ソラニウタウトキ   作:kaito-18

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出発

クリスマスライブ、お正月企画を無事に乗り切った私たちは、会社の慰安旅行へ旅立った。メンバー全員が一斉に休むわけにもいかないので、ゼロ期生から順に休み、私たち二期生は最後に旅立った。

 

季節はもう冬真っ盛りの二月であり、用意された温泉旅館に向かう途中、景色は一面、雪景色となった。

 

「いやー二期生だけで集まるの、久しぶりっスなあ」

「というか、全員で出掛けるって初めてじゃない?」

 シオンはポッキーを食べながら、窓の外を見ながら言った。

 

「そうねえ、なかなか全員で集まる企画ってないし、楽しみね。アクアさま、大丈夫?」

 すでに車に酔ったのか、体調の悪そうなアクアをちょこは看病していた。

 

「だ、大丈夫、です、でへへ」

 不調ながらも、アクアも楽しみにしているようだ。

 

「ところで、旅行に行くのもロケバスなんっスなあ。機材が積みっぱなしだし」

 

 貸し切りの観光バスで行けるのかと思ったが、そこは費用削減のためか、普段乗り慣れたロケバスでの移動であった。

 

「スタッフもけっこう乗ってるな。まるで普通にロケに行くみたいだぞ」

 あやめの発言に、全員がいやな想像をした。

「まさか、ね?」

 私はシオンと目を合わせる。

 

 一瞬、引率役のエイが微笑んだ気がした。

 

 東京から車で三時間以上かけて辿り着いた旅館は、旅館と言うのもおこがましい、普通の一軒家であった。

 

「右の建物が皆さんの宿泊する建物です。スタッフは左の建物に」

 エイの指示で、私たちは古い民家の玄関から、中へ入った。

 

「なんか、本当にただの家よね」

 シオンはがっかりしたように、家の中を見回す。

 

「でも、お風呂はけっこう広いわよ。全員一緒に入れそうなくらい」

 ちょこは水回りが気になるらしく、台所やお風呂を覗いている。

 

「温泉というより、銭湯っスなあ。蛇口をひねると、源泉がでてくるって、エイちゃんが言ってたっス」

「よし!やることないから、もう入ろう!」

 

 さっそうとあやめは服を脱ぎだす。

 

「え?もう入るんすか?少しぐらい観光するっスよ」

 私があやめをの脱衣を阻止していると、玄関がひらき、エイが入ってきた。

 

「えー皆さん。荷物を置いたら、家の裏口から外に出て下さい」

「えー、なんで入ったばかりなのに、もう出なきゃいけないのよ」

 不満げなシオンに向けられたエイのメガネが、怪しく光る。

 

「これより皆さんには、夕食の食材を獲りに行ってもらいます」

 その場にいた全員が俯いた。

 

「あ、ああの。慰安旅行じゃ、ない、のかな?」

 アクアがキャップを深くかぶり直しながら、もじもじと言った。

 

「はい、しかし、慰安旅行の様子は、配信させていただきます」

「ちょっと待って!」

 ちょこが声を上げる。

 

「生身で来ているんだから、そんな配信をしたら、即身バレするじゃない」

「心配ありません」

 

 エイがメガネをクイっと指で上げながら、不敵な笑みを浮かべた。

 

「皆さんの姿は、ホロスタイルの姿で配信されます。エヴァーの技術力をもってすれば、朝飯前の合成技術ですよ」

 いつの間にか、エイの後ろにはカメラを構えた五人のスタッフが並んでいる。

 

「あ、あてぃし、ごはんは、いらないよ。おかしが、あるし」

 背を丸めて逃げようとするアクアの首を、エイが背後から掴み、片手で持ち上げた。

 

「ヒッ!た、たすけ……」

「お夕飯は、みんなで楽しく食べましょうね?」

「は…はい」

 

 エイは返事を聞くと、アクアから手を離した。アクアはその場に崩れ落ちる。

 

「ア、アクア―!」

 私はうずくまるアクアに駆け寄った。

 

「あ、あてぃし、もう、だめ、みたい。もっと……みんなと、もっとゲーム、したかった……な、ぐふ」

「あてぃしー!」

「はいはい、寸劇はいいですから、さっさと用意して下さい。玄関から靴を持って、裏口に向って」

 

 アクアを犠牲にすることで、おかしなイベントを回避できないかと思ったが、無駄であった。

 

「おい!みんな!はやく行くぞ!」

 

 あやめはすでに行く気満々であった。

 

 正直、私はあやめの言動が一番読めない。元気一杯にふざけていたかと思うと、突然、どこかを見つめて微動だにしなくなったり。

 

 コミュ障のアクアのほうが、まだ人間味を感じるのだが。

 

 宿の裏口を出ると、すぐに雪に覆われた山の、登山道が確認できた。

 

「まさか、あそこから雪山に入るの?」

 ちょこが「ありえない」と言いたげな顔で、エイに言った。

 

「はい、大して高い山じゃないから、大丈夫ですよ。道に迷わなければ」

 道に迷わないどころか、雪に覆われて、道もろくに見えないのだが。

 

「こんな雪山に、食料なんてあるの?」

「いい質問です、シオンさん。実はこの山には、冬にだけ収穫できる、幻のキノコがあるんです」

「幻の、きのこ?」

「そう、幻のキノコ。松茸よりも香り高く、シイタケよりも濃厚な味わい。一口食べれば、あっとゆうまに夢の世界へ旅立つという、絶品のキノコです」

 

「それって、マジックマッシュ……」

「おい!やめとけ!さすがにアイドルにそんなもの獲らせないだろ!」

 

 私はシオンのこと言葉をさえぎったが、本当に大丈夫なのか、自分も不安であった。

 

「キノコだけじゃお腹一杯にならないだろ、余は猪も狩るぞ!」

 あやめは意気揚々と両腕をまわす。

 

「あやめさま、生身できているんだから、猛獣と戦うのはムリよ」

「そうだった、肉はむりかあ……」

「他の食材は用意してありますから、安心して下さい。キノコを手に入れた暁には、松坂牛ですき焼きですよ」

 

 エイの言葉に皆が目を輝かせた。

 

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