シンボリルドルフ達と泊まる話&他etc   作:how-kyou

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やっとルドルフ登場じゃん。
これは頑張って書き切りたいものですね。


第二幕:皇帝が、扉を開く

第二幕:皇帝が、扉を開く

 

先ほどよりも強まってきた雨音を聞きながら…、

彼は机に肘をつき、

閉じた雑誌を前に、思考を巡らせていた。

 

(…いや、やっぱりおかしい。そもそも、良い大人である自分が「愛してる」なんて、軽々しく言うのはどうなんだ?……それに、もし彼女がわずかでも頬を赤らめたりしたら?)

 

自分は何を考えてるんだ。

そう否定しながらも、胸の奥では小さな炎が消えない。

もっともな理由をつければ…いや、正直に言えば、彼女に挑んでみたくもある訳だが。

 

額に手を当てて息を吐いた、その時だった。

コン、コン。

重厚な扉は、二度控えめに叩かれた。

 

「失礼するよ」

 

澄んだ声が室内の空気を切り替える。

扉が開き、雨を背に、考えていた彼女…シンボリルドルフが姿を現した。

雨は降っているものの、制服の上着は濡れていない。

冷たい外気がひやりと流れ込み、彼は反射的に背筋を伸ばす。

 

「もう『こんばんは』の時間かな?トレーナー君」

 

「お、おう。そうだな……遅くまでご苦労様」

 

普段と変わらない挨拶。

だというのに、声はわずかに上ずった。

彼女は扉を閉め、自然な歩みで机の前に立つ。

 

その仕草ひとつで皇帝としての理が通るのに、自分に見せる表情は柔らかい。

 

「仕方がないとはいえ……会議が長引いてしまった。ようやく解放されたんだ」

 

「そうか。最近…忙しいな」

 

うなずき、苦笑しながら、視線を雑誌の隅へ逸らす。

しまった、と思う前に、彼女の目も同じものを捉えた。

 

「……ふむ、その雑誌、トレーニング関係か」

 

「えっ、あ、ああ……まあ、そんなところだね」

 

「またいかにも君らしいな。向上心を欠かさない姿勢は、尊敬するよ」

 

くすっと笑う。

救われるはずの無邪気さが、このときばかりは胸の波立ちを増す。

(やばい、見られるか?見られるのか??いや、ページは閉じてある。落ち着け…俺)

 

彼女は表紙に視線を落とす。

 

「心理学特集か……ふむ、興味深いね」

 

「う、うん……」

 

鼓動を抑え込みながら相づちを打つ。どうする。

諦めて自分から切り出すのか?

いや、いくらなんでも性急すぎる…。

——そう思って顔を上げた瞬間、黄金の瞳が真っ直ぐこちらを射抜いた。

『隠し事は許さないよ』と言外に告げてくる。

どこまでも澄んだ目の光。

喉がきゅっと詰まる。

 

「…トレーナー君?」

 

「な、なんだ?」

 

「何か言おうとしていたんじゃないのかい?例えば——新しいトレーニングを閃いた。試してみたいが、その効果に確信が持てない、とかだろう?」

 

見抜かれている。

胸の奥がきゅっと窄む。

雨音が一段と強くなって、二人きりの部屋に細かな粒が降り積もるよう感覚だ。

 

(もう遅かれ早かれ、この記事は見つかる。ならば、こちらから提案すればいい。くだらない遊びで終わるかもしれない。けれど、これを口実に——伝えそびれていた感謝を、ちゃんと渡せる)

 

どうせ軽くいなされる。それでも構わない。することにこそ価値がある。

 

彼は深く息を吸い、吐いた。

指先で雑誌の表紙を、こん、と叩く。

 

「なあ、ルドルフ。ちょっと試してみたいことがあるんだ」

 

「聞こうじゃないか」

 

わずかに眉が動き、視線がさらに深く沈む。

雨音と脈拍が重なり、鼓動が耳の奥で数を刻む。

 

(目を覚ませ、俺。これは…冗談じゃない)

 

「心理的負荷をかける、短時間の対面訓練方法が載っていた」

 

言葉を選ぶように、しかし退路を断つように続ける。

 

「見たところルールは単純明快。お互いに、同じ言葉を言い合う。先に動揺した方が負け。……心の安定を、鍛えるんだ」

 

彼女は一拍置き、口角を上げた。

「なるほど。相分かった。君がそれほどまでに慎重に言葉を選ぶ訓練…という時点で、相応の効果が期待できそうだ」

 

「どうだろう。やってみないかい?」

 

「…その遊戯の名を聞こうか」

 

彼は短く息を呑む。

「——『愛してるゲーム』って言うんだ」

 

静寂。

秒針のない時計のような沈黙が、二人の間に落ちた。

彼女の睫毛がかすかに震えるのが見える。

雨脚はさらに強まり、窓面に細い川を走らせる。

 

「ふむ…ふむふむ」彼女は軽く首を傾けた。

 

「恥じらいを超えて自信を得る。心理的耐性の強化。理屈は通る。だが——」

 

「だが?」

 

「その言葉が、君にとって『訓練用の道具』に過ぎないのか…それとも、何か意味を伴っているのかい。」

 

逃げ道は用意していない。

彼は視線を逸らさず、わずかにうなずいた。

 

「……試す価値は、あると思ってる。とだけ答えようか」

 

「…いいだろう」

と、皇帝は静かに告げる。

 

「君の提案するその遊戯、試してみよう」

 




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