称されている駆動鎧(パワードスーツ)までの距離は二十メートル強。

 

攻撃が再開されるまでには、充分到達可能な距離だった。

 

「お、おおぉおおおおおッッ!!」

 

全力で駆けて駆動鎧(パワードスーツ)との距離を一気に詰めたユウカは、ある地点で強くコンクリートを踏み抜き力の限り跳躍する。

ダンッッ!! と、踏み抜く音すら聞こえてきそうな程に力強く飛んだユウカは、駆動鎧(パワードスーツ)から伸びる無数のチューブに局部を覆われている全裸の少女の上空を取る。

 

目標を、完全に捉える。

ミサカ一四五一号を射程圏内に入れたユウカは、右手に持つサブマシンガンを捨て、代わりに拳を強く握った。

 

これで決める。

強く決意するユウカは、咆哮を上げながら拳をゆっくりと振りかぶった。

前進しながら落下を始めるユウカは、意識を奪う一撃を問答無用で叩き込まんと、ミサカ一四五一号の顔面目掛けて握った拳を真っ直ぐに振り下ろす。

 

その、刹那。

 

ミサカ一四五一号の前髪が青白く光った。

それが何なのか、ユウカに考える余裕は一瞬たりとも与えられなかった。

ユウカにとって理解の及ばぬ力。青白い電撃の槍がミサカ一四五一号から生成され、彼女を真正面から殴り飛ばそうとしていたユウカの腹部を文字通り貫く。

 

「ッッッッッ!?」

 

瞬間、彼女の全身がガチッッ!! と、突然石になったかのように硬直し、ユウカは全身に痺れを覚えた。

だが腹部から背中へと突き抜けた衝撃は、痺れた。と言う一言で説明できる痛みでは無い。

 

否。痛かったかどうかすら、まともに判断できなかった。

 

「あぐっっっ!!」

 

ドサッ! と、電撃の槍によって勢いを完全に殺されたユウカは地面に背中を強く打ち付けながら落下する。

 

動きを完全に殺された状態で地面に撃ち落されたユウカは背中を打った痛みと、全身に残るビリビリとした痺れに一秒程動けず、苦悶の表情を浮かべる時間を過ごした。

 

そしてそれが、ユウカに決定的な終わりを教える。

敵の眼前で倒れ、あまつさえ動かなかった。

逃げられなかった。

 

それが如何に危険な状況を引き起こすかを。

 

「あ、っっっ……!?」

 

ユウカは、己の身体で知る事となる。

 

捕食者(プレデター)の弱点が操縦者である事は自明の理。そしてそんな判り切った弱点に対策を施すのは当然のことです。と、ミサカ一四五一号は浅はかな行動に走った早瀬ユウカを咎めます」

 

ゴギンッッッ!! と、捕食者(プレデター)の背中から伸びる殴打用の腕が、倒れたユウカ目掛けて容赦なく振り下ろされた。

 

数トンの重量を誇る巨大な腕が、数十トンにも及ぶ衝撃を纏わせてユウカの腹部に叩き付けられる。

 

「がふッッッ!?」

 

ゴポッッと、内臓を力任せに押し潰されたユウカの口から多量の血が吐き出された。

ガシャ……と、左手に握っていた銃を手放す音と同時に全身の骨と臓物が悲鳴を上げ、彼女の目が強く見開かれる。

 

この一撃により勝負は決したように思える物だったが、ミサカ一四五一号はさらに彼女に追撃を仕掛ける。

捕食者(プレデター)の背中から伸びているもう一つの殴打用の腕が、意識を失う直前のユウカの右側面に全力で裏拳を叩き付けられる。

 

「あッッがッッッ!?」

 

直後。グルンとユウカの視点が回転した。

視界が二点、三点と目まぐるしく上下し、身体が何度も地面をバウンドしながら数十メートル吹き飛ばされる。

右脇腹。左脛。右肩に三ヶ所の骨と筋、そして肉が引き千切られる痛みを覚えながら地面に激突する度に多量の血をコンクリートにこびり付かせ、最後はゴロゴロと転がる事で発生した摩擦熱が彼女の身体を蝕み、彼女の身体にまた一つ傷を生み出す。

 

ようやく止まることが出来た時にはもう、無傷な部分は何処にも存在していない。

どこもかしこもが、傷と血によって支配されている。

 

その様子は、痛々しいの一言で片付けられる物では無かった。

 

「ぅ……ぁ……」

 

側頭部からドクドクと血が溢れ、右半身に強い衝撃を受けたユウカの全身から力が抜ける。

瞳が映す世界は朧気で、意識の喪失まであと一歩と言う所をユウカはギリギリに踏み留まる。

しかしそれが今できる精一杯だった。

起き上がる事はおろか身体の向きを変える事も出来ず、ピクピクと全身を小刻みに痙攣させ続ける。

 

今にも消えそうな意識の中、ユウカの中に一つの結論が出された。

 

(勝……てな……い……)

 

あの少女に勝てない。

少女が操る兵器を壊せない。

全力を出した、自分に出来る最大限のパフォーマンスを発揮した。

だけど届かなかった。

全て叩き潰された。

 

完敗であると、ユウカは痛感する。

それなのに。

 

「ぐ、ぅ……ぅ…………」

 

のそりと、彼女の左手が地面を掴む。

それは、起き上がろうとする意思に他ならなかった。

 

痛みに、苦しみに、辛さに、必死に耐えながらユウカはボロボロの身体をゆっくりゆっくりと、起き上がるのもままならない身体に鞭打ちながら静かに立ち上がらせる。

 

肉体はとっくに限界を超えている事を訴え続けている。

立ち上がるだけでも全身がバラバラになりそうな痛みが走る。

それでもユウカの意思は折れない・

 

圧倒的力を前にして、その力を身体で受けて尚、彼女はこんな所で終わってたまるか意地で身体を動かそうと力を入れる。

 

しかし意志に反して身体が付いて来ない。

受けたダメージはあまりにも甚大で、歩き出そうとした瞬間、限界を迎えたようにガクンと膝が崩れる。

力尽きたかのように動かなくなる身体を前にユウカは歯を食い縛り、もう一度命を取り戻させんと力を入れる。

 

その意思に諦観は微塵も無い。

彼女の瞳は、全く死んでいない。

 

「う、ぐっっぐ、ぅうううううううッッ!! ま……だ……まだッッ!!」

 

手放しそうになる意識を必死に繋ぎ止め、ユウカは膝を震わせながらもう一度立ち上がった。

左手で激痛を訴える身体の右側を押さえながらも、両足で立ち上がる事に成功する。

 

「何故立ち上がるのでしょうかと、ミサカ一四五一号は武器も無いのに戦う意思を見せる早瀬ユウカの無謀さに呆れを覚えます」

 

うるさい。と、ミサカ一四五一号の呆れた様子に対しユウカは声に出さず反論する。

立ち上がる理由なんて、たった一つだ。

 

(せん……せいに……会う為に……決まってる……じゃない……ッ!)

 

戦いを終わらせて、先生に会う。

それ以外の理由なんてどこにあるのだろうか。

 

ユウカは圧倒的自信を以て心の中で宣言する。

きっと今、ここにいるのが自分じゃなくて。

才羽ミドリだったとして、空崎ヒナだったとして、黒舘ハルナだったとして。

 

彼女達もきっと、同じ理由で立ち上がっている。

そうして彼女達も、自分と同じようなことをするのだ。

 

ゆっくりと、ジャケットの裏にしまっていた一枚のカードを左手で取り出す。

今にも朽ちそうなカードを持つユウカは、少しだけ頬を緩めた。

 

あれだけの攻撃を受けて、あれだけの銃撃を受けて、あまつさえミサイルの爆撃さえこの身体は受けたのにこのボロボロのカードは欠ける事無く存在し続けている。

それが少しおかしくて、しかしそれ以上にその現象そのものがこのカードの特異性を示す。

 

使わない限りは壊れない。

逆に言えば、使えば壊れる。

 

一度きりの、力。

そしてカードは今、まさに使い時。

勝てない敵を前に使わずして、いつ使う。

 

暗にそう語るカードを最後に眺めた後、ユウカはゆっくりと前を見据えた後、息を一つ入れ。

 

「ッッッ!!」

 

グシャッッ!! と、ユウカはカードを勢い良く左手で握り潰した。

 

砕け散ったカードの欠片が、ユウカの掌からまるで砂のように零れる。

そのまま左手を開けば、文字通り粉々となった先程までカードの形状を保っていた物が、風に乗ってミレニアムへと撒かれる。

 

「? カードを握り潰して何がしたいのですか? と、ミサカ一四五一号は素朴な疑問を口にします」

 

ユウカの奇行を前にしたミサカ一四五一号が怪訝そうに眉を顰める。

その質問にユウカは答えを持ち合わせない。

何故なら彼女自身、何が起きるのか分かっていない。

 

ユウカはカードが教えてくれた『使用法』を行っただけ。

これから何が起きるのか、彼女自身予想すらついていない。

 

塵となったカードが、ユウカの掌から零れ落ちていく。

そうして砕けたカードの欠片。その最後の一片が彼女の掌から零れ落ちた。

 

瞬間、まるで始まりを示す様に。

 

 

ブシュッッ!! と、言う音と共にユウカの額が縦に割れた。

 

 

「ッッ!?」

 

割れた額から溢れる血によって彼女の視界が真紅に染まる。

到底耐えられ無い痛みがユウカの脳を突き刺し始めたのは、多量の血が地面にこびり付いてからの事だった。

 

「ぎッッ!?」

 

想像を絶する痛みに冷や汗がドッと噴き出る中、咄嗟に破裂した部分を左手で抑える。

ドクドクと手を伝って滴る血量は、決して小さくない傷が発生していることをユウカに教えるが、肝心の彼女はその事実に困惑する事すら出来ない。

額を通る血管が内側から破裂し、皮膚を切り裂いて吹き出したのだと推察するのも不可能な中、ユウカはひたすら痛みをなるべく緩和させんと出血している箇所を抑えている左手の力を強める。

 

直後、額を抑えている左腕。その二の腕付近の血管が突然はち切れ、文字通り血飛沫が舞った。

 

「あぎ、うぐ、あっっ!?」

 

手の甲。

肘。

二の腕。

 

あらゆる場所の血管がまるで肉体の負荷に耐え切れないかのように千切れ、皮膚を切り裂く。

そしてそれは左腕だけに留まらない。

 

右腕や両足も同様。

腹部や背中も同様なのか、いつの間にか制服のあらゆる場所から円形状に血がじんわりと広がり、やがて服の裾から吸収しきれなくなった血がポタポタと地面に落ち始める。

 

「ッッッ!! ッッッァ…………ッ! ~~~~~~ッッ!!」

 

全身をナイフで深く抉り取り、切り刻まれているような痛みは、声を上げる事すら不可能の地獄だった。

一秒経過するごとに五、六箇所から出血が発生し、激痛を訴える場所が増える。

やがて肌色が血に染まり、最早血で濡れていない場所を探すのが困難になる。

文字通り全身の血管が皮膚を突き破る勢いで破裂し、想像を絶する痛みを味わう事となったユウカは、とうとう立つ事も出来なくなったのか、敵が目の前にいるにもかかわらず、膝を突き、喉を震わす。

 

「ぐッッ!! ぃッッッッ!!」

 

致命傷。

そう言っても差し支えない出血。

なのにユウカは意識を保ち続け、襲い来る激痛に歯を食い縛る。

 

ここで気を失う訳には行かない。

なんとかして立ち上がらなければならない。

痛みを耐え抜かなければならない。

 

ここで痛みに敗北して気を失うのは簡単だろう。

けれどその気絶から目を覚ました後、きっと自分は二度と先生と会えなくなる。

連中の目的が先生と自分を引き離す事であるならば、この戦いに自分は負けてはならない。

負ける訳には、絶対にいかない。

 

だから耐える。

耐える。

 

今にも死にそうな痛みでも。

死んだ方が楽だと思えるような痛みでも。

 

耐えて。

耐えて。

耐え抜いて。

 

起き上がって。

あの機体と戦って。

あの少女に勝って。

 

そして。そして。

また、先生と、一緒に……。

 

純粋な気持ちを胸に宿したままユウカは出血が終わるのを待つ。

どれだけ致命傷であっても、その致命傷にこの瞬間だけは負けてはならないと生命力をどこまでも燃やす。

今だけは耐えるように。

この戦いが終わるまでは生きられるように。

先生に、もう一度会えるまではと気力を燃やして耐え続ける。

 

だが。

だが。

だが。

 

無惨にも。

悲惨にも。

残酷にも。

 

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ドシュッッッ!! 

 

 

と、彼女との戦いで受けた傷、そしてカードを砕いてから生まれた傷全てが大きく開き、ユウカの全身を文字通り引き裂く。

 

その様相は、『能力者』が『魔術』を行使した時の現象と酷似していた。

 

「あがっっ! ぎっっ!!」

 

それが。トドメだった。

世界が焼き切れる程の熱がユウカを包む。

痛みという、耐え難い現実が叩き付けられる。

 

「が、ああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

まるで断末魔の如き甲高い悲鳴が、ミレニアム全域に轟く程の勢いで迸った。

許容量を超えた痛みは声を殺し、限界を超越した痛みは意思に関係無く声を放出させる。

 

身体を仰け反らせ、ユウカが座る地面一帯が夥しい程の血に塗れ、そして。

 

 

 

 

 

 

バギンッッ!! と、ユウカのヘイローが粉々に砕け散る音が響いた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

ユウカが倒れたのと同時刻。

押し潰されそうな音圧が上から落ちてくる中、一ノ瀬アスナは気絶したモモイを連れてある少女の下へと駆け寄っていた。

 

現在、彼女は何も音を拾う事が出来ない。

意識の無いモモイの耳を守る為に両手を使った結果、彼女の鼓膜は長時間音圧に晒され、結果ブチリと音を立てて破れた。

 

しかし彼女はそんな些細な事はどうでも良いとばかりに、見晴らしの良い道路の上で血塗れで倒れている少女。才羽ミドリの痛ましい姿に表情を青くする。

 

「い、妹ちゃん……し、っか……り……ッ!!」

 

ヘイローが消滅している彼女に声を掛けるが当然返事は無い。

 

何をどうしたらそうなるのか、衣服の全てを真っ赤に染め上げ、全身から血を吹き出して倒れている彼女の右手には、粉々となったカードらしき物の破片が散らばっている。

 

理解が全く及ばなかった。

彼女の傷は明らかにヘリに攻撃されて出来た物では無い。

とは言え、現状彼女がダメージを負う理由がヘリからの攻撃以外に考えられない。

 

「なんとか……しな……きゃ……っ!」

 

ヘリからは今も威圧感が放たれている。

そればかりか羽を複数方向に展開しており、いつでも攻撃出来る様準備を進めている。

 

加えて羽の一本がアスナの方に。より正確にはミドリの方に向けられている。

気絶し、生きているかどうか曖昧な状態のミドリに、追い打ちをかけんとしている様子が確認出来る。

 

早急に彼女を避難させなければならない。

しかし現在、アスナはモモイを庇っている。

 

抱き抱えて耳を塞ぎ、モモイが受けるダメージを極力最小限に抑えている今の状態でミドリをさらに動かすのはとても無理な話。

そもそも、この状態の彼女を無暗に動かして良いのかすらアスナには分からない。

ここまで危険な状態に陥っている少女をアスナは見かけた事が無い。

 

だから何をするのが正解なのか分からなかった。

けれど、何をしたら不正解なのかは分かる。

才羽ミドリを放置する。

それだけは絶対にやっちゃダメな事だと勘が告げる。

 

けれど彼女を連れ出す事が出来ない。

彼女を助け出そうとした瞬間から少なからずモモイに被害が出る。

モモイは現状アスナによって耳を保護されている。

アスナの腕は二本しかない以上、ミドリに手を伸ばした場合、モモイの保護は外される。

音に晒されたモモイはどうなるか、簡単だ。鼓膜が破かれ激痛に晒される。

今の自分と同じ痛みを味わい始める。

 

気力と胆力でアスナは耐えているが、これを気絶したモモイが味わった時、発狂せずにいられるかと言われれば疑問が残る。

しかしそれはミドリも同じ。否、怪我の度合いを見れば明らかにミドリの方が重傷。

今すぐに守らなければならないのはミドリの方なのは明白。

 

両方を庇うのは無理。

片方だけしか守れない。

ミドリは生きているのか死んでいるのかすら分からない程に重傷。今すぐにでも手を施さなければならないものの、何をすれば手が施せるのかの知識をアスナは持ち合わせていない。

 

その場から動かさず耳だけを塞いであげるのが正解に見えるが、そんな悠長な事をしていたらヘリによってアスナとミドリ、そしてモモイをまとめて銃殺されて終わるのは明らか。その選択は正しくない。

 

モモイの保護を解き、空いた両手でミドリを抱えてこの場を離脱する。

ミドリの容態的にそれが正しいかどうかはともかく、全員が生存するにはそれしか道は残っていない。

 

「~~~~~~~ッッ!! ごめんッ!! ちょっとだけ耐えてッッ!!」

 

ミドリを動かしてしまう事。

モモイを音による破壊に晒す事。

 

両者に謝罪を述べてアスナはモモイから手を離し、肩で彼女を担ぐと同時、ミドリを抱き抱えようと地面と彼女の間に手を差し込む。

瞬間、両手にミドリの血がベッタリとこびり付いた。

ベチャッと言うイヤな音と、真っ赤になってしまっている服の色が、吸い込んだ血液の量を無言で知らしめ、アスナの顔が歪む。

 

想像を絶する出血をしている。

これではもう無理かもしれない。

 

一瞬そんな考えが過る中、そんな訳ないとアスナはその思考を振り切るように首を一度振り、彼女を持ち上げようと力を入れる。

その直前、アスナは『六枚羽』の動向を見る為一瞬上空に視線を配り。

 

数十のミサイルが降り注いできているのを目視した。

 

「ッッッッッ!?」

 

鼓膜が破れ音を拾えない状態となっていたアスナは気付けなかった。

ミサイルの発射音を、聞き取れなかった。

 

やばい。と咄嗟に思うが、思うだけだった。

打破する手段がどこにも無かった。

 

逃げられない。

隠れられない。

庇い切れる量ではない。

銃を持っていない今、最低限の迎撃すら出来ない。

 

何も出来ないまま、アスナは今にも着弾せんと迫るミサイルを目で追い続ける。

 

なんとかしないと。

この二人だけでも守らないと。

絶体絶命の状況の中でも、アスナは必死に何か状況をひっくり返せるような物は無いかと頭を回す。

だがそんな彼女の努力を嘲笑う様にミサイルはアスナ達目掛けて飛来し。

 

巨大な爆発音と共に少女達を炎の中に包み込んだ。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

ミサカ一四五一号は目の前で起きた現象に対し戸惑いを見せていた。

 

「自滅……でしょうか。と、ミサカ一四五一号は早瀬ユウカの出血について考察を述べます」

 

彼女が見つめる先には、突然大量の血を吹き出して叫び声を轟かせた後、倒れ伏してピクリとも動かなくなった早瀬ユウカがいる。

 

ヘイローは完全に消失している事から、彼女は意識を失ったフリをしている訳では無いのは確実。

間違いなく気絶していると、ミサカ一四五一号は断定した。

 

だからこそミサカ一四五一号は気掛かりだった。

早瀬ユウカはどうしてそのような事を行ったのか。だ。

 

ユウカに散々攻撃を仕掛けたミサカ一四五一号だが、ユウカの出血は彼女操る生体接続ユニット、捕食者(プレデター)が引き起こした物では無い。

 

「毒を服用した可能性があります。と、ミサカ一四五一号は彼女の突飛な行動の原因を推察します」

 

服用後即座に全身から血が噴き出るような毒がこの世にあるのかどうかはさておいて、ミサカ一四五一号はこの状況の中で最も可能性が高そうな理論を展開する。

 

早瀬ユウカの捕獲、ないしは二度と戦場に立てない程の再起不能に追い込む。

それがミサカ一四五一号が下された命令。

 

それを見抜き、そんなのはイヤだと自決を図る。あり得ない話では無い。

ユウカの出血量は酷く、放って置けばこのまま失血死してもおかしくないだろう。

仮に本当にもしそうであったとするならば、彼女の作戦は成功していると言っても過言では無い。

 

少なくとも、敵の手に己が落ちる事を彼女は死によって回避している。

 

「……捕獲します。と、ミサカ一四五一号は既に手遅れである事を半ば認識しつつ、下された命令に従って行動を始めます」

 

地面を滑り、捕食者(プレデター)が音も無くユウカが倒れている場所へ近づくと、背中から伸びる殴打用の腕をユウカ目掛けて伸ばす。

 

彼女を拾い上げた後、ミレニアムから離脱。

それで終了。

その、筈だった。

筈、なのに。

拾い上げようとした瞬間。

腕の巨体さで彼女の身体が隠れた瞬間。

 

ターゲットである早瀬ユウカの姿が消えた。

 

「いな……い……!?」

 

直前まで確かに姿を確認出来ていた血塗れの少女は、どういう訳か姿を消した。

不可解だった。

彼女が今の今までここで気絶していた証拠はおぞましい程の血だまりと消えていたヘイローが語っているのに、肝心の本人がどこにもいない。

 

「どういう事でしょうか、と、ミサカ一四五一号は詳細を把握できない事態に驚きを露わにします」

「こう言う、事よ」

「ッ!?」

 

声が聞こえて来たのは、上方からだった。

引っ張られるようにミサカ一四五一号は声がした方に目を向け。

 

今度こそ、ミサカ一四五一号は息を呑んだ。

理解出来なかった。

何が起きているのかを、頭の中で立証出来なかった。

ミサカ一四五一号が見上げるのは、ビルの外壁、三階部分。

 

そこに彼女は、()()()()は壁の表面を足場にして当たり前のように立っていた。

九十度の壁に両足を付け、さも自然とその場に佇みながらミサカを見下ろしている。

 

その事実も到底許容し難い物であるが、今、ミサカが目にしている光景はその衝撃を遥かに凌ぐ。

 

(意識があるのに、ヘイローが消失したまま……? と、ミサカ一四五一号は学習した知識との齟齬に言葉を失ったまま考察を試みます)

 

あり得ない現象だった。

キヴォトスで生まれた生徒はヘイローを宿す。

そのヘイローは個人の成長に合わせて変化を遂げ、やがて唯一無二の形となる。

少女の頭に宿ったヘイローは、少女が覚醒し続けている限り世界に顕現し続ける。

 

その法則に例外は存在しない。

例外があるとすれば、最初からヘイローを持たない、自分のような存在のみ。

 

そう、学習した。

そう学習して、世界は確かにその通りに動いていた。

 

なのに。

それなのに。

 

今、ビルの上で見下ろす少女には本来ある筈のヘイローが消失している。

意識を保ったまま、彼女達の存在意義を消滅させている。

 

まるで。

これではまるで。

存在が置き換わっているみたいではないか。

早瀬ユウカである事は崩さぬまま、別の物になっているみたいではないか。

 

あり得ない。

あり得ない現象が、目の前で発生している。

それはもしかすれば、何もかもが根本から覆ってしまうような異常の様に思えた。

この世界を構成する要素。その何もかもが。

 

「成程、段々と理解して来たわ……ッ! これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ミサカがひたすら困惑し続けている中、額から一粒の汗を流し驚愕するミサカに話しかけているのとは違う。自分に語り掛けるかのように優香は言葉を零す。

彼女の口調すら、変化している様にミサカは思えた。

 

グイッッ! と、ミサカの戸惑いに対し何の解も出さず優香は目元付近の血を手の甲で拭う。

そして、ミサカに対し鋭い目を向けた後。

 

「行くわよッ! ここからが本番!!」

 

踏み込む動作すらせず、引き寄せられるように恐るべき速度で優香は捕食者(プレデター)へ飛び込み始める。

 

無謀とも言える突撃を始めた優香の前髪からは、青白い電流が迸っていた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

轟音が炸裂する。

この場にいる自分と、瀕死となった才羽ミドリと、気絶しているモモイを始末するかのように降り注ぐミサイルが炸裂した際に発した爆発音と衝撃がアスナを襲う。

 

しかし。

ミサイルは彼女達に直撃する寸前、突然分解を起こした。

アスナが耳にしたのは、上空で発生した爆発音だった。

 

「あ、え…………?」

 

その音を聞く一ノ瀬アスナは、ただひたすら困惑する

目の前で起きている現象を、上手く咀嚼できずにいた。

 

しかしそれは一般的に考えれば当然だと言える。

その現象は、受け入れるにはあまりに現実離れしすぎていた。

 

アスナの目の前には、一人の少女が右拳を高々と掲げながら立っていた。

しかし、その少女は起き上がれる筈が無い少女だった。

全身を切り刻まれたかのように至る所から出血し、ヘイローを消失させて気絶していた少女だった。

 

どう言う事。と、アスナは改めて理解の及ばぬ現状に混乱する。

どうして少女にあるべき筈のヘイローが消えているのか。

どうしてあのボロボロの身体で立ち上がれるのか。

『どうして拳を掲げただけでミサイルを全て破壊出来たのか』

爆風も、爆炎も、間近で爆発したにも関わらずどういう訳か全て上方に押し上げられている。

 

何もかもが、理解の域を超えている。

故に全く付いていけない。

 

今、この場で何が起きているのだろうか。

 

「はぁ……はぁ……ッッ!!」

 

目の前で立つ血だらけの少女、才羽ミドリから荒い息が零れる。

その声はどう聴いても限界寸前。

いつ倒れてもおかしくない程に追い詰められた者の声。

 

なのに。

なのに。

 

「まず……は……この音が…………邪魔ッッ…………!!!!!!」

 

ミドリの声には力が籠っていた。

ボロボロの身体を意にも介さぬように彼女は掲げた腕をもう一度強く握り、腰辺りまで引く。

 

同時。

 

「こん…………じょぉぉおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 

()()()が咆哮を上げ、もう一度拳を強く突き上げる。

 

瞬間、彼女の拳から拳圧のような何かが放たれ。

上空数十メートルを飛行している『六枚羽』の音響兵器に直撃した。

 

 

 











ブルアカのイラストをPixivやX(旧ツイッター)で見かける度、この作品こんな展開で大丈夫かな? と最近思うようになります。

少なくとも可愛らしい少女に対してする仕打ちではない。

ですが世の中には私みたいな物理的な痛みを伴ったドシリアスSSが好物な人もいると思ってます。一つぐらいこういう物があっても良いと思います。


と言う訳で更新です。
先週のお話はこの話を一纏めにして投稿する予定でしたが、思いの外両者とも長くなったので分割する事にしました。

ユウカ、ミドリ共にボロボロとなっておりますし、カードの方向性も明確になりました。
え、これ残り五枚もあるんですか? ヤバいよ……ヤバいよ……。


ユウカちゃん。善戦虚しくミサカ戦で敗北してしまいましたがこれは彼女がミサカを殺さないように縛りプレイを己に課したのが敗因になってます。普通に殺す前提で戦えば案外どうにか出来た可能性は充分あります。

と言うか普通にやってる事がユウカも化け物なので……。
EXスキルを落とし込むとこういう事やってるんだろうなって感じです。

それぞれ逆転の糸口が見えた所で次回に続きます。
本格的に終わりの気配が見えてきました。

次回は誰がメインを張るんでしょうかね。



とは言えミサカとユウカが殺し合っている場面を一方さんが目撃したら発狂して死んでもおかしく無いなと思いました、まる。
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