とある箱庭の一方通行   作:スプライター

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踏み入れし血戦の地

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス砂漠。

 砂漠化が進むアビドスの中で、元から砂漠だった場所。

 

 かつて、まだアビドス砂漠にオアシスが残っていた頃。ここでは『アビドス砂祭り』と称した催しが毎年開催されており、その祭りには郊外から参加する生徒も多く、随分と活気に溢れていた。

 

 ……しかし今はその見る影も無い程に荒れ果てている。

 オアシスはとっくの昔に枯れ果て、砂漠化もより進み、現在は無尽蔵に廃棄された意思無きドローンやオートマタ、警備ロボット等がそこら中を闊歩している。

 侵入者を即座に迎撃する状態の機械軍団が我が物顔で歩いており、決して踏み入ってはならないアビドス有数の危険な場所。

 

 それが、一方通行がアヤネから聞いた話。

 だが。

 

「俺の勘違いじゃなけりゃ、闊歩してるのはカイザーコーポレーションのオートマタに見えるなァ」

「普通に敵がいますね」

 

 一方通行とワカモが口を揃えて違和を唱えた。

 聞いてた話と見えてる状況が微妙に、もしくはかなり違う。

 

 アビドス砂漠にばら撒かれたのは無差別に侵入者を迎撃するスクラップ寸前の鉄屑な筈だが、今視界に捉えているのはどう見ても恣意的に襲う襲わないを決定しているであろうカイザーが持つオートマタだ。

 

 これが一機だけならば廃棄された中にカイザー製のオートマタが混じっていたのだろうと捨て置くことも出来たが、目で見える範囲にある三体のオートマタ。四機のドローン全てがカイザー製なのはどう考えても偶然の一言で済ませて良い問題では無い。

 

「カイザー製のオートマタがアビドス砂漠を牛耳っていた軍団を破壊したってことなのかしら?」

「もしくは、改造されたか」

「その線は流石に無いんじゃない? わざわざ色まで塗り替えてカイザー製ですってアピールする?」

「いずれにせよ雑兵です。蹴散らせばあれが何製だろうと粗大ゴミの仲間入りです」

 

 アル、カヨコ、セリカがやや主題から脱線した話を展開しかけたが、ワカモが舵を取り直し、やや極端だが最も最適な結論を下した。

 そうだな。と、一方通行はワカモの意見に同調し、良いか。と、全員に向かって声を掛ける。

 

「全部潰して行ったら肝心な時に弾が無くなる。弾薬の消費はなるべく抑えろ。特にノノミ」

「は、はい! 何でしょう先生」

「オマエのガトリングは殲滅力は段違いだが消費も激しい。撃ち時は見極めろよ」

 

 アビドス砂漠に足を踏み入れてもいない段階から消耗戦を強いられれば、間違いなく弾切れが起こる。

 気軽に補給出来る状況では無いことを、ノノミを通じて一方通行は全員に共有する。

 

(ミドリがいてくれりゃァ、かなり少ない消費で進めるンだが……それは贅沢な話か)

 

 的確に一撃で一機ずつ撃ち落とすことを得意としているミドリは、現在とても戦える容態では無い。

 元々連れて来る予定は無かったが、いなければいないで、彼女がいた場合の有難みをどうしても実感してしまう。

 とは言え九人も人数がいるのだ。加えて狙撃を得意とするアルもいる。彼女一人がいない分の穴埋めは容易だと、思考を切り替える。

 

「あなた様。今、ここにいない他の女のことを考えてましたね」

 

 が、彼の思考は一歩後ろに佇むワカモには完璧に筒抜けてしまっていた。

 どこか、どこか心の奥底が冷えたような感覚が途端に一方通行に襲い掛かる。

 

 砂漠と言う、暑いの一言では済まされない環境にいるというのに。

 

「何の話だ?」

「状況から考えるとハルナさん……いや、ミドリさんですか。全く、仕方の無い方です」

 

 何も言っていないのに、何ならワカモからは彼の顔は全く伺えない筈なのにことごとく正解をワカモは叩き出していた。

 

 ハルナの名前が出た所から考えるに思考を読んだ訳では無いのだろう。

 だからこそ一方通行は見透かされている気分に陥り、見抜かれたことに動揺が走る。

 

 弾き出した声に震えが混ざらなかったのは、努力の賜物なのかもしれない。

 そもそもミドリと共闘したことのないワカモが何故彼女の戦闘スタイルを知っているかについて、一方通行は何も聞かないことに決めた。

 

「あなた様。動くゴミをスクラップにするのに弾丸はいりません……こうすれば良いのです!!!」

 

 一方通行が内心で戦慄してる中で、そうワカモが言うや否や、だった。

 砂の大地を蹴り抜き、大きく跳躍してオートマタとの距離を空中から一気に詰め、追い越すと、身体の向きを空中で百八十度回転させ、一方通行達の方に身体の向きを整える。

 流れる動きでワカモは右足を天高くまで振り上げ。

 

「はッッ!!」

 

 掛け声と共に、脳天目掛けて右足を振り下ろした。

 ゴガンッッ!! と言う音が炸裂したのはその直後。

 

 ボト……と、オートマタの頭部が力任せに吹き飛ばされ、砂の地面に落ちたのはワカモが地面に着地してから直ぐの事だった。

 

「そして……こうです!」

 

 着地したワカモは、そのまま叩き落した頭部がある場所まで走り、今度は浮いているドローン目掛けてその頭部を蹴り飛ばす。

 

 全力で蹴り抜けられた頭部は、勢いの良いサッカーボールの如くドローンに飛来し、命中した直後小規模な爆発を発生させてドローンを撃墜した。

 

「こうすれば弾薬もいりません。さああなた様。進みましょう?」

 

 一つ仕事を終えた。とばかりにスカートに付いた砂を手で払いながらにこやかな笑みをワカモは浮かべる。

 対して、ワカモのアクロバティックな動きを見ていた面々の反応は様々だった。

 

「あれ、身体を反転させる必要あったんでしょうか……そのまま普通に踵落としをすれば良かったんじゃ……」

「明らかにこっちに……いやこの場合先生にかな。見せびらかしてたね。ドストレートにも程があるでしょあれ」

「ア、アアアアンタねえ!! もうちょっと羞恥心を覚えなさいよ羞恥心を!!」

「先生、今度からあの人の戦いをまじまじと見ちゃダメ。見るなら私のを見て」

「何言ってンだオマエ……。終わったならさっさと進むぞ」

 

 ノノミが素朴な疑問を零し

 カヨコがワカモの行動に呆れ、

 セリカは惜しげも無く蹴り技を披露したことに顔を赤くし、

 シロコは対抗心を燃やした表情を浮かべ、

 

 最もワカモがアピールしたかったであろう一方通行はスカートがスカートの意味を為さない様子になっていたことに対して一切気にも留めていなかった。

 彼女の行動が、あまりにも日常的光景過ぎたが故にの悲劇であった。

 

「見てくれましたか先生」

「ワカモ。何度も言ってるが、ああ言うのをやってもオマエの品位が落ちるだけだ。少しは控えやがれ」

「品位なんてドブに捨ててしまえば良いのです。あなた様が意識してくれるだけで私は十分幸せです」

 

 一方通行の話が今一ワカモに伝わっていない風に感じる受け答えもワカモの通常営業である。

 砂漠という局地での戦闘後もこうして変わらない姿を披露しているのはそれはそれで頼もしくはあるのか? と、一方通行は適当に理由を付け、受け流すことに決めた。

 

「とりあえず、だ」

 

 仕切り直すかのように、一方通行は自分の三歩程後ろの位置に戻って来たワカモを含めた全員を一瞥し、口を開く。

 

「今後も戦闘はあるだろォが毎回ワカモみてェに肉弾戦で撃破しろとは言わねェ。無駄弾を極力減らす。これを肝に銘じて動くことを念頭に入れろ」

 

 はい。

 了解。

 分かりました。

 

 各々の返事が重なる。

 彼女達の声を聞いて、良し。と一方通行は頷き、 改めて見渡す限りが砂に覆われた砂漠の大地に目を向けた。

 

「以上で作戦会議は終わりだ。アヤネは残って俺達のサポートを頼む」

 

 一方通行の指示にアヤネは明瞭な声で返事を返すと、アビドス砂漠までの移動手段として利用したトラックに乗り込むと、一機のドローンを射出した。

 

『こちらから皆さんの動きをサポートします。一直線に拠点まで進みましょう』

 

 浮き上がったドローンは、一方通行達のやや後方に位置取り、滞空を始めた。

 ドローンを用いた空からによるサポート。

 砂漠と言う過酷な環境において、この補佐は非常に頼りになる道しるべとなる

 

「向かって来る奴だけを叩いて進むぞ」

 

 砂の大地を踏みしめて、一方通行は歩みを始め、少女達も追随する。

 

 

 

 …………、そこからの進行は、驚く程に順調だった。

 

 オートマタと遭遇し戦闘を余儀なくされた回数こそ相当数に上るが、いずれも特に苦戦、怪我することなく制圧し続け、弾薬の消費も少量で済んでいる。

 

「何だ、意外と大したことないじゃない。アビドス砂漠の危険性も名前だけだったってことかしら?」

「……反論したいけど、確かに拍子抜けよね、昨日の学校争奪戦と同じぐらいしんどいのを覚悟してたけど、こっちの方が断然生ぬるいわ」

「あれれ~~。でもセリカちゃん私に負けた癖に~」

「うっさいわね!! 次に戦う機会があったら私が勝つんだから!!!」

 

 よって、最初こそ緊張の面持ちで進んでいたメンバーも、襲って来るドローンやオートマタが強くないのも相まって、今は雑談に興じる程の余裕が生まれていた。

 

「……止めないの? 先生」

 

 途中、この空気はあまり良くないと感じ取ったのかボソっとカヨコが一方通行に耳打ちする。

 少しの雑談ならば息抜きとして用いるのも必要かもしれないが、現状は雰囲気が些か緩み過ぎている。

 

 警戒心が薄まっているこのままじゃ、いざと言う時に適切な動きが出来ないかもしれないと、カヨコは少しだけ心配そうな表情を浮かべて一方通行に指示を仰いだ。

 

「オマエが心配に思ってるなら大丈夫だろ」

 

 対して、一方通行の返答はシンプルだった。

 

「……どういう意味?」

「そのままの意味だ。カヨコが不安に思ってる限りこのチームに危機は訪れねェ」

「ふぅん、……私だって雑談に混ざるかもしれないよ?」

「それならそれで誰かがその役目を引き継ぐだろ。それに、アビドスの面々ならともかく、アル達がいざと言う時にもお喋りを優先するような奴等だと思ってるのか?」

「……その言い方はズルいと思う」

 

 少しだけ顔を俯かせ、やりきれない気持ちを吐露するかのようにカヨコは呟く。

 

「アルもムツキも二人揃って今は楽しそうにお喋りしているが、それは気を抜いていても良い時間だと経験で判断してるからだ。張り詰め過ぎても良いことはねェって分かってやがる」

 

 目的地までの道のりは長い。

 その間、延々と集中を保ち続けるのは全員が出来る芸当では無い。

 

 疲弊もするし、集中を長く続ければ続ける程その質も落ちていく。

 休める時にはなるべく休める、場が緩くなる空気を作るのも長時間の仕事には必要な事柄だ。

 

 恐らく、アルは自分から話題を振って場の緊張を和らげるように仕向けていると、一方通行は推測した。

 今、この場において彼女の意向に反して集中に意識を割くことを、彼は推奨しない。

 

 ただし、その意識を強要せずに己だけで解決させるのならば話は別だ。

 カヨコが気を張り詰めさせていたいと言うのなら、それはそれで正解である以上一方通行は強制しない。

 

 が。

 

「確かに、今は少しゆっくりしていても良い時間かもしれないね」

 

 彼の言葉は想像以上にカヨコの心に響いたのか、カヨコは微かに表情を緩めると、溜め込んでいた疲労を吐き出すように嘆息して彼女は空を見上げた。

 

「先生、ありがとうね」

「礼を言われることは何もやってねェ筈だがなァ」

 

 要は個人個人の心の持ちようの話を一方通行はしているだけだ。

 お礼を言われる筋合いはどこにも無い。

 

「あなた様、一つ、よろしいですか?」

「? どォした、何か変な兆候でも見つけたか?」

 

 そうして暫しの間カヨコとの会話に興じていると、途端に後ろにいたワカモから声を掛けられた。

 少しばかり神妙な顔つきで話しかけてきたワカモに、一方通行もそれ相応のモードに切り替えてワカモに話しかける。

 

「……!! え、えっとですね……そ、その、以前から聞きたかったこと、な、なのですが」

「何で急にあたふたしてやがるンだ……? まァ良いけどよォ、それで?」

 

 しかし、一方通行が彼女との会話に応じた途端、突然ワカモの態度が急変した。

 何かを報告したがっていた筈なのに、その続きを一方通行が聞こうとしただけなのに、何故だかワカモは続きの言葉を言いたく無さそうにしどろもどろになってしまった。

 

 少し、訳が分からなかった。

 なので、やや困惑気味に一方通行は彼女の名を呼び掛ける。

 

「……、ワカモ?」

「…………! こ、こ、この前、先生が食べた私達が作ったお弁当。私のお弁当はその、皆さんの中で何位のお弁当でした?」

「……はァ?」

 

 一瞬、理解が追い付かなかった。

 目を左右に泳がせ、意を決して発言した雰囲気を漂わすワカモの姿に、一方通行は思わずそう言葉を滑らせてしまう。

 

 彼が正常に戻ったのは一秒程が経過してから。

 

 次いで、何を言い出したかと思えばそんなことかと呆れたのも一秒後だった。

 アビドスの面々と弁当を分け合った為、一方通行は全員の弁当からそれぞれの食材を一口ずつ味わっている。

 

 しかし当然、弁当はそれぞれが思考の果てに組み合わせた多数の料理を組み合わせることによって生まれた食事であり、一口ずつで安易に測れる物では無い。

 加えて無暗にランク付けするべき物でも無い。

 如何に手料理に疎い一方通行と言えど、それぐらいの弁えは心得ている。

 

 あれはワカモ達の誠意であり、そこに数字の序列をつけるのはいくら何でも野暮だ。

 なので一方通行ははぐらかすしか選択肢が無い。

 

「……美味かった。それだけじゃダメか?」

「んぐっっっっっ!!!??」

 

 はぐらかす為に選んだ言葉は歯に衣着せぬ本音。

 しかしこれはワカモにとっては相当な攻撃力を持つ言葉となって襲い掛かった。

 爆発音が聞こえてきそうな程に、彼女の顔色が瞬く間に真っ赤な物へと変化する。

 

 ここで彼の普段の言動を思い返してみよう。

 一方通行は基本的に不愛想な人間である。

 

 頼みごとをすれば『面倒臭ェ』が最初に飛び、

 嬉しいことがあったと報告すれば『そォか』の一言で終わってしまい、

 料理を評価する時に用いる言葉は『悪く無い』である。

 

 言ってしまえばコミュニケーションを広げる意志が彼は希薄なのである。

 こんな彼のダメさに惚れてしまった少女もいれば、ここが良いとして惚れてしまった少女もいるし、ここでは無いもっと別の、彼の本質的部分に惹かれてしまった少女もいる。

 

 閑話休題。

 

 以上の事から、一方通行は美味い等と言った直接褒める単語は基本的に用いないし、自ら会話を広げようとする意思も薄い。

 

 なのに、だ。

 今、彼は素直に美味かったとワカモを褒めた。

 それも少しばかり申し訳なさそうな顔で。

 いつもの威厳さがある表情とは違う、どこか小動物を彷彿とさせる雰囲気で、彼はそんなことをのたまった。

 

 言ってしまえばこれはかなりの大事件。

 ワカモからすれば奇跡的瞬間を目撃してしまった当事者になったのだ。

 

 パニックになるなと言うのが無理な話だ。

 もっと正確には、惚れ直すなと言うのが、無理な話だ。

 

 従って、冷静なままではいられなくなったワカモは顔を真っ赤にしてしまうのも道理の通った話でしかないし。

 

「ダ、メじゃな、いです……!!」

 

 もじもじと人差し指と人差し指を何度もつき合わせ、しおらしく敗北宣言をしてしまうの無理は無い話であった。

 

 期せずしてワカモの猛攻を一撃で掻い潜った一方通行はどうして彼女が急に押し黙ったのかについて疑問符を浮かべつつ、これ以上ワカモからの追及は免れたなと胸を撫で下ろす。

 

「ああやって生徒を落としてるのね……」

「一流の男は良い女を隣に置いておく物よ。あれぐらいして貰わないと」

「アンタ、いや、アンタ達って結構先生を妄信してるわよね」

「わ、わ、私もい、いつかあんな風に先生と、お話、出来るでしょうか……」

「ちょっとライバルが多すぎる気がしますよね~。どう戦いましょうか」

 

 一方通行とワカモのやり取りを遠巻きで見ていた少女達からヒソヒソ声が飛び交う。

 聞こえてるぞ。と、指摘するのが優しさなのか、それとも聞こえていない体を装うのが正しいのか、今一判断を決めあぐねていると。

 

「待って先生」

 

 ピシャリと、その場の空気を一変させる鋭い声がシロコから迸った。

 

 周囲の雑談がピタリと止まったのは、シロコが静止を訴えた直後。

 それは何でもない会話の一環だったかもしれない。

 ただし、彼女が放った声色で全員が敏感に嗅ぎ分けた。

 

 シロコが言った待っての指示は、緊急を要する物であると。

 

「前方に誰かいる」

 

 その声に、全員の足が止まった。

 

 何かでは無く誰か。

 そう発したシロコの言葉に、一方通行を除く全員が一斉に歩くのを止め、各々が自身の武器に手を掛けた。

 

 先程までの和やかな雰囲気がガラっと変わり、瞬時に緊張の糸が張り詰められる。

 

 こんな場所に自分達の向かう方向からやって来る謎の人物。

 こちらに向かって来る何者かがいることをシロコが見つけものの、その距離はまだ遠い位置なのも相まって個人を特定することは出来ないが、詳細不明の誰かの頭にはヘイローが浮かんでいることからどこかの学校の生徒であることは確定だった。

 

 ならば尚更。警戒が高まる。

 むしろ、警戒するなと言うのが、無理な話だった。

 

「私達みたいに雇われた誰かかしら?」

「裏切り者のアルちゃんを始末しに来たのかもね」

「ア、アル様を始末に!? ぜ、絶対にさせません」

 

 好き勝手な推理を披露する三人を尻目に、一方通行は前方を凝視する。

 便利屋一行の始末にあてがわれた追手かどうかはかなり疑わしいが、それでもこの場所にわざわざ反対方向から現れる者が味方である確率は限りなく低いと言わざるを得ない。

 

 敵であると、判断するのが確実かと、彼は割り切る。

 

「全員、いつでも戦闘に入れる準備をしておけ」

 

 距離こそ遠い物の、いつ状況が動いても対応できるように短く指示を飛ばす。

 シロコやワカモがコクンと頷いているのを横目で確認した彼は、それ以上左右に気を配らず、前方だけに意識を集中させる。

 

「……ッ!?」

 

 そして、僅かに目を見開いた。

 

 次いで表出した感情は、あり得ない。だった。

 

 どうして彼女がここにいる。

 何故、こんな場所で向こうから歩いて来る。

 

 どういうことだ。

 そんな気持ちが、心の中を支配する。

 

 一瞬、見間違いかもしれないと己の心を疑った。

 だが、そうでは無いと心が彼の感情を却下した。

 

 一方通行は、アビドス砂漠と言う廃墟と化した地で出会うことになる。

 ここに居る筈の無い少女との遭遇を。

 

 

 

 











今回から試験的に段落下げを導入しています。
個人的に横書きの媒体だと要らないと思っているのですが、見栄えが良くなるなら使わないに越した事はないのでお試しということでここは一つ。



それなりに息抜き回……なのかもしれません。
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