ソラニウタウトキ   作:kaito-18

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オープンファイヤ!

 

 あらためて、私は自分がいる場所を見渡すと、どうやら海岸近くの小高い丘にいるらしい。

 辺りに民家はなく、見えるのは海岸線と、広い道路、そして道路に沿うように建てられた電柱ぐらいであった。

 アイドルが活動するには、あまりに寂しい場所である。

 

「アキ先輩、スバル達はこんなところで、いったい何をするっスか?」

 一緒に座って海を眺めるアキに、私は訪ねた。まつり、あやめ、シオン、アクアは、退屈過ぎたのか、鬼ごっこを始めて、声を上げながら走りまわっている。

 あやめがずっと鬼というルールらしく、四人で一人を追い回し続けるという、一見いじめのような状況だが、本人は楽しいらしく、誰よりも声を上げてはしゃいでいる。

 

「あら、スバルちゃん、指令書を読んでこなかったの?」

「はい、よく見ないで来てしまったス、実はここがどこかも分かっていないっス」

 もう十分以上、海を見ているが、人どころか、車すら一台も通らない。本当にここは現実世界に存在する場所なのか、不安になってきた。

 

「ここは羅臼町よ、世界遺産に認定された、北海道の知床半島の近く」

「北海道!?東京からそんな離れた場所に来ていたんスか」

 どうりで見渡す限りに大自然が広がるわけであった。

「でも、こんな所でアイドル活動って、何をするっス?」

「もうすぐここにお客さんが現れるのよ。それも、結構な数らしいわ」

 アキの言うことを疑うわけではないが、本当にこの寂しい場所に人が大挙して押しかけてくるのだろうか。まあ、人がきたとしても、私はまだ歌も踊りも何もできないのだが。

 

「あ、見て、お客さんが来たよー」

 丘の端っこに立ち、海を指さして、まつりが大声を上げる。

「え、本当に来たんスか?まさか船で?」

 皆がまつりの周りに集まり、海の方に目を向ける。そこには船は見当たらないが、確かに人影が出来始めている。

 

「え、なんすか?足から順に人の姿が浮かび上がってきてるっス!」

「あれが敵のNEO3DCG、『イントゥルーダー』よ」

「敵!?ホログラムライブには敵がいるんスか?」

 想像もしなかった展開に、私は自分でもわかるほど動揺した。

 

「ホログラムライブの敵というか、世界を侵略しようする悪の組織かな。私達は、このホロスタイルで、敵のイントゥルーダーをやっつけるの!」

 まつりが片手、片足を上げて、ポーズを決めながら言った。

 いやいや、そんな可愛く言われても、バトル展開なんて聞いてないって。

 

「矢郷が言ってなかった?地球を守るって」

・・・言ってた。でも、まさか本当に悪の組織から地球を守るなんて思いもしなかった。渋谷のゴミを拾う程度だと思っていたのに・・・・

 話をしているうちに、イントゥルーダーは次々と海岸に現れ、すでに百人はいるのではないかという数になっている。

 

「いったいどこからあんなに湧いてくるっすか?」

「スバルちゃんも同じような感じで現れたんだよ。NEO3DCGは特別な電波が届く範囲でしか具現化できないから、きっとどこかに敵の船か、飛行船がいるはずなんだ。私達は日本国内ならどこでも範囲内なんだけど」

 

「さて、おしゃべりはその辺にして、そろそろ出揃ったみたいだから、行くわよ。基本的には私がやるから、二期生は出来る範囲で頑張って」

 そう言うと、アキは十メートルはある丘から飛び降りた。そして地面に難なく着地すると、高速道路を走る車のような速さで、敵のいる海岸へ向けて走り出した。

 

「え、戦うって、本当に肉弾戦をするっスか!?相手はメタルギアソリッド並みのフル装備をしているっスよ!」

 敵の見た目は明らかな軍人であり、全員が銃を肩に下げている。そんな集団相手に、アイドルが肉弾戦を挑むなんて、常軌を逸している。

 

「大丈夫、アキちゃんはムキ・ロゼと呼ばれるほど、力が強いんだよ」

 確かに、こんな高い所から飛び降りて、何事もなく着地していたし、走る速さも普通の人間からはかけ離れている。

 

「アキちゃんのホロスタイルは、拳で鉄板を貫いちゃうんだから!」

 ホロスタイルは常識や物理法則を無視できると聞いていたが、もはやただの超人製造機のように思えてきた。

 

 まつりと話している間に、敵に正面から切り込んだアキは、舞うように美しく、敵を殴り、蹴り、吹き飛ばしていく。不意を突かれた敵は、フレンドファイアを恐れて折角の銃器を使用できずに、防戦一方である。

 

「すげー、敵が紙切れのように吹き飛んでいくっス」

 アキの攻撃を受けたイントゥルーダーは、倒れ込んで数秒のうちに姿を消した。

「NEO3DCGは一定以上の負荷や衝撃を受けると、演者とのリンクが切れて姿を消すの。スバルちゃんも気を付けてね」

「一定以上の衝撃って、どれくらいっすか?」

「うーん、私はまだ経験したことないけど、普通の人間が死んじゃうくらいの衝撃?」

 ぜってー受けたくねえ・・・

 

「ホロスタイルが感じた痛みって、本体にも伝わるんスよね?」

「そうだよ、さっきスバルちゃんがアヤメちゃんの『鬼火』で熱がってたみたいに。でも本体が怪我するわけではないから、大丈夫だよ。

 それに、ホロスタイルが強くなっていけば、ホロスタイルが受けたダメージも緩和されて本体に伝わるから、本体が感じる痛みも小さくなるんだよ」

 

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