ようこそアイドル至上主義の教室へ   作:黒岩

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一般的黒髪ロング美少女から見た『竜』グループ

 

『だが──この試験で最も弱かったのはおまえだ、堀北』

 

 綾小路くんの言葉が私を貫く。根拠も何もない綾小路くんの主観でしかないその言葉が。

 

『おまえは自分のことを自分で優秀だと思っている。だが、それは学力や身体能力が多少優れてるだけだ。他人を見下し、あまつさえその協力を拒めるほどおまえは強くはない。プライドが高く、集団の和を乱すだけの厄介者でしかない』

 

 だがその言葉はどうしても私を苛立たせる。その言葉が許せず、私は反論する。

 

『他の生徒がどうという話じゃない。おまえはAクラスを目指してるんだろう? 確かに和を乱す生徒は他にもいる。だが、そいつらはAクラスを本気で目指してない。だからやれることをやろうとしないし、自分さえ良ければいいと集団の和を乱す。他者の協力を許さず、歩み寄ろうともしない。自分が認められればそれでいい。おまえと何が違うんだ?』

 

 だが即座に厳しい言葉で切り返される。虚仮にされる。私はそこらにいる怠惰な大多数の生徒と同じだと決めつけてくる。

 

『同じだ。おまえはまだそこらにいるただの生徒でしかない。少しばかり勉強が出来て運動が出来る。容姿がいい。頭が多少回るだけのプライドが高い一生徒に過ぎない』

 

 その言葉の全てが癪に障る。私がこれまで生きてきた中で、これほど侮辱された経験は存在しないほど。

 

『そんなことはないか? だがおまえはAクラスを目指すと口では言いながらも出来ることをやろうとしない。勿論、おまえの今の能力や持っている手段で勝てる相手ならそれでもいいだろう。だが、そうじゃない』

 

 否定してもそれは許さないと言わんばかりに突きつけてくる。そのどうしようもない理不尽な現実を。

 

『中間試験に須藤の暴力事件。そして無人島。南雲や龍園といったおまえの想定を上回る強敵が現れた時にお前は思い知った筈だ。その時に、おまえは相手のやり方を学習することが出来た筈。それを考慮した上でおまえは何か手を打ったか? 準備をしたか? 勝つための現実的な計画を少しでも練ったか?』

 

 そんなの、簡単に出来るはずがない。

 

『ああ。確かに難しいだろうな。だが、それを難しくしてるのはおまえ自身のせいだ。決して他人のせいじゃない』

 

 そんなの理不尽よ。

 

『ああ。理不尽だな。だがおまえが理不尽だと感じたところで現実は変わらない。おまえはAクラスを目指すことを目標として決めた。なら、その障害がどんなものであれ乗り越えなければならない。その過程でどんな不運に見舞われたとしてもそれを乗り越えられなかったおまえの責任だ』

 

 ……そんなことわかってる。

 

『ならなぜやれることをしない。考えを改めることをしない。反省し、変わればいいだけの話だ。小さい子供にだって出来る』

 

 そう簡単に変われたら苦労はしない。

 

『それはそうだろう。おまえには足りないものが多すぎる。そして、変わることよりもプライドを優先しているからだ。勿論、南雲や龍園のように実力を持つ人間なら手段を選ぶだけの余裕が生まれる』

 

 あれでまだ手を抜かれていると言うの? 

 

『そういう見方も出来る。何故ならおまえには足りないものが多すぎて簡単に倒すことが出来るからだ。たとえば、無人島で龍園が伊吹を送り込んできた時、おまえにクラスをまとめるだけのリーダーシップと視野の広さがあれば伊吹をクラスに潜り込ませないことで龍園の手を1つ防ぐことが出来た』

 

 でもそれは相手も読んでくる。戦略を見破ってくる相手に、その戦略を使ってくる訳ないじゃない。

 

『勿論そうだろうな。だが、それでも相手の手を1つ潰せることに変わりはない。それが効かないのであればまた別の戦略を打ってくるだろうが、ならそこで更にその戦略を潰せるなら? 龍園はまた別の手を取らざるを得ない。それも事前に読む。あるいは効かないとわかっていればまた手を削れる』

 

 そんなの、考えてもキリがないじゃない。

 

『おまえの言う通り、勝ち方や戦略は無数に存在する。だが、おまえは圧倒的に視野が狭く、使える手も限られている。だから簡単にやられる。思考を読まれる。もし何か1つでも相手に厄介だと思われる武器があれば、相手を煩わせることが出来る』

 

 相手に厄介だと思われる……武器。

 

『そして相手を煩わせることはそのまま反撃にも繋がる』

 

 なら私は……一体どんな武器を取ればいいと言うの? 

 

『その武器とはそのまま、おまえに足りない部分のことだ。そして……その足りない武器を掴むためにはおまえ自身が変わって行動する必要がある。そしておまえが変わり、武器を手に入れることで今まで見えてなかったものが見えてくるようになる』

 

 それは……もしかしたらそうなのかもしれない。

 だけどそんなの……簡単には出来っこない。

 

『おまえは本当にAクラスになりたいのか?』

 

 なりたい。それは私の目標。兄さんに追いつくため、認められるための手段だから。

 

『ならそんな弱音を吐いている暇はないはずだ』

 

 そう。綾小路くんの言葉は正論。私には返す言葉が見つからない。

 

『頭では理解しているみたいだが、それでもすぐ行動に移れないのはおまえが事の重大性に気づいていないからだ。まだ心のどこかではどうにかなると思い込み、プライドを守ることを優先しているからだ』

 

 そんなことはない。その否定はあまり強くはない。

 

『なら精々試行錯誤してみろ』

 

 言われずとも、私はこのままで終わるつもりはない。

 

『そうか。だが急いだ方がいい。それほど猶予がある訳じゃないからな』

 

 なら今回の試験で、勝ってみせる。次は失敗しない。勝つための手を打ってみせる。

 

『頑張ってくれ。オレは精々、おまえの尻拭いが出来るように準備しておく。自分のためにな』

 

 そうして最後まで私の神経を逆なでするようなことを言って、綾小路くんは去っていった。

 それから数日。綾小路くんはいつものように私の近くにいるけれど、自分から口出しするようなことは当然してこないし、私が尋ねてみても曖昧な返答をする時もあればしっかりと答えるものと答えないものとではっきりしない。

 だが、彼が何をしようとしているのかは理解出来る。

 だから私はその鼻を明かしてやるためにも、そして何より自分自身のためにその試験へと挑む。最初の話し合いの場。私が倒すべき相手がいるその一室に、私は足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 午後1時。時間通りに指定された部屋、『竜』の文字が掛けられた部屋に足を踏み入れると、複数の視線が私達を貫いた。どうやら私達が最後の入室者だったらしい。クラス毎に綺麗に分かれて座っていた。自然なことだ。グループ同士協力し合うようにと学校側から言われていても、協力することは難しい。ましてや面子が面子だ。ここには各クラスのリーダーが揃っている。

 部屋に入ってきた私達を見て一瞬目を向けたがすぐに視線を戻して目を閉じたAクラスの葛城くん。

 明るく自然な笑みで、こちらに軽く手を振ってきたBクラスの南雲さん。

 ニヤニヤとこちらを小馬鹿するように視線を送ってくるCクラスの龍園くん。

 そして私達。平田くんに櫛田さんに私だ。これだけ固められているとなるとリーダー以外の他の生徒達もクラスの中心人物である可能性が高い。分かっていたことではあるけど警戒を高めて臨む必要がありそうだ。

 そうして彼らの視線を受けながら、私達もまた空いている席に座ったところで、船内スピーカーの音が部屋に響き渡る。試験開始の合図。それが告知されたところで最初に口を開いたのはBクラスのリーダーである南雲さんだった。彼女の視線がこちらに向けられる。正確には、私や櫛田さんではない平田くんに。

 

「それじゃ進行役は洋介くんかな。お願いねー」

 

「え……僕でいいのかい? てっきり南雲さんが立候補すると思っていたんだけど」

 

 南雲さんは優れた統率力を持っている。そして進行役と聞けば面倒そうに思えるかもしれないが、場の主導権を握ることにも繋がる。だから私も同様、最初に口を開いた時点で南雲さんが進行役に名乗り出るかと思ったが、出てきた言葉は平田くんへの指名だった。その理由も涼しい表情で南雲さんが答える。

 

「私がやると角が立つかもしれないじゃん? だからほら、1番角が立たない相手は誰かなーって考えてみると洋介くんしかいないかなって。そんな訳でお願い出来る?」

 

「皆が構わなければ僕は構わないけど……どうかな?」

 

 平田くんも多分そのメリットを理解していると思う。一応公平に他のクラスにも尋ねる。

 

「……俺は構わない」

 

「ああ。いいんじゃないか? Aクラスとしては賛成だな」

 

 Aクラスの葛城くんが重たく頷くと、その2つ隣に座っていた男子生徒もまた賛同する。これで2クラスから承諾を得られた。残りはCクラスだけど……。

 

「龍園くんはどうかな? 異論があるなら勿論受け入れさせてもらうよ」

 

 そう平田くんが尋ねたが、龍園くんは声を出すことはない。ただ鼻で笑ってみせた。好きにしろ、そんな言葉が聞こえてくるようだった。平田くんもCクラスが無言だったことを肯定と受け取る。

 

「えっと、それじゃあ僭越ながら僕が進行役を務めさせてもらうよ。そこでまず提案なんだけどまずは学校の指示通り、自己紹介から始めるのはどうかな?」

 

「ああ。構わない」

 

「いいと思うぜー」

 

 平田くんがそう言うと葛城くんとAクラスのもう1人の男子生徒がそれぞれ答える。残り2人は頷くだけで口を開かない。それが少し気になったけどAクラスだけを気にしている訳にはいかない。

 

「自己紹介だと? 下らねえな」

 

「龍園。これは学校側から指定されたルールだ。下らないも何もない。自己紹介の必要がないとおまえが判断するなら好きにすればいい。それでペナルティを負うことになってもいいのならな」

 

「そのペナルティはグループ全体で負うものかもしれねえぜ?」

 

 まずは自己紹介をしようというその流れに早速茶々を入れてきたのは龍園くんだった。認めたくないことではあるが、彼ほどの人物がそのリスクに気づいていない筈がない。その態度にも苛立ち、私は声を挟む。

 

「いい加減にしてちょうだい。あなたは自己紹介1つ出来ないの?」

 

「この場に俺の名前を知らないバカはいないだろ。いるとしたらそいつはとんだ間抜けだな。名前を覚える価値もない」

 

「名前を知ってるか知らないかが問題じゃない。これは学校側から定められたルールよ。あなた、自分1人のワガママでグループ全体の足を引っ張るつもり? 仮にグループ全体の責任だとしてもそれはあなたも当然例外じゃないのよ?」

 

「そんなに名乗ってほしいのか? だったら頭でも下げて頼んでみろよ。そしたら考えてやる」

 

 その不遜すぎる態度に怒りを通り越して呆れを覚える。これは付き合うだけ時間の無駄。そう判断して私は彼から視線を外した。

 

「ならもういいわ。勝手にして」

 

「クク……おいおい、そんなに怒るなよ鈴音。冗談だ。おまえらのその反応が面白くてな。少しからかってやっただけだ」

 

「っ……あなたね……!」

 

 どこまでも人をバカにしているとしか思えない。呆れから再び怒りに変わり、彼を睨みつける。龍園くんはそんな私を見てニヤニヤと癇に障る表情を浮かべていた。

 

「あーあー。なんでそんな挑発に付き合っちゃうかなー鈴音ちゃん。もしかしてカルシウム足りてない? 牛乳ちゃんと毎日飲んでる?」

 

「……生憎と、毎日摂取するほど牛乳は好んでないわ」

 

「そっか。だから胸がちっちゃいんだね」

 

 一瞬、その南雲さんの言葉に私の思考が止まる。あまりにも幼稚すぎて、怒りが沸くまで少し時間がかかった。

 だがこんなことで怒っていては話は始まらないし、南雲さんの言う通り挑発に付き合う必要はない。だから心を落ち着けながら冷静に言葉を返す。

 

「……その話はこの話し合いに関係ないわ。さっさと話を進めましょう」

 

「え、そうなの? 私てっきり鈴音ちゃんの平たい胸をどうすれば大きく出来るかの会議だと思ってたんだけど違った?」

 

「──そんなわけないでしょう」

 

 自分でも驚くくらいに冷たく低い声が出た。いい加減にしてほしい。相手にしたくないし、早く建設的な話がしたい。このまま返事をしても埒があかないと私は平田くんに声をかける。

 

「平田くん。話を進めてくれる?」

 

「あ、うん。2人とも、その辺にしてくれるかな。そろそろ自己紹介を──」

 

「何だ鈴音。胸が小さいのを気にしてるのか? だったら俺が揉んで大きくしてやろうか?」

 

 だがその話を更に龍園くんが引き延ばそうとする。彼の、いや、彼らの狙いはわかる。私達から冷静な思考を奪い、自分達のペースに持っていくために場をかき乱しているのだ。

 なら私は毅然とするだけ。もう彼らの言葉に応えず、無視をする。苛立ちを心の中に押し留めながら。言わせておけばいいと。

 だがそこで声を上げてくれたのは他のクラスの女子生徒。しかも、Cクラスの生徒だった。

 

「龍園くん。その辺にしてあげてください。女性に対する言葉としてはあまりにも下品かと」

 

「何だひより。邪魔するなよ。俺は今、鈴音をからかって遊んでるんだ。何ならお前も参加するか?」

 

「遠慮しておきます。それに、異性に触れられたら大きくなるというのは俗説ですよ。牛乳などの乳製品を摂取するのはあながち間違いとも言えませんが」

 

 ひより、と龍園くんからそう呼ばれた女子生徒はどこかぼんやりとした雰囲気をしていた。少し綾小路くんに似ているかもしれない。

 ただ、そんなことより気になるのは彼女が龍園くんを恐れずに一見して対等に話しているように見えること。事実、他2人の男子生徒は先程から一切口を挟まないし、龍園くんを恐れているように見えるが、彼女にそういった様子は見られないし、何より龍園くんの対応も厳しいものではない。そんな彼女が、龍園くんに続けて南雲さんにも目を向ける。

 

「南雲さんも。出来ればそういった挑発の類は控えていただけませんか? 適切な話し合いが出来なくなってしまいます。それは南雲さんも望むところではないでしょう?」

 

「あはは、ちょっとじゃれ合ってみただけだって。それじゃそろそろ話を進めよっか。洋介くん、進行おねがーい。龍園くんもいいよね?」

 

「好きにしろ」

 

 そして南雲さんの方もひよりさんという女子生徒のことを知っているのだろうか。意外にも、あっさり引き下がる。龍園くんもまた同様に引き下がった。

 

「……うん。それじゃ自己紹介を始めようか。まず僕たちDクラスから。時計回りに行おう」

 

 平田くんのその言葉で、ようやく自己紹介が始められる。そこでようやくだ。やっぱり一筋縄ではいかない。自己紹介1つするだけでこれなのだから、話し合いがスムーズに行えるとは到底思えないし、協力など望める筈もない。互いが互いを蹴落とそうとしている。そんな空気を感じながら自己紹介を終える。先程のCクラスの女子生徒は椎名ひより。Aクラスで葛城くんと少し離れて座っている男子生徒は橋本正義と言うらしい。彼らを含む全員の自己紹介が終わったところで平田くんは頷いた。

 

「皆ありがとう。それじゃ話し合いを始めるけど、誰か質問や意見がある人はいるかな?」

 

 ……これでようやく話し合いが始められる。

 そしてここからは更に集中しなければならない。私は平静を保ってみせながらまずは様子を見ることにした。平田くんのその言葉に、真っ先に手を挙げたその人物に顔を向ける。

 

「なら発言しても構わないか?」

 

「勿論だよ葛城くん。何かな?」

 

 まず最初に声を上げたのはAクラスの葛城くんだ。Aクラスを率いるリーダーである彼の発言に誰もが注目する。

 

「俺たちAクラスの意見としては、グループ全員で優待者を探すための積極的な話し合いを行うことを提案する」

 

 葛城くんのその発言は一見、当たり前のことだった。この試験は優待者を見つけ出すために考え、話し合う試験。だが、当たり前に見えてもそれはしっかりとした意味を持つ。その意味を、平田くんが頷いた上で口にした。

 

「つまり……Aクラスは結果3を目指すべきだとそう言いたいんだね」

 

「その通りだ。いち早く優待者を見つけ出し回答することでクラスポイントの変動を行うことが出来る。どのクラスにとっても平等な提案だ。また、試験の意義にも沿っているとも思う。優待者を見抜き、あるいは隠し通し、考え、その上で上回った者が勝利する。真っ向から試験に挑むのが正しいやり方だ」

 

 確かに、葛城くんの意見は正当であり王道の意見だった。公平で誰にも損はないフェアな試験の提案。リスクこそ大きいけれど、それで得られるリターンも大きいもの。それはこの場にいる全員がおそらく理解しているはず。

 

「なるほど。確かにシンプルです。しかし、その提案にはリスクもあります。結果3か4でクラスポイントを得る。それが出来れば良いですが、回答を間違えれば逆にクラスポイントが減る恐れもありますよね? 葛城くんはそれを恐れないんですか?」

 

「リスクはある。それは認めよう。しかし、結果1や2ではプライベートポイントこそ得られるしデメリットもないのは確かだが、それでクラスの順位が変わることはない。これから先、何度特別試験があるかわからない以上、クラスポイントを得られる機会があるのなら積極的に狙っていくべきだ」

 

 椎名さんのその質問にも葛城くんは想定していたように淀みなく答える。椎名さんも頷いた。でも、そう言ってすぐに納得してくれる人ばかりではない。この竜グループは魔境。油断のならない相手ばかりだ。その1人が、葛城くんに対して牙を剥いた。

 

「クク……おい葛城。おまえらしくない意見だな。防御じゃなく攻撃に打って出るってのか?」

 

 龍園くんが葛城くんに噛みつく。それに葛城くんも応じた。

 

「リスクを恐れていては得られるものはないと判断した」

 

「判断した? はっ、何を抜かしてやがる。そうせざるを得なかっただけだろうが。なあ、橋本。そうだろ?」

 

 龍園くんが橋本くんを名指しする。そこそこ顔立ちの整った軽薄そうな印象のその男子生徒だ。その橋本くんと葛城くんに対し、龍園くんは自分の考えを述べる。

 

「今回の試験は葛城の仕切りだった筈だ。坂柳がこの場にいない以上、おまえら坂柳派も甘んじて葛城に従うしかない。だが、想定以上の事態が起こった以上はお前らも黙っちゃいられない。坂柳派も葛城派も葛城の采配に疑問を感じて荒れてるはずだ。それを黙らせるために、葛城は今回の試験で何としてもAクラスの座に戻らなきゃならない。だから得意な防御を捨てて攻撃に移らなきゃならなくなったわけだ。なあ、そうなんだろ?」

 

「……いや、さすがは龍園翔。全部お見通しって訳だ」

 

 龍園くんの言葉を聞いて、橋本くんはあっさりとそれを認める。おそらく、彼がその坂柳派の生徒なのだろう。Aクラスが2つの派閥に分かれて争っているというのは噂では聞いていたけれど、それは間違いではなかったみたいだ。葛城くんの視線が、横にいる橋本くんを貫く。

 

「橋本。どういうつもりだ?」

 

「いやいや、どういうつもりも何も、隠し通せることじゃないからな。俺たちAクラスの内情を多少なりとも知ってればこんなことは誰にでもわかる。葛城くんが失態を起こしたことで葛城くんも葛城派も余裕がなければ、坂柳派も荒れてる。このままじゃ葛城派は失墜しちまうし、攻撃に出なきゃ坂柳派の生徒が勝手に動く可能性も出てくるだろ? ウチの姫さんがいない以上、それを抑えきることも出来ないし、葛城くんはそのために坂柳派の意見も組み入れつつ信頼の回復のために攻撃に出て結果を出そうとしてんのさ」

 

「…………」

 

 ぺらぺらと自分達のクラスの内情を語る橋本くんに、葛城くんが苦渋の面持ちになる。それで私も得心がいった。当然、このままじゃAクラスから落ちる葛城くん達がそれを防ぐためにクラスポイントを求めるのは誰でも想像がつく。自然な流れでもある。だけれども、それだけならそうせざるを得ない訳じゃない。

 派閥同士の争いの真っ最中でもある彼らにとって、この試験の結果はそのまま派閥争いの結果を左右するもの。もしクラスが1つであれば、クラスポイントを一旦諦めてプライベートポイントを選ぶ選択肢もありえるが、今回の試験を取り仕切る葛城くんにとっては選べる道は1つしかない。なんとしてもクラスポイントの上での勝利を、結果を出すしかないのだ。

 

「まあこれが分かったところで他のクラスからしたら知ったこっちゃないかもしれないが、これが生憎と今のAクラスの実情でね。お見苦しいところを見せてる自覚はあるが、これも必死さの表れなんで勘弁してくれると助かる」

 

「クク。何だ、手加減でもしてほしいのか?」

 

「ああ。してくれるならありがたいね。こっちとしてもAクラスから落ちるのは痛いんでね。何かしらの結果を残しておきたいのさ」

 

「どうだかな。おまえら坂柳派にとっちゃ葛城が負けてくれた方が都合が良いんじゃねえか?」

 

「そりゃ派閥としては失墜してくれる方が嬉しいけどな。とはいえ、さすがにあんまり負け過ぎるとそれはそれで困る。せっかく主導権を勝ち取ったのにその時には他のクラスに大きく水を開けられていた……なんてのは勘弁だからな」

 

「なら何でペラペラとクラスの内情を話した。それを言ったところでメリットはないはずだぜ?」

 

「そうでもないさ。この話は他のクラスにとってメリットもあるだろ? たとえば龍園。南雲との再戦で勝利を望むそちらさんにとっちゃ結果1、2なんて温い結果じゃ満足出来ないんじゃないか?」

 

 話の主導権はいつの間にか葛城くんから橋本くんに移っていた。彼は視線を龍園くんに、そして私達Dクラスにも向ける。

 

「Dクラスだって出来ればクラスポイントの方が欲しいんじゃないか?」

 

「……そうね。難しい結果ではあるけれど、クラスポイントを得られるならそれに越したことはない」

 

「だろ? 確かに結果1を目指した方がそれが成功するにしろしないにしろリスクはない。だが、俺には協力なんて無理だと思ってるし、現に無理だ。俺たちの話を聞けば、絶対に協力なんて選ぶ筈がないって全員が理解してくれた筈だぜ?」

 

「それは……」

 

 私はそれを聞いてゆっくりと理解する。なるほど。確かに、Aクラスの内情を聞いた後では結果1を目指すことは難しいように思える。彼らは結果4を引いて、あるいは自分達に優待者がいた場合の結果3になるリスクすらも理解した上で裏切り者を出し、なおかつ自分達で勝利を勝ち取ろうとしている。

 

「……なるほどな。あくまでもAクラスはクラスポイントを得るために動くか。それはつまり、俺たちBクラスへの宣戦布告と言ってもいいな?」

 

「……そういうことになる。俺たちAクラスはBクラスを何としても上回る必要があるからな」

 

 そこで初めてBクラスからの発言が出る。神崎くんが宣戦布告という表現を用いながら葛城くんにその鋭い視線を送った。葛城くんも、応じるようにゆっくりと頷く。

 こうなってくると、やはり協力は難しいと見るべきかもしれない。勿論、優待者を見抜けなければ最終的に結果1、2のどちらかになることは避けきれないが、積極的に裏切り者を出してクラスポイントを取りに行くと宣言した以上、結果1を得るために優待者を教えるなどの提案はもうほぼ不可能と言っていい。それは、私達がそう思うのだ。この竜グループの優待者……櫛田さんを抱えている私達にとって、その狙いはある意味都合がいい。誰かが間違ってくれた時点でこちらはクラスポイントを得ることが出来る。あるいは他のグループでもそう。結果3をAクラスが積極的に狙いに行く展開になるなら、こちらがボロを出さなければ結果4に導ける可能性が高い。他のクラスにいる優待者を探すことが出来れば勿論それが1番良いが、それが難しい以上こうなったら待ちの選択が功を成すかもしれない。そんなことを朧げに考えていた時だ。

 

「うーん。それじゃ困るなぁ」

 

 南雲さんが、腕を組んで悩むような素振りを見せた。Bクラスのリーダーの発言。彼女が何を言うかは私だけじゃなく皆が注目している。どんな手を打ってくるか、その裏を見極めようと私は意識を集中させた。

 

「私としては結果1を全グループで狙いたいんだけどねー」

 

「結果1……えっと、全員で裏切り者を出さずに優待者を正解させるってことだよね? でもそれって……」

 

 南雲さんの意見に櫛田さんが言いにくそうにする。彼女と意見を同じくするのは癪だが、私も同意見だった。それを行うことはかなり難しい。そして、それは南雲さんも分かってるようだった。

 

「うん。そりゃ勿論難しいけどね。でも考えてみてよ。結果1なら全クラスに莫大なメリットがあるんだよ?」

 

「莫大なメリット? それってプライベートポイントのことかな?」

 

 平田くんの質問に南雲さんが頷く。そして説明を始めた。

 

「そうそう。仮に全グループで結果1になれば、1クラスにつき2150万ものプライベートポイントが流れ込むことになるでしょ?」

 

「それは当然理解している。だが、仮にそれが出来たとしてもクラスポイントは動かない。実現可能かという観点から見ても、Aクラスとしては到底飲めない提案だ」

 

 プライベートポイントを全クラスで得るという誰もが1度は考える角の立たない結果を、実現不可能であり更にはそれではクラスポイントが動かないからと拒否する葛城くん。私もまた頭の中でそれをもう一度考慮してみたが、クラスポイントの方が良いかはともかくとして実現は難しいという意見には同意する。1人でも裏切り者が出たら終わり。そんな結果を得るには、私達1年生は互いに信頼が無さ過ぎる。それは南雲さんも理解している筈だけど……やはり彼女は笑顔のまま変わらない。何を考えているか分からない様子で、葛城くんを鋭い目で見つめた。どことなく、見透かすような意味深な目だ。

 

「ふ~ん……? 本当にそうかな? Aクラスはプライベートポイントが欲しいと思ってたんだけど?」

 

「……? それってどういう意味なの? 麗ちゃん」

 

 櫛田さんが素直に質問する。南雲さんもまたAクラスから視線を動かさないまま答えた。

 

「そのまんまの意味だよ桔梗ちゃん。Aクラスは今、プライベートポイントがほしい筈。私の見立てだとね」

 

「……何を言っている。確かに、プライベートポイントが重要であることは否定しない。貰えるものなら貰いたいとも思ってるのも事実。だが、それよりも優先すべきなのはクラスポイントだ」

 

「本当にそうかな? だとしたら、あの無人島試験での結果は何だったの?」

 

「無人島試験の結果……?」

 

 平田くんが自然と疑問を呟いた。私もまた訝しむ。それはどういう意味なのか。それを思考しようとするより早く、南雲さんはその考察を私達に向かって語り始めた。

 

「先日の無人島試験で、Aクラスの結果は20ポイントだった。でもさ。それって普通に考えておかしいよね」

 

「……何がおかしいと言うんだ。認めるのも癪ではあるが、あれは俺たちAクラスの失態の結果だ。おかしいことは何もない。もっとも、恥ずべき結果であることは間違いないがな」

 

「ほぉ~? すっとぼけるつもりなんだ葛城くん。だったら言っちゃうけどさ。あの試験、AクラスはBクラスとDクラスのリーダー当てに失敗し、なおかつ他の3クラスからリーダーを当てられちゃった訳でしょ?」

 

「あっ」

 

 隣の櫛田さんが声を上げる。そう、そこまで言われれば、明らかにおかしい部分に気づく。考えてみれば簡単な話だ。その内訳を推理出来ていたならば。

 

「Aクラスがスタート地点で持っていたポイントは有栖ちゃんのリタイア分を引いて270ポイント。そこからリーダー当てでマイナス250ポイントされた結果、20ポイント。おかしいよね? これじゃAクラスは始まってから1ポイントもポイントを使ってないことになるよね?」

 

「…………それは」

 

「そしてその理由は、他のクラスと何らかの取引を結んでいたから……って可能性が非常に高いと思うんだけどどうかなー?」

 

「……」

 

 南雲さんの嬲るようなその質問。確信を持っているかのようなその視線を受けて、葛城くんは押し黙る。だがゆっくりと、口を開いて抵抗した。

 

「……その質問には答えられないな」

 

「そりゃあ言いたくないよね。言ったら不利になっちゃうもん。だからまあ言わなくていいよ。でもほら、ここまで理解されてるんだからさ。強がる必要なんてないんだよ? プライベートポイントを取ればその負債をある程度取り返すことも出来るじゃん」

 

「仮にそうだとしても、クラスポイントの方を取りに行く方針に変更はない。結果3か4を狙える内は狙いに行く。今の時点から結果1を狙うような方針には賛成出来ないな」

 

「私もよ。南雲さん。私もプライベートポイントよりもクラスポイントを得たいと思っている。だからその意見には賛同出来ない」

 

 葛城くんに合わせてすかさず口を出すと、南雲さんは肩をすくめてみせた。

 

「Dクラスは金欠でしょ? プライベートポイントを得れば当分の生活には困らないんじゃない?」

 

「悪いけど、余計なお世話よ。確かにあなた達ほど良い生活は送れていないと思うけど、それでも生活には困っていない」

 

「良いと思うんだけどな~。ポイントがあればやれることも増えるし、いざという時の備えにもなるし」

 

「それに実現が難しいわ。結果1を目指すために優待者が名乗り出たところで裏切らない保証はどこにもない。特にこのメンバーではね」

 

「ははっ、そりゃ言えてるな」

 

 私のその発言を聞いた橋本くんが軽く笑う。そう。実際信用出来る筈もないのだ。

 それにやはり結果4による他のクラスの自爆を狙ってしまった方が戦略としてはいい。確実に優待者が絞り込めるまでは動かない方が得策なのがこの試験だ。

 だからこそ、私は大きな動きを起こさないように立ち回る。それが正しい筈だ。

 

「んー、そっかー。AクラスもDクラスも反対か。じゃあ龍園くんはどう思う?」

 

 そして南雲さんは今度は龍園くんにも水を向ける。既に南雲さんの提案は2クラスに断られているため実現不可能とはいえ、Cクラスの動き次第ではまた何か状況が変わる可能性もある。

 

「……クク。確かにプライベートポイントは欲しいところだ」

 

 そして、龍園くんは一部、南雲さんの意見を認めはする。そう。誰だってそうだ。プライベートポイントは貰えるものなら貰いたいが……。

 

「だが答えはノーだ。拒否させてもらう。葛城の言う通り、おまえの提案じゃクラス同士の差が縮まることはないからな。俺としてもおまえに落ちてもらうのは都合が良い」

 

「……はぁ、そっか。残念。それじゃ別に話し合いをしてもいいけど……本当にいいのかな? これは皆のためにも言ってあげてることでもあるんだけど」

 

「ほう? どういう意味だ?」

 

 全員に拒否られ、しかしそれでも食い下がる南雲さんに龍園くんが楽しそうに尋ねる。私としてもその意味がよく分からなかった。

 だが、提案を断られて不貞腐れたように見せた南雲さんが、意味深に目を流しながら言ってみせる。右腕で頬杖を突きながら。

 

「だって……ねぇ? 私こういう人を見抜くゲーム得意だし? ぶっちゃけ勝っちゃうよ? そしたらどうなると思う?」

 

「……どういう意味でしょう?」

 

 椎名さんが首を傾げ、南雲さんがそれを受けて答えた。その表情と声色には、絶対の自信を覗かせている。

 

「各クラスに平等に優待者が振り分けられているとして、自分達のクラス以外の優待者は全グループ合計で9人。それを全部当てちゃえば、それだけでクラスポイントが450ポイントも手に入る。これを防ぎたいなら、今の内に私の提案に乗っておいた方がいいと思うよ」

 

「何を……そんなことは不可能だわ」

 

「そうやってすぐ無理と決めつけるから私に勝てないんだよ鈴音ちゃん」

 

「ならあなたはどうやって優待者を見つけるつもりかしら?」

 

 ありえない大言壮語を口にする南雲さんに、冷たく言い放つ。このグループだけでなく全てのグループの優待者を見つけるなんてことが出来る筈がないと、私はそう確信している。

 だが……南雲さんの考えは違うようだった。あっさりとその方法を口にする。

 

「別に普通に聞けばいいんだよ。生徒1人1人に。『あなたは優待者ですか?』ってね」

 

「話にならないわね。そんなことで分かるんなら試験にならない。誰も苦労しないわ」

 

「わかるんだな~これが」

 

「口では何とでも言えるわね」

 

 やはりふざけているだけと判断し、私は取り合わない。だから私はその言葉を無視しようとして……しかし出来なかった。

 

「なら試してみよっか」

 

「……どうやって?」

 

「これだよ」

 

 試してみる。その言葉につい問い返すと、南雲さんはポケットからある物を取り出した。それを皆が見えるように机の上に置く。それを見て、椎名さんが呟いた。

 

「トランプですか」

 

「そう。どうせ話し合いをするんならさ。楽しく遊びながらした方がいいんじゃない? ババ抜きでもしながらさ」

 

 笑顔でそんな提案をしてくる南雲さんに、私は少し拍子抜けに、呆れながら言葉を返す。

 

「……それでどうやって証明すると言うのかしら?」 

 

「まずは私の洞察力の凄さでも見てもらおうと思ってね。私、ババ抜きには自信があるんだ。今までに1度も負けたことないからね」

 

「……何を言うかと思えば……下らないわね。悪いけど、私は付き合わないわよ」

 

 トランプなんてやっている暇はないし、そんな気分にはなれない。そう思っていた私に、南雲さんは軽い調子で告げてきた。

 

「もし私に勝ったら……私のクラスの優待者の情報を教えてあげるよ」

 

「っ……」

 

 その南雲さんの発言に、室内が静まり返る。私もまた息を呑んだ。こんな、ただのババ抜きで優待者の情報を賭けるなんて……一体どういうつもりなのかと。

 

「……本気で言っているのかしら?」

 

「うん、勿論。あ、でもノーリスクで挑まれるのはよくないからね。参加費を払ってもらおうかな。10万ポイントでどう?」

 

「……それが本当なら、受ける価値はあるかもしれないけれど……信用出来ないわ。そもそもあなたが自分のクラスの優待者を見抜いてる保証もない」

 

 私が先程よりも真剣にそう言い返すと、南雲さんは声を上げて笑った。

 

「あはは。そりゃ把握してるに決まってるじゃん。それに、信用出来ないなら誓約書でも作るよ。隆二くん、後で紙とペン用意しといて」

 

「……ああ、わかった」

 

 リーダーのありえない提案に異を唱えず頷く隆二くんを見て、違和感を覚える。トランプを予め用意していたところから見て、明らかに怪しい。この自信から見て、どう考えても罠に感じる。

 だけど、罠だとしても誓約書を用意してまで取り上げるのが10万ポイント……それなりに大きい金額とはいえ、優待者の情報とじゃ釣り合わない。万が一にでも負けたら相手の損失は甚大だ。

 

「どうする? やる? やっぱ抵抗あるかな? それならまずお試しで普通にババ抜きしてもいいよ。それで勝てると思ったらやればいいし、無理だと思ったらやめればいい。損のないゲームだよ。それと他の人も参加したいならしていいよ」

 

 むしろ参加してほしいな、と言いながら南雲さんが笑顔を他のクラスの人に向ける。それをすぐに受けることの出来る人はいない。誰もが怪しみ、どういうつもりだと訝しむ。

 だがそんな中でも彼だけは別だった。

 

「面白え。ひより、参加してみろ」

 

「……いいんですか?」

 

「お試しで遊ぶくらい構わねえよ。麗がやる気な以上、この話し合いはどう足掻いても進まない。やらないってんなら向こうは話し合いを拒否すればいいんだからな。だったら遊びながらでも話し合いが出来るだけ有意義ってもんだ。そうだろ?」

 

「……わかりました。では私も参加します」

 

「ああ。そうしろ。後、おまえらも出ろ」

 

「は、はい」

 

 龍園くんの命令で椎名さんと残りの男子2名が参加を表明する。龍園くんは参加せずに見物するようだった。

 

「龍園くんはやらないの?」

 

「興味ねえな。見てるだけで十分だ」

 

「そっかー。それじゃ仕方ないね。じゃAクラスはどう?」

 

 龍園くんが参加の有無を確認してさほど残念そうでもなく頷いた南雲さんは、今度はAクラスにも誘いをかける。葛城くんはしばらく、眉間に皺を寄せながら考え込んでいたが……。

 

「……悪いが断らせてもらう。それと南雲。こちらとしてはこうして遊ぶこともやめてほしい。これではまともな話が出来ないからな」

 

「嫌でーす。話し合いがしたいなら遊ぼうよ葛城くん」

 

「それは試験を放棄する行為だ」

 

「どこが? 言い訳が苦しいよ葛城くん。自分でも分かってると思うけどルール上は何の問題もないからね。学校側に訴えかけても何も起こらないし、私を説得しようとしても無駄だよ。葛城くんが絶対に結果3を求める方針を変えないように、私も意思を曲げることはしない。話し合いを成立させて少しでも情報を集めたいならそっちが譲歩することだね」

 

「…………」

 

 南雲さんの言葉に葛城くんが更に険しい顔つきになる。明らかに何かを企んでいることが分かっていても、それが何かが分からない。かといって南雲さんは意思を曲げないし、葛城くんが話し合いを強制させることも出来ない。どうするべきかと考えている様子だけど……そこで今度は橋本くんが動いた。

 

「いいじゃねえか葛城。参加しようぜ」

 

「……だが……」

 

「別に最初はお遊びでいいんだろ? 別に賭ける訳じゃないし、なんだったら賭けても面白そうだ……ってのは冗談だけどな。ウチの姫さんとかならともかく、俺とかじゃ怪しすぎてさすがに突っ込めねえよ。でも遊ぶくらいは構わねえだろ? ってことで俺は参加させてもらうぜ」

 

 葛城くんが渋る中、橋本くんが参加を表明。そしてAクラスの2名にも参加するかと聞けば2人とも悩んだ末に西川さんの方は見送り、的場くんは参加を表明した。

 

「オッケー。これで8名だね。鈴音ちゃん達はどうする?」

 

「えっと……」

 

「……どうする? 堀北さん」

 

「……そう、ね」

 

 櫛田さんと平田くんが迷いをみせる中、私も悩む。笑顔の南雲さんがこちらをじっと見つめてくる中、私はリスクとリターンを頭の中で天秤にかける。そして、悩んだ末に決断した。

 

「……いいわ。ひとまず、お試しで参加させてもらう」

 

「オッケー! それじゃ、レッツトランプパーティ!」

 

 参加を表明する。南雲さんが明るくトランプの封を切り始め、私達『竜』グループは何とも判断に困るスタートを切ることとなった。

 




作者だから勿論全部分かって書いてるんだけど、それでも堀北さん視点で書いてみると全員何考えてるか分からなすぎて変な笑いが出る。次もお楽しみに

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