ソラニウタウトキ   作:kaito-18

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崩壊示唆

 

「はあ~、明日は二ヵ月ぶりに何もない休みスなあ」

「よかったねえ、スバルは頑張り過ぎだよ。そんなに格闘技を学ばなくても、ホロスタイルはイメージで動かせるし、自身の筋力は全然関係ないのに」

 地下事務所の食堂で、テーブルの上に突っ伏した私の頭を、ミオが優しくなでてくれる。

 

 ミオはホログラムライブSPYの一員であり、いわゆる諜報部員であった。普段は私たちと同じくアイドル活動をしているが、ホロスタイルの能力を使って、敵の情報を集めたり、出現ポイントを予測する役割を果たしているらしい。

 ホロスタイル G・M DIVINERの演者、大神ミオ。

 

 二期生はみんな、自由な末っ子という感じのキャラばかりだった。そして自分も例にもれず、面倒見のいいミオと何度か会っているうちに、すっかりなついてしまった。

 

「がんばってるスバルの運勢がどんなものか、うちが占ってあげるわ」

 そういうとミオはタロットカードを取り出した。

 テーブルの上にカードを配置し、順々にめくっていく。

 

「どうっス?いい感じっスか?」

 ホログラムライブのメンバー内でも、ミオの占いは当たると大人気であった。            

 私は自分の運勢が気になり、テーブの上に身を乗り出す。

 

「うーん、審判のカードが逆位置で出てるね、何かよくないことが起こるかも」

「えー勘弁してくださいよ」

「あ、塔のカードも逆位置だね、崩壊寸前のぎりぎりの状態で生き残ってる感じかも、正位置だったら崩壊していたから、よかったね」

「ぜんぜんよくねえっス!ああ、明日はどこにも行かずに、家で寝てるっス」

「そうだねー、ゆっくり休むのが吉かなあ」

 

 占いの結果にがっかりし、再びテーブルの上に突っ伏していると、食堂の自動ドアが開いた。

 自動ドアが開くと同時に、一匹の犬と、一匹の猫が勢いよく室内に侵入し、鳴き声を上げながら室内をぐるりと一周したあと、ミオの膝に飛び乗った。

 

「コロネ、おかゆ、どうしたの?」

 この犬と猫は、始めはミオのペットだと思っていたが、実はホログラムライブSPYのメンバーらしかった。

 

 ホロスタイル G・M DOGの演者、犬神コロネ

 ホロスタイル G・M CATの演者、猫叉おかゆ

 

 現在の姿がホロスタイルであり、本体は配信装置の中で横たわっているのだと思っているが、もしかしたらその逆もあり得るのだろうか。

 

「スバルちゃん、大変よ。コロネ達がイントゥルーダーの出現を察知したみたいなの。私はエイちゃんに連絡するから、すぐに配信部屋に向って」

 私にはにゃーにゃ―と、わんわんしか聞こえなかったが、ミオにはちゃんと言葉として伝わったらしい。これがホログラムライブSPYの絆なのだろうか。

 

 二匹を引き連れたミオは食堂から急いで駆け出し、私は自分の配信部屋へと向かった。

 

 すでに配信部屋は、私の自室のように私物が転がっている。ウーバーイーツも届くし、アマゾンの商品も問題なく届くため、じつに居心地のよい一人部屋であった。

 

 私は椅子に座り、パソコンのモニターをつける。すると即座に、メールの受信音が鳴った。

「えっと、今回のタスクはイントゥルーダー迎撃、場所は沖縄県北大東村。今度は沖縄っスか、聞いたことない村っスなあ」

 パソコンから配信装置にデータを転送すると、私は服を脱いで、配信装置入り、横になった。

 

 初めてホロスタイルとリンクしたときと同様、配信装置が起動すると、私に意識は真っ暗な空間に連れ去られる。そしてしばらくすると、光の砂時計が現れ、ゆっくりと回転するのだ。

 

 なぜかこの景色は、この場所でしか覚えておくことができない。ホロスタイルとリンクして具現化したときにはもう、砂時計のことは忘れているし、リンクを解除して現実の体に戻った時にも、この砂時計の記憶はない。

 

 なのに、この砂時計を見ているときは、前にも見たことを覚えている。この二ヵ月でもう、十回以上は見ている。

 

 砂時計の上下が入れ替わり、黄金色の砂が全て落ち切ると、私はホロスタイルとリンクして、現実世界に投影される。

その時には、この美しい砂時計がそびえ立つ風景は、風に運ばれた砂のように消えてしまう。

 

とても柔らかものに両頬を挟まれる感触で、私の意識は目覚めた。

「もう、スバルちゃん、なんてところに具現化してるの?エッチすぎー」

甘い香りに、柔らかで温かい感触。耳元でささやかれる優しい声。これは間違いない、誰かのおっぱいの中だ。

 

「すいません!ぜんぜんわざとじゃないっス!」

 私は慌てて、私の頭を抱きしめる腕と胸から離れ、頭を下げる。

「あら、遠慮しなくていいのに」

 もはや水着ではないかと思える、露出度の高い衣装を着た、金髪でショートヘアーのカワイイ女性。

 夜空メル先輩の胸のなかに、出現してしまったらしい。

 

「スバルちゃん、こんかぷー」

「こ、こんかぷっス、あの失礼しました」

「いいのよ、でも気を付けないと、メルに血を吸われちゃうよ」

 そんなことを言っても、メルが血が苦手なことを私は知っていた。ダンスレッスンで転んで鼻血をだした私を見て、卒倒していたのだ。どうしてVAMPの名が付くホロスタイルの演者になったのだろうか。

 

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