見渡すあたり荒野。いや荒野になった。私たちが暮らしていた村は後型もなく灰となり、骸すら残っていない。少し焼け焦げた程度で済んだ神社はかなりの異質さがあるだろう。私はそこで村だったところを見下ろしている。神社とは対照的に私の体はボロボロだ。狐人としての誇りである尻尾は切られ、耳もない。片腕も失い、女性としての尊厳も失った。
昨日までは平和な村だった。皆の顔は笑顔であふれ、活気に満ちていた。近々始まる予定の催事に皆が心を躍らせ、それぞれが準備をしていた。催事が催される前日の夜、つまるところ昨日の夜に人間が侵略してきた。普段はこのようなことはないが、皆が浮足立っていたため、侵略の予兆に気づけなかった。あっけなく戦士たちは殺され、村に火が放たれた。人間たちは容赦なく老若男女誰構わず殺した。中には殺す前に犯す輩までいた。
私も被害にあった一人。下卑た笑みで近づいてきた男たちは私を取り囲み抑え込んだ。何をされるか理解してしまった私は必死に藻掻いた。男たちは鬱陶しがり私の尻尾を切り裂いた。あまりの痛さに私は絶叫した。経験したこともない痛みに頭が追い付かなかった。苦しむ姿に興奮したのか次は耳を切り裂き、私の貞操を奪った。初めては痛いと、先輩に聞いていたが、痛みなど感じなかった。回しに回され、男たちは私を殺すことにした。心臓を刺すのではなく、腕の先から切り刻まれた。私の左腕が完全に切り落とされたとき、日付が変わった。
私たちの村にはあるものが封印されているのだそうだ。それは人が人であるために不要なもの、唾棄するべき感情を司る神様を祀っているのだと。年に一度、封印の緩みをただし、それを皆で祝うものがこの催事を行う理由なのだと母は言っていた。しかし、私はもはや人の尊厳もなく死を待つだけ。封印をただすこともできていない。そして、今は封印は緩んでいる、私もその力を取り込めるのではないか?
(この人間に対する憤怒が、炎になって人間どもを焼き殺せれば!!)
己の弱さに嘆きながら、心の中で吠えた私の願い。それを聞き入れたかのように私の体は炎に包まれた。
炎は私の体の失った尻尾、耳、腕となり、腕には大きな剣が握られていた。
「獣風情が驚かすんじゃねぇ!」
呆然としていた男たちだったが、抵抗したことに怒りを感じたのか、恫喝のように声を粗上げながら切りかかってきた。普段なら恐怖を感じ、足が竦むのだろうが、何故だか落ち着いていた。
「
私は落ち着いて剣の名を語る。剣は私の声に応じたかのように刀身を赤黒い炎で満たし、男たちを灰燼に帰した。もはや殺し合いではなく一方的な蹂躙だった。しかし、そのことに忌避感を感じないどころか、快楽に心が満たされていた。
(殺したい、殺したい、殺したい殺したい?、殺したい!ころしたいころしたい・・・)
私の心は殺意で満ち、村に残っている人間を、そして近くに作ってあるだろう拠点にいる人間達を一人残らず殺すためみ剣を振るった。
そして冒頭の荒野になった。人間も狐人も誰一人として生き残っていない。そして虐殺が終わると炎が消えて隻腕に戻った。しかしもう痛みはなく、初めからなかったかのように違和感すら感じない。もうこのままここで暮らしたいが、人間に対する憤怒が消えない。故郷であった場所を捨てるのは気が引けるがもうここは完全に土地が死んでいて、同胞もいない、そして、いつまでたっても人間に対する憤怒が消えない。ここに残る理由が完全に残っていない。私は神社付近に皆の墓を建て、神社で荷物をまとめた。
神社には少ないながらも食料はナイフなどの道具などが残っていた。残っていた荷物をまとめ私は人間が住む町に向かって歩き始めた。
面白くなかっただろ。
自己責任だ人類。