登校3日目。
仲良しこよしのBクラスでも徐々にグループを形成しはじめ、教室ではそれぞれ話しやすい、仲良くなった相手と楽しいお喋りに興じている。
そんな中でも私はクラスのほとんどの人から挨拶され、それを返しながら自分の席へと辿り着いた。そうして隣の席の友人にもこちらから、しっかりと挨拶をする。
「おはよう隆二くん」
「……ああ、おはよう南雲」
「昨日早速先生から宿題出されてたよね。隆二くんはやった? 自信ある?」
「……いや、自信はないな」
「そっか。まあ隆二くんなら大丈夫だよ。頭良さそうだしね。良かったら今度勉強会でもしない?」
「……そうだな。何度か勉強会を開く必要があるだろう。なにしろこの学校は……レベルが高そうだからな」
何気ない会話を隆二くんと行う。その表情は少し硬い。もうちょっと笑ってほしいんだけどな。色々考えてそうする余裕がないのかな?
「おはよー! 麗ちゃん、神崎君!」
「おはよー帆波ちゃん」
「おはよう一之瀬」
そんな時、帆波ちゃんが近寄って元気よく挨拶してくる。そして気になったのだろう。こっちは本当に何気なく首を傾げて会話に入ってきた。
「なになに? 何の話?」
「テストが近くなったら勉強会でも開く? って話だよ。国立の名門校だけあってレベル高そうだしね」
「あ、いいねそれ。確かに私もちょっと不安だったし、他にも勉強についていけるか不安な人もいると思う」
「そうでしょ? 皆で勉強会でも開ければいいなーと思ってね。その時は帆波ちゃんも参加する?」
「勿論だよ! その時は神崎くんもよろしくね!」
「……ああ、そうだな。その時はよろしく頼む」
うんうん。帆波ちゃんは純粋で可愛いなー。私の次に可愛いよ。
ただ勉強会にはまだ誘わないかな。帆波ちゃんには普通に接していてほしいし、役に立ってもらうのは色々と結果が出た後になりそう。
その後はまた学生らしい楽しいお喋りで授業開始までの暇を潰した。友達との仲を深めることも大事なこと。学生の本分は勉強だけどこういった時間も大事にしないとね。
4月からいきなり水泳の授業がある学校というのはきっと稀だろう。普通、水泳は早くとも6月くらいからが一般的なはずだ。
「……もしかしてドッキリだったりする?」
「え? 何が?」
「何でもないよ。水着を着るの久しぶりだと思ってね」
頭に疑問符を浮かべる帆波ちゃんと一緒に屋内プールへと移動する。そうして姿を現してやれば……来るのは視線に視線に視線だ。男子じゃなくて女子からも来るあたりさすがは私だ。巨乳アイドルのスク水姿なんて貴重だし、男子からしたらたまらないだろう。写真でも撮って売れば相当金になるんだけどなー。活動初期に出した写真集もかなり売れたし。
……なんか放っといてもそのうち盗撮されて学園敷地内でブロマイドとかで売られそうだし、それをされるくらいならこっちから提供してやるか?
この先どうなるにしてもポイントは欲しいしそれをするのもありだ。勿論足はつかないようにする必要はあるけどね。
「それにしても……」
「ん?」
私は隣の帆波ちゃんを見て思う。うん、大きいな。G寄りのFってところか。ただの学生のくせにこの胸はダメでしょ。いますぐグラビア行ってもやっていける身体してる。
「帆波ちゃん、スタイルいいね」
「いやそんな……麗ちゃんの方こそやっぱ凄い綺麗というかスタイル良くて肌も綺麗だし羨ましいな」
遠慮がちにこちらのことを褒めてくる辺り、帆波ちゃんは自己評価が低いらしい。自覚した方がいいと思うけどね。その気になれば凄い稼げる身体してるしさ。男なんてイチコロだろう。
プールサイドで遠巻きにチラチラと視線を送ってくる男子も私と帆波ちゃんをよく見ている。うん、そりゃまあ見るだろうけど……というか私と帆波ちゃんの2ショットってエロすぎない? やっぱ金穫れるね。考えておこう。
私が頭の中で金儲けの手段を模索していると、他の女子達も声を掛けてきた。白波千尋ちゃん。ショートカットで華奢でおとなしめの女の子だ──というかやっぱ全体的に偏差値が高い。千尋ちゃんも意外と胸あるしスタイルも悪くない。他の女子も中々のものだし、このクラスだけでアイドルグループ作れそう。KIK(高度育成高等学校)20なんてどう? 打倒秋○康。
「麗ちゃんに一之瀬さんもすごい見られてるね……」
「にゃはは……まあ男の子だし、しょうがないんじゃない、かな?」
「いっそ見物料でも取る? ということで千尋ちゃんは1000ポイントだね」
「ええっ!? じょ、女子からも取るの!?」
冗談だけどね。でも千尋ちゃんはちょっと見すぎ。少しそのケがあるのかな?
他に見ていると言えば……ああ、隆二くんも見てるね。
とはいえその視線はいやらしいものじゃない。ちらりと一瞬。私のことが気になったのだろう。見定めてるんだろうね。まあ存分に見るといいよ。特別にお金も取らないし許してあげる。
それにしても……隆二くんやっぱりイケメンだな。スタイルも良い。容姿だけなら合格だ。某アイドル事務所に履歴書送りつけようかな。
その後、水泳の授業は先生が私達を夏までに泳げるようにさせるという宣言に始まり、男子女子に分かれての競争に終わった。1位はポイントが貰えるって言われたんでちょっとだけ頑張って1位を取ったけど疲れた。水泳苦手なんだよね。胸部装甲が水泳に適してないんだよ。公式プロフィールでは逆にサバ読んでるけど私Iカップあるし。
水泳も終わり、それなりのレベルの授業が終われば放課後はまたどこどこに遊びに行こうかと誘われまくる。人気者は辛いね。さすがにまたクラス全員でとはいかないので取捨選択の時間だ。さ、今日は誰との仲を深めようかな?
脳内で可視化した各人のパラメータと好感度を算出しながら唸っていると、帆波ちゃんが教室から出ていこうとするのが見えたので周りの人に断ってから追いかけた。この娘は最優先だ。なんたって一番仲良いし見た目もいいからね。
「あ、帆波ちゃん。今日も遊びにいかない?」
「あー……ごめんね。他の人にも言ったんだけど今日は……」
「何か用事でもあるの?」
「うん。私……生徒会に入ろうと思って。そのための面接が今日あるんだ」
申し訳なさそうに苦笑して断ってくる帆波ちゃんに理由を問いかけると明確な答えが返ってきた。なるほど、生徒会ね。帆波ちゃん生徒会志望なんだ。
「へぇ、行動早いね。確か立候補してから面接だったと思うけどもう応募用紙は出したの?」
「うん。昨日のうちに出して今日来てほしいって連絡があったんだ」
本当に行動が早い。期間は他の部活でも1ヶ月あるって言ってたからもう少し後でもいいだろうに。それだけ入りたいのか。熱意があるのはいいことだけど……。
「そっか。じゃあしょうがないね」
「うん、ごめんね。また今度誘ってほ──」
「ちょうどいいし、私もついていこっかな。私も生徒会入ろうと思ってたし。応募用紙貰わなきゃ」
私がそう言えば、帆波ちゃんは瞠目して固まった。驚き、そしてすぐに動き出す。その感情がすぐに喜びのものへと変わった。
「ええ!? ほ、ほんと? 麗ちゃんも生徒会入るの?」
「うん。知り合いがいるんだよねー。だから興味もあるし入ってみようかなって。他に入りたい部活もないしさ……一緒についてってもいい?」
「うん、勿論だよ!」
そうして私は嬉しそうな帆波ちゃんと一緒に生徒会室へと向かった。ま、私は応募用紙もらうだけだし、いきなり面接はない。だからすぐ帰れるかなーと思っていたら──
「──南雲麗だな?」
──応募用紙を生徒会の書紀だというお団子ヘアーが可愛らしい3年生の先輩からもらったところで、私は背後から声を掛けられた。
いきなり背後から名指ししてくるのなんて不審者以外の何者でもないけど、まあ相手は立場のある人だしこっちも知らなくはないし不審者のカテゴリーには入れないであげよう。
私は振り返り、礼儀正しく挨拶を返すことにする。
「はい。1年の南雲麗です、堀北先輩。……私のことはテレビか何かで見たんですか? それとも兄の方から?」
「両方だ。南雲雅……お前の兄から話は聞いている。よく出来た妹だとな」
──堀北学。この学校の生徒会長である3年の先輩がその鋭い双眸で私のことを見つめてくる。
いや、なんなら睨んでいると言うべきか。敵意までは感じないが、警戒を感じる。私のことを見定めようとするそんな目だ。
……はぁ、全く困ったな。兄は一体何をしたのか。3年生の先輩、それも生徒会長からも警戒されてるなんてよっぽどすぎる。こういう腹の探り合いはまだ望んでないんだけどなぁ。
私は少し対応に迷いながらも無難に返答することにした。
「あはは……それはなんというかこそばゆいですね。こちらこそ兄がお世話になっています」
「ああ。お前の兄は優秀だ。生徒会を運営する上で奴には助けられている。その考え方こそ俺と相容れはしないがな」
おっと。中々のキラーパス。そこまで言うか。その実の妹に。普通は言わないだろう。
これだと「お前の兄は目障りな敵だ」とはっきり主張しているようなものだ。生徒会を運営する上で方針の合わない政敵。なるほど、雅兄はそういう立ち位置にいる訳だ。何をどう争っているのかは知らないけどね。
というか無難な返しをすればいいのにこう言ってくるということは私のことも牽制しているのか。あるいは反応を見て見定めようとしているのか。池に石を投げ入れてどういう反応を示すか、というちょっとした威力偵察。どういう反応を取るにしろ、これで私の人間性でも見極めようと言うのだろう。
……別に付き合う必要もないんだけどなー。とはいえ生徒会に入るならこの人を避けては通れないし、一応は付き合ってあげよう。
「……それは……迷惑をかけているようで。兄に代わって謝罪します」
「不要だ。兄のことでお前が謝る必要はない。それより……お前も生徒会へ立候補するのか?」
面接かな? 帆波ちゃん中で待ってるんだからそっち行ってあげなよ。可哀想に。面倒だけどしょうがないから答えてあげようか。
「はい。いけませんか?」
「そうは言っていない。だが、説明会でも口にしたが生徒会は甘い考えでの立候補を望んでいない。お前が生徒会を志望する動機は何だ? 南雲麗」
あーあー女の子にお前なんて言っちゃいけないんだぞー。女子からの印象めちゃくちゃ下がるからやめといた方がいいと思うけどこの人くらいになるとそんなの関係ないし知ったこっちゃないんだろうなぁ……あ、志望動機ね。動機かー何となく入っといた方が有利になりそうってだけだけど、まあここはちゃんと答えてあげようかにゃ。
「私は、私の能力が生徒会を運営し、この学園をより良くすることの手助けとなることを確信してます。私を採用していただければ損はさせませんよ? 堀北先輩」
「……なるほど。兄に似て自信家のようだな。だが……そう豪語するだけの実力はあると認めよう。お前の能力の高さは知っている」
軽く目を伏せ「お褒めいただき光栄です」と礼をする。というか、知っているのか。もしかして入試の結果とか見れるのかな? そうじゃないと知っている訳ないし。どうやらここの生徒会は漫画の世界観のそれみたいにかなりの権力を持ってるみたいだ。うーん、そういうことなら尚更入りたくなってきたな。私権力大好きだし。
「確かにお前が生徒会に入ってくれれば大いに助かるだろうな」
「それなら私は合格ですか?」
「逸るな。生徒会へ入ることが認められるか否かは我々現生徒会の人員による厳正な審査の結果によって決まる。だからお前の兄が副会長だからといって簡単に入ることが出来るとは思わないことだ」
「そうですか。それなら公平な審査をお願いしますね。私としても
「……ああ、勿論だ。決して贔屓などはせず、その資質を見定めると約束しよう」
堀北先輩がそうしっかりと約束してくれる──が、口では何とも言えるね、これ。私は南雲雅の妹だからという理由だけで落とすのはやめろと言ってこの人は約束したが、結局判断するのは生徒会のメンバーだ。つまりは人で、その判断には生徒会長の意向が大いに優先される。そこで資質がありませんでしたと言えば終わる話だ。テストのような明確な合格基準がないのだからどうとでもなる。はぁ……なんでこの私がここまで苦労しないといけないんだろう。雅兄ほんとに何してんの。もしかしてこの人の彼女寝取ったりした? それくらいしてないとこの真面目そうな人から敵視されることなんてないと思うんだけど。
んー……この場合私の能力をアピールしたりするのはもう逆効果かもしれないし、落とされる公算も大だ。なので、ちょっとでも印象を良くしておこうと私はやり方を変える。
「あ、それともうひとつお願いが……」
「? 何だ?」
私は先程までの落ち着いた感じではなく、普通の素の女の子を見せながら言う。
「これから面接ですよね? それで受けるのが私の友達の一之瀬帆波って子なんですけど……出来ればよく見てあげてほしいんです」
「……面接は平等に行う。お前の友達だからと贔屓をするつもりはない。たった今同じことを約束した筈だが?」
「はい。分かっています。でも、熱意は人一倍ある子なので応援してあげたくて。だからつい言ってしまいました」
「……そうか」
今頑張って考えてるんだろうなぁ、堀北先輩はそれが本当なのか嘘なのか。ひいては私がどういう人物なのかを見定めようとしているのだろう。そんな悩むことないのに。私は見たまんまの美少女でアイドルだ。それも根っからのね。
だから帆波ちゃんのことを思ってるのも本当だ。一緒に生徒会に入れたらいいなーと思ってる。
「それでは失礼します」
綺麗にぺこりと一礼し、その場を去る。本当はここで帆波ちゃんを待とうと思ってたけど、やることが出来た。後でチャットを送るとして、今は目的地へ向かう。
堀北先輩とその書紀である橘先輩は去っていく私の背をしばらく見ていたが、一体何を考えているのだろうか。見惚れてるとかなら嬉しいけどそうじゃないんだろうな。
──と、しばらくして目的地へ到着する。そして目的の人物を呼び出す。私がやって来たのを見て、先生は自然な笑顔を浮かべていた。
「どうしたの南雲さん? 先生に何か用?」
「ちょっと聞きたいことが出来たんですけどー……」
私達の担任の星之宮知恵先生に、私は疑問をぶつけてみた。
「
その時の知恵ちゃん先生の表情は取り繕っていたけどとても面白かった。
麗ちゃんはまだ試行錯誤の最中で確信まではいってません。原作知識ないからね。リトルガールやドラゴンボーイがどの段階で気づいたのか気になるよね。
後久しぶりにアニメ見返してみたけど千尋ちゃんかわいいね。
感想、評価、良ければお待ちしております。