ようこそアイドル至上主義の教室へ   作:黒岩

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でも全てが予定調和の体育祭

 その体育祭は私にとって挫折と転機。そして大きな驚きを得たものだった。

 自分が、自分が思うよりずっと弱い人間だと知った。

 龍園くんに坂柳さん。そして南雲さんに徹底的に叩き潰された。4月からずっと。私は彼らの掌で踊っているだけの存在だった。

 それをようやく認められた。そして、自分で動き出すことを決めた。

 そのために負った負債は決して安くない。体育祭の結果からしてそうだ。

 

 勝利は赤組。

 

 そして1年の順位は──。

 

 1位 1年Aクラス

 2位 1年Bクラス

 3位 1年Cクラス

 4位 1年Dクラス

 

 そんな順当な結果に終わってしまった。赤組としては勝利したものの最下位を取ったことでDクラスのクラスポイントはマイナス100。

 敗北した白組のCクラスやBクラスも100ポイント以上のマイナスを被っているため差がついた訳ではないとはいえ残念な結果に終わった。

 だけどAクラスだけは別。

 赤組としても勝利し、1位を取ったAクラスは1年で唯一クラスポイントを50ポイント得て他のクラスとの差を更に大きくした。

 ……正直言って南雲さんの手腕はさすがとしか言いようがない。1年の最優秀賞も南雲さんが受賞していたし、個人としてもクラスのリーダーとしても彼女は優秀だった。今の私……いえ、今のDクラスじゃ足元にも及ばないだろう。

 だけどそれでも。私達は必ず上のクラスに上がってみせる。

 課題は山積みでもそのための武器はある。1つ1つ片付けてその武器を増やしていく。須藤くんや平田くん。櫛田さんや他の生徒達の協力を得られれば決して不可能ではないはずだ。

 それに、綾小路くんの存在もある。

 最後のリレーで兄さんや南雲さんのお兄さんと勝負し、見せた驚異的な走り。あれを見る限り、綾小路くんは未だその底を見せていない。その本気がどれほどのものかは分からないが、彼も協力的になってくれれば必ず大きな戦力になる。

 そのためにも……まず私は、目の前の負債を片付けなければならない。

 

「よう。逃げずにやって来たようだな鈴音」

 

 夕暮れの校舎の中で、私は龍園くんと……そして櫛田さんと対峙する。

 彼女がDクラスを裏切って、私を陥れようとしていることは明白だからだ。

 

「ひとつ宣言するね堀北さん。私はあなたを退学にする。そのためになら悪魔とも組む」

 

 私が問い詰めれば櫛田さんはあっさり白状して龍園くんの隣に並んだ。

 櫛田さんがDクラスの参加表を龍園くんに渡して仕組んだと私は確信している。

 だが負けは負けだ。今回は完全にしてやられたと認めた上で私は問いかける。

 

「妄想でも構わないわ。せめて聞かせてもらえないかしら。あなたがこの体育祭でどんな罠を仕掛けたのか」

 

「……クク。そうだな」

 

 私がそう口にすると龍園くんは少し間を置いてみせた。不自然ではない。龍園くんの目は私だけを見ている。

 

「せっかく土下座するんだ。おまえの妄想がどんなものか想像するならこうだろうな──」

 

 ──だからこの時の私は龍園くんが何を待っていたか分からなかった。

 

 ──だけどその少し後でそれを理解することになる……そう、ここから龍園くんにとっても想定外の出来事によって。

 

「──いーけないんだ♪ いけないんだ♪」

 

「……え……?」

 

 その声に、最初に驚き声を漏らしたのは私の目の前にいる櫛田さんだった。

 私達以外に人気のない夕方の校舎。その廊下に気の抜けるような歌が響き渡る。

 

「──来たか。だが、おまえが来るとはな」

 

 龍園くんの口元が愉快そうに歪み、私の背後に視線を向ける。

 それに反応して私もまた背後に振り向いた。廊下に靴音が響いて徐々に近づいてくる。そうして現れたのは。

 

「せんせーに言ってやろー♪」

 

「南雲さん……?」

 

 Aクラスのリーダーである南雲さんだった。

 その登場に私もまた困惑する。なぜ南雲さんがこの場所に? 

 まさか南雲さんも龍園くんと手を組んでいたのか。そんな想像が頭によぎる私だが、そう考えたのは私だけじゃなかったようだ。

 

「龍園……っ……まさかあんた、南雲とまで手を組んでたの……!?」

 

 櫛田さんが隣にいる龍園くんを睨みつける。

 その様子は少し焦ったものだ。龍園くんはそれが愉快だったのだろう。楽しそうにその声に応える。

 

「おいおいどうしたんだ桔梗。何を焦っている。俺が麗と組んでいたら何かマズいのか?」

 

「それ、は……そりゃマズいでしょ。Aクラスのリーダーと組むなんて……」

 

「おかしなことを言うヤツだ。他クラスと組んでるのは俺もお前も同じだろ」

 

「そう、だけど……」

 

 櫛田さんは混乱しているのだろう。自分の言っていることがおかしいことに少し遅れて気づく。すぐに気付けない。南雲さんの登場で明らかに動揺していた。

 そして反対に、龍園くんは冷静だった。

 

「クク。だが安心しな。俺と麗は今回は組んでない。それどころかちゃんと敵対してたぜ」

 

「そうそう。私と龍園くんは敵だから安心しなよ桔梗ちゃん。それに鈴音ちゃんもね」

 

「だったら、なんで……!」

 

 龍園くんと南雲さんは手を組んでいない。

 そう言う割には2人の息は合っていた。まるで予定調和だったかのように、南雲さんは私の隣に並んでくる。

 

「南雲さん……あなたは、何をしにここに来たの?」

 

「そりゃ同じ組だった鈴音ちゃんを助けて龍園くんを潰すためだよ。ほら」

 

 南雲さんが右手に持っていた携帯を操作する。そして少ししてどこかで録音したような雑多な音声が聞こえてきた。

 

『いいかお前ら。Dクラスの堀北鈴音をハメるために、潰すにはどうすればいいか、その策を授けてやる。面白いものを見せてやるよ』

 

 そんな始まりから聞こえてくる声は間違いなく龍園くんの声。

 彼は私やDクラスを潰し、そうしてポイントを巻き上げて土下座させる計画を口にしていた。

 つまりそれは……Cクラスが私を陥れていたという決定的な証拠。

 

「面白いでしょ? これ。学校に提出したらどうなっちゃうかな~。きっと龍園くんマズいことになっちゃうよね。あ、ついでに桔梗ちゃんの立場も悪くなるかな?」

 

「どういうこと……? 龍園くん。その音声がどうして……」

 

 櫛田さんにも事態が飲み込めない。私も同様でその事態についていけなかった。どうして南雲さんがその音声を持っているのか。

 

「……なるほどなぁ。裏切り者がいるのはDクラスだけじゃなかったってことか」

 

「そういうことだね。私は龍園くんの計画を全部読み切ってた。龍園くんが有栖ちゃんと契約してポイントを受け取る代わりにBクラスを勝たせる計画を結んでいたこともスパイを利用してDクラスの参加表を手に入れてそれを成そうとしていたことも全部、ね」

 

「嘘……そんなことって……」

 

 信じられないと櫛田さんは声を落とす。そんな櫛田さんに南雲さんはいつもの笑顔を向けた。

 

「桔梗ちゃんってやっぱ悪い子だったんだねー。まさかDクラスを裏切って鈴音ちゃんを陥れようとしてたなんて。ほんと大スクープだよ」

 

「ち、違うよ……! 私は、その、龍園くんに脅されて……」

 

「いやいやもういいって。全部聞いてたしさ。それにそもそも前から気づいてたから。桔梗ちゃんが嘘つきな子だってことはね」

 

 演じてその場をやり過ごそうとする櫛田さんに南雲さんは楽しそうに目を細めて櫛田さんを見つめる。何もかもお見通しだとでも言うような、そんな輝いた瞳で。

 

「といってもまさかここまでとは思ってなかったけどね。てっきりアイドルにもよくいがちな承認欲求マシマシの嘘つきちゃんだと思ってたんだけど蓋を開けてみたら結構なメンヘラちゃんだったね。同じ中学だったってだけで鈴音ちゃんを退学させようとするなんて正気じゃないなぁ」

 

「っ……なんで……」

 

「ん? なんで分かったのかって? そりゃまあ……私だし? 桔梗ちゃんみたいな女の子はサンプル数も多いからなんとなく分かっちゃったんだよね」

 

 南雲さんの調子はいつもと変わらない。明るくて気の抜けるような様子で櫛田さんの疑問に答えていく。

 

「ああ、でもCクラスのスパイだってことに気づいたのは……玉入れの時かな?」

 

「玉入れ……?」

 

「そう。鈴音ちゃんも覚えてるよね。Dクラスに裏切り者がいるって私が言った時のこと。あの時桔梗ちゃんも近くにいたから聞こえてたと思うけど……私がそう言った時の反応、ちょっとおかしかったからさ。嘘つきで鈴音ちゃんが嫌いな桔梗ちゃんなら鈴音ちゃん潰しに乗っかって裏切ってもおかしくないでしょ?」

 

 私はその時のことを思い出す。確かに玉入れが終わった後、南雲さんは私にそう伝えてきた。

 その時に近くには櫛田さんもいた。つまり、櫛田さんに聞こえるようにそう言って反応を見ていたということだ。

 だが、そうだとしてもそれだけで櫛田さんが裏切り者だと気付けるのは異常な洞察力だ。櫛田さんが嘘つきで私のことが嫌いだと見抜いていることも本当に何の情報もなく見抜いているのだとしたらぞっとする。

 そして私よりも恐れを抱いているのは櫛田さんだった。南雲さんが少し距離を詰めてじっと見つめてくると一歩後退りした。汗もかいている。

 そしてその心理状態もお見通しだとでも言うように南雲さんは言った。

 

「だからさ。これで『理解(プロファイル)』完了だよ桔梗ちゃん。あなたのことはもう理解った。桔梗ちゃんが私のことが大嫌いなのも私が桔梗ちゃん以上の上位互換だからだし桔梗ちゃんが今言葉に詰まってるのは私に秘密をバラされることを恐れてるからでしょ? 鈴音ちゃんや龍園くんなら信頼もないから痛手を負うとしても決定的なことにはならないかもだけどもし私の口から桔梗ちゃんの秘密を口にしようもんなら大変なことになっちゃうもんね?」

 

「っ……うる、さい……! あんたなんかに、私の何が……!」

 

「理解るよ。桔梗ちゃんのことはもう桔梗ちゃん以上に理解ってあげられる。だからもう──桔梗ちゃんは私の脅威になりえない」

 

 絞り出すような櫛田さんの声に南雲さんは間髪入れずに答える。

 私の方からは南雲さんの後ろ姿しか見えない。

 だから彼女がどんな顔で。どんな目で櫛田さんを見ているかは分からない。

 だが櫛田さんは明らかに恐れていた。

 もしかしたら櫛田さんは今……南雲さんの特異性とも言うべき何かを見たのかもしれない。

 

「あ、あんた……」

 

「──やめとけよ桔梗。おまえじゃその女に敵わない。なんたって麗はおまえの天敵なんだからな」

 

 櫛田さんは震える声を吐き出した。その直後、後退る櫛田さんとは反対に一歩、前に踏み出したのは龍園くんだった。

 櫛田さんとは違い、微塵も恐怖を抱いていない龍園くんは真正面から南雲さんを睨み返して愉快そうに両手を広げた。

 

「だが俺には通用しないぜ麗。話を戻そうじゃねえか。おまえはその音声ファイルをどうするつもりだ?」

 

「おお、さすがは龍園くん。全然動じてないなんてさすがだねー。……で、音声ファイルをどうするかって話だけど、龍園くんならどうするか分かってるんじゃない?」

 

「クク。そうだな。おまえがこそこそ隠れて録画したデータと合わせて学校側に提出すりゃ下手しなくても問題になる。ならそうされる前に何か手を打つ必要がある訳だが……さて、どうするかな。降って湧いたような大ピンチだぜ。困ったもんだな」

 

 ピンチだと言いながらも龍園くんに困った様子は見られない。そのことを私は不可解に思う。

 諦めているだけか。それともまだ何か打開策があるとでも言うのか。思考する私の耳に、南雲さんの声が届いた。

 

「それじゃお得意の暴力でも使ってみる? 私をボコボコにして脅せばどうにかなるかもよ?」

 

「確かに。そりゃ俺好みの展開だな。試してみるのも悪くない」

 

「なっ……! あなた、正気!? こんな場所で暴力に訴えるなんて……!」

 

「口を挟むなよ鈴音。もうおまえの役目は終わってる。今度は麗を料理する番だ」

 

 龍園くんが更に一歩、距離を詰めてきた。それと同時に暴力的な気配が濃密になる。あまりにも馬鹿げている。本当にこんな場所で暴力を振るうつもりなのか。

 私もまた何かあれば動けるように警戒する。前の南雲さんは動かない。ただ真っ直ぐに龍園くんと視線を交わし合っている。

 緊張感の漂う中、少しして龍園くんが手を上げる。そして口を開いた。

 

「──だがやめとくぜ。そうしたいのは山々だが……やるとしても今じゃない」

 

「へぇ? だったらどうするの? やっぱり何か策でもある?」

 

「ああ。何も難しいことじゃない。おまえの手を防ぐにはただ一言、口にすりゃあいいだけだ」

 

 暴力を振るおうとした手を止め、空気が僅かに弛緩する。

 だがその次に龍園くんが口にした言葉は──私には理解が及ばないものだった。

 

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「……? あんた、いきなり何を……?」

 

「……渡辺くん……? それって……」

 

 龍園くんの一言。それに困惑する櫛田さんと私の声が廊下に響く。

 それが意味するところは、あのAクラスの渡辺くんのポケットにDクラスの参加表が紛れていた一件のことだろう。

 AクラスとDクラスの連携を乱すために龍園くんか坂柳さんが仕込んだもの。私は、その可能性を考えていた。

 だがそうじゃないと龍園くんは言う。

 だとしたら誰が……? そして、その一言にどんな意味が? 

 私が疑問を感じる中、南雲さんが反応した。

 

「……あーやっぱそういうこと……なるほど、ね。そういうことかぁ……! あはは! やっぱ……やっぱり最高だね! 全部読まれてたんだ! 私の動きだけじゃなくて龍園くんの動きも! 坂柳さんも含めて全部掌の上で転がしたってことだよね! さすが……さすがだよ!」

 

 楽しそうに、南雲さんは唐突に笑い出す。

 

「なるほどねー。龍園くんもそこで気づいたってことだ。それで、確かめるためにあえて手を打たずに当初の予定通り動いたってことだ」

 

「俺を嵌めたいだけならあんな回りくどいメッセージを送る必要はない。麗、おまえがやったようにただ黙って事が起きるのを見てりゃいい話だ。だがそいつはあえてメッセージを送り、俺に疑念を抱かせた。鈴音を事前に助けることもせず、あえて放置しながらも俺に気づかせたんだよ。この状況に持ってくるためにな。クク……バレちゃマズいことをしてたのは俺だけじゃなかったってことだ」

 

「そういうことだね。確かに……ここまで見事に読み切られて利用されたんじゃちょっと何も出来ないなー」

 

 南雲さんはそう言って右手の携帯の画面をちらりと見るとそのままポケットにしまってみせる。その上で、龍園くんに告げた。

 

「音声データは削除してあげるよ龍園くん。どこかの誰かさんに感謝するんだね」

 

「ああ。感謝するぜ。おかげで俺としても収穫があった。いずれお前と合わせてお礼しに行ってやるよ」

 

「そのためにはまずその誰かさんを突き止めないとじゃない?」

 

「そうだな。それはこれからじっくり探し出してやる。だが今日はひとまずこれで十分だ」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 2人だけでトントン拍子に進んでいく会話。それが終わると龍園くんは背を向けて去っていく。櫛田さんが慌てて、こちらを気にしながらも追いかけていった。

 そしてその場に残ったのが私と南雲さんだけになると南雲さんはこちらを向いて手を振った。

 

「それじゃ鈴音ちゃんもおつかれさまー。あ、成長出来てよかったね。前よりは良い顔になってるよー。それじゃ」

 

「……! 待って!」

 

「いーや待たないね! ばいばい鈴音ちゃーん!」

 

 私の心境の変化を察して指摘してきた南雲さんを呼び止めようとするも南雲さんは笑顔でそれを断って手を振りながら廊下を走り去っていく。

 そして誰もいなくなった廊下で私は1人思考の海に沈むことになる。南雲さんに龍園くん。そしておそらく坂柳さんの動きまで読み取って手を打ち、この場を収めた人物。龍園くんが探し出そうとしてる謎の人物……その顔を思い浮かべた。

 

「一体何をしたの……?」

 

 その質問に答えてくれる者はおらず、言葉は宙に浮かんで消えていった。

 

 

 

 

 

 体育祭が終わった次の日。

 オレはある人物の求めに応じて事の経緯の一部を語っていた。

 

「そもそもさ。どうして気づけたのか教えてくれない?」

 

「悪いがそれは教えられない。教えられるのはオレが龍園の計画を何らかの方法で察知し、幾つかの情報から推測して手を打ったということだけだ」

 

 Cクラスの情報源である真鍋のことを教える訳にはいかない。

 だがこの相手の興味を惹き、動きを止めるためにある程度の情報開示は必要不可欠だった。

 

「……でもそれだけじゃ無理じゃないかなって思うんだけどな。龍園くんの計画が分かっただけじゃあれだけの事は起こせない。そうじゃない?」

 

「それほど難しいことじゃない。龍園と坂柳が手を組んだことはすぐに分かった。Bクラスの状況から見ても坂柳は体育祭で負ける訳にはいかない。最悪の場合、BクラスはCクラスに沈むことになる。勝つためにCクラスと手を組むのは龍園の計画を知らなくても十分に予想出来る範疇だ」

 

 葛城派を追い落としてリーダーになった坂柳だが、その代償にAクラスはBクラスに落ちた。

 更に夏休み終わり頃になっての退学者を出したことで更にクラスポイントを下げた結果、Bクラスは危険水域に入ってしまう。体育祭の結果次第ではBクラスとCクラスの入れ替わりまでありえる事態。そうなってしまえば坂柳が幾ら仕切ったところで統制が利くかどうかは怪しい。クラスの士気を取り戻し体制を立て直すまで時間がかかることになるだろう。それを避けるのに最も手っ取り早い確実な手は、Cクラスと手を組むことだった。

 

「ふーん……すごい。読んでるんだ。それじゃ、その綾小路くんの読みだとAクラスはどんな策を取ってたの?」

 

「おそらくだがAクラスは最初、それほど大きな手を使う予定はなかった」

 

「と言うと?」

 

「体育祭は特別試験とは違う。Aクラスの戦力ならば一丸となって戦えば勝利することはそれほど難しいことじゃない。備えるとすれば自クラスの情報が流出しないようにするだけでいい」

 

 そう。Aクラスとしては特別なことをせずとも勝てた体育祭だった。

 とはいえ他クラスの内情を知るならばそれを基に作戦を立てることも出来る。スパイを他のクラスに仕込んでいれば情報を得ることは容易い。

 

「だが龍園の計画を知ったAクラスはそれを利用して龍園を嵌めることを思いついた。幸いにも龍園の狙いはDクラス。同じ組とはいえ放置してもそれほど痛手を負うことはないからな」

 

「なるほどね。それじゃ綾小路くんはそれを全部分かった上で利用したってこと?」

 

「全部が全部じゃないがな。もしAクラスがCクラスの企みに気づいていないならそれはそれで違う手を打った」

 

 その時は龍園にメールを1つ送ってやるだけでいい。

 だが実際には南雲はCクラスにすらスパイを潜り込ませて龍園の計画に気づいていた。オレが態々行動を起こさずとも龍園にそれを突きつけてくれるし、それと同時にもう1人の裏切り者である櫛田封じにも繋がる。

 ──とはいえ向こうも似たようなことを考えていたようだが。

 

「だがAクラス、南雲は気づいていた。なら後は龍園を通じてメッセージを送り、ダメ押しとして本人にもメールを送ってやればいい」

 

「どんな内容か聞いてもいいかな?」

 

「大した内容じゃない。要約すれば……『オレには全部読めていたぞ』ってところか」

 

 Bクラスを通じて渡辺のポケットにオレが予めコピーしておいたDクラスの参加表を仕込ませれば龍園はその意図に気づいて乗っかるだろう。

 だが自分でもなければ坂柳でもない。Dクラスと真っ当に連携して信頼を築こうとしていた南雲が行うにもメリットはない。

 あの段階で参加表を出すことによって龍園は考えを巡らせ、そしてオレの考えにも気づく。

 こちらの計画を掴んでおきながら堀北潰しを容認し、脅しにも使わない。その上で態々参加表を仕込んでバレているぞと教えてくる。狙いが全て読まれている、いや、読んでいると伝えてくる謎の人物からのメッセージ。

 それを確かめるために龍園はあえて計画を中止することもなくそのまま実行した。実行しても、脅しに使われたり大きなダメージを被ることはないだろうと読んだ上で。

 しっかりとオレの誘いに乗ってきてくれた。そしてそれは……南雲も同じこと。

 

「……じゃああそこで私に声を掛けたのもひょっとして同じ意図だったんだ」

 

「そういうことだ。Dクラス内の不和を利用して南雲の影響力を高める。そのためのサクラとしておまえも使われる予定だったんじゃないか?」

 

「……正解だよ」

 

 やはりか。南雲ならそうしかねないとは思っていた。

 あの時、須藤を取り込まれたりDクラス内の不和を南雲が解決するようなことがあれば堀北の成長の機会は失われ、須藤という戦力も失う恐れがあった。

 だからこそ念のため、目の前のスパイに警戒させて進言させれば南雲が動く可能性は低くなる。Dクラスの参加表をAクラスの渡辺という生徒に仕込んだこともそれに繋がっている。あの件で少なからずAクラスへの疑念が生まれたこともまた南雲の邪魔に繋がっている。

 それでもなお南雲がDクラスか、あるいは須藤の元へ向かうようであればまた手を打つ必要があったが……堀北がしっかりと午後の競技を犠牲にしてまで須藤を連れ戻したことで杞憂に終わった。

 王道で戦うと決めてクラスを引っ張るエースとして活躍していた南雲が競技を欠場する訳にはいかなかっただろうからな。

 

「……お見逸れしたよ綾小路くん。まさか……Dクラスにこんな掘り出し物が眠ってたなんて。なんでもっと表に出てくれないの? そしたら私だってスパイなんて真似しなかったかもしれないのに」

 

「あまり目立ちたくないんだ。こうやって色々観念して喋っているのも興味を惹くため。南雲や龍園にやったことと同じことだ」

 

 オレはため息をつく。思い通りに事が進んでいるとはいえ、4月の最初に考えていた予定からすると酷く脱線していることに間違いはないからだ。

 

「私がスパイだって気づいたこともそう。普通あれだけじゃ気づけないよ。てっきり疑われるとしたら交友がある須藤くんや池くん。あるいは佐倉さん辺りだと思ってたのに」

 

「無人島での動きを佐藤から聞いてなければ気づけなかった」

 

「それでもだよ。普通はそもそもそこに違和感なんて持たない訳だしね」

 

 目の前の人物をAクラスのスパイだと確信したその理由。この話し合いに持っていくために突きつけたその理由。それを最初に口にしたのも──松下の興味を惹くためだった。

 夏休みにあった特別試験。その干支試験における牛グループの違和感から牛グループにいるDクラスの誰かがスパイだと推理する。

 だが違和感自体は以前にも抱いていたのだ。それは、無人島試験6日目でのこと。

 

『それじゃあ堀北さん達にも共有させてもらうけど……実は、探索に出てたグループがリーダーを見つけたらしいんだ』

 

『佐藤さん達が言うには間違いないそうだよ。探索に出ていたところ、Bクラスの南雲さん達が歩いているのを見つけたんだって。そこで向こうにも見つかって、ちょっと話していたらしいんだけど、別れ際になってBクラスの南方さんがカードを落としてそれを佐藤さん達は拾って見たらしいんだ。名前もしっかり確認したって』

 

『うん。一緒にいた松下さん達も見てるし、間違いないみたいだね』

 

 あの時、平田は確かこう言っていた。

 南雲が無人島試験で取っていた全クラスにリーダーを外させる戦略。幾ら少数でスポットを回っているからといって他のクラスがリーダーに気付けるかどうかは運にも大きく左右されてしまう。

 だからこそ南雲は予め伝えておいたのだろう。松下に。偶然を装って南雲率いるグループと接触するように。

 だからこそ松下と同じグループで一緒に行動していた佐藤にオレはその時のことを詳しく尋ねた。

 

『確か松下さん、だったかな? 「こっち行ってみない?」って。それで特に深く考えずについて行ったんだけどそしたらBクラスのリーダー見つけることになって──』

 

 あの時、リーダーは佐藤が見つけたということになっていたが本当は違う。松下が、南雲のいる位置まで佐藤達を誘導して見つけさせた、というのが正しい。

 干支試験と合わせてそれが理由だと突きつければ意外にも松下は観念して話し合いに応じてくれた。

 だがその理由も今なら分かる。

 

「……やっぱり、さ。今からでも綾小路くんがDクラスのリーダーになるとかどうかな? そしたら私も、綾小路くんの言うこと聞いて動くことにするよ。そのためならAクラスのスパイもやめたっていい」

 

 松下は伺いを立てるようにそんなことをお願いしてくる。

 それが意味するところは、オレであればDクラスを導いて上のクラスに引っ張り上げられるのではないかという期待。

 Aクラスに上がるためのピースを、松下は求めているのだ。

 だが、その求めにオレは応じない。その必要性を感じないから。

 

「悪いがそんな気はない」

 

「……そっか。それじゃやっぱりDクラスじゃ上には上がれなさそうだね」

 

「どうしてそう思う?」

 

「綾小路くんなら分かるでしょ。4月からここまで見てきてさ。むしろ上に上がれると思うほうが不思議だよ。須藤くんはやらかすし、平田くんはどっちつかずでリーダーにするには頼りないし、軽井沢さんは自分勝手だし、堀北さんも能力はあるけど協調性はない。おまけに高円寺くんみたいな明らかに和を乱す人もいる。大半のクラスメイトは……あまり言いたくないけど、レベルが低いでしょ」

 

「それでも個々の能力で光るところを持つ生徒はいる。平田に櫛田。堀北だって変わるかもしれない」

 

 もっともその櫛田は裏切り者なのだが、それを伝えることはせずに能力の高い生徒ということで名前を告げる。

 だがそれを聞いてなお松下は首を横に振った。

 

「無理だよ。そりゃ数人は戦える生徒もいる。だけど……それだけじゃ勝てない。並の生徒相手ならともかく、ね。相手が相手だから」

 

「だから南雲の誘いに乗ったのか」

 

「4月の時点でね。南雲さんから声を掛けられたんだ。『Dクラスのスパイになってくれない?』ってさ。最初は私も何のことか分からなかったし、分かった後も最初はスパイなんてする気はなかった。だけど……中間試験に須藤くんの暴力事件とか色々あったのと見て、ね。分かったんだ。このクラスじゃ上のクラスには勝てないって」

 

 早い段階で南雲は他のクラスに目をつけて仕込みを行っていた。その内の1人が松下千秋という生徒であり、松下を利用して南雲は戦いを有利に進めていた。

 

「報酬はAクラスに移動するための2000万プライベートポイント、か」

 

「そうだね。上手いこと動く度に南雲さんから働きに応じてポイントが貰えるからそれを貯める。あるいは実力を示してくれればすぐにでもAクラスに引き抜くって南雲さんは言ってた」

 

 ポイントを使って生徒を買収。そして貢献度、実力に応じて2000万ポイントを使ってのAクラスへの引き抜きか。

 安い買い物ではないが、優秀な生徒をクラスに引き込むメリットは決して小さくない。

 そしてトップを独走し、干支試験も経て莫大なポイントを抱えていると思われるAクラスであれば決して不可能ではない作戦だ。

 

「……綾小路くんもさ。表に出る気がないって言うならもしかして同じ方法でAクラスに上がろうとしてるの?」

 

「生憎とそれだけのポイントを貯めれる気がしない」

 

「綾小路くんなら難しくなさそうに思えるけどね。それこそ南雲さんなら真っ先に引き抜きそうなものだけど」

 

 確かにその展開は考えられる手の1つではある。

 だが今のところオレにそんな気はない。

 だからこそオレはこう答える。

 

「仮に打診されても首を縦に振ることはないだろうな」

 

「……そっか。綾小路くんはAクラスに上がることに興味はないんだね。だから表で動く気もないんだ」

 

「ああ。だが──」

 

 オレは少し間を置いて別の答えを用意する。

 

「オレが望む望まないに関わらず、結果的にクラスが上に行く可能性はある」

 

「……それってどういうこと?」

 

「オレ自身、Aクラスに興味がある訳じゃない。だが、オレの興味や目的を達するために動いた結果、このクラスが上へと近づくことはあるってことだ」

 

 今はこう答えておくことがベストだろう。

 松下という生徒はAクラスに上がるためのピースを求めている。

 そのための期待。つまり、オレという生徒が動く可能性を匂わせておく。

 これである程度、松下の動きを迷わすことは出来る。少なくとも、クラスを決定的に陥れるような作戦には加担しないだろう。

 よっぽどのことがなければ、だが。

 

「……そっか。わかったよ。つまり、綾小路くんは私に自重してほしいんだよね」

 

「出来ればそうしてくれると助かる」

 

「……いいよ。それなら……そうだね。少なくとも何かあれば綾小路くんに一度相談することにしようかな」

 

 承諾し、そして提案してきたのは裏切りを打診された時の相談。つまり、一度オレに情報を伝えること。

 そうなればオレは一方的に南雲が打つ手を知れることになるが、そうはならないだろう。松下もまたそれを分かっている。

 

「だけど私がスパイだって綾小路くんに気づかれたことは南雲さんも気づいてるだろうからね。あんまり情報を下ろしてはくれないだろうし、場合によっては……それを利用されることになるかもしれないよ?」

 

「ああ。それで構わない」

 

「構わないんだ。あの南雲さん相手にすごい自信だね」

 

 松下が結果的に二重スパイのような形になること。その情報を南雲にも気づかれること。

 だがそれで問題ない。重要なのは松下の動きを抑制し、知ること。

 今はそれで十分だろう。松下の心が変わればそれだけでも状況は好転する。

 だからこそオレは松下に実力を見せることにしたのだから。

 

「わかった。もう少し様子を見ることにする。綾小路くんの実力ももっと見てみたいしね」

 

「ああ。そうしてくれ」

 

 松下から了承を得るとそのままベンチから立ち上がる。

 早朝の人気のない場所とはいえあまり長居すれば目撃されてあらぬ誤解を受けないとも限らないからな。

 

「あ、ちょっと待って。最後に聞かせて」

 

「なんだ?」

 

「体育祭の最後のリレー……もしあのアクシデントがなかったら、やっぱり勝ってたのは綾小路くんだったよね?」

 

「分かりきったことを聞かないでくれ」

 

 確信したように松下から問いかけられたのでオレもまたどっちでも取れる答えを口にする。

 だがそれでも松下には伝わっただろう。松下は頷き、同じくベンチから立ち上がる。

 

「そっか。それじゃ、終わった後、南雲さんのお兄さんと何話してたの?」

 

「見てたのか」

 

「南雲さんのお兄さん、生徒会の副会長のことは調べて知ってたから。それで、どうだったの?」

 

「……大したことじゃない」

 

 そう。大したことじゃない。

 オレは昨日のリレーのことを思い出す。

 堀北兄。南雲兄。そしてオレ。

 3人で競い合うように走ったリレーの結末は──オレの敗北という形で幕を閉じたのだ。

 

『惜しかったな綾小路。それに不運だった。前を走ってた奴がこけなければ勝負は分からなかった』

 

『そうですかね。でも結果は結果です。2位、おめでとうございます南雲先輩』

 

『ああ。……結局、堀北会長には勝てなかったが、それでも良い気分だ。久しぶりにあの人と真っ向から勝負が出来たんだからな』

 

 勝負を終えた後、南雲兄はオレの方にやってきてそう声を掛けてきた。

 視線はクラスメイトに囲まれている堀北兄を見ている。

 その表情は悔しそうでありながらもどこか嬉しそうでもあった。

 

『おまえにも感謝しとくぜ綾小路。おまえがいなきゃ堀北会長は俺との勝負を受けてはくれなかった。何か礼がしたいところだな』

 

『いえ、その必要は……』

 

『そう言うな。今の俺は気分がいい。誰かに施しでもしてやりたいところなんだ。だから……そうだな。おまえが勝負の前に言っていた条件を受け入れてやろう』

 

『いいんですか?』

 

『ああ。元々オレが直接手を下すのは麗との勝負の結果を待ってからと決めていた。堀北会長の認めたおまえと俺の妹である麗のどっちが強いかは純粋に興味があるからな。しばらくは高みの見物をさせてもらうとしよう』

 

『……わかりました。ありがとうございます』

 

 南雲兄の礼にオレは頭を下げて礼を言う。南雲兄はそれに応えることなく背を向けてクラスの方に戻ろうとした。

 だが、その前に足を止めて去り際に口にする。

 

『おまえは底知れない奴だな綾小路』

 

『買いかぶりですよ』

 

『そうかな? この結果も読んでいたんじゃないか?』

 

『それはありません。あの事故まで読み切れる筈がない』

 

 だが、事故らなければ勝負の結果は分からなかった。

 それを思えばどっちに転んでも……オレの思い通りになっていた可能性は高い。

 そのことを考えているのだろう。南雲兄は少し間を置いたが、それでも答えが出ることはない。

 だが代わりに告げた言葉は、強く印象に残るものだった。

 

『……そうか。確かに、偶然の事故まで読み切れる筈はないか』

 

『ええ、勿論です』

 

『麗との勝負、頑張れよ綾小路。おまえも底知れないがあいつもおっかないぜ』

 

 そして南雲兄は少しだけ振り返りながらはっきりと言葉にする。

 

『なにせ麗は、俺ですら『理解』が及ばないくらいだからな』

 

 南雲兄ははっきりとした自信を覗かせて去っていった。

 

 

 

 

 

 ──体育祭が終わった日の夜。

 私はご機嫌だった。

 

「ふんふ~ん♪」

 

 クラスでの打ち上げを終えて自室に1人。携帯にはクラスの誰かのチャットが流れ続ける中、私は爪を弄りながら今日の収穫を改めて確認する。

 赤組の勝利。

 1年の成績1位。

 最優秀生徒も取った。

 龍園くん潰しには失敗。だけどその代わりに綾小路くんの実力が見れた。

 松下ちゃんがスパイであることはバレてる。

 それらの結果を思い、私はご機嫌だった。

 

「特に綾小路くんの実力が見れたことがでかいよね~」

 

 そう。それが何よりの収穫。

 最後のリレーで見せた走力。

 あの速さは尋常じゃない。私が見る限り、雅兄や堀北会長すらも超えると思われる速さ。

 超高校級。いや、あるいは高校生のレベルを超えているかもしれない。

 走力だけとはいえあれなら各種筋力。運動能力も非凡であることは明らかだ。

 

「ま、綾小路くんは足が速いだけだって言い訳するつもりかもだけど……そうはいかないよー」

 

 表に出る気がない綾小路くんの顔を思い出しながらにんまりと私は笑う。

 携帯を操作して今日届いたメールを確認した。

 

「それとも私に対してはもう隠す気がないのかな?」

 

 それは龍園くんとの会話中に携帯に届いたメールだ。

 

 ──『これで満足か?』

 

 そんな写真付きの疑問形のメールの内容。

 おそらくは彼から届いたものであり、写真の内容は最後のリレーに出場したとある生徒の写真だ。

 それは私の動きを読んで私の龍園くん潰しの動きを止めるためのもの。

 きっとその写真は龍園くんにも送られているだろう。

 

「困った困った。まさかここまでバレるなんて」

 

 その困った内容のメールへの返信はしていない。

 だが返信するとしたら私はこう返すだろう。

 

 ──『そうだね』と。

 

「……綾小路くんさー。あえて私の狙いで踊ってみせた感出してるけど……私相手に情報を与えるのは悪手じゃよそりゃ」

 

 綾小路くんに話しかけるように部屋に置いてあったぬいぐるみを抱いて顔を弄る。

 きっと綾小路くんは気づいているのだろう。

 私が体育祭でのやることなすこと。私が気づいてない振りをして気づいていたも全部。

 綾小路くんの実力が見れないかと思って、どっちでも問題ない策を打っていたこと。

 もし綾小路くんが気づいてくれるならちゃんと私の策を潰せるように。

 もし綾小路くんが気づいていないならそのまま私の策を通せるように。

 別にどっちでもよかった。綾小路くんが、私が龍園くんの策に気付けるか気づけないか、どっちでもよかったようにどっちでも良かったのだ。

 そして龍園くんも途中から同じスタンスだったようだね。やっぱり龍園くんはすごい。私と戦ってからすごい成長してる。

 そして有栖ちゃんも様子見かな。私達の戦いを安全なところで高みの見物をしながら戦力分析ってところか。

 後は鈴音ちゃんもようやく成長の兆しが見えてきてるし、このまま成長してくれるともっと楽しくなるだろう。

 だけどそれでも最後に勝つのは私だ。

 

「ちょっとずつ……綾小路くんという人間が『理解』出来てきたよ」

 

 そうして理解るのは綾小路くんは凄まじいスキルを持っているということ。

 きっとその中にはまだ私の及んでいない領域もある。

 だから早く理解してあげたい。

 それがまた、私のためになると……理解っているから。




今回はこんなところで。これで体育祭編は終了。次回からはペーパーシャッフル編です。

クラスポイント推移(体育祭終了時)

南雲クラス(Aクラス):1220
坂柳クラス(Bクラス):724
龍園クラス(Cクラス):442
堀北クラス(Dクラス):154
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