ようこそアイドル至上主義の教室へ   作:黒岩

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演技が出来るアイドルの寿命は長い

 Dクラスの暴力事件の解決。その協力を持ちかけ、それを許可された翌日。

 あの後、私はすぐに鈴音ちゃん達と別れた。私と一緒に行動したくてしょうがない池くん達は残念がってたが、他のクラスということでこちらが気を使ってあげた。私は私でクラスに協力を呼びかけて動いておくから何か進展があったら連絡するねー、とそう言って別れた。なのでその翌日となった今朝はこの件に尽力してくれそうな仲間に声をかけている。

 

「──という訳なんだけどね。帆波ちゃん手伝ってくれない?」

 

「そうだったんだ。そういう事情なら……うん。私も協力させてもらうね!」

 

 その筆頭は勿論、私の親友である帆波ちゃんだ。帆波ちゃんは善良だし、こういう表だって動くものに関しては誰よりも頼りになる。私の次に人望も信頼も厚く、顔も広い。コミュニケーション能力も高いし、頭だって回る。あの協調性に難のあるDのクラスの面々とも上手くやれるだろう。

 実際昨日のチャットを見て気になっていたらしい帆波ちゃんは今朝自ら私に詳しい事情を聞きに来ていた。なので声をかけたとは言ったが声をかける前にかけられたので手間が省けた感じだ。

 

「Dクラスとも協力関係を結ぶのか?」

 

 そして話を聞いていた隆二くんもまた気になってそんなことを質問してくる。こちらは裏で動く方の参謀なので中間試験の時にDクラスを嵌めたことや、各クラスと渡りをつけていることも知っているため次はどういう動きを取るのか気になっているのだろう。帆波ちゃんもまた私の方針が気になっているようだし、私は2人の信頼に応えて笑顔でそれを教える。

 

「私は全クラスと仲良くなるつもりだよ。そのためにはこうして動いて信頼を積み上げないとねー」

 

「全クラスとって……AクラスやCクラスとも?」

 

「Aクラスを目指して戦うからって仲良くなれないかっていうと私は違うと思うんだよねー。協力出来るならどのクラスとも協力して上を目指すべきだと思わない?」

 

「それは……私もそう出来たらいいなとは思うけど……」

 

「…………」

 

 私が私の考えの根幹に近い部分のことを口にすると、帆波ちゃんが理解を示しながらも困惑し、隆二くんもその意味を吟味しようとしてるのか難しそうな顔をした。

 まあ2人が難しそうな顔をするのも分かる。この学校のシステムは、どうしてもクラス同士を対立させてしまう。Dクラスのようなぶっちぎりで最下位を突っ走るようなクラスなら協力しても問題はないだろうが、追いかけてくるCクラスや追うべきAクラスともなればそうもいかない。これが普通の考えだ。

 だけど……私の考えだと、必ずしもそうとは限らない。勿論ところどころ、締めるべきところでの敵対は必要だが、全クラスで協力するやり方は決して出来ないことではない。

 なのでそれが出来るとしても出来ないとしても、私はそのための布石は打っておく。どうなったって無駄にはならないからだ。今回の動きもただそのためのもので、事件を解決する気もなければ中間試験の時のように誰かを破滅させる気も更々ない。

 

「……つまり、DクラスとCクラス。どちらかに肩入れすることはなく、あくまで事件の真偽を確かめるということか?」

 

「まあそんな感じかな。というかぶっちゃけどっちが仕掛けてようが須藤くんが殴って怪我させてるのは確かだし、どんな証拠を持ってこようがどっちも無罪放免とはいかないと思うしねー」

 

「それはそうだね。ひょっとしたらDクラスにとって更に不利な証言が出てきちゃうかも……」

 

「それはしょうがない。因果応報ってことでその時はちゃんと罰を受けて貰わないとね~」

 

 善良な帆波ちゃんはこれを十中八九Cクラスの仕掛けだと確信しているようで、Dクラスの心配をしている。まあそれは当然の見解というか、誰もDクラス側から仕掛けたなんて思っちゃいない。隆二くんも私も。龍園くんを知る人なら誰だってCクラスが怪しいと思うだろう。

 というかDクラスの指揮を執ってるっぽい鈴音ちゃんや桔梗ちゃん、洋介くんを見る感じ私や龍園くん、有栖ちゃんみたいな戦略を練られるとは思えないし。擬態が上手い可能性もあるけど私が見抜けないほどの人が2人も3人もいるとは思えないんだよね。その可能性を考えるくらいならスペックだけはバカみたいに高い高円寺くんが動いている可能性の方がまだ高い。もっとも、それはそれでありえないけど。

 あるいは……あの陰キャくんならそういうこともあるのかな? 私はそれならそれで歓迎出来る展開だと思いながら笑顔を浮かべる。

 

「とりあえず帆波ちゃんにはこの件を任せるよ。あ、勿論私も私で動くから心配しないでいいよ」

 

「……うん、わかった。私の方でも調べてみるね!」

 

「俺はどうすればいい?」

 

「隆二くんは手が空いてる時でいいよ。隆二くんも忙しいだろうしね」

 

「わかった」

 

 私のお願いを聞いてくれた帆波ちゃんは、早速クラスメイトに声を掛けながら教室から出ていく。おそらく事件現場を見に行くのだろう。行動も早いし的確。足で証拠を集めようともするしさすがだ。こういった下調べや堅実な作業の指揮を取らせたるにはうってつけの人材だね。

 

「……南雲」

 

「ん? どうしたの?」

 

「いや……先程南雲は、無罪を勝ち取るのは難しいと言っていたが」

 

「うん、言ったね。それがどうかした?」

 

「南雲なら、無罪を勝ち取れるか?」

 

 なんて、帆波ちゃんを見送った後で隆二くんはそんなことを問いかけてくる。うん、まあ……そりゃあねぇ? 答えは1つしかない。

 

「出来るよ。むしろ出来ないとでも思った?」

 

「いや、聞きたかっただけだ。そして、それを聞けて安心した」

 

「ふふん。頼もしいでしょ?」

 

「ああ」

 

 私のリーダーとしての素質。実力を再確認して安堵したのだろう。ふっ、と小さく笑う隆二くんは中々いい顔をしている。信頼が深まったようで何よりだ。

 とはいえこれくらいの事件なら私じゃなくても解決出来る。1年生の中の優れたリーダー。有栖ちゃんや龍園くん。そして私。やり方はそれぞれ違うだろうが、この件に関して解決方法を仮に相談するなら見解は一致するだろう(龍園くんは首謀者だけどそれは無視するとして)──盤外戦術だと。

 後はDクラスの伏龍がそれに辿り着けるのかというのが気になるところでありそれ以外はどうだっていい。その間に私は私で……私のファンを増やすだけだ。──はい、ということで始めるよー! アークション! 

 

 

 

 

 

 俺、須藤健にとってこの学校に入ってからの3ヶ月はウゼェことだらけだった。

 入学早々10万ポイント貰えたところまでは良かったが、そこからは上級生にバカにされ、クラスのポイントが0だからポイントが貰えなくなって中間試験で赤点取ったら退学だと言われ、やりたくもない勉強をする羽目になって、いざ勉強をやってみりゃあそれでもバカにされ、バスケ部の先輩から渡された過去問は嘘の過去問で退学することになったかと思ったらそれはよくわからねー理由でなくなり(それは良かった)、やっと何も問題なくバスケに打ち込めるかと思ったら今度はCクラスの連中が喧嘩を吹っかけてきて正当防衛で殴り返したらそれが問題になり、更にはCクラスの女子に過去問を売ったことも問題になってクラスの連中から白い目を向けられている。

 幸いにも櫛田や池や山内に綾小路も協力してくれるし、堀北やBクラスの元アイドルとかも俺の無実のために協力してくれると言っていた。

 なので俺は何とかなるだろうと居心地の悪いクラスから逃れるように1人で公園までやって来ていた。先程まで触っていた携帯のアプリ。バスケのソーシャルゲームの画面を閉じて俺は俺にしては珍しく物思いに耽る。

 確かに……過去問の件は俺も悪かったかもしれねぇ。

 だがあの時はそれが良いことだと思った。俺に話を持ちかけてきたCクラスの女子もクラスに共有することはしねぇと言ってたし、本当に困ってるようで泣きそうになっていた。本当に退学するのが怖かったのだろう。何かに怯えるように必死に縋り付いてきた。ポイントも、出せるだけ出すとそう言って。

 だから俺は過去問を2つ持ってたし、そんなに困ってるならと過去問を売ってやった。結果的にそれは偽物だったが、そんなことは俺も知らなかったしなんなら俺が退学になりそうだった。

 確かにCクラスに過去問を売るのは良くなかったかもしれねぇが、先に約束を破ったのは向こうだし、そもそも過去問は偽物だったんだからいいじゃねぇかという思いがある。

 

「クソ……面倒くせぇ……」

 

 だがかといって罪悪感を全く感じない訳ではない。だからこそ、口からつい悪態をついてしまう。

 自分を騙した先輩やCクラスの連中に怒りを抱くが、Dクラスの連中には悪いとは思う。特に友達や堀北には。高円寺のように全く悪いと思ってないどころかむしろムカつく奴もいるが。

 だがだからといって謝る気にもなれない。そもそも俺は悪くねぇんだ。悪いのは俺を騙してきたCクラスや学校の先輩や教師じゃねぇか。多少は非があっても1番悪いのはそいつらじゃねーか。

 バスケをしてる時はそういうことも考えずにすむが、生憎と今はそういう訳にもいかない。本当は今もバスケだけをしていたいと思っているが、この学校や友人といった周りの環境がそれを許さない。

 

「ウザってぇことばっかだ……」

 

 公園のベンチに座りながらため息をつく。何となく1人になりたくてここに来たが、やることもねぇし帰るかと立ち上がる。飯でも食おうかと思ったがポイントのことを指摘された今、堂々と買い食いする気にもならない。

 だから俺はそこから帰路についた。道中にあるバスケットコートからも目を逸らす……が、それでもどうしても見てしまう。手持ち無沙汰になってしまった時など、いつもバスケをしてきた。無意識にそちらを見てしまう。

 

「……ん? あいつは……」

 

 人気は殆どなかった。バスケットコートにいたのはうちの女子と思われる1人の生徒だけ。その少女が、1人でボールを3ポイントラインからシュートしている。

 その顔に見覚えがあったので、須藤はつい立ち止まった。そのシュートの放物線が綺麗だったのもある。ボールはゴールに吸い込まれていき、パサッと綺麗な音を立てて落ちるボールをその少女が慣れた手つきで拾う。

 その動きを見ていた俺は、それが経験者の動きであることが分かった。その少女──南雲麗というBクラスの生徒であり、元アイドルだというその美少女が。

 なぜこんなところで1人でバスケをしてるんだ、という疑問が浮かび上がる。とはいえ、その疑問の答えは考えたところで分からないし、そういう時もあると納得出来るものであるため深く考えない。バスケがしたいからバスケをする──理由はそれだけで十分だと理解しているからこそ。

 

「──あれ? 須藤くん?」

 

「おっ……」

 

 そして、コートの脇でその姿をじっと見ていると向こうがこちらに気づいた。向こうも覚えていたのだろう。名前を呼んでこちらに駆け寄ってくる南雲。その表情がいたずらっぽいものに変わる。

 

「なになに~? もしかして私のことずっと見てた? バスケしてる私に見惚れちゃった?」

 

「は、はぁ? 何言ってんだ。み、見てねーよ」

 

「そう? それにしては視線を感じたけど……あ、それじゃあ須藤くんもバスケしに来たの? それなら一緒にやろ!」

 

「あ? いや、別に……って、おい!」

 

 こちらをからかってくる南雲に辟易としてその場を去ろうとする──が、その前に南雲は俺の手を取ってコートの中に俺を引きずり込む。

 

「ほら、荷物置いて置いて! 1on1しよ!」

 

「ったく……強引すぎだろ」

 

 押しが強い南雲に引っ張られ、フリースローラインに立たされる。今はそんな気分でもないし、女と1on1したところでしょうがない。そう思い、しかし今から断って帰るのもバツが悪い。

 なのでさっさと終わらせようとボールを受け取り、すぐに返した。それは1on1の開始の合図。実力の違いが分かればすぐにやめるだろう。こちらとしても帰る理由を作れる。そう思い、適当に構えた。

 

「あれあれー? そんな気の抜けた構えでいいのかな?」

 

「……いいから来いよ。女が俺に敵う訳ねぇしな」

 

「そっかそっか。須藤くんはバスケに自信があるんだね。それじゃあ──」

 

 南雲が俺の言葉を聞いて笑う。そしてその目が細くなり。

 

「なっ!?」

 

「──遠慮なくやらせてもらうよ」

 

 俺の横を、あっさりと抜き去った。

 

「いえーい! まず一本!」

 

「な……」

 

 一瞬。瞬きする間に終わったと錯覚する。俺を抜いた南雲はあっさりとレイアップシュートを決めてゴール。

 それで一本だ。オフェンス側の南雲がまず一本で次は攻守交代。

 

「はい、次どーぞ」

 

「……クソ……何やってんだ俺」

 

 女相手。気が抜けていたとはいえ1on1で決められた自分を恥じる。ボールを渡され、先程よりは少しやる気を見せて挑んだ。

 

「はい、ダメ~」

 

「!?」

 

 だが、俺の攻撃。素早いフェイントを入れてドリブルで抜き去ろうとしたところ。そのボールが、南雲の手によって弾かれる。

 これで攻撃失敗。南雲が依然としてリードのまま攻守交代だ。そんな体たらくを見た南雲は、俺に変わらない笑顔を見せる。

 

「ほらほら、そろそろ本気でやらないと。じゃないとほんとに負けちゃうよ?」

 

「上等じゃねぇか……!」

 

 その挑発に乗って制服の上着をコートの端に投げ捨て、お望み通り本気で構える。油断はしない。南雲の挙動の、一挙手一投足。その起こりを見逃さないように腕を広げながら集中する。

 

「ほいっと」

 

「っ!? 今度は上かよ──!」

 

 だがまた虚を突かれた。腕を広げた瞬間、前に一歩出てきた南雲がすぐに後ろに下がってシュート。3ポイントラインからのそのシュートに、急いでジャンプ。手を伸ばしてそれを防ごうとするも、それは少し遅い。

 

「うっわ危な! やっぱ男子は高いねー」

 

「チッ……次は止めてやる!」

 

 ボールは綺麗にゴールに収まる。これで南雲が2本。攻守交代でそろそろ後がない。

 

「オラァ!」

 

「早っ……!」

 

 さすがに二度連続で抑えられる訳にはいかない。フェイントで一瞬だけ遅らせた後に急加速。スピードと緩急で抜き去りゴールを決める。これでようやく一本だ。そしてまた攻守交代。

 

「緩急ならこっちも負けないよ」

 

「ぐっ! うおっ!?」

 

 その言葉通り、緩急のフェイント。それも、あえてボールを置き去りにするようなトリッキーなフェイントまで織り交ぜてきた南雲の突飛な行動に翻弄され、バランスを崩す。

 

「アンクルブレイクだと……!?」

 

「いえーい。成功~。私赤司くん推しだからね~」

 

 ──アンクルブレイク。ディフェンスの重心を崩す滅多に起こらない上級テクニックを決められ、戦慄する。

 南雲麗。自分も知ってるバスケ漫画のキャラに例えて笑ってるこいつは、アイドルじゃない。本物だ。バスケの経験者。それもかなりの。

 

「上等だ……!」

 

 心に火がつく。ここまで燃え上がったのはこの学校に来て初めてだ。

 

「お前が赤司なら……俺は青峰だ──!」

 

「いや火神くんじゃない?」

 

 気の抜けるような南雲の突っ込みを無視してオフェンスに臨む。絶対にこいつを負かしてやるとそう意気込んで。

 

 ──そうして1on1をすることしばらく。

 

「よし! 俺の勝ちだな!」

 

「あー負けちゃったか~。やっぱ須藤くん強いね~。1年なのにレギュラーに選ばれるだけあるよ」

 

「南雲も中々やるじゃねぇか。バスケ部入らねぇのか?」

 

「もう生徒会入っちゃったからねー」

 

 なんとか、勝負に勝ってコートの端に座り込む。1on1を5回やって4勝1敗。最初の1戦で負けたが、その後は4連勝だ。

 それでも内容としてはギリギリで。何度も一本を決められたし何度も止められた。だから久しぶりにかなりの充実感を感じていた。

 

「勿体ねえな。南雲ならすぐレギュラーどころかエースになれんだろ。なんなら男子の方に交じってもいいくらいだ」

 

「あはは。さすがにそれは体格差もあるし厳しいんじゃないかな──はい、どうぞ。スポドリでいいよね?」

 

「お……いいのか?」

 

「バスケに付き合ってくれたお礼だから気にしないでいいよ」

 

「おお、ならありがたくいただくぜ」

 

 話しながら近くの自販機から買ってきたスポーツドリンクの内の一本を投げ渡してくる南雲。それをありがたく受け取り、喉を潤す。久しぶりにただバスケに熱中出来た。その後に飲むスポーツドリンクの美味さがたまらない。

 

「須藤くんこそ、大会でいいとこまでいけるんじゃない? それどころか今すぐプロテスト受けてもいいとこまでいったりして!」

 

「さすがにそれはねぇけどな。でもいつかは絶対に受かって……」

 

 と、続く南雲の軽口に気分よく答えようとしたところで──すぐに思い出し口を噤む。プロの話はともかく……そもそも今の自分は、次の大会に出られるかどうかも分からない状態であることに。

 

「? どうしたの?」

 

「……いや、大会には……出られるかわかんねーよ。そりゃ出てーけどな」

 

「あー……そっか。そういえばそうだったね」

 

 俺がそう言えば、少し気まずい空気が流れる。

 俺が暴力を振るった事件。これの解決をしないとレギュラーの話も白紙になり、大会にも出られなくなる可能性がある。

 クラス内で肩身が狭く勉強も出来ない自分にとって、バスケは唯一の拠り所だ。それを、奪われそうになっている。

 その事実が改めて心に重く伸し掛かる。こうして今、バスケを楽しんだことで思い出した。もうすぐこの楽しみが奪われるかもしれないのだと。

 

「クソッ……どうすりゃいいんだ……!」

 

「……うん。元気出しなよ、須藤くん。友達も頑張ってくれてるし、私もそのために今は情報を集めて頑張ってる」

 

「でもよ……無実は……難しいだろ。喧嘩を売ってきたあいつらが悪いに決まってるけどよ。どいつもこいつも、殴った俺も悪いって言いやがるしな」

 

 俺がそう言えば、少しだけ南雲が目を伏せた。多分、こいつも同じことを思ってるんだろう。殴った俺が悪い。確かにそうかもしれねーが、喧嘩を売ってきたのはあいつらの方だ。しかも3対1で。嘘までついて俺を陥れようとしている。

 それを思い出し、再び怒りが再燃しそうになる。だが、それをぶつける先もない。ただただ待つことしか出来ない。

 

「それでも大丈夫だよ」

 

「……は? 何言って──」

 

「私が断言してあげる。須藤くんは、きっと大丈夫。須藤くんの大好きなバスケは奪われないよ」

 

「…………」

 

 穏やかな表情でそんなことを言う南雲の横顔を見る。夕焼けに照らされたその顔が眩しい。

 いや、眩しいのはそのせいだけじゃない。

 

「それと約束してあげる。もし……万が一、須藤くんが停学になっても──」

 

 南雲の顔がこちらを向く。不思議と安心出来る優しくも明るい声色で。

 

「私がバスケに付き合ってあげる!」

 

「っ……!」

 

「ね? それなら少しは安心でしょ?」

 

 満面の笑顔でそんなことを真っ直ぐに言う。

 そんな南雲のことを、俺はまっすぐに見られなかった。顔が熱くなり、少しして目を逸らす。

 

「……お、おう。そう……かもな」

 

「でしょ? むしろ私とバスケ出来るって考えたら停学した方がいいかもよー?」

 

「そりゃ……言い過ぎだろ」

 

 そして冗談と思われる軽口を顔を逸らして受け流しながら、俺は衝撃を受ける。

 この学校に来てから二度目のそれだ。一度目は、中間試験の後に堀北に謝罪された時。

 そして二度目は今だ。塗り替えられた訳じゃない。最低な話だが……2人出来てしまった。

 堀北と……南雲麗。その2人に、俺は惚れてしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 ──ということで須藤くんとのバスケを終え、私は帰路についた。結構動いたしちょっと疲れたけどその分結果はついてきたし良かったかな。

 

「……お?」

 

 さて、次はどうしようかと思考を巡らせながら携帯を開くと、相変わらず連絡。電話やメール、チャットがかなり来てる。それはいつものことで人気者の宿命だから気にならないのだが、その中で『相談』の文字が見えるとさすがに気になってしまう。

 それも2つもだ。しかも仲良しの女子相手からのものだし、これは受けざるを得ない。こういった小さい積み重ねが私への信頼になるのだ。

 

「今日も私は人気者~♪」

 

 私は機嫌よく、適当な歌を歌いながら寮の自室へと戻る。途中、連絡先を交換した須藤くんからのメールも来た。お礼の連絡だ。よしよし、須藤くんもちゃんと私に信頼を預けられるよう導いてあげないとね。

 

 

 

 




主演:須藤健 です。須藤くんモテモテでよかったね()

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