東方時刻烈伝 〜夢見る緋時計〜   作:マデュラ

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これは忘れられし物語なり。

 ここに全ての始まりを、まことを書き記す。

 口外すること、固く禁ず。

書き写すこと、固く禁ず。

深識すること、固く禁ず。

 知れば、この世に紅く時化った災ひを呼ぶことなるだろう。

 さりとて、まことの知りたき者は、認識す資格を与へむ。

 


 縺の願ゥア繧剃コ梧ャ。蜑オ菴懊r諢帙蜈ィ縺ヲ縺ョ莠コ縲↓謐ァグ

神は死んだ。
午後四時丗分(30分)、空の賢者共は我らを███殺しの大犯人にて、かの地より追放せり。

 (とが)なすり付けけり。静謐(せいひつ)の声と名の為に。

 我ら紅く時化(しけ)った世にさし込められき

 ゆめはむ幻想はむわれら叫号(きゅうごう)のけをのばす

 名の時にひか差す

 とがのき やまいのき われら絡繰(からくり)の生をほふる

 紅たる なとる うさばらし

 ひくい よみくい われらうつつのせきとおる

 白昼(まど)はす返った煌声(きょうせい) 今こそ その羽根を欠如(けつじょ)の皿に盛り付けよ

 偽善(ぎよ)(けい)(しょう)じし前頭葉 病みし瘴気色(しょうきいろ)とともに その邪身(やみ)あるじしの(はい)に捧げよ

 眼瘴(がんしょう)に犯されし黙す五十七の僻事(へきじ) その功過(こうか)にしけり たゆたふ月の(うた)を遊べ

 もうまいにわらふめん かぶりしまことが うをむきしところでなんとなる

 揮発(きはつ)する夢が 苦し実砕く所業(しょぎょう)こそ 堕落たるや

 言之葉(ことのは) 歯車の目裏(めうら)(うるし)のごとく 張り付かむ

 正義の戯れ言(ざれごと) (さかな)に新地平を呑む機械なり

 サカシミ サカシミ

 うけひたまわり めでたきさかさこうべもたらすこと ねがひけれ

 いまこそ てにいれむじゅうにの刻死

 いまかいまかとまちわびたる

 緋色の時計 いまに███へのとき 刻め

 これは忘れられし物語なり



緋劇のプロローグ

 

一体、誰だ。こんなものを()()に持ち込んだのは。

 ろうそくの薄明かりが照らす暗がりの図書館で、八雲(やぐも) (ゆかり)は、静かなため息と共に髪をかきあげた。

 本当は苛立ちのままに暴れ散らしたかったが、時刻は丑三つ時。そんな事をしたら館の住人にバレてしまう。

 しかし、彼女の情報は()()()()()。その事実は、紫の中にやり場のない怒りを渦巻かせる。

 

「いかがいたしますか、紫様」

 

 薄暗い後ろから、紫の式神(九尾狐)八雲(やぐも) (らん)の声が聞こえる。その声は、少し震えていた。

 それに気づいた紫はゆっくり息を吐き、精一杯の力で頬を叩く。そして再び息を吐き、振り返る。

 どうやら、冷静さは取り戻せたようだ。

 その証拠にいつもの生真面目な顔が見える。先程までのか細く泣きそうな声などなかったかのように。

 

「まず、博麗大結界の警戒レベルを最大限に引き上げなさい。

 次に、お外のお偉いさん(クソガキ)共に、予定空けとくよう、伝えといて」

「外の連中にも、伝えるんですか?」

「念の為ね。外堀を埋めとくためよ。

 あと、これは()()しといてちょうだい」

 

 紫は一枚の紙を藍に差し出す。

 

「承知いたしました、()()()

 

 目を通すことなく青白い狐火と共に、紙は藍の手の中で消えた。

 相変わらず、物分りの良さに感心する。

 だからこそ、今から言うことの申し訳なさで心がいっぱいになる。

 

「あーゴメン。あと、もう1つ。

『賢者達』に招集をかけてちょうだい」

 

 やはり、藍の眉間に皺が寄った。

 仕事が増えたことにでは無い。その仕事が面倒極まりないからだ。

 

「彼女達が、いまさら招集に応じるとでも? 

 会合は、()()()()()()()()()()んですよ」

「あなたが言いたいことは分かっているわ。けど、彼女の言葉が()()なら、これまでに、一千九百七十五万と二千三百八十六回は出会ってる。

 今回も、()()()()()()()

 

 藍は納得いかない表情だった。無理もない。

 たとえ、例の彼女が真実を語っていたとして、この紙は単なる予言に過ぎない。()()()()()()()()()を信じるのは難しい。

 しかし、出来ることはやっておかないと、後で後悔するものだ。

 過ちは、繰り返さない為にあるのだ。

 

「頼んだわよ。あなたは私の従者なんだから、出来ないって言わないでよね」

「それ、外ではパワハラですからね。

 まぁ、何とかします。時間はかかると思いますが、何とかします」

 

 ブツブツと文句を垂れる藍と共に、紫はスキマの中へと進む。

 スキマの外はひらけた草むらだった。見回しても怪しげな影は無い。

 しかし、気は緩まない。

 どんな認識阻害の術式を使えど、あの門番がいる以上、この計画に杞憂(きゆう)すぎるということはない。

 

(ちぇん)、異常は無いわね?」

 

 紫のささやき声に呼応するように、尾が二又の猫が水仙の葉を掻き分け、現れた。

 猫は頷き、辺りを見回す。

 

「はい、問題ないです。

 念の為、言われていた二倍の範囲で、思考探知術式を張り巡らせてますが、今のところ、こちらに気づくものはいません」

「ありがとう橙。もう、術式を解いていいわ」

 

 橙と呼ばれた猫は一転し、幼い少女の姿に戻る。成り代わりの術式も完璧だ。

 さすが、やはり有能な式神の式神は、有能と言うべきか。

 いくら簡単とはいえ、思考探知の術式は範囲が広ければ広いほど、維持するのが困難なものだ。

 それに指示していた範囲も、半径が十五キロとけっして狭くない。普通の術式使いなら、二分と持たないだろう。

 式神の式神が、ここまで出来るとは思いもよらなかった。橙を()めていたと言うより、藍の指導を()めていた。

 なんせ、これだからだ。

 

「ちぇえええええええええん! よくやった! ごほーびは何がいい!? マタタビか? マタタビ欲しいのか? マタタビ……イヤしんぼめ!」

 

 親バカ、というより主バカと言うべきか。抱きつかれてる橙の愛想笑いが、よりいっそう哀れに思えてくる。

 ただ、いつもの事だ。紫は

助けを求める橙を丁寧に無視する。

 それよりも、後ろに(そび)える建物をじっと見つめていた。

 立派な満月が、雲の隙間から建物を照らす。

 建物の名は、【紅魔館】。

 ここに、あの紙が有ったのはなんの因果か。単なる偶然か。それとも、まだ見ぬ意志の介在によるものか。

 それは、まだ分からない。しかし、好きにはさせない。

 ここは、最後の方舟(はこぶね)

例え、どんな犠牲で溢れようと守ってみせる。

 あの人がそうしたように。

 

「帰りましょう、紫様」

 

 藍と橙が待っている。

 感傷に浸るのは、また今度にすることにした。(わずら)わしい程の忙しさが、すぐそこまで来ている。

 今日は少し休むことにしよう。

 

「そうね」

 

 三人は、再びスキマの中へと消えた。

 月明かりで照らされた辺りは、開くことを夢見る水仙だけがゆらゆらと揺れるだけだった。

 幻想郷の夜は始まったばかり。夜明けはまだ遠い。

 

 

《続く》




初めまして、マデュラです。
初っ端から、大好きなものをぶち込んだごった煮作品ですが、何卒暖かい目で見守っていただけると幸いです。

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