狂おしいほどに、彼女を   作:荼枳尼天

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どうもはじめまして。
一発ネタです。
続きません(多分)


名前も知らない

 

 

 

 ───黒、というのは深まれば深まるほど美しい。

 

 

 友人が言っていた。

 

 目の前のコレが、深まった黒、というやつなのだろうか。

 

 腸を彩るような赤で縁取られた、闇とは違う暗い極光。

 

 束ねられた闇、いや、黒き極光、極まった光、この表現がやはりあうだろうか。

 

 

 迫りくるソレは、友人が言うように美しい。

 美しいが、とても悲しい。

 

 汚濁に塗れている。

 

 穢されている。

 

 凌辱されている。

 

 黒く暗い、その光の有様に俺はどうしようもなく悲しくなった。

 

 

 今や視界を埋め尽くすほどの漆黒の極光で見えなくなってしまった、目を隠した彼女。

 

 美しかった。

 

 一目見た瞬間、どうしようもなく、狂おしいほどに、惚れてしまった。

 

 

 ───ああ、なんとも、あっけない幕切れだ。

 

 

 けれど、俺は知った。

 

 彼女の存在を。

 

 知ってしまった。

 

 

 彼女は、想い人の前ではどんな顔をするのだろうか。

 

 知りたい。

 

 そもそも彼女の目元を知らないな。

 でもあの口元から容易に美人であることが想像できる。

 想像でしかないけど。

 

 知りたい。

 

 

 彼女がなぜあんな格好をしなきゃならなかったのか、彼女がどんな過程を経てあのような威容を得るに至ったのか。

 

 知りたい。 

 

 

 あのきつく閉じられた唇が、笑顔を形作る瞬間を

 

 知りたい。

 

 

 

 ───ああ、死ぬのか

 

 

 この光は、冷たいのだろうか、それとも熱いのだろうか。

 

 痛いのかな、痛いんだろうな。

 

 でもやっぱり、後悔があるとしたら彼女と数分しか話せなかったことだろうか。

 

 ほどなくして黒き極光が俺の体を蒸発させた。

 

 

 

 

 鮮やかで汚い赤色と辱められた黒色の先で無垢な黄金を垣間見た気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カルネ村。

 

 木々の間を縫うように走る、追う者と追われる者の影があった。

 追う者は甲冑をまとった二人組で、追われるもう一方はいかにも村の住人といったような装いで間違えても武装した者、騎士に襲われるような人間ではないように思える。

 

 走る速度はお世辞にも同じとは言えず、騎士がどんどんと距離を詰めている。

 

「はぁっ、はぁっ」

 

「追いついちまうぞ~!ほら走れ走れ!」

 

 嘲笑が追われる者、エンリ・エモットの耳に届く。

 片手につながれた妹のネムの手は震えていて、表情からも限界が見て取れた。

 

 そしてついに、ネムが足元の石に躓き転んでしまった。

 

「ネム!!」

 

「あーあー、転んじゃった、ねぇ!!」

 

 転んだネムに騎士がすぐに追いつき、剣を振りかぶった。

 それを見たエンリはネムに覆いかぶさり庇う。

 振り下ろされた剣はエンリの背中を袈裟懸けに切り裂き、少なくない血を流させた。

 

「ぐうぅ!!」

 

「おい、早くやっちまえよ。こんなとこで油売ってたら隊長に絞られちまう」

 

「へいへい。うつくしい姉妹愛に祝福をってな」

 

 騎士は確実にとどめを刺そうと剣を両手に持った。

 突き刺すつもりなのだろう。

 

「おねえちゃん!」

 

「ネム…!」

 

 エンリの脳裏をよぎるのは両親が自分たちを逃がすために騎士に縋り付いている光景。

 

(ネムが逃げる時間だけは、稼がないと…!)

 

 身構えるエンリ。

 

 だが、いつまでたっても剣が振り下ろされない。

 

 エンリの耳に入り込んでくるのは騎士の動揺の声ばかりで、困惑したエンリは目を恐る恐る開け騎士のほうを見る。

 

「な、なんだ」

 

 目に入ってくるのは何か恐ろしいものを見たのか後ずさる騎士たちの姿であり、騎士たちの視線の先にエンリも目を向ける。

 

 穴、そう形容するほかないものが虚空に開いていた。

 

 ズズズ…とその穴から出てきたのは、とてもこの世のものとは思えないような恐れをまとった、死の王と表現することしか許されないようなモノであった。

 

「≪心臓掌握/グラスプ・ハート≫」

 

 そう、死の王もといモモンガが言うと手の中に赤黒い塊が現れた。

 モモンガは赤黒い塊、心臓をためらいなく潰す。

 

 するとモモンガの前にいた騎士の一人が膝から崩れ落ちた。

 心臓を握りつぶされ死んだのである。

 

「この世界の人間に私の得意とする死霊系、その中でも高位な第九位階魔法が効かなければ逃げるしかないと思ったのだが…」

 

「ば、化け物!」

 

「…女子供は追い回せるのに少し毛色が変われば威張り散らすこともできんか?」

 

 モモンガの骸骨の眼孔の奥で赤い光が強くなり周囲をうならせるほどの威圧感を発した後、モモンガは言い放った。

 

「せっかく来たんだ。無理やりにでも実験に付き合ってもらうぞ」

 

「ひ、ヒイイイイイイイイイ!!」

 

 凄みに耐えられなくなった騎士は駆け出す。

 だがそれを許すものはどこにもいなかった。

 

「≪龍雷/ドラゴン・ライトニング≫」

 

 のたうつ龍のような白光がモモンガの手から発生し、騎士を貫く。

 瞬間、騎士は生命の鼓動を終わらせた。

 

「弱い…」

 

 そうつぶやいた後、モモンガはエンリ達姉妹を一瞥し次いで魔法を発動させるべく口を開いた。

 

「≪中位アンデッド作成/デス・ナイト≫」

 

 

 ここで、モモンガは違和感を抱くことはなかった。 

 原因はひとつ。

 モモンガが故知らぬ土地で初めてデス・ナイトを作成したことであり、いわゆる経験不足が原因であった。

 ふつうのデス・ナイトが生成される現場を知っていれば気づけたことであろう。その違和感に。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その泥は、ばちゃりと音を立てて落下しもぞもぞと蠢いている。

 

(げっ、汚いな…泥?ユグドラシルとは違うな…)

 

 その泥はその体積をどんどん成長させていく。

 成長しきる前に、モモンガは若干の疑問は持ちつつも待っていられないと指令を出す。

 

「デス・ナイト。この村を襲っている騎士を殺せ」

 

 その命令に泥の塊は数瞬遅れはしたが、反応を示し消えるようにしてその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 揺蕩うような感覚。

 

 ぬるま湯に浮かされた感覚。

 

 その感覚たちはすぐに消え去り、俺は地に立たされた。

 視界は暗く定まらない。

 

 だが、その暗がりに、俺の知らない()()()()相手がいて、俺が()()()()()剣を持っているのは、よくわかった。

 

 だから俺は言われた通り、()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体が強張り、歯の根が合わない。

 地震にでもあったかのように体の震えは止まらないし、汗が止まらない。

 

 そんな感覚をその場にいた騎士全員が感じていた。

 

 ───目の前のアレはなんなのだ。

 

 感覚も思考も全員が共有していた。

 160㎝にも満たない身長であるにもかかわらず、巨竜のような威圧感を我々にたたきつけてくるアレはなんなのだ。

 

 全体的に華奢であるにもかかわらず、勝てないと本能的に感じるアレはなんなのだ。

 

 

 そして騎士たちは気づく。

 決して目の前の漆黒の騎士の由来に関することではない。

 

 眼前の漆黒の騎士から溢れ出ている赤黒い魔力が無尽蔵な上に次の瞬間には自分たちに振るわれるのだと気づいたのである。

 

 体が華奢?

 バカな。あそこまで大きい魔力があるのなら皮膚から骨に至るまですべて強化してしまえばいいだけの話だ。

 

 目が乾くほどに見開かれているそれから発せられる視線が何重にも重なって漆黒の騎士に注がれる。

 目が離せない。

 離した瞬間消えてなくなり自分たちの首を切り取ってしまうのではないかと、不安になるからだ。

 だがそれは間違いであり、合ってもいる。

 

 それはなぜか。

 

「鬱陶しい」

 

 そう漆黒の騎士が口にした瞬間。

 その場にいた騎士は皆がみな漆黒の騎士を見失い、次の瞬間、隊長の首が跳んでいたからである。

 

「……」

 

 血を吹き出しながら倒れる隊長の体が気にならないほどに、漆黒の騎士から目が離せない。

 

「どうした?構えるがいい。そのなまくらを」

 

「ば、ばけもの」

 

「ひっ、ひいいいっ!!」

 

 うろたえる騎士たちを前に漆黒の騎士は膨大なほどの魔力を剣を起点に噴出させ、こう呟いた。

 

「見るに堪えんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おねがいします。
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