ソラニウタウトキ   作:kaito-18

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Suggestion

「雪っスなあ、積もるかなあ」

 

東京で雪が積もるのは、一年に一度、あるかないかだ。

だから不便だと思いつつも、雪が降るとつい、嬉しくなってしまう。

 

「ゆき、きれい、ですね」

 カリオペと二人で、校舎の窓から外を舞う雪を眺める。

 

「スバル、さいきん、いそがしい?」

「あ、うん年末年始が過ぎるまでは、けっこう忙しいっス。色々あって」

 

 色々の内容は言えないのだが。

 

「そう、ですか。また、いっしょにあそびにいきたいです」

「スバルもっす。そうだ、冬休みの間に、温泉に行かないっすか?スバルは温泉に詳しいっス」

 

もちろん、ミコと巡った地獄温泉ではなく、そのロケ中にちゃんとした温泉の情報も集めていた。

 

「おんせん!いきたいです!はだかのつきあいですね?」

「うん、どこでそんな表現を・・・。温泉気持ちいいっスよ。雪を見ながら入れる露天風呂がいいっスなあ」

「ゆきみぶろ!たのしみです!」

 

クリスマスのライブ、年末年始のイベントで疲れた体を、カリオペと一緒に温泉で癒す。

 

私にもすごく楽しみな予定ができて、高校生活で最も充実した冬休みを迎えることができそうであった。

 

「じゃあ、今日は早退するっスから、また来週っス」

 

明日の土曜日はいよいよクリスマスライブであり、今日は午後からリハーサルと、打ち合わせがあるため、私は午前中で学校を早退した。

 

 吹雪くことなく、雪は静かに舞い降りていた。

地下の事務所に通じるエレベータはいくつかあるのだが、学校から一番近いのは、けっきょくオーディションを受けに行った、あの廃墟のようなビルであった。

 

 もはや馴染みとなった駅で降り、人気のない道路を歩く。

 普段もあまり人通りのない道であるが、平日の昼間、そして雪が降っているせいか、ほとんど歩いている人を見かけなかった。

 

ビルに到着すると、入り口に一匹の猫が丸くなっている。

 

「おかゆ?」

 

 猫はこちらを見ると立ち上がり、一瞬光ったかと思うと、人の姿に変わった。

 

「お疲れさま、スバルちゃん」

「どうしてこんな所に?おかゆはいつも、違う入り口を使っていなかったっスか?」

「お迎えにきたんだよ」

 

 お迎え?リハーサルをどこか別の場所でやることになったのであろうか。

 

「スバルちゃんじゃなくて、後ろのお客さんのね」

 

おかゆの言葉を聞いて、私は自分の後ろを振り返った。

 

「カリオペ?」

 

 そこには、さきほど学校で別れたはずの、カリオペの姿があった。

 そして、その背後にはミオところね、フブキが立っている。

 

「どういう、ことっスか?」

 

まるでカリオペを警戒し、包囲しているかのような状況であった。

 

「スバルちゃんは、後をつけられていたんだよ」

 

おかゆが普段ののんびりとした話しかたとは違う、ハッキリとした言葉で言った。

 

「スバルを?カリオペ、スバルに話があったんスか?学校で言ってくれればよかったのに」

 

カリオペに向って歩き出そうとした私の肩を、おかゆが掴んだ。

 

「近寄ったら、だめだよ」

「どう、してっスか?」

 

相変わらず人気のない通りに、雪が静かに舞い降りる。

 

「スバルちゃん、彼女はホロスタイルだ。Grim Reaperの。一対一の戦いでは、メル先輩のVamp以上に、危険な相手だよ」

 

カリオペが、ホロスタイル?

 

 でも、彼女はずっとあの姿だった。今日だけでなく、学校でもずっと、放課後、秋葉原で遊んだときも、ずっとあの姿だった。

 ホロスタイルと安全にリンクしていられる上限である、三時間どころではなく。

 

「ミオちゃんのカードに暗示されたていた、彼女は死神なんだ」

「うそっスよね?」

 

 私はおかゆではなく、カリオペに問いかけた。

 

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