ようこそアイドル至上主義の教室へ   作:黒岩

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アイドルと関係ない事件の顛末

 敷地内に建てられた4つの寮。1年生、2年生、3年生、教員及び職員の寮はそれぞれの行き来に特に制限がある訳ではない。

 だが午後8時以降に男子が女子のフロアに行くことは禁止されている。まあ行ってもバレなければどうにでもなるのもあって行く奴はそれなりにいるってのは雅兄の談だ。

 といっても女子から男子。同性同士であれば8時以降でも問題ないし、何なら泊まったってOKだ。

 まあそのためには来客用の布団も用意しなくちゃならないし、部屋がすぐ近くなのだから態々泊まる意味もあんまりない。女子会するにしても夜中まで喋って眠る時は帰って寝ればいいしね。

 そして住む場所がすぐ近くなのは集まるには楽なので、日が落ちた後は仲の良い友達の部屋に遊びに行くことは珍しいことじゃない。なのでまあ、友達が多い私は結構な頻度で友達に誘われる。男子女子問わず。特に男子は私が行けばお祭り騒ぎだ。

 ちなみに男子を部屋に誘うことはない。今のところ隆二くんと雅兄くらいか。雅兄は兄妹だから除外するとして隆二くんは相当恵まれてることをもっと理解した方がいいが、特に喜んでいる様子は見られないので少し残念。

 

「それで、相談って?」

 

「え、えっと……その……」

 

 そしてそんなプレミアな私の部屋に、今日はお客さん。お友達の白波千尋ちゃんがやって来ていた。

 同じグループの帆波ちゃんや麻子ちゃん夢ちゃんなどは今日は来ていないし呼んでない。そもそも千尋ちゃんから相談があると誘われたので今日のゲストは彼女だけだ。相談があるってことみたいだけど……これはアレかな? 雰囲気的に。千尋ちゃんの普段の視線や様子を見てると心当たりが1つ。おそらくそれだろうな、と思いつつも催促するようなことはせず千尋ちゃんから話してくれるのを待つ。

 

「……実は、私……ほ、帆波ちゃんのことが……す、好きなの……」

 

「へぇ……そうなんだ」

 

 と、ゆっくりと小さな声で口にしてくれたのは恋愛相談だ。それも百合。しかも相手は帆波ちゃん。

 普通なら驚くところだけど、私は予想していたことなので特に驚くことはない。一応、話の流れとして質問はする。

 

「この感じだと友達としてじゃなくて恋愛的な意味でだよね?」

 

「う、うん……そ、その……」

 

「ん?」

 

「驚かないんだ……?」

 

 千尋ちゃんから私の動じなさに関してのその質問に、私は淀みなく答える。

 

「珍しくないからねー。アイドルやってた時にもそういう子はそれなりにいたし、なんだったら私も告白されたことあるし」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「まあ一応、アイドルは恋愛禁止だからね。それで男と会うのはリスクが高いから女の子に走る子もそれなりにいたよ」

 

 懐かしいな、とそのことを思い出す。その手の恋愛相談を受けたことも一度や二度じゃないし、ぶっちゃけ男相手の相談よりは遥かに楽だ。恋愛禁止だといっても年頃の女の子は恋愛に飢えているし、悲しいかな裏でやっちゃう子は多い。ま、私の所属グループの子は全員してなかったけどね! やろうとしてた子もいたけどちゃんとやめさせたし、指導もした。私の足を引っ張るなんて許せないからね。勿論、そんなことを千尋ちゃんに言う事はない。

 

「そ、それで……麗ちゃんは応えたの?」

 

「いやー私は断ったよ。別に好きでもなかったし、そもそもそんなことしてる暇なかったからね。死ぬほど忙しかったし」

 

「……そっか。そうなんだ……」

 

 私が正直に答えると千尋ちゃんはがっかりする。あれ? 百合の者としては私が百合じゃなくて残念だったのかな? とはいえ正直に答えてもしょうがない。別にいけなくもないけどね。私は男の子も女の子も平等にファンとして見てるし、世界的にも今どき同性愛なんて珍しくもない。まあまだまだ風当たりが強いのはそうなんだけど。

 ただここでは勇気づける言葉が必要だろうと私は口を開く。

 

「それで、千尋ちゃんも告白する気なんだ?」

 

「っ……う、うん……」

 

 顔を真っ赤にしながら頷く千尋ちゃん。これはもう抑えたくても抑えられないって感じだね。相談と言いながらも答えはもう決まっているようだ。女の子の相談にはよくあること。何択かあるように見えて一択しかない。優しく背中を推してやることだけが唯一の正解だ。

 

「帆波ちゃん……やっぱ、引かれちゃう、かな……?」

 

「大丈夫だよ」

 

「あっ……」

 

 千尋ちゃんの肩をぎゅっと抱いて、安心させるようにそう言う。女の子が好きならこれくらいしてあげてもいいだろう。頭を撫でて、慈愛の笑みを浮かべながら私は言う。

 

「帆波ちゃんは友達の告白を受け止めきれない人じゃない。短い間だけど帆波ちゃんを見続けてきた千尋ちゃんなら分かるでしょ? OKするか断るかなんて無責任なことは言えないけど、どちらを選ぶにせよきっと真剣に答えてくれるよ」

 

「そう……かな……?」

 

「うん。それに、もし断られても、気まずくならないように私もフォローしてあげる」

 

 不安そうな表情の千尋ちゃんの背中を押し、ついでに帆波ちゃんの評価も高めに設定しておく。帆波ちゃんなら、あるいは変な嘘で逃げるとも限らないからね。優しい子だからこそ、より千尋ちゃんを傷つける方向を選んでしまう可能性がある。

 

「私が千尋ちゃんの不安を解消してあげる。それで、それでも千尋ちゃんが辛くなったならいつでも話を聞いて慰めてあげる」

 

「麗ちゃん……」

 

 もしそうなったら千尋ちゃんはきっと私に寄りかかることになる。そうなればまた優しく導いてあげよう。アイドルは人の心の隙間を埋められる存在。千尋ちゃんもその方が苦しまなくてすむだろう。

 

「ありがとう、麗ちゃん……私、勇気出してみるね……」

 

「うん。頑張って」

 

 千尋ちゃんの方からも私のことを抱きしめてくれる。友達の役に立てて嬉しいけど、少し力が強い。私のおっぱいの感触でも堪能してるのかな? はぁ、信頼を積み上げるのも楽じゃないよねぇ。

 

 

 

 

 

 

 さてさて。千尋ちゃんを帰らせた後、すぐに移動しながら次の相手に連絡を入れる。麗ちゃんのお悩み相談コーナー。本日2人目のゲストはチャットでの出演です。この方。

 

『それで相談って?』

 

『うん……あのね、私がいつも自撮りとかに使ってるデジカメが壊れちゃったから修理に出そうと思うんだけど……それに、付き合ってくれない……かな?』

 

 チャットからも窺えるおどおどした感じ。グラビアアイドルの雫こと1年Dクラス佐倉愛里ちゃんです。お悩みはデジカメの修理に行きたいんだけどそれに付き合ってほしいとのことで。

 そしてそれを見て考える。愛里ちゃんが私にこうやって頼む理由は予想がつく。例のあの人だろうね。別にヴォルデモートじゃないし単に名前までは知らないだけだけど原因なら知ってる。

 何しろ私にもDMやリプライが来るくらいだ。まあ私の場合は普通にリクエスト許可出さなかったり、ブロックしたりすればいいし、というかそもそも腐るほどいるんで慣れてるからきっついリアルでの実害さえなければ何とも思わない。なんならリアルのプライベートで話しかけられても神対応してあげる。握手に応じてサインも書いて雑談に付き合ってもいいし、実際にこの学園に来てからも声を掛けてくるファンにはそんな風に対応してあげたし、皆めちゃくちゃ喜んでくれていっそ畏まってたくらいだ。

 ただまあ……愛里ちゃんにはそれは荷が重いだろう。引っ込み思案だし人見知りだし。そもそも隠してるし。コミュニケーション下手だし男の人もそんな得意じゃないし。……冷静に考えたらなんでグラビアアイドルやってるんだろうね。承認欲求が人の何倍も強いのかな。まあ私もあんまり人のこと言えないけども。芸能人なんて皆そういう節あるし。そもそも人であれば普通のことだ。

 

「どうしよっかなー」

 

 愛里ちゃんのチャットの文面を見ながら思考する。別に付き合うのは構わないし、土日も空けることは出来るけど……。

 色々な可能性を考慮し、悩んだ末に、私はこう返すことにした。

 

『あーごめん。土日空いてなくてさ。火曜日以降なら空いてるけどそれでもいいなら付き合うよ』

 

 返信を返すとすぐに既読がつく。が……それに対する返信はすぐには返ってこない。

 結局愛里ちゃんから返信が来たのは1時間後だった。文面は『わかった。他の人に頼んでみる。もし無理だったら水曜日にお願いしていい?』というもの。

 私はそれを承諾する返事を愛里ちゃんに送る。それにしても他の人に頼む、か。一体誰に頼むつもりなのか気になる。

 まあ誰だっていいけどね。私は一応の保険として、『良かったらこれ使って』という文面と必要事項を打ち込んでそれを愛里ちゃんに送った。これで今回の事件について()私のやることはない。後は当日を楽しみに待つだけだ。

 

 

 

 

 

 ──そうして5日後。火曜日は須藤くんの暴力事件の審議の日だ。

 

「審議の進行は予め通達していた通り橘。南雲は書記を頼む」

 

「はい、わかりました」

 

「了解でーす」

 

 私は放課後になるとすぐに生徒会室へ直行。堀北先輩と橘先輩に合流し、書類を受け取りながら指定の席につく。議事録の書き方もバッチリだし、私はただ成り行きを見守るだけだ、が──経過報告や状況は理解しているし、CクラスとDクラスのお手並拝見といったところ。

 私がそれを楽しみにしながら待っていると、すぐにCクラスの担任の坂上先生と石崎くん、小宮くん、近藤くんがやって来る。一応面識はあるので3人に手を振って挨拶すると、次にやって来たのはDクラスの3人と担任の茶柱先生。その中には──

 

「あれ? 鈴音ちゃんに綾小路くんじゃん。2人も来たんだ?」

 

「南雲さん……」

 

「南雲か」

 

 鈴音ちゃんと綾小路くんが須藤くんと一緒に入室してきた。2人とも私に視線を向けてくれるが、鈴音ちゃんは少し暗いし綾小路くんは相変わらず何考えてるか分からない。須藤くんはちょっと喜んでいたが、特に言う事はない。私は3人に向かってにこやかに挨拶をしておく。

 

「審議に参加するんだよね。2人ともなんというか、結構意外──」

 

「──南雲。席に着け」

 

「はい堀北先輩。……頑張ってね」

 

 私が2人に話しかけようとするとお喋りの気配でも感じたのか堀北先輩が短く着席するように言ってきたので素直にそれに従う。小声で3人に激励をすれば、須藤くんだけは喜んでくれた。2人も喜べよー。アイドルの応援だぞー? 

 

「ではこれより、先日起こった暴力事件について、生徒会及び事件の関係者、担任の先生を交え審議を執り行いたいと思います。進行は、生徒会書記、橘が務めます」

 

 そうして橘先輩の真面目な開始の宣言によって審議は始まった。私も一応会釈しておく。まあ私は発言する機会0だけど一応ね。さてさて、Dクラスはどこまで頑張れるのかな? 

 

 

 

 

 

「では、明日の4時にもう一度再審の時間を設けることにする──」

 

 審議の場はそんな堀北兄の言葉によって一旦は閉められることになった。

 その結果は悪くもないが良くもない。佐倉の証言と証拠によって何とか相手の妥協を引き出したが、それを掘北妹が突っぱねて徹底的に争う姿勢を見せつけた。それによって再審議となりはしたが、今から新たな証拠を集めるのには時間がないし、完全無実を勝ち取るのは実質不可能と言っていいだろう。

 だがそれでも掘北は争うことにした。過去問の問題や暴力事件を起こした須藤を、救って退学や停学を阻止する。そうすることが、クラスの利益になるはずだとそう信じて。

 そしてオレもまた、それを信じている。須藤は確かに学力は低く素行も悪い。問題行動を起こすトラブルメーカーだが身体能力は学年でもトップクラスだ。短所さえなくせばクラスに利益を生む存在になれる伸びしろを持っている。

 もっとも、その短所。不安要素を解消しなければまたしてもクラスに不利益をもたらす結果になりかねないが。

 

「お疲れー! 綾小路くん! 愛里ちゃん!」

 

 そして掘北妹と別れ、佐倉が動けるようにまで待っていると生徒会室の扉が開き、中から生徒会のメンバーがやって来る。

 そしてその中で真っ先に明るく、勢いよく声を掛けてきたのは南雲だった。

 

「う、麗ちゃん!?」

 

 佐倉も突然の声掛けにびっくりしている。名前で呼ばれたことにも、名前で呼ぶことにも慣れた様子だった。

 

「南雲。あまり騒ぐな」

 

「えーこれくらいいいじゃないですか。もう審議は終わったんですし、友達を労うくらいはいいですよね?」

 

「慎みと振る舞いの問題だ。審議直後に証言者に対する生徒会の振る舞いとしてはあまり感心しない」

 

「もう堀北先輩は固いなー。もうちょっと優しくしてあげましょうよ。その方が下級生からも女の子からもモテますよ?」

 

「必要ない」

 

「こら、麗さん! 会長になんてこと言うんですか!」

 

「わー橘先輩が嫉妬してるー! 助けて堀北せんぱーい!」

 

「し、しし嫉妬なんて……! し、してる訳ないじゃないですか!? なんてこと言うんですか麗さん!」

 

「きゃー橘先輩に襲われるー! にっげろー!」

 

「逃げないでくださいっ! うう~~!」

 

 ……なんというか、賑やかだな生徒会。いや、南雲が賑やかと言うべきか。目の前で軽くじゃれ合いを始めた南雲と橘に佐倉と共に困惑していると堀北兄が軽く息を入れる。

 

「騒がしくてすまないな」

 

「いえ、構いませんけど。仲……良いんですね?」

 

「悪くはない。が……時と場合を選んでほしいものだな」

 

 そう言う堀北兄はそう言いながらもじゃれ合いを止めることはない。廊下を走っている訳でもないし、審議の最中でもない。友人同士、仲の良い先輩後輩同士のコミュニケーションを止める気はないのだろう。南雲は固いと言ったが、思ったよりは柔軟な印象だ。

 そして生徒会の2人がじゃれてるその時間を使って「どうするつもりだ?」とオレに問いかけてくる。

 その問いにもオレは適当に答えながら、途中佐倉にも話を振られてそれも庇う、が……その掘北兄の佐倉への言葉にも、南雲は割って入ってきた。

 

「──今回、お前の言葉が『真実』として認識されることは無いだろう」

 

「わ、私は……ただ……本当のことを……」

 

「証明しきれなければ、ただの戯言だ」

 

 そうして佐倉が俯いたまま悔しさで涙を流す。それを見ていたオレの前で。

 

「オレは──」

 

「まあまあ会長。そんなにいじめなくてもいいじゃないですか」

 

 南雲が明るい表情で割って入ってくる。それを見た堀北兄は少しだけ無言になった。

 

「……虐めてなどいない。ただ現実を教えただけだ」

 

「聞いた? 愛里ちゃん。会長ってこう見えて優しいんだよ? ようは『証明出来るように成長しろ』って発破かけてくれてるんだから」

 

「え……? で、でも……」

 

 南雲の解釈に佐倉が困惑する。なるほど。確かにそういう風にも受け取れなくはない。オレ達から見た堀北兄は何事にも厳しい生徒という印象だが、生徒会に入って堀北兄と接している南雲からすれば違うように見えるという訳か。

 

「それにヒントも教えてくれてるんだよ? 証拠は証明力で決まる。つまり、裏をかえせばどんなデタラメな証拠だって証明力さえ伴ってれば証拠として認められるってことなんだから」

 

「ど、どういうこと……?」

 

 そして更に気になることも言う。佐倉はその意味を理解出来ずに頭に疑問符を浮かべていた。

 

「それにさぁ。そもそも真面目に審議に挑まなくても──」

 

「南雲。その辺にしておけ」

 

「おっとっと。喋りすぎかな? ごめんなさい堀北先輩」

 

「……それで、お前も何か言いたいことがあったように見えたが? 綾小路」

 

 南雲が構わず喋り続けようとしたところを、堀北兄は止めてオレに話を振ってくる。先程言いかけた言葉をもう一度口に出すチャンスをくれた形だ。ありがたくそれに乗っかることにする。

 

「……オレは信じますよ。佐倉の証言を」

 

 そうして掘北兄の返ってくる言葉に応対しながらも、オレはそれとは全く別のことを考えていた。

 

 

 

 

 

 ──そしてそれからは、驚くほど順調に事が進んだ。

 

 堀北が立てた作戦と一之瀬達の協力により特別棟に石崎達を呼び出し、偽物の監視カメラで奴らを嘘で脅す。学校側は全てを理解しているという嘘で話を進め、須藤への訴えを撤回させることに成功。

 それから佐倉のストーカーが佐倉を襲う現場に携帯の位置情報を頼りに急行し、これを一之瀬と共に撃退。

 これにより全ての事件は無事解決した。須藤も停学は回避され、無事にバスケに打ち込むことが出来るし、佐倉もまたストーカー被害に悩まされずに済む。

 今回仕掛けてきたCクラスの龍園と思われる得体の知れない男のことも気になるが、ともかく無事に終わったのだ。それを、オレは堀北と一緒に帰路につきながら理解していた。

 

 ──だが、まだ終わっていないことがある。

 

 自分の思考を即否定するその考えは、以前から考察していたこと。その既に導き出した答えを改めて思い返していると、背後から声が掛けられた。

 

「綾小路くんっ」

 

 明るく、可憐な声。呼びかけられただけで自然と浮足立ちそうなその声は、Bクラスのアイドルのものだ。

 

「南雲か」

 

「やっほー。良かったら一緒に帰らない? 私も生徒会の仕事終わったからさ」

 

 そういえば先程堀北兄と橘と会った時に南雲はいなかった。おそらく議事録も書くことがなくなったためやる予定だった仕事がなくなったのだろう。特に断る必要もないので承諾する。

 

「ああ。構わない」

 

「ありがと。鈴音ちゃんもいいよね?」

 

「……好きにして」

 

 堀北はその南雲の誘いにぶっきらぼうに答える。誰が相手もそうだが、南雲相手には苦手意識があるのはより顕著な気がする。

 そして南雲は堀北のそんな態度すら気にせずに話始めた。

 

「って、それより帆波ちゃん達から聞いたよ~? すごかったんだって? 偽物のカメラ設置して石崎くん達を脅したとか? よくそんなこと思いついたねー」

 

「堀北を褒めてやってくれ。オレは堀北の言う通り動いただけで何もしてないからな」

 

「そうなの? あ、でも愛里ちゃんの方はさすがに綾小路くんでしょ! 助けてくれたって聞いたよ! 私からもお礼言っとく。ありがとね!」

 

「あれも気づいたのは偶然だ。でも助けられたのは良かったな」

 

 南雲は一之瀬達から話を聞いて興奮しているのだろう。少しハイテンション気味に言葉を続ける。その称賛の言葉を否定しながらも、オレは気になったことを尋ねることにした。

 

「そういえば、佐倉とは知り合いだったんだな」

 

「うん、ちょっとねー。昔からの……ってか愛里ちゃんのこと気づいてるんならわかるでしょ? 同業者で一緒に仕事したこともあるからね。昔からの知り合いなんだ」

 

「なるほどな」

 

 アイドルとグラビアアイドル。細かな分類は違うが、同じ芸能人でアイドル。同年代ともなれば仲良くなるのは必然だろう。佐倉が信頼していたのも頷ける。南雲は特に頼りになりそうだからな。

 実際こうして話をしていても、やはり嫌な気はしない。一之瀬も善良な人柄を感じたが、南雲からも頼もしさや好感を覚える。

 Bクラスの頼れるリーダーにして生徒会役員にも選ばれるほど優秀で明るく可愛いアイドル。南雲麗。そんな生徒と知り合いになれただけでも、オレは幸運なのかもしれない。

 もし万が一でも付き合うことが出来たなら男としてはきっと最高なんだろうな。そう思いながら、オレは一旦黙って堀北へ話題のバトンを渡す。

 

「……そういえば堀北。確か南雲に聞きたいことがあるんじゃなかったか?」

 

「……そうね。南雲さん、ひとつ聞いてもいいかしら?」

 

「うん、勿論。答えられることなら答えちゃうから言ってみ?」

 

「私の勘違いだったら謝るけど……もしかして、()()()()()()()()()

 

 なんてことのないように。普通の会話の流れで、堀北は南雲に確信をもって指摘する。予め、練習していたように。

 そして、それを聞いた南雲は。

 

「あはは……どういう意味かなぁ?」

 

 それでもなお、表情を笑顔から変えることはなかった。




今回は色んな意味で繋ぎの回。次回が本番。次回からが本番です。早ければ今日の夜。遅くて明日。
暴力事件編も次回で終わりですぐ無人島編になるのでお楽しみに。

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