ラーメンは数字が取れる
楽しい楽しい夏休み。学生にとっては怠惰に遊び呆けることの出来るその長い休暇を、私達は豪華客船で優雅に過ごしていた。
しかし、その2週間の内の1週間は学校側が用意した特別試験、無人島でサバイバルをするというなんとも愉快なサプライズイベントによって粉々に破壊され、生徒達は相当な苦労を体験した。私みたいな何でもこなせる楽しめる可愛いパーフェクトな女の子であればそんなサバイバル生活もバカンスの1つに昇華することは可能だが、おおよそ殆どの生徒にとっては御免被りたい試験であったことは間違いない。殆どの生徒は、遊びたいのだ。友達と、先輩と、そして異性と。そして一生に3度しかない高校生活の夏休みを華々しいものにしたいのだろう。そのためには、あの特別試験は障害以外の何物でもない。
だがそれでも得るものはあった。誰にとっても実りのある試験となっただろう。成功にしろ失敗にしろ、今回の試験によって起きた意識の変化。パラダイムシフト。それが起きたことは私にとっても非常に喜ばしいことだ。
そして何より、目に見える結果までついてきている。私達高度育成高等学校に所属する生徒はクラス毎の成績をクラスポイントという数値で表し、それによってクラスの序列が決まるようになっているのだ。
そして先月まで……いや、この特別試験が始まるまで、私達はBクラスという上から2番目のクラスだった。しかし、今回の試験の結果によってそれは変わった。各クラスの現在のポイントを、私は頭で思い浮かべる。
・Aクラス……1024
・Bクラス……
・Cクラス……542
・Dクラス……257
その結果を見れば一目瞭然。そう。私達Bクラスは、このままいけばAクラスになる。
クラスの更新は来月にならなければ行われないため、正式には二学期が始まってからになるとはいえ、この結果は私達Bクラスを大いに沸かせた。それは、苦しい目にあった者でさえ変わらない。私は自分の客室で、目の前のベッドに腰掛ける女の子の様子を見ながらそれを確かに実感する。
「こずえちゃん、身体はもう大丈夫?」
「うん、大丈夫。先生にも見てもらったけど問題ないって」
「そっか。ならよかったよ。それと無理させちゃったね。お詫びも兼ねて50万ポイントにちょっと色つけて送っておくから確認して」
私は携帯を操作し、目の前にいる南方こずえちゃん。無人島試験で私がリーダーに指名した子にプライベートポイントを送金する。こずえちゃんはそれを見て同じく携帯を取り出しポイントの残高を確認すると素直に驚いた。
「う、うわー……なんか信じられないね。自分こんなにお金……じゃないけど持ってるなんて。ほんとに貰っていいの?」
「うん、勿論。リーダーとして役目を全うしてくれたこずえちゃんにはそれを受け取る資格がある。いわば報酬だよね。結果を出した人はそれだけ評価を得て、それに見合った報酬を得なければならない。社会なら当然の常識だよ。だから遠慮せずに貰って」
「……うん。そ、それなら……ありがたく貰わせていただきます」
私がそう言って聞かせれば、こずえちゃんは納得して会釈した。額が額だけに畏まってるのは大金を頂くのになれてない証拠だろう。学生らしくて可愛いことだ。
……ただそれだけじゃ終わらないけどね。
「でも先走って最後、私の前に行ったことだけは減点かな。あれがなければもっとポイントを得ることが出来たからね。そこだけは気をつけてね?」
「そ、それは……うん。ごめんなさい」
私の笑顔の厳しい言葉を受け、こずえちゃんは素直に謝罪する。そうそう。しっかり反省会もしないとね。ほんと、あれがなければクラスポイントをあと100は伸ばせた。襲撃を仕掛けてきた龍園くんに対する備えの男子生徒。その点呼遅れによるペナルティと腕時計を無断に外したことによるペナルティで余計にポイントを減らしてしまったからね。
ただまあそれはウチの男子が貧弱だったせいもあるし、それを見誤った私の責任でもある。だからこずえちゃんの責任の割合はあまりない。体調不良で判断力も鈍ってただろうからね。あれは仕方ないとも言えるのでポイントを減らしたりはしないしむしろよくあそこまでやってくれたと褒めてあげる。私は謝ってくるこずえちゃんの頭を撫でた。
「まあまあ。でもそれ以外はほんと完璧だったからさ。気にしなくていいよ。次に活かしてくれればいいからさ。ってことでもうひとつご褒美に私が撫で撫でしあげるよ。ほーら、よしよしよし!」
「わっ、ちょっと、麗ちゃんっ。あはは、ちょっとやめてよ~!」
おふざけ雰囲気で過剰に撫でてついでにくすぐってあげれば、こずえちゃんも笑ってくれる。じゃれ合いで気を緩めてもらおう。こういうアフターケアも大切だからね。
「ふぅ。それじゃ私はそろそろ行くから。ゆっくり休んでいっぱい遊んでね。私もまた誘うからさ」
「うん。またね麗ちゃん」
そしてしばらくじゃれあったところで立ち上がり、こずえちゃんと別れる。ここは私の部屋ではあるけど、私も私でやることがあるからね。こずえちゃんに手を振ってにこやかに別れる。
そうして客室から廊下に出ると、待ち合わせの場所へと向かう。今は4階。女子の客室のフロアで目的の場所は地下2階だ。エレベーターのボタンを押して降りていく。
その間にも私の携帯は鳴りっぱなしだ。いや、基本的に通知が止まないので重要な相手からの連絡以外は通知を切ってるので鳴りっぱなしは正確な表現じゃないかもだけどとにかく連絡がいっぱい。友達とのグループチャットやら、個人の誘いまで。特に男子はもうほんと私を誘いたくて仕方ないみたいだね。さすがにしつこく連絡してくる人は少ないが、結構遊びの連絡が来る。ちなみに割合で1番多いのはプールだ。そんなに私の水着が見たいのか。いや見たいだろうね。でも残念。そう簡単には見せない。私の時間は高いし私の水着はもっと高いのだ。それに今日は先約がある。
なので毎日のように連絡をくれる池くんと山内くんのそれぞれの個別チャットと、他にも幾つかあった誘いに断りの連絡を入れる。そうしていると目的地はすぐだ。店の前にいる2人に私は声をかける。
「やっほー。お待たせ~」
「ああ」
「あ、やっと来た」
目つきの鋭い2人がこっちを向く。神崎隆二くんと姫野ユキちゃん。私の友達で我がBクラス内閣の幹部であり私の側近である2人であり、今日はお昼を3人で食べる約束をしていた。まあ昼時はちょっと過ぎてるんだけどね。
「南方との話は終わったのか?」
「うん。体調も良いみたいだし、この後紗代ちゃん達と遊びに行くみたいだね。特に不満もないみたい」
「そうか。やはり……」
「あー待った待った。中に入って話そ?」
「む……そうだな。そうしよう」
と、話をこのまま続けようとする隆二くんに、私は待ったをかける。別にまだ聞かれてもいい話とはいえ、無駄に情報を与える余地は消しておこう。ここは人通りもそれなりにあるからね。その点、中に入ればその心配はない。3人でお店の中に入る。そして予想通り、中は私達以外の人はいなかった。運がいいね、と私達はあえて1番奥のカウンターに並んで座る。私は真ん中で左に隆二くん。右にユキちゃんが座った。そしてメニューを開いた。
「さ、まずはご飯頼もっか。2人とも何食べる? 私のおすすめはねー……」
「……いや、別に良いんだけどさ……」
「ん? どうしたのユキちゃん?」
メニューを広げて何を食べるか聞きながらなければおすすめを教えてあげようとしたところで、右隣のユキちゃんは不満ではないがやっぱりちょっと不満。でもどうなんだろうと疑問に感じるような、そんな何とも言い難い様子で口を開いた。
「……なんでラーメン? 豪華客船に来てまで食べるものじゃないでしょ」
そう。私の今日のチョイス。私達が入ったお店はラーメン屋だ。
この豪華客船にはレストラン1つとっても色々ある。ハンバーガーなどのジャンクフードからフランス料理などのブルジョワなお店まで幅広く、生徒達は様々な料理を無料で楽しむことが出来る。
なので私はそれを制覇するべく、ここ3日は友達を誘って色んな店に行っている。なのでまあ、その中にある某有名ラーメン店のチェーン店であるここに入るのも私にとってはおかしくないのだが、ユキちゃんはちょっぴり不満みたいだ。私は首を傾げる。
「あれ? ユキちゃんってラーメン嫌いだったっけ?」
「いや別に……そんなことはないけど。ただ豪華客船に来てまで食べるものじゃないっていうか……」
「え~そうかなぁ? でも美味しいよ? ここのラーメン。私のおすすめはこっちの特製かな。あ、レディース専用メニューもあるよ? こっちもおすすめかな。量もそんなに多くないしね」
私はちょっぴり不満気味のユキちゃんに色々とおすすめを教えてあげる。すると反対側の隆二くんが気になって尋ねてきた。
「南雲はよく来るのか?」
「まあたまにねー。もしかして意外だった? アイドルはこういうもの食べないんじゃって思ってた感じ?」
「いや、そこまでは言わないが……確かに、意外というのは否定できないな。女子はもう少しお洒落な食べ物を好むだろう。てっきり南雲もそういう店を選ぶと思っていたんだが……」
「まあ確かに女子力は低いかもねー。でもそういうイメージがあるからあんま行かないだけで、女子だって普通に男の子が好きなような油っぽいご飯食べたくなる時だってあるんだよ? それに女子なんて毎日のようにそういうお洒落なお店、女子力の高い食べ物ばっか食べてるんだから。毎日友達と食事に行く私なんて特にそうだよ。ユキちゃんもよく友達と食べに行くからわかるよね?」
「……まあ、それはそうだね。確かに、昨日も一昨日も行ったカフェにまた行くのもそれはそれでウザいけどさ」
「そうか……なるほどな。どうやら俺は偏見を持っていたようだ。言われてみればそういうものだと納得出来る。女子も女子なりの苦労があるんだな」
「そうそう。わかってくれた? それに美容と健康のコツは、色んなものを食べることなんだから。ヘルシーなものばかり食べてたらストレスで余計に肌とか荒れちゃうよ」
隆二くんに女子の生態についての講義をしてあげたところで、私は店員さんを呼んで注文する。私はいつもの店1番のおすすめの特製ラーメンで、隆二くんも同じものを。そしてユキちゃんは迷った末にレディース限定のメニューを注文した。そうして店員さんが去ったところで、私は更に口にする。この店を選んだ理由を。
「それにさ。こういう店だからこそ逆に内緒話しやすいでしょ? ユキちゃんの言う通り、豪華客船に来てまでラーメン食べに来る人は少ないだろうし。お昼時を過ぎてるなら尚更」
「確かに。それはそうかもしれないな」
そう言えば隆二くんが店内を見渡して納得する。まあ男子が来てる可能性もあったけど、今日はそんなことないみたいだ。店内には店員と私達だけ。まだ遊んでる最中かな? プールで遊んだ後とかなら来る子もそれなりにいるかもしれないけどね。モテない男子なら女子と食事にも行かないのもあって全然ありえることだ。
まあ誰かが来てたなら来てたで別の店を選んでたけどね。これならちゃんと深い話も出来るかな。
「内緒話するんなら個室のある店でも良かったんじゃん? ほら、フランス料理の店とか……よくわかんないけど個室とかあるんじゃないの?」
「行ったけど個室はなかったかなー。広々とした感じの内装だったね。もしかして行きたかったのユキちゃん?」
「まあ……興味はあるかも。フランス料理なんて食べたことないし。あんたは……行ったことありそうだよね」
「何度かねー。といっても個人的に行くとかじゃなくてお店のロケとかで食べたことある感じかな。昔家族と1、2回くらいなら行ったことあるけどそれくらい。友達誘って行くような場所じゃないしねー」
ユキちゃんの質問に答えながら思い出す。食レポって意外と難しいんだよね。表情やら食べ方。見せ方。言葉選びなど色々考えることがあるし。食べてても味を楽しんでるというより味を分析してる感じなので意外と高等テクニックなのだ。フランス料理とかになると視聴者には味が想像出来ない人が多いからどう伝えていいのか余計に難しい。逆にラーメンみたいな誰でも食べたことのある料理の方が簡単。美味しさが想像つくからね。だからラーメン番組は数字が取れる。
でもそっか。ユキちゃんはそういう未体験を楽しみたいんだね。それなら今度連れてってあげよう。その予定を頭の中に入れていると、私の返答にユキちゃんが顎に手を当てながら気の抜けた返事で返してきた。
「ふーん……神崎くんは? 食べたことある? フランス料理」
「ああ。だがそんなに頻繁に行く訳じゃない。家族と月に1回、行くか行かないか程度だ」
月に1回でも行くのは割と珍しい部類に入るだろう。まあ最近はリーズナブルな店も多いとはいえ、月1でフランス料理を食べに行くような家庭はそれなりに裕福だと想像がつく。ユキちゃんはそれを理解したのだろう。更に話を広げた。
「……もしかして神崎くんの家って結構お金持ち?」
「……世間一般から見ればそうなるのは否定しない」
「ふーん、そうなんだ」
隆二くん的にはあまり家が金持ちというのをひけらかしたくないのだろう。やんわりと肯定するが、ユキちゃんの方は興味なさげだった。……これが節操のない女の子だったら急に媚びへつらって玉の輿を狙いに行ったりして面白いんだけどユキちゃんはそういうタイプじゃないみたいだね。私は感心しながら話に入る。
「ちょうどいいや。ついでに隆二くんからその話も聞こうと思って来たんだよね」
「俺の話?」
それは寝耳に水だったのだろう。神崎くんが疑問に思い、それをそのまま口にした。
「どういうことだ。今日は無人島試験についての話をするんじゃないのか?」
「勿論無関係ではないよ。本筋ではないけどね。ってことで、まずはその話に行く前にこの試験でのキーマンだったかもしれない生徒の話をしようかな」
「それって……龍園くんのこと?」
龍園くんね。確かに龍園くんは無人島試験のキーマンの1人だったけど、生憎とユキちゃんの答えは間違いだ。
「龍園について、俺から話を聞くことに何の関係があるんだ?」
「まあまあ、順序よく話そうか。AクラスとCクラスについてはもう試験の後に大体おさらいしたけどさ。問題はDクラスなんだよね」
「Dクラス?」
私がそう言うと2人の眉間に皺が寄る。試験について、他のクラスがどんな戦略を立ててどういう風に動いたのかは大体話した。だから2人ともそれを理解しているため、今更Dクラスについて話を持ち出してきたことに疑問を持ったのだろうが、生憎と私はまだ全部を話した訳ではない。
「そう。Dクラスもまた、私達と同じようにリーダーをリタイアさせる一方で、Aクラスのリーダーを当てていた。それを成し遂げた生徒がいたんだよ」
「それは……堀北のことか?」
隆二くんの当然の名指し。それを聞いてユキちゃんも頷く。
「ああ……確かに掘北さんのことは噂になってるよ。Dクラスの功労者だってね」
「鈴音ちゃんが功労者なのは事実だけどそれを動かしたのは鈴音ちゃんじゃないよ」
私は当然の事のように言いながらコップの水を一口だけ含み、喉を潤す。2人の方は話が気になって顔がこちらを向いていた。
「どういうことだ? Dクラスの中心人物は堀北だと聞いていたが……それは間違いだったのか?」
「うん。あえて今まで話さなかったんだけどね。Dクラスの陰で動いているのは綾小路くんだよ」
私がそう言っても、2人は反応を大きくしなかった。驚いてはいない。戸惑い、そして疑いだ。とてもそうは思えないという表情。それを見て私は楽しくなる。
「綾小路くん? あー……確か、堀北さんと一緒にいる暗そうな男子だっけ。ちょっとだけ話題になったよね。そこそこイケメンなのは覚えてるけど」
「……綾小路、か。確か須藤の暴力事件でも掘北と一緒にいたな。一之瀬からも話を聞いている。堀北の指示で色々と動いていると。その綾小路が、今回の試験でも動いていたと?」
ユキちゃんも隆二くんも当然、その名前も顔も覚えているし、隆二くんに至っては接点もある。そのため話の理解は隆二くんの方がスムーズだった。綾小路くんが実はDクラスを動かしていたという仮定を半信半疑で考えている。それに対し、私は答えを先に突きつけた。
「鈴音ちゃんをリタイアさせたのもAクラスのリーダーを当てたのも綾小路くんが裏で動いたからだと私は思ってるよ。確証はないけどね」
「……なら何故そう思える?」
「私の感覚がそう言ってる。綾小路くんは普通じゃない」
「あんたの勘ってこと?」
私は頷く。私は私の感覚を疑わない。
「中間試験の時のことは覚えてるよね。あの時に私の立てた偽の過去問を用いた戦略を防ぐために動いていたのは綾小路くんだった」
「だがそれは堀北が指示を出していたからじゃないのか?」
「鈴音ちゃんが私の打った手を読める訳ないじゃん。あれはただの頭でっかち。勉強は出来るし十分優秀だけどただそれだけの人間だよ。私の敵じゃない」
そう。それはない。
確かに状況だけ見れば鈴音ちゃんが考えたという可能性は捨てきれないが、それを実際に鈴音ちゃんを見た私が否定する。そもそも病気だろうが何だろうがリタイアするような性格じゃないし、試験の裏をつくような考え方をする子でもない。だから私は否定するが、その感覚は中々どうして人には伝えにくいものだ。
「そもそも私の手を読める人間なんて、1年生の中だと精々龍園くんと有栖ちゃん。そして綾小路くんと後は高円寺くんくらいで他は対抗することすら出来ないと思うんだよね」
「……そうは言うけど結局防がれてんじゃん。それに、綾小路って確か勉強も運動もそんな出来ないんじゃなかったっけ。中間試験の勉強会にも参加してたって聞いたけど。その繋がりで堀北さんから指示を受けたんじゃない?」
「そう、切っ掛けはそこだね。私の立てた戦略を見抜くに当たって、私達と取引した上級生を相手に動いていたのは綾小路くんだった。それが鈴音ちゃんの指示で動いてないと言えるだけの証拠は確かにない」
私は思い返す。そもそもあの戦略を見抜いて止めることが出来たのは、他ならぬ上級生の関与があったからだ。その協力を求めるのに、鈴音ちゃんじゃその条件に一致しない。
「でもそれだけじゃ私の立てた戦略を止めることは出来ない。上級生から貰った大量のポイントがなければ、須藤くんの退学を阻止することは不可能だった」
「それはそうだな。そして、Dクラスへポイントを貸し付けたのは3年生の堀北生徒会長だと聞いているが……その接触すら、堀北の指示ではなく綾小路の独断だったと?」
「うん。そうだと思うよ」
そう。それは雅兄からの証言で裏が取れてる。堀北会長がポイントを貸し付けたのは、ほぼほぼ間違いないと。
そもそもあれだけのポイントを1年生に貸すことが出来る生徒は限られてるのだ。それだけのポイントを保有していて、なおかつ綾小路くんと接触していて、その下級生の高い実力を見込んで、なおかつそれを見抜いた上でポイントを貸すことを決断出来る生徒ともなると堀北先輩くらいしか選択肢がない。それを雅兄は確信していたし、私も私で鈴音ちゃんを見た上で確信した。
「堀北さんのお兄さんだっけ? それなら妹が困ってたら貸す可能性もあるんじゃないの」
「堀北先輩の口ぶりからしてそれはないかな」
ユキちゃんの質問を否定で答える。あの人はただ妹だからという理由でポイントを貸すような甘い人じゃない。ポイントを貸すにはそれなりの理由と信頼が必要な筈だ。その内容はわからないが……可能性が高いのは雅兄のことかな。堀北先輩が危惧してる目下1番の問題はそれっぽいからね。
だけどまあ、今はそれはいい。
「……わかった。綾小路が怪しいと思う理由はいい。そう仮定して話をしよう。それなら何故今までそれを俺たちにも隠していた? それと綾小路と俺の話がどう関係してくる?」
「それは怪しいと思う理由にも繋がるんだよね。というのも……有栖ちゃんと契約したからかな」
私がそう言えば、さすがに2人も驚く。そう。私が微妙に動き辛いというか、ある手を取らない理由がそれなのだ。
「……契約だと? それも坂柳とか」
「うん。ほら、前に将棋とチェスの2面指ししてたでしょ? 実はあれ、有栖ちゃんと綾小路くんに関することで賭けてたんだよね」
「……そんなことをしていたのか。その内容は?」
「綾小路くんを潰す権利」
「……それは……」
私がそう言えば、左右から息を呑む音が聞こえる。Aクラスの坂柳有栖ちゃん。あの子の実力は2人も知るところであり、そんな有栖ちゃんもまた綾小路くんにこだわっている。
「なんか有栖ちゃんも綾小路くんを潰したい? みたいでさ。こっちが動いてることに気づいて向こうから接触してきたんだよねー。しかも綾小路くんが表に出たくない理由も何となく察してるみたいだし……ってことで幼馴染じゃないかなーって私は思ってるんだけど。あ、ちなみに勝負は時間切れで引き分けで、とりあえず綾小路くんの実力を表に出さないことで合意したんだけどね。そんなことしたら龍園くんまで参戦してきて面倒なことになりそうだし」
「……坂柳も、綾小路にこだわっている?」
そう。だからこそ、私の中で綾小路くんへの信頼は更に増した。
私に態々勝負を仕掛けてきてまで、綾小路くんの実力が表に知れることを封じようとしてきたのだ。どちらかが勝てば綾小路くんへ仕掛ける権利を手にし、負けた方は勝った方が仕掛けるまで綾小路くんに仕掛けてはならないというその勝負で、私が想定以上の実力を発揮した結果、予め定めていた時間が切れたことにより引き分けになる。それで、結局は互いに綾小路くんの実力を意図的に表に知らしめることを禁止にした。
「……何それ。綾小路って一体何者な訳?」
「わからない。だからちょっとでも情報があればいいなと思ってね」
そこで私は隆二くんに視線を向ける。
「私は有栖ちゃんと綾小路くんが昔からの知り合いだって思ってる。そこで、学校に入る以前から有栖ちゃんと知り合いの隆二くんにも一応話を聞いてみようと思ってね」
「……なるほど。そういうことだったか」
隆二くんがようやく納得する。そして初耳のユキちゃんが「え?」と驚いて顔を隆二くんの方に向けた。
「……神崎くんって坂柳さんと知り合いだったの?」
「ああ。とはいえそれほど深い繋がりがある訳ではない。親同士の繋がりで何度か会食で話したことがある程度だ」
私は既に聞いた話。隆二くんが初めて有栖ちゃんを見た時の表情がどことなく違和感があったので聞いてみたら知り合いであることを話してくれた。だからこそ、ちょっとした手がかりになる可能性がある。
「ということでちょっと長くなっちゃったけど、隆二くん。綾小路くんについて何か知らない? 有栖ちゃんに親しい男の子がいたとか、周囲に幼少期の綾小路くんっぽい子がいたとかさ。初恋の男の子の話とかなら面白いんだけど」
「そうだな……」
ちょっとふざけ気味の私の質問を聞いて、隆二くんは真面目にそれを受け取って僅かに思考を巡らせるように黙った。しかし、その沈黙は数秒後にあっさり解かれることになる。
「悪いが覚えがない。そもそもさっきも言ったが坂柳とはそれほど深い繋がりがあった訳じゃないからな。坂柳の友人関係、ましてや好意を寄せる相手など知る由もない」
「ダメかー。ちょっとでも何かわかればそこから色々わかりそうなんだけどなぁ」
「よくわかんないんだけどさ。神崎くんが綾小路のことを知ってたとして何が分かる訳? なんにもなんなくない? 恥ずかしい秘密とかでもあれば違うかもだけどさ」
手がかりなしと聞いてカウンターに項垂れる私に、ユキちゃんからそんな疑問が飛ぶ。なので私は身を起こしてそれに答えてあげた。
「……ユキちゃんはさ。人間がどんな風に形作られるかわかる?」
「は……? 何それ。どういうこと?」
「性格や思想や個性。そして実力の話だよ。たとえば私が、今のこんな素敵で可愛い完璧な人間に成長するにあたって最も重要だった要素って何だと思う? 生まれ持った才能とか弛まぬ努力とか色々あるでしょ?」
ちょっとだけ私の個人的な思想について話してあげようと問いを投げる。
その人がその人として生まれ育ち、性格や長所短所、考え方や好きなもの嫌いなもの。それら全てを内包した人間という生物の違いは、どこから生まれるのかという話だ。
「そりゃ……才能なんじゃない? ようは生まれ持った遺伝子ってことでしょ」
「私は努力はしてないって? 中々酷いこと言うねーユキちゃん」
「い、いや別に……そうは言ってないけど。これって一般論の話でしょ」
「冗談だよ。そして、それも否定しないよ。努力も才能も必要。ただまあ……私としては『環境』も結構大事だと思うんだよねー」
「環境……」
そう。環境だ。人が成長し、優秀な人間に育つにあたって環境は必要不可欠なもの。
どんな天才であっても環境が劣悪なら大成せずに終わるかもしれないし、あるいは逆にその環境に適した才能が発揮される可能性もあるという人の成長にとって重大な要素。
ただ今回の話で重要なのはその環境で分かることもあるということだ。その人間を形作る上で誰もが持っている環境。それを知ることで見えてくるものもあることを教える。
「うん。それでその環境は人に何が得意か聞くだけでもある程度予想出来るし、なんなら見ただけでも分かることもある。サッカーが得意ならサッカー部という環境にいたのかもしれないし、勉強が得意なら進学校か、あるいは塾に通っていたか。家庭教師を雇う環境にいたのかもしれない。それは勉強やスポーツだけじゃなくても、その人が不良なら家庭環境が荒れてるとか住んでる地域が荒れてるとか色んな可能性が想像つくでしょ?」
「それはまあ……」
ユキちゃんがゆっくりとそれを飲み込むように頷く。そして左からは少し先の結論が飛んできた。
「……実力が不明の綾小路に関しても同じように環境を知れば想像がつくということか」
「誰だってそうだよ。その人の個性を聞けば環境を想像出来る。それはつまり、裏を返せばその人の環境を知ればある程度実力も予想がつくということだよ。有栖ちゃんと綾小路くんは昔からの知り合いだった。それでもし綾小路くんが有栖ちゃんや隆二くんと同じで政財界の人間だったら? どこかの会社の息子なのか政治家の息子なのか。その会社はどんな会社なのか。その政治家は何をした人なのか。もしそうなら高い教育を受けてるかもしれない。もし有栖ちゃんと友達ならもしかしたらチェスはある程度得意かもしれない──とかね。何かひとつでもわかるだけで、その人の環境や得てきた知識、経験、実力をある程度予測することが出来る」
それは勿論、絶対の、確実な情報ではない。環境とは何も関係がない能力を持つ可能性も当然ある。その程度も不明。人には得意不得意もある。政治家の息子だからって政治センスに長けているとは限らない。
だが、それでもある程度選択肢を絞ることは出来る。
「……いや、それでも絶対そうだとは限らないんじゃない?」
「勿論そうだよ。だから、普通の人ならそこで考えることをやめる。考えてもわからないことだから。答えが出ないから。そう、それは間違いない。だけど、そこで考えることが初めて『読む』ことに繋がるんだよ」
ユキちゃんの言ってることも正しい。確証がなければ確実なことは言えない。人が取り得る膨大な選択肢の中から、その人が取り得る行動を予想することは至難の業なのだ。何の材料もない状態で初対面の人間の考えやその人が何が得意かを読めと言われたって出来る訳がない。そんなのはエスパーの領域だ。
しかし、そこに判断材料が。情報があれば話は変わってくる。
「つまり南雲。おまえは俺から得られる情報で綾小路の実力を少しでも量ろうとした訳だな?」
「まーそういうことかな。ただ、確認の意味合いが強いけどね。私の中では、綾小路くんはかなりの実力者だとほぼ確信してる。でもその実力の度合いがどんなものかわからないからダメ元で聞いておこうかなって」
隆二くんの言葉に頷く。綾小路くんの実力の限界値。それが読めないということは私にとって中々に不可解であり楽しみであり不気味に感じるところである。
ただ……ユキちゃんとか隆二くんにとっては不可解でしかないだろうね。
「……やっぱよくわかんない。というかそれであんたよく綾小路だってわかるね。合ってるかどうかぶっちゃけ半信半疑だけど。どうせあんたが言うんならそうなんでしょ?」
「あはは、ユキちゃんも考えればわかるかもよ? 重要なのは情報を得てそこから考えること。ほんの僅かな情報を見逃さず、考えを巡らせれば相手の思考や感情も読めてくる」
「簡単に言ってくれるな」
「本当にね。ぶっちゃけついてけないんだけど」
隆二くんもユキちゃんもさすがに思わず小言を口にする。それが出来れば苦労しないという話だ。
まあ確かにそう簡単に辿り着ける領域じゃないのは確かだ。相手の仕草や表情、言動を汲み取り、相手のパーソナルな情報などから思考パターンを読み取る。そしてその他諸々の情報も組み合わせて考えてみれば相手の打ってくる手を予測することも出来る。私や龍園くん、有栖ちゃんなんかは普通にやってることだ。だからこそ、私達は様々な戦略を考えその時に合わせて手を打つことが出来る。逆にこれが出来ないと勝負にならない訳だが……とはいえ、私達も全てを最初から予測することは出来ないし、普通の人にとっても活路がないとも限らない。それを、私は2人に教えてあげる。
「一応私なりのアドバイスしておくとね。読み合いのコツはまず相手を知ることだよ。そして視野を広くして考えることをやめないこと。相手の言動や仕掛けをただ漫然と受け止めてるだけじゃ読み合いは成立しない。ただひたすらやられ続けるだけだよ。だからまずは……考えることをやめないことかな?」
「そう言って簡単に出来たら苦労しないけどね」
「そうなんだよね。こんな風に言っただけで出来ないのが人間なんだよねー」
それはそう。難しいことを言ってる自覚はある。
でも私の近くにいる人にはある程度優秀な、自分の頭で考えられる人でいてほしいからね。私を崇拝して考えを放棄されるようじゃ困るし、だからこそそうじゃない人を近くに置いておきたい。
「……そうか。なら努力させてもらう。俺自身、今回の試験では無力さを痛感したからな」
おっと。隆二くんはやる気みたいだね。頑張れー。応援してるぞ。
「というかさ。綾小路の話は? それに実力を秘密にするって話だったと思うけど私達には言っていいの?」
「いいのいいの。2人は私の側近だからね。表には出してないし、不特定多数に周知させて怪しまれるような手を使わなきゃ別にいいでしょ」
「適当すぎない?」
「むしろあんな適当な口約束を守ってくれる優しい私に感謝してほしいね」
有栖ちゃんとの口約束で合意したのは私なりの矜持のようなものだ。有栖ちゃんの方もあえて口約束で済ませたのは矜持だろう。それに丁寧に挑発までしてくれた──「麗さんは綾小路くんを表に引きずり出さないと勝てないのですか?」って感じで。あんまりにも最近流行りのメスガキムーブしてくるもんだからわからせてやろうかと思ったけどそんなことをすれば私の敗北みたいなもんだからあえて乗ってあげてる最中だ。
……まあもっとも、本気でやる時が来たらそこにこだわるつもりもないけどね。
とはいえそれは綾小路くんの実力を把握し、邪魔者を潰しつつ布石を打ってからだ。私のやらなきゃならないことは綾小路くん潰しだけじゃない。このBクラスをAクラスに上げて勝利する。その両方だ。
ただそれでも綾小路くんが今1番気になる相手であるのは確かだ。あの目。あの感情の読めなさ。未知数の実力。才能があるのはそうだろうが、どんな環境で生まれ育ち、どんな努力をしてきたのか興味が尽きないよね。
ただやっぱり得られるものは何もなかった。隆二くんがワンチャン知ってればもう少し考察出来たかもだけど……ま、仕方ない。ダメ元だったし。やっぱり有栖ちゃんに期待かな。
「お、来た来た!」
そして私がそんなことを考えていると、遂に店員さんがラーメンを持ってきたのでお行儀よく食べ始める。ラーメンのマナーは啜ること。でも下品には啜らない。ちゃんと美少女らしく上品に啜り、汁も飛ばさない術は習得済みだ。
「2人とも美味しい?」
「……まあ、たまにはいいんじゃない?」
「ああ。確かに悪くないな」
2人にも感想を聞いてみればしっかり味わっているようで何よりだ。いやー友達とラーメン屋って行ってみたかったんだよね。アイドル時代は中々そんなこと出来なかったから高校生になって叶ってよかったかなと、再びラーメンに取り掛かろうとしたそんな時。
「…………」
1人の生徒がラーメン屋に入店してくる。
私達は一瞬、その生徒に目を向けたが特に気にすることはない。その生徒は、私達なんて知らないかのようにユキちゃんの席から1個飛ばしたカウンター席に腰掛ける。
そしてやってきた店員にメニューからシンプルなラーメンを注文すると、そのまま黙ってラーメンを待ち続ける。友達と来る訳ではなく、1人。しかもこのお昼を過ぎた時間帯にやってくるとはよっぽどのラーメン好きなのだろう。話が合いそうだと私は何となく声をかける。そもそも向こうは知らない振りをしようとしているが普通に知り合いだし友達だ。だから声を掛けない理由は存在しない。
「来てくれたってことは……考えてくれた?」
私がそう聞けば、その生徒はしばらく無言となり虚空を見つめるも迷った末に頷く。どうやらまだ決心はついていないようだし、こちらを完全には信用していないようだ。私達は携帯も含め、録音などをしていないことを確認した上で続ける。
「こっちは今回の試験で二学期にはAクラスだよ。……ま、本来ならもうちょっと圧勝するつもりだったんだけどね。そっちの働きも結局無駄に終わっちゃったし、今回の加点はなしかなー」
私がそう言うと、その生徒は話が違うという意を含んだ言葉をこちらに返してきた。
きっとこの生徒は私のご機嫌取りがしたいのだろう。私から持ちかけた選ばれた席を勝ち取りたくて仕方ない筈。
……だと思っていたけど、その顔を見るからにそういう訳でもない。やっぱり妥協案なのだろうね。
普通なら自分のクラスで頑張るのが1番良いに決まってる。だけどそこで勝ち上がるのが難しいと考えるなら……こうして私と繋がることも無理ないことだ。私は先程の発言を撤回してあげる。
「なーんて、ね。冗談だよ冗談。受けてくれた仕事はちゃんと評価する。確かに、失敗したのはこちらの落ち度だからねー」
そう言えば相手は安心したようだ。その意が伝わってくる。
だけども、だ。とはいえこうして顔を見る限りまだ足りないかな。
「でも次もまた働いてもらうけど、いいよね? 受けてくれるなら次もまた加点かな。報酬もちゃんとあげるからね」
私がそう言えば、次は何をすればいいのかと問いを投げてくる。私は言葉を返した。
「それは次の試験の詳細を聞いてみないとわからないかな。まあでも戦略が決まったら連絡するよ。今回は携帯があるから楽だよね。無人島みたいに隠れながら密会して指示を伝える必要もないし」
私がそう言えば、今日は何で直接顔を合わせたのかという意が飛んでくる。どうやら直接顔を合わせるリスクは取りたくないらしいね。
「だって顔見た方が安心するし。それにそっちだってこうして隠れて会う方が好きでしょ? 私とデートしてるみたいでドキドキしない?」
それを言えば、相手は一部は肯定し、一部は否定した。とはいえやはりまだ罪悪感が完全には消えていないみたいだ。
「そっか。なら今度はやっぱり携帯で連絡するよ。次の指示が決まったら教えるね」
そう言って、相手が頷いたのを確認すると私は再びラーメンに箸をつける。
そうして食べ終われば、隆二くんとユキちゃんと一緒に外へ出る。出来れば食事前か食事後に来てほしかったけどしょうがないね。それでも十分楽しめたし。
あ、でも最後にちゃんと言っておこう。私はその生徒の背中を通り過ぎる際に告げる。
「それじゃよろしくね。
その言葉に返答はなかった。
だが代わりに、店を出たところで隆二くんから質問が来る。
「……信用していいのか?」
「まあもしバラされたら面倒だけどね。でも問題ないよ。そこまで大勢に影響は出ないから。無人島の時もそうだったでしょう?」
「上手くいけば儲けものってこと?」
「そういうことー。重要過ぎる仕事を任せるにはまだちょっと忠誠心が足りないかなー」
私がそう言うと、ユキちゃんは息をついた。そして端的に感想を口にする。
「……ほんと南雲さんってえげつない手考えるよね」
「褒め言葉ありがとうございまーす。さ、それじゃ行こっか。せっかくだしこのまま帆波ちゃん達も誘って映画でも行こうよ」
「いや……あんま大人数好きじゃないって知ってるよね?」
「俺は問題ない」
「よしよし。それじゃ連絡するねー」
「聞いてないし……」
人付き合いがそこまで得意じゃない2人を連れ立って、私は帆波ちゃん達と合流して遊ぶことにした。今はまだ何も分からない。事前にやれること。打てる手は打ってあるのだから後はその時になってから考えればいい。
そうしてしばらく遊び、解散しようとした直後。船内アナウンスが鳴る。
それは学校側から連絡事項を記載したメールが全ての生徒に送信されたことを伝えるもの。そこで私達はそれぞれ携帯を操作し、学校側から送られてきたメールを確認する。そこにはこう書かれてあった。
『間もなく特別試験を開始いたします。各自指定された部屋に、指定された時間に集合して下さい。10分以上の遅刻をした者にはペナルティを科す場合があります。本日
「来た、ね」
その瞬間、私は多くの生徒達と同様に理解する。またしても、学力試験とは違う普通じゃない試験が始まったのだと。
原作で神崎くんと姫野ちゃんの絡みがもっと見たいなって。今回から中々ややこしい船上試験編です。お楽しみに。
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