ようこそアイドル至上主義の教室へ   作:黒岩

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馬鹿にアイドルは務まらない

 入学して2週間も経てば皆学校にも授業にも慣れて今の生活を日常とする。

 諭吉先生も樋口先生も野口先生も見ることがない。ポイントという名の電子マネーを使って皆買い物する。ちょっとだけ残念。電子マネーもいいけどお札も好きなんだけどなー。残高も興奮するけど札束はもっと興奮するし。

 でもそれにも慣れてしまった。他の有象無象の例に漏れず私もまた学校生活に慣れて毎日友達とお喋りしたり遊んだり勉強したり相談に乗ったりで仲を深めている。

 

「ねえ麗ちゃんはどっちがいいと思う?」

 

「んーこっちの方が肌にいいしおすすめかな。メイクさんからも人気だったしね」

 

「へぇー! そうなんだ! じゃあこっちにするね! アイドルの麗ちゃんのおすすめなら間違いないかも!」

 

 そんな日常となった学校生活で、徐々に他のクラスとも交友を持つことになった。

 その中で最も早く私を含むBクラスと仲を深めようと近づいてきた女の子──Dクラスの櫛田桔梗ちゃんと今日はお買い物だ。

 桔梗ちゃんは愛嬌があって可愛らしい子でDクラスで1、2を争う容姿を持つ子だ。Dクラスのことはまだそんなに知らないけど。他の女子よりは上だったので多分間違いないんじゃないかな。

 友達を沢山作りたいらしくてDクラスのほぼ全員ともう連絡先を交換しているらしい。それを聞いた時の感想は、私の下位互換みたいなことをしてるなぁと。

 正確に言うならアイドルによくいる感じの子だ。見てると懐かしくなる。人に愛されたい、ファンを増やしたい、人脈がほしい、仕事がほしい──そういう欲求が溢れてるアイドルはとにかく笑顔を振りまいて感じよくするんだよね。その感じとよく似てる。

 まあ桔梗ちゃんがそうとは限らないんだけど。でもなんか……ちょ~っとだけ違和感を感じる。笑顔なんだけどなぁ。

 

 ──だけどそんなちょっと可愛いだけの普通の女の子のことなんてどうでもいい。

 

 それよりも重要なのは……学校生活が始まって約半月。1ヶ月の折り返しということだ。

 完璧な証拠とまではいかないが色々と情報も集まってきた。これ以上少数での情報収集は非効率だし、まだ完全ではないがクラスメイトとの関係もそこそこ。そろそろ行動に移そうと、私は隣の隆二くんと視線を合わせるとそのまま立ち上がって教壇へと移動しながら声を大きめに出した。

 

「みんなちょっと聞いてくれる?」

 

 私が手を一度叩いて少し大きな声でそう言えば、クラスの喧騒が収まり、視線が集中する。クラスの中心人物である私。カーストの頂点に位置する元アイドルの南雲麗ちゃんの言葉はこの場において最も重い。笑顔を浮かべて少し間を置けば、誰もが「何だろう?」とこちらに興味を向けてくれる。

 

「麗ちゃん、どうしたの?」

 

 そんな中で真っ先に私に問いを投げてくれたのはやはり一番の友達である帆波ちゃんだった。まあ性格的に友達じゃなくても一番に声を上げそうだけどね。

 

「ちょっと気になったことがあってね。それでこの2週間で調べて浮かんだ考察を皆に聞いてもらおうと思って」

 

「……考察?」

 

「都市伝説か何かか?」

 

「現実の話だよ颯くん。……ま、と言っても確定ではないんだけど──」

 

 と、茶々を入れてきた柴田颯くんに反応しつつも一呼吸置く。そうして口にするのはこの学校が隠していることだ。

 

「──来月からは10万ポイントも貰えないし、私達Bクラスは卒業しても希望の進学、就職先に行ける保証はないってことかな」

 

 声のトーンを少し落とした上でその衝撃的な事実を口にすれば、面白いようにクラスの空気が変わる。困惑、といったところか。いいね、気分はデスゲームのゲームマスターだ。この教壇からは皆の表情がよく分かる。

 

「……麗ちゃん。それってどういうことかな?」

 

 そしてやはり──ここでも真っ先に声が出たのは帆波ちゃんだった。優秀だね。友達が優秀で私は嬉しいよ。

 そんな優秀な帆波ちゃんに、私は懇切丁寧に説明してあげることにする。順番にね。

 

「最初に気になったのはやっぱ監視カメラかな。初めて校内に足を踏み入れた時から気になってたんだけど敷地内の至る所に監視カメラがあるんだよねー。ほら、この教室にもあるでしょ?」

 

 と、私が天井を指差して言えば、クラスの視線がその指の先に集中。そこには確かにカメラがあった。まじまじと観察して見てみなければ分からないそれを、私の指示で認識する。

 

「本当だ……」

 

「なんで?」

 

「ね? カメラあるでしょ? ここだけじゃなくて注意して見てみれば色んなところにあるはずだよ」

 

 そう言えば皆が口を噤む。思い返しているのだろう。一度認識すればカメラを探すことは難しくない。視界に捉えていたこともあるだろう。意識してなかっただけで、思い返してみれば皆監視カメラを見たことはある筈だった。

 

「それで理由の方だけど……監視と言うからには私達のことを監視してると思うんだよね」

 

「……それはそうだろうけど、なんのために? 教室で監視する理由なんて……」

 

 と、帆波ちゃんはそこで言葉を止める。ん、本当に優秀だね。自分で言っていて気づいたのか。さすがだね。ご褒美に肯定してあげなきゃ。

 

「気づいたかな、帆波ちゃん。──そう。教室で私達を監視する理由といったら、まあ素行だよね。何かいけないこと、やっちゃいけないことをしてないかとか。たとえば……授業中の私語とかスマホ触ったりとかかな」

 

 心当たりがある面々が顔をぎょっとさせる。良い表情の変化だ。

 ただバレたからといって何がある訳でもない。その先をまだ想像出来ていないのだろう。まだ驚きは足りてない。

 だが帆波ちゃんは想像がついたようだ。おそるおそる、確認するように私に言葉を返してくる。

 

「……その授業中の私語やスマホを触ったりしたことで……ポイントが減ってるってことかな?」

 

「多分ねー。言質までは取れなかったけどこのことを先生に聞いたら『答えられない』って答えばっかりだったし。──だよね? 隆二くん」

 

 私が答えて名指しすれば、皆の視線が今度は隆二くんに移動する。

 皆の視線を受けても隆二くんは表情を崩さない。私の言葉にしっかりと頷いてくれる。

 

「ああ。俺も聞いた。監視カメラのことやその設置理由。そしてポイントが増減する可能性について聞いても、答えは『答えられない』の一点張りだった」

 

「! ……神崎くんも気づいてたの?」

 

「登校2日目に南雲から相談された。学校側の説明に不確かな部分があるから調べてほしいと。それで調べた結果……教師どころか上級生すら口を割ることはなかった」

 

「だけどその時には誰もが逃げるようにその場を後にするか話を変えるか。後は表情が揺らいで答えないことを守ろうとするか。そうだよね?」

 

「ああ、俺も確認した。おそらく……いや、南雲の推測は当たっているだろう。学校側は意図的にその部分を伏せている」

 

 私の言葉に同意した隆二くん。その説を唱える者が2人となったことでようやく教室中の疑念の色が強まる。まさか、という感じだろう。頭の回転が早い人は徐々に渋い顔になっていく。

 

「他にもさ。色んなお店で無料の商品が置かれてることもおかしいと思ったんだよね。もし私の推測が正しいなら……あれはポイントがなくなった時の救済措置なんじゃないかなって。それならどれだけ成績が悪くても死ぬことはないでしょ?」

 

「そ、それは……で、でも先生は確か、月初めに10万ポイントが支給されるって……」

 

「言ってないんだよね。思い返してみれば。先生が言ったのは『月初めにポイントが支給される』ことと『入学した私達に10万ポイントの価値がある』ってことだけ。この2つの言葉は矛盾しない。入学した生徒全員10万ポイント分の価値はあるけど、その後、成績が悪かったり禁止されていることを行ったりした生徒の評価は下がる。その分、支給されるポイントも少なくなるのはおかしなことじゃない」

 

 反論してきた人の言葉を否定する。聞き流してた人も多いかもしれないけどそうは言ってないから中々に意地悪だよね。知恵ちゃん先生なんて祝福ムード笑顔満点で説明してたんだから相当腹黒い。

 とはいえそれは知恵ちゃん先生が意図したことというより学校側から課せられたルールなのだろうけど。

 

「……でも……それがそうだとして、希望する進学先に行ける保証がないってのはどういうことですか? 南雲さん」

 

 とゆっくりと私からの言葉を飲み込みながら疑問を呈してきたのは浜口哲也くん。中性的な顔立ちの眼鏡くんだ。ふーん、結構頭は回るのかな? 覚えといてあげよう。それでその答えは──

 

「そっちはもっと私の推測というか考察に寄った結論なんだけどね。この間1年Dクラスの生徒と2年生の先輩が揉めてたのを仲裁に入ったんだけどその時に気になることを聞いたんだ」

 

「それはどういう?」

 

「『お前クラスは何だよ。なんてな。当ててやろうか? Dクラスだろ?』ってね。それをDクラスの生徒が肯定したら今度は──『聞いたか? Dクラスだってよ。やっぱりな! お里が知れるってもんだよなぁ』って」

 

「それは……」

 

 私があの時コンビニで聞いた上級生とDクラスの生徒のやり取りを一言一句違わずに口にしてみれば、哲也くんも帆波ちゃんも皆その言葉の意味を吟味する。

 

「なんでDクラスだとお里が知れるのかな? しかもその後も上級生はその生徒を指して『不良品』とも言っていたしね。なんで不良品なんだろうね? 国立の名門校に曲りなりにも入学した初対面の新入生の成績も素行も分かる訳ない。昔からの知人、同郷や……私みたいな有名人でもない限りね」

 

 そう、だとしてもそこまで詳しく分かる筈もない。ならそうやって確信を持って罵ることが出来た理由は……。

 

「上級生は学校の仕組みを知っていて、だからこそその生徒のことを馬鹿にすることが出来た。『Dクラス』というのが分かってからその言葉が出てきたということは……『D』というクラスはA、B、Cと比べて劣ってるってことなんじゃないかな?」

 

 それはただのアルファベットの羅列に過ぎないのかもしれない。

 だけどDよりはC。CよりはB。BよりはAが上という指標はありふれたものだ。ゲームなどでもよく見るものだろう。数字の始まりと同じようにアルファベットの始まりの方が序列は上だというのは一般的なものだ。……そういえばAより上はSというのは誰が考えたのだろう。冷静に考えてみればよく分からない。なぜあえてSなのかはちょっと気になる……けどそれは今はどうでもいい。

 

「でも仮にそうなってくると今度はなぜ、クラスを優劣で分けるのかって疑問が浮かぶでしょ? 学習の習熟度だけが理由なら隠す理由もよく分からないし、Dクラスが『不良品』と呼ばれるほどに劣っているなら……そんな『不良品』に、進学先や就職先を無条件で推薦するのはさすがにおかしいと思わない?」

 

 そこまで言えば皆嫌でも理解する。つまり、その恩恵が受けられる可能性があるのは上位のクラス。

 つまり最悪、Aクラス以外は受けることが出来ない可能性も待っているということだ。

 

「……じゃあ私達は……騙されたってこと?」

 

「で、でももしそうならBクラスでも大丈夫……だよね?」

 

 絶望とまではいかないが、不安が大きくなってきたかな。自分を安心させようと甘い言葉も飛び出すが……そんな甘くはないと私は思う。

 

「うーん……Aクラスじゃないとダメなんじゃないかなぁ。その方が競争力を煽るのには最適だし……うん、まあだとしても悲観することでもないと思うよ。もしそうなら、Aクラスに頑張って上がればいいだけだしね」

 

「Aクラスに……上がる?」

 

 私の言葉の意味が分からないというように再び戸惑いを見せるクラスメイト達。そこで帆波ちゃんも理解が追いついた。

 

「……麗ちゃんは良い成績を残せばAクラスに上がれるって考えてるってこと?」

 

「まあね。それに、個人単位じゃなくてクラス単位かな。先生は『3年間クラス替えはない』ってはっきり言ってたし。その言葉が本当ならクラスのメンバーは変わらない。変わるのは……クラス同士の優劣。クラス同士で競い合い、より優秀なクラスがAクラスになる。そして卒業時の恩恵をめでたくゲット出来る──ってのが私が出した推測かな」

 

 ……とまあこんなところだ。確証はないけどあってるんじゃないかなぁ。皆には言わなかったけど、これならうちの雅兄があんなに恐れられてる理由も分かる。クラス間闘争で相当に暴れて悪名を広げていれば2年生のあの恐れようや掘北先輩の警戒も納得出来る。

 ただまあこれだけで完全に納得させられるとは思ってない。思ってないが……後のピースは私自身が持っている。

 

「……で、でもそれって全部、麗ちゃんの推測……なんだよね?」

 

 ──と、予想通りそんな楽に逃げようとする言葉が恐る恐る言い放たれる。私の言葉を杞憂としたいようだ。ここまで説明してなお私の言葉を信じ切れないなんて本来なら罪深いことだけど……今はまだ寛大に許してあげないとね。

 だから私は頷いた。認める形で。

 

「うん。私の推測にすぎない。だから……ここからはお願いになるかな?」

 

 困ったように一度苦笑し、その後でお願いした。

 

「私の推測が正しいとしたら、ネタバラシは5月1日になる筈。ポイントが増減していることが新入生全体に知れ渡るからね。だからお願いはそれまでの間、授業中の私語やスマホの操作。遅刻や欠席を一切なくしてほしいってことかな」

 

「! それは……」

 

「出来ないかな? もし私の推測が正しかった時にポイントが減って損するのは自分だし、クラス単位でポイントの支給額を決めているならクラス全員に迷惑がかかっちゃうよね? 私としては、クラス替えがなくてクラスの優劣を決めるならポイントの支給額もクラス単位で統一されるんじゃないかっていう説が根強いんだけど」

 

 私がそう言えば、何か口に出そうとしていた人も押し黙る。リスクを考えたのだろう。そして私のお願いも出来ないことではないのだ。元々そこまで欠席や遅刻が多いクラスではない。私語やスマホの操作なんかはたまに見るけども。

 

「私の推測が外れていたらそれは杞憂だったってことでそれでよし。もし当たっていたなら私達のクラスはそれなりのアドバンテージを取れる。10日間ちょっと我慢するだけなんだけどどうかな?」

 

 再度、念を押すようにお願いする。本当は命令したいところだけどね。まだまだ信仰心が足りないからそれは出来ないかな。

 

「……私は賛成かなっ」

 

 だが代わりに、心強い友達がそれを後押ししてくれる。

 まあ帆波ちゃんがいなくてもこの様子だと同意は得られるだろうけど、いれば話がよりスムーズに進んでくれる。この推測を口にした私と違って帆波ちゃんは何も言ってないからこそ流れを持っていた。私と同程度に信頼されているからこそこの時点だと二分の危険性があったが、これで後は安心。5月には私への信頼が帆波ちゃんを完全に上回るだろう。

 

「麗ちゃんの推測は推測だけど納得出来るものだったし、可能性は結構高いと思う。だから私は協力したいかな」

 

「一之瀬さん……そうだよね。うん、なんか信じたくなかったけどちょっとでもその可能性があるなら……」

 

「まあ……そうだな。別にちょっと真面目にやるだけだし……」

 

「それにもし本当だとしたらマズいことになりますしね」

 

「……私も麗ちゃんに賛成かな」

 

「俺は勿論協力させてもらう。俺自身その推測が正しいと思っている1人だからな」

 

 その言葉を皮切りに、クラス中から続々と賛成の意が得られる。うんうん、良い子達だね。

 

「ありがとう。それじゃ協力お願いね。──あ、それと今の話は他のクラスには内緒で。言っちゃったらせっかく得られるアドバンテージが台無しだからね!」

 

 最後にそう言って40名全員からの同意を得たことで私の演説。推理のお披露目会は終了だ。もうちょっと手こずる可能性も考えてたけどさすが私のクラス。団結力もあるしみんな仲良しこよしで和気藹々。

 この後知恵ちゃん先生がやってきた授業中でも皆真面目にやっていたし、お昼休みや放課後も変わらず楽しく遊ばせてもらった。さて……答え合わせが待ち遠しいな。

 

 

 

 

 

 その日の夜。私は2週間ぶりに男子を部屋に招いていた。

 

「いやぁ、皆納得してくれて良かったね。あ、何飲む? 前と同じでお茶でいい? 今日は緑茶とウーロン茶とほうじ茶と昆布茶と爽健美茶とさんぴん茶があるけど」

 

「ああ、ほうじ茶で構わない。……それと、前も聞きたかったんだがなぜお茶だけラインナップが充実しているんだ?」

 

「アイドルやってた時に趣味をしようにもあんまりにも時間なくて困ってた時に色んなお茶の飲み比べしてみたらハマっちゃったんだよね──はい、どうぞ」

 

「なるほどな……ああ、ありがとう」

 

 今日の説明会でも協力してくれた神崎隆二くんだ。今のところ一番仲の良い男子。私の部屋に入ったことのある男子も隆二くんだけ。……改めて振り返ると好意を持ってると思われても仕方ないかな? もしかしたら噂されてるかもしれない。今度聞いておかなきゃ。

 私がほうじ茶の入ったコップを置けば、礼を言ってそれを一口飲む。そうして話すのは今日の件だ。

 

「これで後は答え合わせを待つだけか」

 

「まあ本当はもっと色々動きたいんだけどね。クラスの掌握が完璧じゃないし、今はまだ内政のターンかなぁ」

 

「そうか。収穫はあったのか?」

 

「帆波ちゃんがやっぱり優秀ってのと哲也くんがちょっと頭良さそうってくらいかな。特に帆波ちゃんは私の次に魅力的だし、やっぱクラスのまとめ役の1人として5月になったら協力してもらおっかな」

 

「まあ……その方がいいだろう。俺はあまり人をまとめるのは得意じゃない。一之瀬ならそういう役割も上手くこなせると思う」

 

「隆二くんの推薦もあることだし決定~。後は……うーん、裏で動いてくれる手駒がもうちょっと欲しいけど……ん~誰にしよっかな~……やっぱあの子かな~あの子がいいかな~?」

 

 私は即興で歌でも歌うように独り言を呟く。私の政権を作るにあたっての役割。組織図を頭の中で考え中だ。例えるなら帆波ちゃんは私の党をまとめる幹事長かな。隆二くんは官房長官で。内閣情報調査室及び公安部としてはあの子がいいかなぁと考えてるけどどうかなー? 向いてるとは思うんだけどどうなるかはまだ分からない。

 

「……それにしても最初に聞かされた時には驚いたが……まさか言った通りとはな」

 

「まだ確定はしてないけどね。それにまだ分からないことも多いしさ」

 

「ああ。だがほぼ確定だろう。南雲の言う説以外では、教師や上級生の反応に説明がつかない」

 

「私も当たってるとは思うよ。だけど問題は細かい部分だよ。何が出来て何が出来ないかを分からないことにはやりにくいし。遅かれ早かれ他のクラスも動き出すだろうしねー。他のクラスの機先を制するには情報が何よりも大事。スタートダッシュで躓くと後々苦労するよ~?」

 

 にやにや笑いながらそう言えば、隆二くんは顎に手を当てて考えを巡らせているようだ。そうして出てくる言葉は私の期待通り、ただのオウム返しや疑問の問いかけのみ、ではない。追いついた思考を口にしてくれる。

 

「……ただ勉学のみの競争であればDクラスに勝機は薄く、南雲の言う上級生の妙な反応も説明がつかない、か……やはりただのテストだけでない特殊な試験が行われる公算が高いか」

 

「そうだね。多分色んな実力が要求される。スポーツとかはベターだね。それでまあ……情報戦や人を蹴落とすことも求められるかな? ルールはあってもルールの穴を突いたり裏をかく。あえてルールを破ることも選べるような試験があったりなかったりするんじゃないかな。生徒会に入る権利が買えたり、出席が買える時点でおかしいしね」

 

「……本当にそういう試験が来るとしたら厄介だな。正攻法だけで勝てるとは限らない」

 

 隆二くんの顔がどんどん険しくなる。まだ確定していない段階。与えられた情報だけでここまで思考を巡らせることが出来るのだから十分な資質だ。

 まあそうでなきゃ私の知り得る情報を話した意味がないんだけどね。

 

「へーきへーき。そのために隆二くんがいるんだからね~。勿論私もちゃんと指示は出すしさ」

 

「……ああ、理解している」

 

 この2週間で情報を精査し、自分なりに覚悟したのだろう。2週間前より迷いがない。やっぱり引き入れといてよかった。持つべきものは頭が回って気が利く裏方なんだよね。

 

 

 

 

 

 ──そうして更に10日後の5月1日。私達のこれからの運命が決まる日。

 

 その日に振り込まれたポイントは……10万ポイントではない──()()()()()()()()()

 




よう実お決まりネタバラシ回。次回からが本番だよね。

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