ソラニウタウトキ   作:kaito-18

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熱くて寒くてドキドキしちゃう

気温はゆうに氷点下を下回り、陽射しに照らされた氷の結晶が、キラキラと美しく空を舞う。

 

 そんな場所に水着で訪れるのは、お笑い芸人か、アイドルしかいないであろう。

 

「あじまーるよ、あじまあるよ~あじまるあじまるあじまるあじまる」

「にゃっはろー今日はスバちゃんと、温泉にきています」

「いやー雪に囲まれた温泉に入るなんて、風流っスねぇ」

「えー現在の気温はー。えーマイナス六度。ミコの鼻水も凍っております」

「シュバシュバシュバ、こんな晴天なのにこの寒さ、こんなときに欲しいものと言えば、なんですかね?ミコさん」

「お金にぇ」

「ばか!ちげえだろ!」

「お金は全てを解決するにぇ!、大金持ちだったら、こんな仕事受けてないにぇ!」

 

まずい、寒さでミコが壊れている。

 

「わあー見て、見て、ミコチ!目の前に、とっても温かそうな温泉が!」

 私は慌てて、台本を修正する。

 

「うお!凄い湯気にぇ!、スバちゃん!ぐつぐつ音がするにぇ!」

「確かに。煮えてねえかこれ?本当に入って大丈夫か?」

 

 この寒さのなか、目の前に温泉があれば、普通はすぐにでも飛び込むであろう。

 しかし、辺り一面を白く染めるほどの湯気を上げる、この温泉の温度は、推して知るべきであった。

 

「さあ!スバちゃん、先に行くね!」

「いや、ここは先輩から、お願いするシュバ」

「先輩の言うことがきけにゃいね!?」

「うるせえ!こんな熱湯に入れるか!客なんて誰もいねえじゃねえか!」

 

 二人で押し合いをしていると、雪に足を滑らしたミコが、頭から温泉へと落下した。

 

「あっちゅ!あっちゅ!」

「ミコチ大丈夫か!?」

 

 私は溺れたようにもがくミコに、手を伸ばした。

 

「ばか!引っ張るな!ああああ!」

 

 ドボンと音を立てて、私は煮えたぎるよな温泉に、引きずり込まれた。

 

「あちー!離せミコチ!」

「助けてスバちゃん!あっちゅ!あっちゅ!」

「うおおお!」

「がぼがぼがぼ」

 

 体にしがみつくミコを温泉に沈め、私はなんとか温泉から這い上がった。

 

「はーい、スバルさんの負けでーす」

 温泉の淵で這いつくばり、息を荒くしている私に、エイは非情な敗北宣告をした。

 

「はあー!?」

「では、スバルさんには罰ゲームを受けていただきます。どうぞ!」

 エイの合図で、四方からホースで放たれた水が、私にかけられた。

 

「ばか、ばか、やめろって!寒い!寒い!あああああ!心臓があああ!」

「ふふん、ミコを沈めたバチが当たったにぇ」

 

 

 初めてミコと共演する案件は、想像以上に地獄であった。

 

 ホロスタイルとリンクしていられる三時間みっちりと、さまざまな高温の温泉に入れられた。そして基準がまったくわからない判定で、罰ゲームとして雪に埋められたり、川で泳いだりするはめになった。

 撮影が終わり、配信装置から出たときは、全身がぐったりと疲れていた。

 

 体は配信装置で横になっていただけなのに、繰り返される熱さと寒さによって、脳はそうとう疲弊したらしい。

 

 服を着て食堂にいくと、椅子に座ってボーと口をあけながら、天井を見つめるミコがいた。

 

「ミコ先輩、お疲れさまっス」

「スバちゃんお疲れ、大変だったにぇ」

 

 ミコが手足をパタパタさせながらこちらを見た。

 

「酷い目にあったス。ホロスタイルは痛みを軽減して演者に伝えるって言ってたのに、熱さや冷たさは別なんすか?」

 

「ホロスタイルには戦闘用と、アイドル活動用の二つがあるにぇ。指令書によって変わるにぇ。アイドル活動用は、特別な力は働かないんよ」

 

 知らなかった。じゃあ、私は生身と変わらない感覚で、あの寒さと熱さを経験していたのだ。どうりで、ぐったりとするわけだ。

 

「しかし、こんなことばかりしてていいんっスかね?敵は全然現れないっスけど」

 私がホログラムライブに入団してから半年が経ったが、出撃したのは未だに二回だけであった。

 

「私が入団してから、敵が攻めてきたのは十回ぐらいにぇ。そう簡単にホロスタイルの量産なんて、出来ないにぇ」

「でも、ちょくちょくやってくるのはなんなんスかね?しかも決まって人気の無い場所ばかりに」

「おそらく、自分たちの作った、イントゥルーダーの性能を試しているにぇ」

 そして、とミコは言う。

 

「私たちとまともに戦えるイントゥルーダーが出来たら、奴らはここに攻めてくるにぇ」

「え?ここに?」

「にぇ。奴らはこの施設にある残りのホロスタイルと、研究成果が喉から手が出るほど欲しいに決まってるにぇ」

 

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