「次は余だよー!」
シオンを突き飛ばし、別の少女が名乗りを上げた。
「いやースバルちゃん元気にしてた?」
「いや、初対面っス」
「あれ?そうだっけ?まあいいや。こんなきりー、余は百鬼あやめ、ホロスタイル二・三 ONIの演者でーす!、どう?余、角が生えてんだよ!かっこよくね!?」
「あ、はい。カッコいいです」
あやめのテンションの高さに、私は思わず素になってしまった。
「やったー!余は火も出せるんだよ!『鬼火』えい!」
突然あやめの指先に、マッチていどの火が付き、それを私に投げつけてきた。
「あっつ!!」
投げつけられた火を思わずキャッチしてしまった私は、両手が火傷するような熱さと痛みを感じ、必死に火を消そうと両手を叩いた。
「いえー!拍手ありがとう!」
「拍手じゃねえよ!いきなりなにしやがる!お前は魔法使いか!?」
こいつやべえ、初対面の人にいきなり火を投げつけやがった。
「魔法使いは私よ。あやめに出来るのは、ライターみたいなちょっとした火を生み出すくらい」
先程あやめに付き飛ばれたシオンが、再び近くで話かけてきた。
「でも、ホロスタイルって凄いっスなあ。ライター機能が付いているんすか?」
「はあ?そんな機能あるはずないじゃん。でも、ホロスタイルは既存の常識や物理現象を無視できるんだって」
何でもありって、こと?確かに、味も匂いも痛みも感じる自分の分身がここにるのは、すでにファンタジーだけど。
「じゃあ、すばるも口から火を吹いたりできるっすか?」
「口から出したいの?どうだろう、ホロスタイルの能力は、作成者のイメージに依存するらしいから。スバルは見た感じ無理そうじゃない?」
たしかに、配信室のモニターで見た少女の姿は、いたって普通で、元気が取柄って感じであった。
「残念ス、スバルも空を飛んだり、火を吹いたりしたかったス」
「まあ、活動している間に、不思議な能力が見つかったり、現れたりするかも知れないから」
これで、先輩二人と、同期二人人の自己紹介を受けた。
「これで全員っスかね。同期は全部で五人って聞いていたけど、後の二人はここには居ないんっスね」
「いや、スバルちゃん、一人は確かにこの場にいないけど、もう一人はいるよ?」
まつりに言われ、私は周囲を見渡した。
「他には誰も見当たらないっスけど」
「あてぃし・・・ここにいるよ?」
突然背後から呟かれた声に、私は全身に鳥肌を立てながら振り返った。
すると、メイド服を着た小柄な少女が俯きながら、もじもじと指を弄んでいる。
「あてぃし・・・ホログラムライブの・・・」
「声が小さくて聞こえねえっス!」
「ひっ!陽キャが怒った・・・」
そんな大声を出したつもりはなかったのだが、少女は完全に下を向いて黙ってしまった。
「あースバルがアクアを泣かしたー」
横からシオンが冷やかしてくる。
「ご、ごめんっス、怒ってないっスから、自己紹介を続けて欲しいっス」
「ほんとうに?・・・怒らない?・・・」
「大丈夫っス、スバルは生まれてから一度も怒ったことないっス」
とりあえず嘘をついたが、話を進めるためには仕方がなかった。
「こ、こんあくあー、ホログラムライブの二期生、湊アクア。ホロスタイル二・一 MAIDの演者です。よ、よろしく、スバルちゃん」
アクアは息も絶え絶えといった感じで、懸命に自己紹介をしてくれた。しかし、こんなに人見知りでアイドルが出来るのだろうか。まあ、俯く姿はとんでもなく可愛いのだが。
「じゃあ、これでこの場にいる全員の自己紹介が終わったね、最後にスバルちゃん、どうぞ」
まつりに促されたが、五人に見つめられると緊張してしまう。そもそも、私はどんなイメージのアイドルになればいいのだろか。
「普段通りでいいのよ、スバルちゃんが普段友達に挨拶するような感じで」
アキが優しくそう言ってくれる。
「五人を前に緊張してんなよ、これからは何百人、何千人の前で、歌ったり、踊ったりするんだからさ」
シオンがにやにやと、笑いながらチャチャを入れてくる。
よし、いくっス
「ちわーす!ホログラムライブ二期生、青空スバール!ホロスタイル 二・五 DAGの演者っス、よろしくしゅっばしゅばしゅば」
精一杯の大声で挨拶をしたが、みんなキョトンとしている。
「しゅばしゅば?」
「何それ?どういう意味?」
「いや、エイちゃんがそう言っていればいいって・・・」
なんか・・・変な空気になってしまった。
「じゃあ、よろしくね、しゅばる」
まつりに変なあだ名をつけられ、自己紹介は終了した。