とある箱庭の一方通行   作:スプライター

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開戦

 

 

今日の空は、どこまでも青く透き通っていた。

雲一つ無く、風も弱い。

 

静かで、穏やか。

この環境をどう取るかはその時その時、どのような状況下に置かれているかによって違うだろう。

 

普通ならば過ごしやすいと思うかもしれない。

しかしアルにはこの天気は、些か穏やか過ぎると感じていた。

 

嵐の前の静けさと言う言葉がピッタリすぎる程、今の天気はそれを現していると。

 

「…………」

 

朝、午前九時。

アビドス校舎の中から空を見上げていたアルは、無言を貫いたまま視線を下に落とす。

そこには、本来存在する筈の無いロボット達が所狭しと動き回り何やら作業を行っている。

 

この学校の在籍者は全て追いやられ、所有者がどこにもいなくなった学校をロボット達が荒らしまわっている。

 

中庭には重機が入っており、掘り起こそうと地面を砕いている真っ最中。

その他にもあらゆる場所のコンクリートが既に掘り起こされ始めている。

許可なんて取っていないだろう。

やりたい放題していても、それを咎められる程の力が追い出された少数の生徒には残っていない。

 

だから無法に学校を破壊する。

異質な光景だ。と、アルはロボットが学校の破壊活動を行っている様子を上から見下ろしながら無表情でそう評する。

 

追い出された少女達に同情はしない。

負けた少女達の末路としてそれは受け入れなければならない事実だからだ。

当然、ロボット達にあらゆる感情も抱かない。

 

アルはアビドスの味方では無いし、カイザーの味方でも無い。

契約として今回はカイザー側に付いただけ。

 

最後の反撃に出て来る少女達を確実に叩き潰す為に雇われた。

その目的を達成するだけが、アルが銃を握る理由であり、意志だ。

 

その上で。

その上で敢えて、アルがカイザーの悪行を見て一言だけ言葉を添えるのならば。

 

「華が無いわね」

 

矜持に欠けると、アルは言葉を音に乗せた。

保持する資産は莫大であろうとも、悪党としての矜持が二流以下ならば程度の底も知れるという物。

 

こんな奴等に潰されるアビドスの面々が不憫でならない。

いや、二流以下だからこそまだ叩き潰せていないのかと思考を反転させる。

潜伏場所も割り出せていて攻勢も仕掛けているのにまだ仕事を終わらせられていないことがアルの仮説を強化させていく。

 

「反撃に打って出て来るであろう彼女達を盤石に潰す為に私達を雇った。合理的な判断ではあるわ」

 

普通ならこの時点で相手側の詰み。

もしこの状況を賭け事に使用する悪趣味な者がいたとして、賭けの対象はどちらが勝つかではなく鎮圧するまで何分掛かるかがベットの対象となるであろう。

 

それ程までに、自分達を含めたカイザー側の戦力は圧倒的と言える。

むしろ、自分達が加わったことでその戦力差は決定的となった。

 

けど、と、アルは僅かに首を振る。

 

「けど、私達がこちらに付いたのと同じように、向こうには先生が付いた」

 

で、あるならば。

 

「こちらが負ける可能性も視野に入れなければならないわよ。カイザー」

 

そう思わない? と、背後に振り返りながら自慢の仲間達三名にアルは問いかける。

 

「あのさ。なんで先生側をちょっと応援してる風なコメントなの」

「正しく評価してるからよ。先生自身は戦闘で強い人じゃないけど、先生の為に戦うといつもより力が出る。私達はそれを実感したじゃない」

「はぁ……良いけど」

 

一番最初に反応したカヨコに向かってそう力説するアルに向かって、カヨコは諦めたような返事と嘆息が飛んでくる。

 

「それにしても~」

 

カヨコとの会話に一通り区切りがついた時を狙っていたのか、今度はムツキが一歩二歩と進み、アルの横に立って窓の外を眺めつつ、いつもの小悪魔のような笑みを浮かべてアルに話しかける。

 

「先生達、いつ来るんだろうね。カイザーの憶測だと今日なんでしょ?」

「想定はそうみたいね。でもその通りに先生が動くとは限らないから、とりあえず二日ぐらいは様子を見ましょーー」

 

空気が変わったのは、突然だった。

 

「ア、アル様! アレを見て下さい!!」

 

ムツキとの会話を遮る様に、突然ハルカが声を荒げながら空を指差した。

尋常ならざる声と動作に引っ張られ、アル、カヨコ、ムツキの三人が同時にその方向に視線を動かす。

 

 

不自然なドローンが一機。何か大きな包みを抱えて学校の敷地内を飛んでいた。

 

 

そのドローンが何なのか、何を抱えているのかアルは考察しない。

ただ本能が察した。

 

「「社長(アルちゃん)ッ!!」」

 

カヨコ、ムツキから同時に大声が放たれる。

しかし彼女達の言葉が発し終わる前にはもう。

 

自身の愛する狙撃銃、『ワインレッド・アドマイアー』をアルは構え終わっていた。

当てる。

 

標的を既に照準に収めたアルは相手の先制攻撃を無にすべく引き鉄を引く。

 

刹那。

 

全身を揺さぶられる程の轟音を走らせる大爆発が校庭内で迸った。

 

「「「「ッッッ!?!?」」」」

 

耳を貫く音とまともに立っていられなくなる振動に四人全員が声を失う。

何が起きたのか、考える余裕すら無かった。

 

カイザーが敷地内に仕掛けていた地雷を爆発させてしまったのか。

もしくは上のドローンに視線を引っ張った上で本命の手榴弾でも投げ込まれたのか。

それとも戦車による砲撃でも受けたのか。

 

爆発が発生したのは、アルが狙撃を行う数瞬前。

音と衝撃を受けて、体勢を崩し反射的に目を閉じてしまったアルが再び目を開けた時にはもう既にドローンの姿は無かった。

 

「っっっ!!」

 

取り逃がした。

その事実に焦りを覚えたアルは慌てて窓の外に身を乗り出し、明らかに爆発物を抱えていたドローンを探そうと空を見渡す。

 

そして。

 

もう何も持っていないドローンをアルが見つけたのと、真下の校庭で追い打ちをかける様にもう一度爆発が発生したのは同じタイミングでのことだった。

 

遅かった。爆発を見てアルがそう後悔する間も無く、次の現象が発生する。

二度目の爆発が起きた地点、ドローンが落とした爆弾から、巨大で灰色の粉塵が周囲に撒き散らされているのを上からアルは目撃した。

 

「煙幕ッッ!!」

 

やられた。と、校庭の光景が半分以上覆われてしまった状況を見てアルはそう歯噛みした。

破壊力重視では無く、視界を一時的に奪うことを重点とした爆弾。

 

それも事前に破壊力重視の爆発でこちらの戦力を可能な限り削ることも忘れていない。

何て大胆で、合理的で、見ていて思わず笑ってしまうやり方なのだろう。

 

気が付けば、自然とアルの口角が僅かに吊り上がっていた。

 

だが、笑っている事実を、彼女自身把握していないだろう。

襲撃されている側なのに、何故心が沸き立ってしまっているのか、彼女は理解していない。

 

「本当、開始そうそうやってくれるじゃない……!」

 

混乱渦巻く真下を見つめながらそう呟く。

粉塵の隙間から爆発が起きた校庭の様子を窺えば、数多のロボットが残骸と成り果てていて、その残骸を踏み潰しながら残ったロボットが武器を握り手当たり次第警戒を始めている姿が見える。

 

「ムツキ! カヨコ! ハルカ!!」

 

振り返り、アルは怒号を上げる。

そこに、先程浮かべていた嬉しそうな表情は無い。

 

立派な悪党として、陸八魔アルはそこに君臨していた。

 

「散りなさい!!!」

 

端的に、用件のみを伝える。

それ以外の言葉はいらない。

 

「「「了解ッッ!!!!」」」

 

直後、三人はそれだけ言い放ち、彼女の前から去っていく。

時同じくして、校門の方から嵐のような重い銃撃音が響き始める。

 

「来たわね……!」

 

アルは視線を映さないまま、音だけでソレが敵側からの物であると察した。

恐らく、一方的にこちら側が蹂躙されているとも。

 

煙幕を利用して大多数を攪乱しつつ的確に数を撃破していく。

圧倒的な戦力差をひっくり返す為の作戦としては上々の滑り出し。

 

少数ならではの作戦とも言えるだろう。

 

しかし。

 

「それで勝てる程、『私達』は甘く無いわよ先生」

 

アルが、今度は自覚的に笑う。

アビドス高校を取り戻さんとやってくる生徒の数は僅か四人。

 

その内一人はサポートとして動くので攻め込んでくるのはたったの三人。

 

実力は高いのかもしれないが、絶対的に強いと言う訳でも無いだろう。

三人に先生を加えた四人で、果たしてどこまで進んで来れるのか。

 

カツカツとハイヒールを鳴らしてアルは一人校舎を歩きながら、まだ姿を見ていない彼を想って言葉を投げる。

 

「さて、当たりを引くのは誰なのかしらね」

 

誰が先生と戦うのかしら。と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









非常に短くて申し訳ありません!!
悪いのは全部スクエニに言って下さい! FFリバースに向かって言って下さい!!


前代未聞に三千字投稿です。ちょっと短すぎる……かもしれません。
次回からはちゃんと元に戻したいです。頑張ります……!!


いつも感想ありがとうございます。
これが励みになるんです。本当に!! 
皆様のおかげです。重ねてお礼申し上げます。

アルちゃんは格好良いのだって似合う! そう言いたいお話でした。
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