ホログラムライブのメンバーは、すでに十五人。盗まれたホロスタイルは三人分だという、
十八体のホロスタイルが兵器として使われたら、どれ程の被害が出てしまうだろうか。
「こっちから、敵の本拠地を攻めることは出来ないんスか?」
「難しいにぇ、ミオちゃん達の力で、敵の本拠地の場所はある程度は判断がついているけど、私達がその場所にホロスタイルで行くには、電波が届かないにぇ」
敵は船や飛行機で近づき、日本の領海外から電波を飛ばして、イントゥルーダーを出現させている。
こちらが同じことをするには、国の承認を得て、様々な援助を受けなければ、難しいであろう。だからこそ、まだ敵はこの国に被害を及ぼさない。
実質的な被害がなければ、国が私たちの活動を支援することはないであろう。
人気のない場所に出現し、イントゥルーダーの性能を確かめるために、私たちをおびき出しているのだ。
「なんか、敵の思惑どうりって感じで、面白くないっス」
こちらは防戦一方で、敵がじわじわと攻めて来る状況は、スッキリしない。正々堂々正面から戦いたかった。
「まあ、矢郷も色々考えているはずにぇ」
噂をすると、食堂のドアがひらき、矢郷が現れた。
「やあ、ミコさん、スバルさん、お疲れ様です」
「矢郷、おちかれー」
「お疲れさまっス」
会社のCEO相手に、二人とも緊張感のない返事をする。
「矢郷が食堂にくるなんてめずらしいにぇ、弁当忘れたのか?」
「いえ、二人の話声が聞こえたので立ち寄りました。先程は撮影お疲れ様です。編集室も、笑いが絶えない感じでしたよ」
それはアイドルとして褒められているのだろうか。
「案件を下さった『誰も入らない温泉を広めよう協会』さんも、満足いただけたようです。是非、次もお願いしますと、おっしゃって下さいました」
「やだ!」
「いやっス!」
二人同時に拒否されて、矢郷は困った表情を浮べる。
「次はスイちゃんにやらせるにぇ」
「あやめなら喜んで入るはずっス」
「いや、やっぱりイメージもありますし」
「どういうことだよ!」
私達が矢郷に噛みついていると、再びドアがひらき、エイが入ってきた。
「社長、そろそろ会議の時間です」
「あ、そうですか。それでは、失礼します」
矢郷は逃げるように食堂を出て行った。
「ミコチ、やっぱり地球を救うより先に、私たちのイメージチェンジが優先かと」
「いまさら遅いにぇ。一度ついたイメージを払拭するのは、地球を救うより難しいのよ」
「そんな・・・」
私はミコに慰められながら、家路についた。
年末が近づくと、何となく教室もそわそわとした雰囲気に包まれる。期末試験、クリスマス、お正月と、イベントが続くせいだろうか。
そんななかで、とつぜん発生したイベントに、私のクラスは色めき立った。
「はい、皆さん、もう聞いているかも知れませんが、今日から新しいクラスメイトが加わります」
こんな年の瀬に転入生がくることは、非常に珍しい。しかも日本人ではなく、外国から転入してきたという噂だった。
「じゃあ、入ってきてください」
教室の入り口から姿を現した転入生に、教室のざわめきが一気に大きくなる。
「みなさん、はじめ、まして。森カリオペともうします」
転校生は、多少つっかえながらも、しっかりと聞き取れる日本語で、自己紹介をした。
「すごい、髪がピンク色」
「脚がながすぎー」
「顔が小さい、お人形さんみたい」
「じゃあ、席はスバルさんの隣にしましょうか」
「はい」
私の席は教室の窓側で、一番後ろであった。その隣の席は、以前はエイが座っており、ずっと空席のままであった。
カリオペは席に前に立つと、私に手を差し出し、握手を求めた。
「スバルさん、よろしく、おねがい、しまーす」
私は慌てて立ち上がり、カリオペの手を握った。
(うわ、身長差やべえ)
顔一つぶん以上、カリオペの方が背が高い。
「よ、よろしくするシュバ」
「シュバ?」
「あ!なんでもないっス!気にしないで欲しいっス」
「そう、ですか。なかよく、してくださーい」
そう言って、カリオペは、とても楽しそうに微笑んだ。
新入生が隣の席になったことで、私は一日中、ソワソワしていた。