とある箱庭の一方通行   作:スプライター

54 / 76
『先生』としての仕事

 

 

 

まず、事の始まりから先生に説明します。

震える声でアヤネがポツポツと語り始める。

 

一方通行に助けを求めてから、今に至るまでの話を。

 

何故彼女達がこの公園を対策委員会の部室としているのかを。

その始まりは、現在囚われの身となっている少女について聞く所からだった。

 

 

 

小鳥遊ホシノ。

 

 

 

アビドス廃校対策委員会の委員長にして、実質的なアビドス高校の生徒会長を務めていた高校三年生。

 

彼女を含めた五人はアビドスが長年抱え込む借金問題を共に解決せんと藻掻き続け、苦しみと隣り合わせながらも必死に必死に毎日を生き続けていた。

 

九兆を超える借金を返済するべく日々悪戦苦闘しながらも、学生らしい学生生活を、アビドスを取り戻そうとしていた。

だが。事態は急変した。

 

そもそもの発端は、彼女達アビドス対策委員会が発足する前、シロコやホシノ達が入学する以前の生徒会がアビドスの土地をカイザーに売り渡していた事実を書類調査によって発覚したことが始まりだった。

 

だがその頃から既にアビドスの土地は砂漠化しており、九兆以上にもなる借金の足しすらならない値段しか付かなかった。

 

利子すら返しきれない額にしかならなかったアビドスの土地を、生徒会は返済の為に売り続けた。

最初は一部だけの売却だったが、気が付けばほぼ全ての土地をカイザーに売り渡していた。

 

 

でも。

 

 

それだけならばまだ悲劇で済んだ話だったかもしれない。

最悪が加速したのは、その後。

 

アビドスが借金している相手もまた、カイザー系列の企業であったことが発覚してからだった。

 

貸し付けた相手も、甘い言葉を囁いてきた相手も同じ相手だった。

手に負えない借金を押し付け、その借金の利子に追われ、土地を売り、しかし払えたのは利子だけ。

 

いつか終わりが来るやり繰りを、延々と延々と続けた。

そしてホシノが入学した時には、ほぼ全てのアビドスの土地がカイザーの手に落ちていた。

 

正式なアビドスの土地として残されていたのは、現在アビドス廃校対策委員会が通っているアビドス別館周辺のみ。

 

カイザーの目的が金ではなく土地であったこと、より正確には別館があるこの場所を奪うことが目的であると知ったシロコ達はその事実に辿り付いたのと同日、カイザーがアビドスの僻地にあるこの砂漠異変が起きる前から砂漠だった場所、『アビドス砂漠』に拠点を置いている情報を掴んだ。

 

全てが終わりへと転がったのは、ここからだった。

 

魔が差した。という言葉で表現するにはあまりにも彼女達が瀕している状況は過酷過ぎた。

加えて、冷静な判断を最後まで下せる存在と、彼女達を支えられる存在がいなかったのが災いした。

 

だから、アビドス砂漠に乗り込み真相を確かめるのとあわよくば借金を帳消しにすべくカイザーに攻撃を仕掛けたのも、責められる話でも糾弾される話でも無い。

 

それでも、結果は無慈悲にも突きつけられる。

誰に対しても、平等に、容赦なく。

彼女達は最後まで見誤っていたのだ。敵は企業であり、自分達は学生であることを。

 

報復は、カイザーに攻撃してすぐ始まった。

 

変動金利を約三千パーセント引き上げ。

それに伴う、利子の支払い額の爆発的上昇。

 

その額、およそ毎月九百億。

 

とても払える額では無かった。

武力で解決しようにも、兵士や兵器の物量差に彼女達は無残にも押し潰された。

 

全員無事に学校へ帰って来れたのは、与えられた温情からに過ぎない。

だが、少女達は無事でも訪れた結果は変わらない。

 

利子の支払いに毎月九百億。

 

どう足掻いても、払えない金額だった。

 

「ホシノ先輩が私達の前から姿を消したのは今から八日程前のこと、カイザーに襲撃をかけた、翌日のことです」

 

小鳥遊ホシノが学園を去った顛末をアヤネが語り、一通の手紙を彼に差し出す。

手紙を受け取った一方通行はゆっくりと手紙を開き、そこに書かれている彼女の筆跡を目で追いかける。

 

「借金の大半を肩代わり、利子も以前に戻すのと引き換えに私はカイザーに身を委ねる……か。あのクソ野郎もここまでは一枚噛ンでたって訳だ」

 

以前黒服から聞いた情報と、ある程度合致したことに一方通行は僅かに手に力を込めた。

 

黒服。

まず間違いなくカイザーと手を組み、知恵を貸していた存在。

 

カイザーの狙いがアビドスの土地だとするならば、黒服の狙いは小鳥遊ホシノの身柄。

互いに最終目的が違い、かつ目的達成の道のりが同じならば手を組まない理由が無い。

 

恐らく、話を持ちかけたのは黒服の方からだろう。

あれは、そういう男だ。

 

(てことは、コイツ等が掴んだカイザーがアビドス砂漠で拠点を築いてるって情報も意図的に黒服が流しやがったな……!! 追い詰めに追い詰められたコイツ等なら間違いなく来るだろうと予想の上で……!!!)

 

二手も三手も先を読んで行動しただろうことは想像に難くない。

悪意の塊のようなやり口に気付かぬまま、ホシノ達は黒服の思惑通りまんまと踊らされてしまった。

 

そして、ホシノは自身の身柄を明け渡した。

アビドスがこれで、助かると信じて。

 

「けど、ホシノ先輩が身柄を引き渡すのも含めて全てが罠でした」

 

アビドス高校に残っていた唯一の生徒会の一員であるホシノが学園を去った瞬間から、アビドス高校は高校と言う体裁を失った。

対策委員会発足当時には既に生徒会組織は消滅しており、正式に認可を受けた部活では無かったこともあって、シロコ達対策委員会に所属していた少女達は公式には存在しない者達と同義だった。

 

ただ一人、小鳥遊ホシノを除いては。

たった一人、生徒会の副会長を務めていた彼女を除いては。

 

彼女がいたから、カイザーは大胆な手を打てなかった。

彼女がアビドスに所属しているという事実そのものが、カイザーにとって目の上のタンコブだった。

 

でも、それも崩壊した。

追い詰めて、仕向けて、誘導して、丁寧に丁寧に逃げ道を潰して。

残された最後の道として軍門に下るという、最悪の道を自ら選ばせた。

 

彼女が堕ちたのを皮切りに、カイザーは一気に攻勢を仕掛けた。

無論シロコ達は応戦したが、度重なる戦闘でまともに弾薬すら残っていなかった対策委員会は、押し寄せて来るオートマタ兵士を撃退しきれず、ものの見事に惨敗。

 

彼女達は命からがら学校から逃げ出すだけで精一杯だった。

それら全てが、相手の策略の内。

 

大人に蹂躙された、子どもの末路。

やりきれない思いが、彼の中で渦巻く。

 

どうにかしてやれなかったのかという自分自身への後悔が、延々と沸き立つ。

 

「学校を取り戻すまでの一時的な拠点として公園を選択したのは、建物を拠点にすれば建物ごと攻撃されると判断したからです。今の私達は何者でもない存在。何の気兼ねも無く攻撃出来る」

「…………十六夜が拉致されたのも、それが関係してるのか?」

 

はい。と、アヤネは悔しそうに首肯する。

 

「昨日の……公園に拠点を移してから通算六回目の襲撃で、私達はついに持ってる武器のほぼ全ての弾薬を打ち尽くしました。それでも襲撃自体はどうにか凌ぎましたが……ノノミ先輩は……先輩……は…………ッ!!」

「先陣に立ってたノノミ先輩はカイザーの一斉射撃をまともに受けて、意識を失ったところを連れ去られた……。助けようにも、私達には自分の身しか守る余裕が無かった……!!」

 

言葉を紡げなくなったアヤネを引き継ぐように、隣にいたセリカが口を開く。

か細く、かろうじて絞り出したような声で、彼女はノノミが連れ去られた結末を一方通行に語る。

 

一方通行を強く睨みつける様子を隠すことも無く披露し続けているセリカは、言葉の後、ザリっと地面を鳴らして前へ踏み出し、目と鼻の先まで詰め寄る。

 

彼女の目元は、泣き腫らしていたかのように赤みが掛かっていた。

 

「ねえ! こんなのを企んでたのとアンタ知り合いなの!? アンタが来なかったのも……アンタがそのクソ野郎と知り合いだったから!?」

 

今にも胸倉を掴み掛かむ勢いでセリカはありったけの思いを一方通行にぶつける。

ノノミが拉致されてから、否、ホシノが学校を去ってからずっと抱いていたであろう胸中を吐露し始める。

 

彼女の怒りに身を任せた怒涛の捲し立てを一方通行は目を逸らさず一字一句受け止める。

 

一方通行が置かれていた環境を彼女達が知ることもなければ、彼女達の環境を一方通行が知る由も無い。

どちらも黒服により妨害された結果であり、一方通行が詰められる話では断じて無い。

 

それでも、一方通行は非が無いことを明かさない。

そうすることに、意味が何もないからだ。

 

「………………ッッ」

「何とか言ったらどうなのよ!! 何で今更来たの!!! もう何もかも遅いのに!!!! 来るならもっと早く来てよ!!! もう何も…………無くなっちゃったじゃない………!!」

 

最後は、言葉として上手く聞き取れたかも怪しかった。

けれど、もう一度聞く必要は無い。

 

彼女達が置かれている惨状を見れば、聞かずとも分かる。

今日に至るまで、どれだけ絶望に苦しんでいたのかぐらい、彼女達の表情だけで伝わる。

 

だから。

 

「遅くなンかねェ」

 

一方通行は、その絶望を否定する。

 

「まだ終わってねェ。そうさせねェ為に、俺が来た」

 

黒服は言った。

キヴォトスを維持することが目的だと。

 

仮にこの発言が事実だとするならば、小鳥遊ホシノを手元に置きたかった理由は間違いなく彼女の存在がこの世界において重要だからだということになる。

 

彼女を使って、世界を保持しようとした。

だが、既にその目論見は崩れている。

 

小鳥遊ホシノは、より悪意を持つ何者かによってさらに深い闇へと堕とされた。

黒服がその事象は想定外とし、敵対していた一方通行に救出するよう依頼を持ちかける程にまで。

 

ミレニアム事変により黒服との関係は曖昧な物に変化した。

一方的に敵対しないと宣言したが、それが本当かどうかは一方通行は知ることは出来ない。

 

だがそれでも、

例え敵対したままであったとしても、

小鳥遊ホシノの犠牲がどうしても必要だとしても。

 

彼はそれを拒絶しなければならない。

何故ならば。

 

「俺はオマエ達の『先生』だ。『先生』なら、『生徒』を守らねェ訳にはいかねェ」

 

彼の言葉に、セリカの目が大きく開かれる。

目に宿っていた怒りが、僅かばかり消失する。

 

語った理由が、本心だったのかどうかは彼自身ですら判断出来ない。

本当はもっとごく単純に、助けたいからという子どもみたいな気持ちだったかもしれない。

もしくはさらに明快に、どこぞの誰かの真似事をしたかったからだけかもしれない。

 

それでも彼は選んだ。

自分自身で助けると言う道を選んだ。

 

どんな理由があれ、どんな建前であれ、選んだ選択が助けるという道である以上。

それは彼が、又ほんの少しだけ成長した証だ。

 

「確かに俺は事態に気付くのにあまりに時間を掛け過ぎた。結果大きく出遅れた。本来は背負わなかった筈の余計な負担がオマエ達に降りかかった。………………大事な時にここに来れなくて、悪かったな」

 

バツの悪そうな顔で、彼は謝罪の言葉を述べる。

仕組まれたこととは言え、助けに来れなかったのは事実だ。

どう言い訳しようとも、彼女達が受けた苦しみが消える筈も無い。

 

だからこそ。

 

「だからこそ遅れた分、まとめてキッチリ取り返す。反撃を始めるぞ」

 

カツン、と、彼は一歩後ろに引き、歩幅分だけセリカと距離を置くと、全員集まれ。と、アヤネ、シロコの両名を近くに呼び寄せる。

 

声は、聞こえなかった。

もう既に、彼の命令通りの行動は終わっていた。

 

アヤネ、シロコが間近に集まったのを確認した一方通行は、目線をセリカに移す。

フン……と。不服そうに彼女は視線を横に向ける。

でも、この場から去ろうとはしなかった。

 

彼女の態度から一応話を聞く気はあると解釈した一方通行は良し。と、話を進める態勢に入る。

作戦会議と、情報収集の時間が始まる。

 

「十六夜が連れ去られた場所を知ってる奴はいるか?」

「ノノミ先輩を拉致したトラックが昨日深夜、ゲヘナに進入したのをシロコちゃんのドローンが確認しています」

「本来なら撃てる仕様だけど、ドローンに銃弾を積める程私達に余裕は無かった。昨日は、追うだけで精一杯……」

 

スっと手を上げて聞き逃せない情報をアヤネが語り、シロコが戦闘用ドローンを用いていたのに追うだけに留めてしまった理由を捕捉する。

 

悔しそうに報告するシロコに、いや、十分な仕事だと一方通行は彼女のファインプレイを労う。

 

「それだけで大手柄だ。カイザーがわざわざゲヘナに行った理由は分からねェが、場所が割れてるなら話は早ェ。すぐに追える」

 

カイザーがゲヘナに赴いた理由を、敢えて彼は謎だとして、それ以上を問わないように仕向ける。

シロコ達が知ってる知っていないにかかわらず、一切彼は攫った目的を口にするつもりは無かった。

 

小鳥遊ホシノのように明確に利用価値が存在する訳でもない年頃の少女を一人捕まえてすることなんか、程度が知れてる。

生ゴミのように腐った話だが、よくある話だ。

 

もっとも一方通行が生活していた学園都市で起こる闇のお約束がここキヴォトスでも適用されるかどうかについては定かではないが、どう転んだところでろくでもない無い話になるのは確かな以上、言及するのを彼は避ける。

 

『オークション、じゃないでしょうか先生』

 

そんな折、アロナから妙に気になるワードが響いた。

誰にも声が届くことは無いとは言え人前で話しかけるなと予め言っておいたのに相変わらず話しかけて来るアロナを咎めようにも、アロナと言語による意思疎通をこの場で行う訳にもいかない一方通行は声に出さず嘆息するに留める。

 

静かにしろと言いたくても言えないのだから、もう大人しく彼女の言葉を聞き続けるしかない。

代わりにポケットに手を突っ込み、シッテムの箱をコツコツと叩く。

 

『あいた!! 痛い! 痛くないけど痛いです先生!!』

 

コツコツコツッッ!!

 

『あ、これ止めてくれないパターンですね!? 良いんですか今アロナちゃん超重要情報言ってますよ黙らせて良いんですか!!』

 

コツコツコツコツコツコツッッ!!

 

『いたたたたたたたたッ!? いや全然痛く無いですけど人差し指と中指で交互にディスプレイを連打しないで下さい! 分かりました!! ごめんなさい!! 今度から無暗に話しかけませんから!! 場所は選びますから!!』

 

脳内でやかましく響くアロナの声に一方通行はこれ以上やってもうるささが悪化するだけかと、シッテムの箱を叩くのを諦めてポケットから手を出す。

 

『うぅ……では気を取り直して。アロナちゃんの情報網ではカイザーコーポレーション主催のオークションが時折キヴォトスの各地で開かれているのをキャッチしています。内容は至って普通で、最新鋭の兵器から便利な家具と言った幅広い商品を扱ってるんですが、もしかしたらこのオークションにノノミさんが商品として持ち込まれている可能性はそれなりにあると推測します』

 

コホンと咳払いをした後に再開されたオークションの説明は全然普通では無かった。

一体何処をどう切り取ってアロナは普通と表現したのか問いたくて仕方なかったが、声に出す訳にもいかない一方通行は黙って彼女の説明を受け続ける。

 

どちらにせよ、内容は無視出来ない。

兵器や家具の販売はどうでも良い、好きにすれば良いと一方通行は切り捨てる。

 

だが、生徒の売り買いは彼の地雷だ。

人身売買が行われている可能性があるのを、彼は無視出来ない。

 

信憑性もある。

確定とまでは言い切れないが、前提で動いても良いなと思うぐらいにはアロナの情報収集能力は高い。

 

よって。

 

「ゾロゾロ全員で動いていても時間を無駄に浪費するだけだ。俺が乗って来たバイクに一人だけ乗せてゲヘナに向かう」

 

アビドスに来たばかりだが、一旦アビドスから一人を連れて離れる決断を彼は下した。

ノノミを連れて帰って来る以上本当は単独で動くのが最適なのだが、彼は楽観視をしない。

 

カイザーのオークション会場に乗り込むとして、そこで何が起きるか予想を立てている範疇では室内で戦闘が発生する可能性が非常に高い。

 

最低一人は街中でも難なく戦える生徒は必要だった。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! ノノミ先輩がゲヘナの何処にいるかも分からないのにそんな行き当たりばったりな……!!」

「心配すンな、アテはある」

 

正確には俺じゃなくてアロナだがな、と、声には出さずに付け足しながら彼はアヤネ、セリカ、シロコの三人を見渡し。

 

「砂狼、俺と一緒に来い」

 

シロコに白羽の矢を立てた。

 

彼が同行者を選ぶ際に定めた判断基準は二つ。

戦闘能力が高いのと、咄嗟の際に感情を無視して彼が下した命令通りに動けるかの二種類だった。

 

アヤネは命令に関してはすぐに動いてくれるだろうことが容易に予測できるが、見るからに戦闘能力に不安がある。

セリカは戦闘に関しては充分に力を持っていそうだが、彼の命令に対し、最終的に従いはするだろうが、それを咄嗟に出来るかどうかについては太鼓判を押せない。

 

それはシロコにおいても同じことが言えるが、それを考慮したとしてもセリカ、シロコの内、今の状態で一方通行の命令を咄嗟に聞いてくれるのはどちらかと聞かれれば、シロコであると言う他ない。

 

「ん、分かった」

 

そして、彼の判断は間違っていなかったことをシロコの了承の返事がそれを証明する。

セリカならば最低数秒は迷っていたかもしれない判断を、シロコは即決で下した。

 

「話は決まったな。それじゃ俺達は今すぐ」

 

ゲヘナ目掛けて出発する。

そう一方通行が口を動かそうとした刹那。

 

 

 

ビーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!

 

 

 

と、けたたましい警報のような音が、アヤネの懐から、恐らくしまっていた携帯から鳴り響いた。

瞬時、シロコ、セリカ両名の目の色が変わる。

 

その反応に、何事か等と言ったトロ臭い反応を一方通行は示さない。

彼女達が今置かれている状況を鑑みれば、警報が鳴る理由はたった一つだ。

 

「シロコ先輩!! ドローンを!!」

「もう飛ばしてる……! 数は…………ッッ! 百体以上のオートマタ兵士に…………、重戦車が四両、装甲車両が……五両……!!」

「距離はッッ!?」

「もう……数百メートルも無い……!! アイツ等……十分に接近してからわざと罠を踏んでる……!」

 

シロコが顔を青ざめさせてカイザーから送られて来た刺客の規模を報告し、続いてセリカ、アヤネの二人が彼女の報告に表情を絶望に染めた。

 

「そんな……そんなっっ!? 今までは多くても五十もいなかったのに……!! その倍以上なんて……! か、勝てる訳ないじゃない!!!」

 

三人の顔から、そしてセリカの反応からカイザーは一気に残りのメンバーを叩きに来たなと推察する。

先の発言から察するに、もう彼女達に戦闘継続する為の手段は残っていない。

 

カイザーは先の戦闘で彼女達が攻撃手段をほぼ喪失したのを知っている。

万に一つも負ける戦闘では無いことを、カイザーは把握している。

 

それを知ってて尚、過剰とも思えるような戦力をぶつけて来た。

これで終わりにするつもりだと言う本気度がイヤでも伝わって来る。

 

「オマエ等の武装はどれぐらい残ってる」

「もう弾薬はゼロに近い状態で…………戦闘可能時間は……、一分が限界です」

 

節約して節約してやっと絞り出せるのがその時間なのだろう。

シロコはアビドス高校の前で彼を助ける為に銃撃したが、それすら虎の子だったらしい。

 

ひっ迫。という言葉では足りない程に勝負が見えている戦闘だった。

どう考えても、一分程度で百体のオートマタを撃退出来る筈が無い。

 

「迎撃しようにもこれでは……!! はッッ!? 先生! 今すぐ避難を!!」

 

どれだけ弾薬を所望しようが無い物は無い物と諦めるしかない。

その中でどうにか切り抜ける手段は無いかと必死に頭を回していたであろうアヤネが、慌てて一方通行にここから逃げて下さいと進言する。

 

カイザーは絶対にアビドスの少女達に対して容赦をしない。

砲弾、銃撃の雨を徹底的に浴びせるのは明白。

その状態でヘイローが浮かんでいない彼を戦場に置くのは危険すぎると判断したのだろう。

 

普通に考えれば避難指示を出すのは間違っていないと言える。

 

「必要ねェ」

 

しかし一方通行は彼女の提案を即座に蹴った。

その返答にアヤネは驚いたようで、どうしてですかと一気に詰め寄る

 

「このままじゃ死んでしまいます!」

「オマエ等もこの物量差じゃ逃げなかった場合の俺と大して変わンねェだろ」

 

遅かれ早かれだ。

銃撃で一方通行が死ぬのと、物量差に轢き潰されて三人が人権を失うのは、どちらが早いか遅いかの違いでしかない。

 

待っている結末が同じならば、戦うことを放棄し全員でここから逃げる方がまだ希望がある。

 

「ここを失ったら!! 必死にかき集めた全ての物資を失います!! 食料も武装も本当に僅かしかありませんが! その僅かすら今は重要なんです!!」

 

だから逃げられません。

アヤネは声を大にして主張する。

見れば、セリカとシロコも同意見のように首を縦に振っていた。

 

この場所を放棄すれば、ホシノもノノミも助けられなくなると。

本当に、アビドスが終わってしまうと。

 

「しかし先生はこの責務を背負う必要はありません!! ですから早く退避を!!」

 

けれどそれは自分達の都合。本来ならば拠点なんか捨てて逃げるのが正解な場面。

無謀極まりない身勝手な戦いに先生が巻き込まれる必要は無いと、アヤネは一方通行に逃亡を懇願する。

 

その最中。

 

ズ…………。

 

遠くから、一方通行とシロコが走って来た方面から地鳴りが響き始めた。

キャタピラが砂を轢き潰して進む音と、重厚感のある足音が無数に轟く。

 

音のする方に視線を送れば、既に銃を構えて接近するオートマタ兵士がうじゃうじゃと散見される。

 

もう戦闘態勢に入ってやがる。と、一方通行は吐き捨てた。

いつでも攻撃出来る姿勢を見せるオートマタ兵士に一方通行は嘆息し、

 

おもむろに、

予備動作無く。

まるで当たり前かのように。

 

 

 

たった一人シロコ達の先頭に立つべく、前方に躍り出た。

 

 

 

「ッッッ!?」

「せ、先生!?」

「アンタ何してッッ!!! 早く逃げなさいよ!!!」

 

一方通行が一人カイザーと対峙を始めたような構図に、少女達は三者三様の反応を見せた。

うるさ……。と、一方通行は三人の反応を背中で聞きつつそう感想を零す。

 

ダッッと、勢い良く彼目掛けて駆ける音が背後から聞こえる。

この勢いからして、セリカだろうか。

どうやら敵意は容赦なく向けるが、その敵意を向ける奴がむざむざ殺されるのを黙って見ていられるような少女では無いらしい。

 

面倒な性格してやがるなと、セリカが持つ難儀さにハッッと、笑う。

しかしセリカが現在何をどう思っていようが、どんな気持ちで一方通行を引き戻そうとしていようが、今の一方通行には一切関係のないこと。

 

故に。

 

 

 

一方通行はセリカの動向を目ですら追わず。視線を距離を詰めてくるオートマタ兵士に向けたまま、目的達成の為アヤネの話を聞いてからずっと思っていた疑問を、彼女目掛けて口にする。

 

 

 

「奥空、連日襲って来た連中は毎回全員オートマタだったか? そしてここら一帯はオマエ達以外は誰も居ないでいいのか?」

「え? な、何で急にそんなこと」

「良いから言え、どっちだ」

「え、えっと、人は住んでません。そして昨日襲って来たのは多分、全員オートマタだった筈です」

「多分? 筈? 重要な問題だ。確信があるのか無ェのかどっちだ!」

「いませんでした!! 確認した限りでは全員オートマタでした!!!」

 

ズァアッッッッッ!!!! と、彼女の言葉を合図に一方通行は頭にシンプルなリング状のヘイローを現界させ、引き裂かれそうな程に真っ白な翼を現出させた。

全長十メートルにも届きそうな翼は出現した途端瞬く間に空間を支配し、表出させた一方通行以外の全員が息を呑む事態を作り上げる。

 

誰も言葉を発しなかった。

シロコも、アヤネも、セリカすらも。

 

三人が三人共一方通行の異様な姿に圧倒された。

目の前の光景を脳が受け止めきれず、驚愕の表情を顔に張り付けたまま一歩たりとも動かなくなる。

戦闘直前だというのに、彼から目を離せなくなる。

 

神々しさと威圧感が同時に背中を突き抜けていく感覚に、自然と身体が震える感覚を三人は同時に覚えた。

 

それはカイザー側も例外ではない。

 

百に届きそうな数で進軍していたオートマタ。

彼女達を轢き潰さんとするかのように前進していた装甲車両や重戦車。

 

アビドスの残り全員を手中に収めようとしていた敵勢力も、彼から放たれる異様な翼とその翼から発される圧倒的威圧感に一斉に動きを止める。

 

そうして、一方通行以外の誰もが一瞬動きを止めた中で。

 

「スクラップだ、クソ野郎共」

 

彼一人だけが自由に動き、口走り。

翼を深々と地面に突き刺して。

 

 

 

身が凍えるような轟音を迸らせながら大地を抉り、持ち上げた地面を豪快に吹き飛ばした。

 

 

 

地鳴りと共に抉れた大地は連鎖する様に前へ前へと広がる。

砂を巻き込んで、コンクリートを押し上げて、埋められていた大地すらも突き上げて。

見る見る内に肥大化し、巨大化して、敵の方へと前進する。

 

「あ、あれは……あれは何だッッッ!?!?!?」

 

見る見る内に体積を増やしていく様子にオートマタ兵士の誰かが叫ぶ。

だが、その疑問を答えられる存在はオートマタ兵士の中には誰一人としていなかった。

 

二メートル。

三メートル。

五メートル。

十メートル。

 

大地がまるで巨大な津波のように膨らみ、オートマタ兵士に牙を剥く。

恐るべき速度で迫るソレを防ぐべく、重戦車から砲撃が始まる。

 

一撃目は、確かに一部の大地を削ぎ落とした。

次の瞬間には、それ以上の波によってさらに規模を大きくした。

 

続く二撃目は、爆発すらも飲み込んだ。

そして、三撃目が始まる頃。

 

迫る大地はオートマタや重戦車全てを飲み込み、彼らの天地を文字通りひっくり返す。

戦車や装甲車は上下逆さまとなり、その上で砂と大地に押し潰されて完全に機能停止。

巻き上げられたオートマタ兵士は十メートル以上の高さから悉く地面に落下、または戦車と同じく大地に押し潰され、爆発音を次々と迸らせて全機修復不可能な程にまで破壊される。

 

そうして全てのオートマタ兵士を黙らせた津波は全標的を飲み込んだ後、それまでの勢いは何だったのかと言いたくなる程に落ち着きを見せる。

 

あれだけ響いていた地鳴りが、今はもう何も聞こえない。

彼女達を狙っていた銃口や砲塔は、全て土に埋もれた。

一方通行が翼を使用すると決めてから時間にして僅か十秒。

 

たった十秒で、たった一撃で、一方通行は百以上ものオートマタ兵士と、五両もの重戦車と装甲車を戦闘不能に押しやった。

 

「…………うそ」

 

声を出したのは、セリカだった。

目の前の光景が未だに信じられないのか、口を半開きにしたまま呆然と前方の景色に目を奪われる。

そして、一方通行が引き起こした部分的大破壊に。そしてその破壊行為すら一部限定にのみとする精密な技術にセリカは畏怖の目線を込めて一方通行を見やった。

 

負ける戦いだと思っていた物がこうもあっさりと逆転した事実。

そしてそれをたった一人で成し遂げた事実。

何より、全く理解の及ばない人智を超える力をまざまざと見せられた事実。

 

全てひっくるめて畏怖として、セリカは一方通行を見やる。

そしてそれは、多かれ少なかれシロコ、アヤネの両名も同様だった。

 

そんな中、渦中にいる一方通行は刺さる三人の視線と、その中に含まれている意味も察しつつ。

 

「…………オイ、三人共何ボーっと突っ立ってやがる。さっさと鹵獲しねェか」

 

弾薬を補給する切っ掛けを作ったのだから今はそんな事をしている場合じゃないだろと彼女達に手短に指示を出した。

 

「え? え?」

「あのポンコツロボ共は全機仕留めたが武器はいくつか無事なのがある筈だ。吹き飛んだ際に手放した奴とかな。間に合わせにしかならねェだろォし取り回しが自分の獲物と違って扱いづれェかもしれねェが、背に腹だろ。これなら扱えるって奴適当に強奪しろ」

 

ほら、さっさと行け。

翼を収め、呆れ混じりに息を吐いてそう指示を投げる一方通行の声を合図として、三人が軽い返事と共に荒れた大地の方へ駆けて行く。

 

シロコ達は一体何の為にわざわざこんな回りくどい方法で奴等を撃破したと思っているのだろうかと一方通行は杖を右腕に体重を預け、少し休憩する姿勢を取りながら三人を後ろから見守り始める。

 

周囲に人は誰も居ない。

敵は全て機械兵士。

 

つまる所、人的被害を一切考える必要がなかったのだから、翼を真横に薙ぎ払う等して全員を一瞬で潰すのが最も手っ取り早い方法だった。

だがそれをした場合、オートマタ兵士が持っていた武器すらもまとめて消失する可能性が高く、少女達の武器の補給が最優先だったこともあって彼は敢えて間接的な一撃必殺に留めた。

 

それでも一撃で仕留めている以上結果に変わりはないのだが、どうせやるならシンプルに動くのが一番良いに決まっている。

けど一方通行は撃退以上の利益を求めた。

 

その結果は。

 

「ん、先生。必要十分な弾薬は確保した。行けるよ」

 

自前の学生鞄を背負ったシロコがいつでも動ける旨を一方通行に報告しているのが、彼の思惑通りに物事が進んでいることを如実に伝える。

 

彼女の言葉通り、痩せていた彼女の鞄が見て分かる程に膨らんでいるのを確認した一方通行は彼女にヘルメットを投げ渡す。

 

「のンびりしてる時間もねェ、俺達はこのままゲヘナに向かう」

「ねえ! 行くのは賛成だけど、またあいつ等があの大群で押し寄せて来たらどうすんの! いくら補給できたと言っても私達だけじゃ太刀打ち出来ないわよ!!」

 

出発の準備を進める一方通行の動きを横目で見ていたのか、それとも彼の発言に疑問を持ったのか、武器を漁っていたのを一時中断して振り返りながらセリカが一方通行とシロコの両名が不在になった場合に発生する問題点を指摘する。

 

先のような大群で公園を攻めてきた場合、セリカ一人では押し返しきれない。

その場合ノノミだけでなく自分やアヤネまでもが誘拐される可能性が格段に高くなると、セリカは一方通行に示唆する。

 

が。

 

「安心しろ。奴等は少なくとも今日は襲って来たりしねェよ」

 

絶対の自信を持って一方通行は反論した。

何でよ。と、懐疑的な視線を向けるセリカに一方通行はそう判断するに足る根拠を述べ始める。

 

「黒見。カイザーが握っている情報は何だか分かるか?」

「え……? そりゃ……私達が現状、戦えるだけの力を持っていない。とか?」

「他は?」

「他……? 他って…………何があるのよ…………」

 

「カイザーが握ってる情報の一つ目。黒見が言った通りアビドスはカイザーに勝てる程の戦力を有していないこと。二つ目。戦力差をひっくり返せるような新兵器を取り寄せる程の資金も時間も人の流れもアビドスには無かったこと。最後に、百機以上ものオートマタがそのアビドスを相手に全滅したことだ」

 

指を一つ一つ折りながらカイザーが持ち得ている情報を共有する。

これだけの大被害、通信で報告されていない筈がない。

まず間違いなくこの全滅はアビドス高校にいる連中、もしくはアビドスを制圧せんと動いているカイザーの一組織に届いている。

 

「敗北しただけならともかく、一瞬で全滅したとなりゃ用心するのが普通だ。無理に戦力を投入すれば今度は学校の防衛がままならなくなる。無限に兵がいる訳じゃねェからな。オマエ達の目的が学校の奪還なのは奴等にとって周知の事実な以上その穴は見過ごせねェ。戦力を補充するにせよ対策を練るにせよ、どう見積もっても今日は動けねェ筈だ。ゲヘナに行って、帰って来るだけの時間はたっぷりとある」

 

アビドスに派遣されたオートマタ兵士がどれだけの数いるかは不明だが、そこまで多すぎる数ではないだろうと一方通行は推測する。

 

多くて数百。

その数百の内百機が破壊されたとするならば、カイザーは約五分の一から三分の一程度の戦力を損失したことになる。そこからまた同じ数だけ兵を捻出すれば、アビドスにいるオートマタ兵の数が極端に減ってしまい、その隙を突かれて奪還に成功されるという、本末転倒の事態にだってなりかねない。

 

ならばと失った分を外部から補充するとして、その補充部隊がアビドスに到達するまでの時間だって必要になる。

 

無理に動けば動くだけ被害が拡大する恐れが高い以上、

取り返しの付かない状況に発展しかねない以上、

わざわざ危険な橋を渡る必要はカイザー側にはどこにも無い。

 

少なくとも今日はもう妙な真似はしないだろうと一方通行は踏む。

加えて、バイクならば日が沈む頃には戻れると一方通行は言い切る。

 

故に。

 

「わ、分かったわよ……」

 

彼が展開したロジックに反論する場所は無かったのか、渋々と言った感じでセリカは首を縦に振った。

 

「私達はもう少しここで武装を調達しています。滅多に無い機会ですから」

 

任せた。と、セリカが反論している傍ら、一人もくもくと鹵獲を続けていたアヤネに返事を返しつつ一方通行も出発の準備を進める。

シロコを後ろに乗せる為積んできた弁当を入れているバッグを固定させていたヒモを解き、座席から下ろす。

 

途端、バッグの底からひんやりとした冷たさが一方通行の手に広がった。

これなら大丈夫だな。と、彼はその冷たさからこの暑さの中でも弁当がダメになっていないのを知る。

 

冷たさの正体は、保冷剤。

 

アビドスに行くことをユウカ達は事前に知っていた為か、シャーレの冷蔵庫には保冷剤が五つの弁当全て腐らせない様結構な数が冷凍されていた。

 

保冷材の冷たさから見るに、五人が作った弁当はまだまだ平気そうだった。

 

「奥空。鹵獲が終わったらコイツを預かってろ」

 

適当な日陰にバッグを置いて一方通行はそう頼み込む。

一方通行からの注文に鹵獲を一時中断し、一体何を預けるのだろうかと気になったアヤネは振り向き、そのバッグに視線を落とした。

 

「これは……?」

「弁当が五食入ってる。限界なら食ってろ。どうせここ数日碌なモン食ってねェだろ」

 

簡潔に放った説明はしかし、アヤネを、さらにはシロコ、セリカの視線も彼が下ろしたバッグに向いた。

彼女達の反応から、やはり食事らしい食事を学校を追い出されてから取っていないなと一方通行は察する。

 

なので、限界なら気にせずに食べろと彼は口にしたが。

 

「これは、先生が食べるべき物ですよ」

 

あっさりとアヤネは首を横に振った。

 

「中身は見てませんが雰囲気で分かります。これは、私達が勝手に食べて良い物ではありません」

 

きっとこれは先生にだけ向けられた、先生の為だけを想って作られた物だから。

それを勝手に、先生がいない前で口にする訳にはいかない。

 

先生が食べることを許可したとしても、その少女達が食べて欲しい相手は、先生なのだから。

 

強い意思でそう言い切り、ですから預かるだけはしておきますとアヤネは告げる。

その目に躊躇の匂いは無い。

 

折れるしか、一方通行に残された選択肢は無かった。

 

「はァ……。なるべく早く帰って来てやる」

 

それが一番、彼女達の飢えを凌ぐ近道らしい。

弁当をアヤネに預けた一方通行はその言葉を最後にヘルメットを被った。

そのままややゆったりとした動作でバイクにまがたり、キーを回し、スイッチを押し、エンジンを始動させる。

 

刹那、鼓動にも似た重い唸り声がバイクから迸る。

準備は万端。

 

ハンドルを握る手に振動が伝わる。

後はもう、発進させるだけ。

 

「準備は良いか?」

「ん、いつでも」

 

返事は、どこまでも簡素だった。

 

彼の右肩に彼女の小さい手がそっと置かれる。

振り落とされないようにする為の手段としては些か頼り無さげに思えるが、一方通行は何も言わない。

危ないと思ったら自分でやり方変えるだろと適当に考えつつ、一方通行はシロコを乗せてアビドスを出発する。

 

行先はゲヘナにあるカイザーが運営する地下オークション会場。

そこを目指して一方通行は通算三度目のゲヘナ訪問を始める。

 

表情が一切見えないフルフェイスヘルメットの奥で、一方通行の歯がギチリと強く噛み合う。

体温が否応なく冷えて、そして執拗に上がるのを感じた。

 

彼女達五人を襲った悲劇を全て覆す。

何もかもから彼女達を守る。固く決意した一方通行は、その目標を達成するのに必要な第一歩を踏み出す。

 

 

 

アビドスの二年生。十六夜ノノミを連れ戻す為に。

 

 

 

 












無双する時はサっと無双してサっと終わらせるのが一番印象あるんじゃないかなと思います。
前章であるパヴァーヌと比較して一方さんが目に見えて序盤から暴れていますね。

でも一方通行が主役のSSにおいて求められているのはこういう場面な気がします。そう考えるとやっと無双したな感が凄いですね。約一年ですよ約一年。長い!!

そして本編についての話です。

なんとこの話だけで原作におけるアビドスストーリーの九割九分が終わってしまいました。
ですので、とある箱庭の一方通行におけるアビドスは残り一分を突き詰めていくお話になります。

今回の話を読んで、ん? と違和感に気付く方もいるかもしれませんが、アビドスが抱え込んでる負債がゲーム本編では9億なのにこの話では9兆になってます。単位が違ってますね。


それもこれもあの白モヤシが悪いんです。
8兆円の借金を背負っているアイツが全部悪い。

お陰でお金のインフレが凄まじい。ミレニアムの被害が1兆超えてるのも全部『とある』側の設定が悪さしてる。

六枚羽を製造するのに250億って言ってるのにアビドスでは9億で騒いでたら……こう、茶番になっちゃうじゃないですか。
8兆の借金がある人に私達、9億の借金があるんです。なんて涙目で言われてもはぁ……その程度の額どうにでもなるだろ。みたいな感じになりそうじゃないですか。どう考えても桁を増やすしか道はなかったんです。

ちなみにとある本編では既に一方さんの借金は帳消しになってますが、そのタイミングは旧約終了~新約開始時までの間に起きているので、旧約最終巻の最終盤からキヴォトスにやって来ているこの一方さんは何と借金を抱えたままなんですね。
払う相手はキヴォトスのどこにもいないので実質0ではあるんですけども。

でも借金がある事実は消えてない。だからこそ8兆の借金を背負っている事実が9億を軽くする。普通は絶望する値段の筈なのに。何て悪循環。許せない。

そんな本編の捕捉をしつつ、次回はまたしてもゲヘナです。問題は全部ゲヘナで起きてるな??? 

年内にあと一度ぐらいは更新したい所です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。