ワンサマー? いえ、『,;゙ ・ω・;, 』です。   作:全智一皆

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第六話「首輪付きの戦法」

 

■  ■

 クラス対抗戦、その第一回戦が織斑一夏と鳳鈴音の試合であるという情報は、すぐさまIS学園全体へと伝わった。

 イギリスの代表候補生に圧勝した一年一組のクラス代表「織斑一夏」と、中国の代表候補生「鳳鈴音」の試合など、見逃さない訳も無い。

「…俺が使用出来るISは第二世代の打鉄。しかも、その欠陥型。その武装はブレードのみ、か。まさか、“ブレオン”を扱う事になるとはな。」

 ブレオン―――それは、ブレードのみを装備した事による超高速の近接戦闘を可能としたネクストと、その主な戦術の名称である。

 アサルトライフルやロケットランチャー、ミサイルや弾倉といった重火器を所持せず、ただエネルギーブレードのみを装備したネクストは、従来の高速を更に越える超高速度を得る。

 その身軽になった事による超高機動から繰り出されるブレードの斬撃は、敵ネクストのプライマル・アーマーを意図も容易く削り切る。

 名の有るリンクスであろうと、ブレオンを駆るリンクスを相手取るのは中々に難しい。

 まぁ、彼が駆るのはネクストではなくISである為、そのような超高機動による近接戦闘は出来る訳も無いのだが。

「…状況は既に手遅れだが、同時に緩慢、か。」

 かつて宇宙へと進出を望んだ、最悪の反動勢力、その団長の言葉を借りながら、彼は一人、セシリアとの決闘が行われた場所―――バトルアリーナへと歩む。

 何度も言うように、彼はISの操縦に関してはからっきしの初心者である。

 ISにAMSが付いているならばいざしらず、しかしISにはそのような便利な機能は付けられていない。

 となれば、ISを手足のように動かす事など出来る訳も無く、またクイック・ブーストによる撹乱やオーバード・ブーストによる特攻も不可能。

 イグニッション・ブーストは軌道が単純な上に、オーバード・ブーストよりも加速があまりにも遅い。

 ネクストの高速機動やVOBに慣れている彼からすれば、イグニッション・ブーストなど、現代で例えるならば一般車程度のものでしかないのだ。

「すまな…いえ、すみません、お待たせしました。」

「いえいえ、そんなに待ってないですよ。えっと、決闘の為の訓練でしたよね?」

 常に言われているにも関わらず、未だ完全に治らない大人への崩れた口調を正す。

 そんな様子を見て、彼女は―――山田真耶は柔らかく笑う。

 初心者である彼がISに慣れるのは、やはり時間が掛かる。

 故に完全とまでは言わずとも、実戦訓練を得て、少しでも成長が出来れば程度のもので良い。

 その為の訓練相手としては―――『元日本代表候補生』山田真耶が丁度良い。

「はい。少しでもISの扱いに慣れておきたいので―――だから、手加減は無用だ。」

「…分かりました。では、手加減無しで行きますよ。」

 互いにISを展開し、己が身に宇宙を纏う。

 白鉄の鎧を思わせるフレーム、そして手に持った反った流麗な刀身。

 第二世代IS―――『打鉄』。しかも、その欠陥機。

 本来ならば日本刀型の近接用ブレード「葵」と、アサルトライフルの「焔火」の二つが有る筈なのに、そのアサルトライフルが故障してしまった為にブレードのみしか使えないとように、完全なるブレオン機体である。

(まずはブレオンらしく―――斬って引いてだな。)

 刀身を構え、紅蓮を息吹き、首輪付きは即座に山田へと斬り掛かった。

 イグニッション・ブースト。それはIS運用における加速機動技術の一つ。

 スラスターから放出したエネルギーを再び取り込むことで、都合2回分のエネルギーで直線加速を行う技術である。

 軌道の変化が出来ない事はないが、しかし無理な軌道変化は機体と操縦者に負荷を掛け、最悪の場合は操縦者に骨折などが起こる可能性すら有る。

 彼からすれば、この技術は欠陥だ。故に、扱う事は無い。

(エネルギーを取り込むまでにラグが発生するIB、そして一つのエネルギーを消費して加速する普通のブースト―――要するに、原理はネクストのブーストと同じだ。なら―――)

 QBと同じ原理でやれば良い。

 ブーストに回るエネルギーを―――瞬間的にプラズマ化させて、爆発させれば。

「はや!?」

 ブォンッッッ!!!!!!

 そうすれば、普通のブーストがIB並の加速になる。

 時間にして僅か1秒。その刹那で、打鉄の刀身が山田の眼前にまで迫っていた。

 そう―――ラファール・リヴァイブのフレームに、ではなく、山田真耶本人に、だ。

 最早、回避など不可能。刀身は山田の女体を呆気なく―――

 ギィンッッ!!!

 切り裂く事は、無論無かった。

 ISに備わっているシールド・バリアーによって彼女の肉体切断は、防がれた。

「…!」

 だが、決して攻撃は止まない。

 ゴンッ! と、振り上げられた打鉄の脚が、力強くラファールのフレームへと蹴りを入れ込む。

 綺麗な火花が散る。激しい衝撃が、彼女の全身に迸る。

 彼は、ISのシールド・バリアーについて、ある一つの疑問を抱いていた。

 シールド・バリアーは直接的な攻撃のみならず、“直接攻撃によって生じた衝撃のような間接攻撃をも防ぐのか?”と。

 見る限り、答えは否。シールド・バリアーは、衝撃までは殺し切れていない。

 であるならば。

(鈴との戦い…いや、ISでの戦闘の際はこうして本体にダメージを負わせながら戦うか。その方が操縦者にも後々、痛く効いてくる筈だ。)

 戦法、戦い方は確定。後は、この戦術を活かせるか、どうかである。

「っ…つ、強いですね、織斑くん。」

「…(ISでの実戦は、これが初めてなんだがな…)ありがとうございます。」

 壁に打ち付けられた未だ痛みが残る体を、何とか立て直した山田が苦しみながら、首輪付きに、強いという称賛の声を掛ける。

(確かに手加減無しとは言ったけど―――まさか、“本気”で掛かるなんて…)

 山田は、彼の戦いへの態度に衝撃を感じずにはいられなかった。

 これで初心者? ISでの実戦経験皆無のルーキー?

 ドコが初心者だ。ドコがルーキーだ。

 眼の前にしている相手が初心者であるなどと、山田は認識する事が出来なかった。

 相手は、完全なる格上。

 数多の戦場を越えてきた歴戦の戦士だ。模擬戦すらも『確かな戦場』として認識し、一寸の油断すらせずに、ただ勝つ為にあらゆる手段を尽くすその姿は―――『傭兵』にしか、見えないではないか。

 

□  □

「うわぁ…なにこれ? 全っ然、分かんないんだけど。」

 此処は空、高度7000mに浮遊している人参のような形をした巨大なラボ。

 その中で、御伽話である不思議の国のアリスに登場する主人公の少女「アリス」のようなファンシーな格好をした女性―――篠ノ之束は、頭を抱えていた。

「新物質なのは確かなんだろうけど、それ以外が全く分からない…天才である束さんでも分からない物質とか、コレどういう代物なの?」

 パソコンの画面に写っているのは、IS学園のアリーナでのセシリア・オルコットと織斑一夏の決闘場面。

 織斑一夏が――否、首輪付きが、『ホワイト・グリント』を使用し、最後にトドメとして『アサルト・アーマー』を使用した場面である。

 ホワイト・グリント―――彼女にとっての白式が身に纏う翡翠色の粒子を、彼女は研究し始めていた。

 だが―――

「あぁぁァァァァァァァァァァァァ!!!!!!! もう疲れたーーーーー!!!」

 天才である彼女が、情けなくそんな声を上げてしまう程に、その粒子は理解不能なモノだったのだ。

「分子構造から何から何まで、さっぱり分かんない! エネルギー的な利用が出来るんだろうけど、どれだけのエネルギーを生み出して、尚且つどんなデメリットを生み出すのかも分かんない! というか束さんでも理解出来ない物質とか、あまりにも危険過ぎる!」

 乱暴に、自分の頭をワシャワシャとしながら、束は悲痛な叫びを上げる。

 ISという、マルチフォーム・ユニットスーツを発送し開発した天才である篠ノ之束ですら理解する事が出来ない新物質。

 彼の世界で言うところの―――『コジマ粒子』。

 高い軍事利用能力を潜めたそれは、世界を荒廃させた力の一つであるネクストのみならず、エネルギー発電などの一般技術にも利用されている。

 だが、その高いエネルギー効率を小さくしてしまう程の強烈なデメリット―――高密度かつ長期な環境汚染という欠陥が有る。

 大地を砂にし、空気を汚し、人の身を滅ぼすそれによって、世界は崩壊の一歩を辿ったのだ。

 故に、彼女の発言も強ち間違いではない。

 危険極まりない代物―――それは、確かな事だ。

 

『なら、身を以て体験してもらおうじゃないか。』

 突如、パソコンから男の声が発せられた。

 

 ガシャンッッッ!!!

 豪快な音が鳴り響く。巨大な砲身が、その姿を現して空高く構えられる。

 

《―――不明な ットが――― 接ぞく……… した。》

 

 ピー、ピー、ピー、ピー―――と、システムが警告の嵐で埋め尽くされ、エラーを発生させて慟哭を上げる。

 

 ギュイィィィィィィィィ―――――――――

 力が満たされていく。

 

それは何もかもを焼き尽くす。

 破滅が固められていく。

 

この世の全てを悉く踏み潰していく。

 

 本来ならば使われる筈が無かった物質が使われ、威力を増したソレ。

 

 ブオォォォォォンッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 耳を壊し、頭をかち割るような激しい轟音が世界を揺るがす。

 黒煙が砲身から漂う。蒼白い閃光が、世界を黒く焼き尽くす。

 

 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 全てを焼き尽くす暴力、その一つが―――この世界を滅ぼす要因を、最悪の天災「篠ノ之束」を…消し去った。

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