ワンサマー? いえ、『,;゙ ・ω・;, 』です。   作:全智一皆

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CHAPTER3
第九話「新たな転入生」


 

■  ■

 クラス対抗戦中の、ノーマルが乱入してきた事件から数日が経った後、

「シャルル・デュノアです。」

 フランスから、代表候補生の“少年”であるシャルル・デュノアが転入して来たのである。

「…」

 今月で何人目だ、と首輪付きは驚いていた。

 イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットは入学当初から居た訳だが、その後に中国の代表候補生である鳳鈴が転入してきた。

 その次はフランスの代表候補生、そして―――

「ラウラ、自己紹介しろ。」

「はい、教官。」

「…ここでは織斑先生だ。」

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 ドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。

 代表候補生のバーゲンセールか? と言いたくなってしまう程の代表候補生連続転入に、首輪付きは驚かずにはいられなかった。

 同時に、考えられずにもいられなかった。

(幾らIS学園がIS操縦者達にとっての楽園が如き場所であるとしても…こんな短期間で三人の代表候補生を寄越す事があるのか?)

 鳳鈴の転入、そしてシャルル・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒの転入。

 代表候補生の連続転入に、首輪付きは何処か引っ掛かり、思考を巡らせていた。

 代表候補生の連続転入。こんな事例は、ISについて勉強を続けている首輪付きも聞いた事がない異例の事態であった。

 だからこそ、首輪付きは深く考え込んでいた。

 何か裏の目的が有るのではないか? 軍事的目的が有るのではないか? そんな事を、もしもでしかないかもしれない事を、真剣に考えられずにはいられぬのだ。

 そんな、深く考え込んでいた時に。

 ブンッ! と、何かが振るわれる音を拾った。

「ッ!」

 何をされるのか。何が振るわれたのか。獣は直感で、それを理解した。

 体の重心を後方へと投げ飛ばし、ガタッ、と、椅子と共に敢えて後ろへと倒れる。

 自分に振るわれた何かは空を切り、そしてそれを振るった“本人”は目を見開いた。

 ゴンッ! と、少女の眼前に白い木材―――もとい、机が、投げられた石のように飛んできた。

 首輪付きが、後ろ側へと倒れる際に“彼女”の方へと机を蹴り飛ばしたのだ。

「ふっ!」

 バギッ!

 大きな片腕が、少女のISが、自らに向かって投げられた障害物を、握り潰して粉々に粉砕する。

 首輪付きは態勢を立て直し、無表情ながら敵意を剥き出しにして構えを取る。

 片やISを使える少女。

 片や汚染の為に武器を使えない傭兵。

 相手は機械。されど、打開策が無い訳ではない。

 例え生身であろうとも―――攻略は出来る。姉がそうであった様に。

「貴様…織斑一夏。噂に違わぬ手練だな。」

「…現代のIS部隊の隊長に褒められるとはな。感謝の極みだ、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐。」

 ドイツのIS配備特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』の隊長を務めるドイツの代表候補生―――ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 現代の戦場を駆けた兵士と、かつて荒廃した世界を駆けていた傭兵が、此処で邂逅を果たした。

 

□  □

 ラウラ・ボーデヴィッヒは織斑一夏の事を憎んでおり、そして嫉妬している。

 織斑一夏が誘拐された事が原因で、彼女の師である織斑千冬はISの公式世界大会『モンド・グロッソ』の最終試合を辞退する事となり、世界最強としての名誉に汚名を付けられる事となったのだ。

 非力な男。面汚し。それが、それまでラウラ・ボーデヴィッヒが思う織斑一夏の感想であり、罵倒だった。

 だが、しかし―――

(コイツは…本当に、学生か?)

 眼の前に立つその本人は―――決して、そんな弱い存在などではなかった。

 ISを前にしようと、恐れるどころか、怯えるどころか、勝利を確信して立ち向かおうとしている。

 顔は無表情だが、その身からは『お前は敵だ。殺さなければならない敵だ。』と伝えんばかりの敵意が溢れている。

 何より―――その目が、学生がするものではなかったのだ。

 その目は兵士―――否、数多の戦場を渡り歩いてきた傭兵のもの。

 世界の絶望を、世界の破滅を見てきたような、黒い瞳。

 決して、学生が持つ平和ボケした目の色ではなかったのだ。

「貴様ら…学園内で争うとは、良い度胸だな…?」

 その声を聞いた瞬間、ラウラは青い顔をして振り向いた。

 背後に立つは―――握り拳を浮かべる織斑千冬だ。

「きょ、教官…」

「待て、ね…いえ、織斑先生。最初に攻撃してきたのは彼女なので、貴様らという言葉は間違っていると思います。」

「机を蹴り飛ばしただろう?」

「…粉々にしたのはボーデヴィッヒです。」

「だが、蹴り飛ばしたな?」

「………ボーデヴィッヒ、後はよろしく頼む。」

「はぁ!?」

「生憎、本気の姉さんを相手取る事が出来る程、強くはないのでな。」

 体が体だからな…と、一夏は呟きながら、教室の扉へと一直線に駆け出した。

「逃げ出したら、どうなるか…分かっているな? 織斑。」

 だが、彼女の口から放たれたその言葉を聞いて、彼は静かに元の場所へと戻ったのだ。

 世界最強の姉。本気で怒っている姉。“体の構造上”によって生まれる力差だけは、首輪付きにもどうする事も出来ずにいた。

 生まれた時から、彼と彼女には明確な差が有ったのだ。

 技術によってそれらの差を埋めていた彼だが、しかし、それだけは―――“体の構造から来る本来の力量”だけは、どうにも出来ないのだ。

 何せ、織斑一夏は、本来の織斑一夏という一人の人間の存在は―――織斑千冬という“完成品”に比べれば、ただの失敗作でしかないのだから。

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