ソラニウタウトキ   作:kaito-18

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真夏の太陽

 メルに噛みつかれたイントゥルーダーは、まるで全身が瞬時に砂になったかのように、サラサラと姿を消していった。その見た目の特徴どおり、メルの能力は「吸血」や「吸収」といったものなのであろう。

 その後もメルは、小さな羽で飛び回るように、次々とイントゥルーダーに噛みついていった。

 

「キャハハハハハハハハハ!」

「キャハハハハハハハハハ!」

「キャハハハハハハハハハ!」

「キャハハハハハハハハハ!」

「キャハハハハハハハハハ!」

「キャハハハハハハハハハ!」

「キャハハハハハハハハハ!」

 

 繰り返し聞こえる、はあとの笑い声。はあとの戦闘は、とても描写できるものではなかった。一言で表すと【凄惨】

 

「よし、スバルも行くっす!」

 気合を入れて、海岸へ駆け出す。

 

「うおーりゃー!」

 

メルと、はあとに気を取られていたイントゥルーダーの背後から、私は延髄切りをきめた。

 

 不意を突かれたイントゥルーダーは、膝から崩れ落ちると、そのまま姿を消す。

「よし、いけるっス!」

 私のホロスタイルでも、イントゥルーダーを撃退できる。

 

 先輩たちと比べると、地味極まりないが、私は空手と柔道と剣道で鍛えた動きで、地道にイントゥルーダーを倒していった。

 

「グラップラースバル、爆誕っス」

 この日のために考案した【プテラノドン拳】によって、最後のイントゥルーダーを消滅させたとき、気分はすでに少年漫画の主人公であった。

 

「やったね、ぜんぶ倒しちゃった。汗かいたから、早く海で泳ごうよー」

「キャハハ、返り血を浴びれないのが残念だけど、楽しかったわ」

 私が倒したイントゥルーダーは三、四人だったので、メルもはあとも一人で五十人近く倒したであろう。一期生の強さは、圧倒的であった。

 

「え、終わったんだから帰りましょうよ、もう日も暮れてきたっスよ」

「えー、まだそんな時間じゃないよー」

「でも、夕日で海が赤くなってるっス」

 私が指をさすと、二人も海の方を振り向いた。

 

「あれー本当だ、海が真赤だーなんでー?」

「あれ?なんか太陽が近寄ってきていない?」

「そもそも、太陽が向こうにあるのはおかしいんじゃないっスか?」

 三人でとんちんかんな会話をしているうちに、太陽と見間違えるような、強力な光を放つ楕円形の物体が、私たちの目の前の海上で静止した。

 

「な、なんスかあれ?」

「あれー?あれは確か、やばいやつだよ。やばい敵だったと思う」

 メルが顎に手を当てて、考え込む。どうやらあの物体に関することを知っているらしい。

 

「キャハハ、まあ、ついでに倒しちゃおうよ?あれがきてから、なんかよけい暑くなった気がするし」

 はあとが言うとおり、辺り一帯の気温が急に上がった気がする。どうやらあの楕円形の輝く物体は、高温で燃えているらしい。

 

「よし、メルがヒトカプしてこようかな」

 メルが一歩、踏み出したとき、楕円形の物体は中央から割れ始めた。

 

 いや、割れたのではなく、丸まっていたものが広げられたのだ。光る楕円形の物質が左右に広がると、それは一対の燃える翼となり、その翼の中央には、オレンジ色の髪をした少女が現れた。

 

「あれは・・・ホロスタイル」

 

 はあとが呟いた瞬間、少女がまとう炎の翼が、ひときわ眩くきらめいた。

 強烈な光で視界が真っ白になり、何が起こったのかわからないうちに、私は砂浜の上に突っ伏していた。

 

 全身が痛くて、熱い。

 

 なんとか顔を上げると、はあともメルも、別の場所に倒れ込んでいた。

「強すぎっス・・・」

 ホロスタイルとリンクして初めて、こんな痛みを感じた。先程の戦いで、コンクリートを貫くイントゥルーダーの銃弾を何度か受けたが、感じる痛みは、タンスの角に小指をぶつけたときと同程度であった。

 

 それだけ私のホロスタイルは、演者へのダメージを軽減する能力が高まっている。しかし、あの燃える翼の攻撃は、一撃で私にも、先輩たちにも、すぐには立ち上がれないほどの痛みを負わせたのだ。

 

「いったーい!絶対に、許さないんだから!」

 大声をあげて、はあとが立ち上がった。そして、天を仰ぎ、両手を上げると、彼女の体から大きな炎の柱が立ち上がった。

 

「丸焼きにしてあげるわよ、チキン野郎!」

 はあとから立ち昇る火柱が、どんどん激しさを増していく。

 

「燃えるのは心 戸惑うのは体 紡がれる想い 全てを焦がす ハートの魔法」 

 

 インフィニティー!

 

 はあとが両手を振り下ろすと、炎の柱は海上に浮かぶ少女を飲み込んだ。

 その火力で、海水が一気に蒸発し、海面にクレーターができたような窪みできている。

 私の『プテラノドン拳』とは、別次元の必殺技であった。

 

「どうよ!チリも残らないでしょう!?」

「あれー、でも、ハーチャマ?」

「なに、メルメル?」

「燃えている人って、燃えるの?」

「なにそれ?哲学?わかんなーい」

 メルの疑問通り、元から炎をまとっている相手に、炎をぶつけたところで、効果はなかった。

 

 少女は変わらず、海上に悠々と浮かんでいる。

「なによあいつ!卑怯じゃない!」

 ビルすら灰にしそうな、はあとの攻撃であったが、どうやら敵との相性が悪かったらしい。

 

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