クラスでの会議と中間試験へのテストに向けた勉強会を終えたその夜。私は約1か月ぶりに部屋を訪ねた。
「というわけで中間試験の過去問ちょーだい」
「何がというわけなのか分からないが……まあいいだろう。少し待ってろ」
開口一番。過去問を強請った私に、雅兄は少し呆れ気味に引き出しからファイルを取り出して中間試験の過去問を取り出す。やっぱり。私の行動も想定された──つまりこれが正解の行動。迷いなく取り出してくる、しかも保存してある辺りもしかしたら毎年これと同じことが行われている可能性が高い。
「本来ならポイントを要求するものだが……初日から気づいて過去問を求めてきた褒美だ。サービスしてやろう」
「別に払ってもいいけどね。それくらいのポイントは集まってるし」
「ほう? それならポイントを貰うのも吝かじゃないが……まあそう言うな。たまには兄らしいところも見せてやらないとな」
どうやら私がポイントを集めていることに興味を持ったようだが、それを聞いてきたりはしない。というか、ちょっと考えれば予想もつくだろうし聞くまでもないんだろうね。雅兄はファイルから取り出した過去問の紙を取り出し、私に手渡してきた。一番上には、私の求めるものを読んでいたのかもうひとつのおまけ付き。
「あーこっちは小テスト? ふーん……ああ、やっぱりそうなんだ」
「せっかくだ。予想はしていただろうがそれもくれてやる。もっとも、もういらなくなっただろうけどな」
「うん、いらない。確認したからね。ただ一応写真に撮っておこうかな」
小テストの内容。それが私達の受けたあのテストと同じであることを確認するとその紙は不要となる。中間試験で受けるのは中間試験であってこっちの小テストじゃないからね。まあ何かに使えるかもしれないから一応保存しておくけど。
「どうだ? 学校は?」
「何そのあんまり接することがなくなった思春期の娘に対するお父さんみたいな質問。曖昧すぎて何とも言えないんだけど?」
「面白いだろう? 退屈はしてない筈だ」
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる雅兄は随分と楽しそうだ。全く、面白がってるのは私じゃなくてそっちの方でしょうが。
「まあそうだね。そっちが楽しそうな理由も恐れられてる理由も分かったよ。よっぽど楽しく遊んでるんだね?」
「ああ。この学校ほど面白いところはないな。来て正解だった」
私が聞けばやはり楽しそうに同意してくる。兄が楽しそうなのは一応良かったけど、そのせいで私が迷惑してるんだよねー。
「堀北先輩に目つけられてるのもそのせい?」
「ああ。堀北先輩は俺がこの学校で唯一尊敬する人だ。堀北先輩に遊んでもらうのは楽しくてしょうがない」
「そのせいで私まで巻き添え食らってるんだけどね」
「生徒会の件だな。堀北先輩は人を色眼鏡で見る人じゃないが、過去の過ちを繰り返す人でもない。結果は他の生徒と同じでまだ保留中だが、お前が俺と似た人物である可能性が消えない以上、生徒会に入ることを認めはしないだろうな」
「うわっ、酷っ。結局色眼鏡で見てるじゃん」
色眼鏡で見ないと言うなら私のことも妹という立場抜きで入れてくれても良いはずだ。なのにそれをしないんだから雅兄を生徒会に入れたことは堀北先輩の中でよっぽどの、痛恨の失敗だったのだろう。
「そんなに入りたいなら俺がねじ込んでやる。生徒会の実権は徐々に俺の方へと動き初めているからな。早ければ夏休み前には生徒会入りが叶うだろう」
「入りたいっちゃ入りたいけど雅兄の世話になりすぎるのもなんかなー。まあ節約出来るのは良いことだけどさ」
別に雅兄と堀北先輩の争いなんて興味ないし、雅兄が何をやろうとしているか分からないがそれもどうだっていい。私は私のために動くだけだ。
「後はそうだな……お前のクラスの一之瀬帆波も迎えてやろうと思ってる」
「何? もしかして狙ってるの?」
急に出てきたその名前に率直に理由を推測して問いかければ、雅兄は当然のように頷いた。
「あれは良い女だからな」
「……それは雅兄の勝手だけどさー。帆波ちゃんは雅兄みたいなタイプそんな好きじゃないと思うんだけど」
「問題ない。俺のことを好きになるように仕向ければいい話だ」
どうやら落とす気満々らしい。今まで何人もの女の子をこました自信が垣間見えた。うーん……雅兄が上手く擬態したとしてもどうだろう? 1ヶ月友達として接してきた私の所感としては微妙だけどね。上手く付き合えるまで行ったとしても最終的には酷いことになるのが目に見える。あれで帆波ちゃん優秀だし付き合うまでの距離感までいって気づかない訳がない。
ただ手段を選ばないなら話は別だけど。望まない相手に身体を開かせる方法なんて幾らでもある。そういうことなら雅兄のこの自信も納得だ。
……まあ、こっちの迷惑にならなければ好きにすればいい。迷惑になるようなら……まあそれはその時だね。
「……ま、頑張ってねー」
「お前からも紹介してくれてもいいんだぜ?」
「気が向いたらね。それよりも雅兄。頼みがあるんだけど──」
「ん? それは──」
そうして頼みを素っ気なく流すと、私は手に持っていた袋からある物を取り出しながら実の兄に対してちょっとした商談を持ちかけた。やっぱ持つべきものは優秀な兄だよね。
Bクラスの勉強会は特に支障をきたすこともなく順風満帆に続いていた。
なのでそちらについて、私のやることはあんまりない。精々勉強会の教師役をすることだけ。
ただ私が教師だと私が魅力的すぎて集中が削がれるからあまりよくない。特に男子。一応そんなこと考えている場合ではないと理性的に振る舞おうとしているが、時折視線が胸にくる。しょうがないけどこんなことで成績を下げられても困るので主に女子の勉強を見ている。
なのでまだやることはない。勿論、水面下で進めていることもあるし、考えている作戦もあるけど……ただその標的を決めかねているからね。情報収集もまだ完全とは言えないし、仕掛けるのはもうちょっと後でもいい。誰かしらと接触して見定めてからでも遅くはない──
「麗ちゃん……ちょっと」
──なーんて思ってたら何やら涙目の千尋ちゃんを連れた帆波ちゃんが私に声を掛けてきた。
他のクラスメイトも注目する中、私はペンを置いて少し心配するような表情で彼女を受け止めてあげる。彼女に配慮するように席を立てば、何事かと隆二くんも視線を向けてきた。そんな中で帆波ちゃんは千尋ちゃんの代わりとなって何があったのかを話始める。
「千尋ちゃんから相談されたんだけど……千尋ちゃん、Cクラスの男子に絡まれたって……」
「絡まれた?」
あまり穏やかではなさそうな単語に、私は訝しむ。女子からでもなく男子から。それもナンパでもなく絡まれたとなると普通のことではない。これは詳しく聞く必要があるね。
「絡まれたってどんな風に?」
「……身に覚えのないことで声を掛けられたって。友達みたいに声をかけて他のクラスメイトの悪口を千尋ちゃんが言ってたことにしたり……」
「……その人は千尋ちゃんの知り合いじゃないんだよね?」
「うん、知らないって」
千尋ちゃんは帆波ちゃんに相談してひとしきり泣いた後なのだろう。目の周りが赤くなっている。
そして帆波ちゃんの方はそんな千尋ちゃんを心配しながらも「許せない」と顔に書いていた。短絡的にCクラスに乗り込んでその人に話をつけにいくようなこともないし、冷静さを心がけようとはしているが私には分かる。
そしてそんな帆波ちゃんと千尋ちゃんを見ながら思考を回していると、また別の声が。
「……南雲、一之瀬。白波との相談中にすまないが、こっちも相談がある」
「隆二くん。どうしたの?」
簡潔に。それでいて一応の配慮を見せながら隆二くんが割り込んでくる。普通のことならここまで強引に入ってこない。
それが意味するところはこちらも急を要する案件だということだ。
「……一部の男子からCクラスの生徒にちょっかいをかけられたと相談が来ている」
「! それって……」
帆波ちゃんの顔が驚き、少し険しくなる。うん、なるほど。つまりこれは偶発的なものではなく意図したものだ。
「十中八九Cクラスからの攻撃だろう。そしてその号令をかけているのはおそらくだが……」
「それって……噂の彼だよね? Cクラスのリーダーだっていう」
「ああ、おそらくは。俺はこの事態を早急に収拾すべきだと思う。南雲、どうする?」
隆二くんが私に判断を仰いでくる。帆波ちゃんも噂で聞いている相手が指揮していると聞いてこれがクラス単位で対策しなければならない一件だということに気づいたのだろう。顔が少し強張った。
私はその皆の反応を見つつ、ちょっとだけ考えて結論を出した。
「うん、それじゃ会って話をしてみよっか」
「!」
傷ついている千尋ちゃんには悪いが、ちょっと面白い。噂では聞いてたけど噂以上に愉快な人みたいだね。Cクラスのリーダー──龍園翔って人は。
入学して最初の1ヶ月。そして仕組みが発覚してからの1週間で各クラスの動向と人間関係。立ち位置のおおよそは把握した。
Dクラスはまとまりがない。平田洋介というサッカー部のイケメンくんと私の下位互換である櫛田桔梗ちゃんが辛うじて中心に立っているが、まとめきれてはいない。
Aクラスは坂柳有栖と葛城康平という2人の生徒がクラスの主導権を争って対立しているらしい。Aクラスの友達や向こうから近づいてきた坂柳派の生徒も言っていたし、間違いはないだろう。
そしてCクラス。ここは私達Bクラスと同じで、既にはっきりとしたリーダーが決まっている。証拠も何もない。噂程度の話ではあるが……学校の定めたルールに抵触する方法でリーダーの座を勝ち取ったというその男の名は龍園翔というらしい。
「お邪魔しまーす」
「! え……?」
私はその龍園翔くんという生徒の顔を見たことがないし、情報も他のクラスのリーダーよりも少ない。分かるのはクラスのリーダーということと、不良だということ。そして私達に攻撃を仕掛けてきたということだけ。
分からないことだらけで困ったので、龍園くんのことをよく知る相手に昼休みの時間を使って会いに行くことにした。その相手とは──
「──あなたが龍園くんかな?」
「! な……何だお前ら!! 龍園さんに一体何の……!!」
「──黙ってろ石崎。出しゃばるな」
「っ……! す、すみません……!」
Cクラスの教室。その中の一番後ろの席に、ふんぞり返るようにして座っていた彼を見つけ、私は笑顔で声を掛ければ隣にいた見た目40点くらいの男子が前に進み出ようとしてきた。
そしてそんな喧嘩っ早そうな男子を一言で黙らせ、下がらせたロン毛の男子生徒。その目が私と後ろに連れてきた帆波ちゃんと隆二くんを捉える。まるで値踏みでもするように、私達3人を見た後、真ん中にいた私に視線を戻し、不敵な笑みを浮かべてみせた。
「Bクラスの一之瀬に神崎。そしてお前が……南雲麗だな?」
「うん、そうだよ。初めまして~。Bクラスの南雲麗でーす。私のことはよく知ってるよね?」
友好的な笑みを浮かべて挨拶をしてみれば、その相手──龍園くんの笑みがより深まった。
「ああ、よく知ってる。それで、Cクラスに何の用だ?」
「あなたの噂を聞いてちょっとお話しようと思って。あ、ここ座らせてもらうねー」
龍園くんの目の前の席の椅子を一言断ってから借りることにする。そうして座ってみれば、龍園くんの隣にさっきの石崎って呼ばれた生徒と黒人のSPみたいな人が彼を守るように後ろに移動してきた。中々良い手下を持ってて羨ましいことだ。私もボディガード担当欲しいなぁ。
そして私が席につけば、龍園くんはこちらを真っ直ぐに見ながら余裕の表情で口を開く。
「何だ、男遊びか? それなら大歓迎だ。この後俺の部屋にでも来るか? アイドルを鳴かせたことはないからな。中々に楽しめそうだ」
「お前……!!」
後ろにいた隆二くんが龍園くんの下品な挑発に怒りを見せる──が、私は間髪入れず涼しい顔で返した。
「ん~……それはないかなぁ。顔は多少イケてるのは認めてあげるけど龍園くん──エッチ下手そうだし」
「へっ!? へにゃ!?」
ぼん、と私の発言に後ろで顔を真っ赤にしてオーバーヒートする帆波ちゃんの声が聞こえた。……いや、ちょっと初心すぎない? 可愛いけど、ちょっと心配になる初心さだよ。
帆波ちゃんの反応と私の返しにCクラスに緊張が走る。帆波ちゃんの初心はともかく、私が龍園くんにこうして口で反抗したことと私の過激な発言が原因だろう。元アイドルがそんなことを言うとは夢にも思わない。ましてや、彼らが恐怖するCクラスの王に対して発言するなど。
「……ククク。なるほど。面白い女だな、麗。だがまさか経験があるとは思わなかったぜ。アイドルだってのに、ファンの夢を壊すようなことを言っていいのか?」
「経験があるかどうかはご想像にお任せするよ。まあどちらにせよ龍園くんには関係ないと思うけどねー」
「そうか? 俺はお前という女に俄然興味が出てきたぜ。気の強い女は嫌いじゃないからな」
「興味なら私もあるよ。男女の仲になることはありえないけど、友達として仲良くなるだけなら吝かじゃないかなー」
私が変わらない笑顔でそう言えば、帆波ちゃんや隆二くん。そしてCクラスの面々がぎょっとした。彼に付き従う者でさえ、彼と仲良くなりたいなんて思う人はいないのだろう。この反応だけで彼がどれだけ恐れられているかがよく分かる。この1ヶ月で相当暴れまわったんだろうね。
「……へぇ? 俺はてっきり、苦情でも言いに来たんだと思ったんだがな」
「その反応……やっぱり龍園くんが音頭を取ってたんだね……!」
龍園くんの核心を突いた質問に、帆波ちゃんが食ってかかる。だがそれを龍園くんは涼しい顔で受け流した。
「誰がそんなことを言った。生憎と、俺は何もしちゃいない」
「龍園くんが何もしていなくてもこっちはCクラスの生徒から絡まれたって相談が来てるんだよ」
「知らねぇな。それが本当にCクラスの生徒だって証拠でもあるのか? 仮に俺が指示を出したとしてその証拠は? 証拠もないのに人を疑うとは悪い女だな、一之瀬」
「なら学校側に訴え出てみるか? そうなれば学校側は証拠を集める。そうなればCクラスの人間が絡んでいたという証拠はすぐに出てくるぞ。この学校はいじめ問題に厳しい。証拠が出ればお前は終わりだ、龍園」
「証拠は出ねぇよ。絶対にな」
帆波ちゃん。そして隆二くんの脅しにも似たその言葉にも龍園くんは絶対の自信を覗かせて否定する。まあ監視カメラの死角でも使ってるんだろうね。そんな稚拙なミスをここまで暴力を隠ぺいしてきたと思われる彼がするとは思えない。
続けて龍園くんは口を開く。
「それにだ。仮にお前らのその妄想が真実だったとして、うちの生徒はこう言うだろうぜ。勘違いだった。間違えた。人違いでした、ごめんなさいってな」
「そんなことで許されると思う?」
「許されるさ。いじめ? どの辺りがいじめなんだ? 物を隠したり、暴力を振るった訳でもない。たった1、2回。少し揉めただけ。勘違いで悪口を口にしただけだ。ガキの間でこのくらいのことは日常茶飯事だ。珍しいことじゃない。仮に問題になったとして一言謝れば済む話だろ?」
「く……!」
そこまで言えば帆波ちゃんに隆二くんも二の句を継げない。反論は封殺された。実際訴え出ることは出来るだろう。だが、その時は証拠はおそらく見つからない。後は言った言ってないの水掛け論だ。それで仮に非が認められたとしても大した罰則は与えられないだろう。彼はそこまで読んでいる。
いや……あるいはそこで
なるほど、優秀だね。1年生で私が出会ってきた人の中じゃ今のところ1番かもしれない。
──ま、私よりは下だと思うけど。少なくとも競い合える相手としては申し分ないかな。うん、それじゃそろそろ返してみようか。
「──目的は私達の内輪揉めを誘発するための威力偵察ってところかな?」
私が簡潔に目的の予想を口にしてみれば、Cクラスの群衆が息を飲むのが分かった。龍園くんも大変だね。王が優秀でも家臣が凡人だと苦労する。
もっとも、それを上手に導いてあげられるかが支配者としての実力だとも言えるけど。龍園くんは反応を示したクラスメイトの方を一瞬、横目で睨みつけるとすぐに視線を戻してきた。
「……さあな。仮にそうだったとして何だって言うんだ?」
「無駄だからやめといた方がいいんじゃない? 私のBクラス、団結力には自信があるんだよね~。それこそあなたの支配に負けないくらいには統率が取れてると自負するよ」
私が自慢するようにけらけらと笑いながら言えば、龍園くんの目が鋭くなった。まるで蛇のようだ。只人が食らえば石化してしまう恐怖の視線。まあ私は只人じゃない女神なんで効かないけど。
「無駄かどうか決めるのはお前じゃない」
「そう? だったらデバフ合戦でもしてみる? このままやられっぱなしで黙ってることは出来ないし、こっちもやり返そっかな。仲間割れを誘発する同士討ちの計」
「それこそ無駄だと言ってやる。俺の支配は盤石だ。このクラスに俺を裏切って逆らうようなバカは
その言葉とは裏腹に、龍園くんの殺気が増した。そしてそれと共に放たれた言葉に背後の石崎くんや黒人の子の表情に恐れが出る。この2人もこっ酷くやられたみたいだね。
周りのクラスメイト達も逆らえばどんな目に遭うか分かっているのだろう。恐怖がCクラスを支配する。うん、なるほどね。付け入る隙はまだありそう。
「だったら本当にやってみる? どちらかが死ぬまでやり合いたいって言うなら相手になるよ」
「……はったりか? お前たちBクラスがそんな手段を取れると思えねぇな」
「そう思う? だったらやって試してみよっか」
「…………」
「どうするの?」
龍園くんが私の顔をじっと睨みつける。それに対して私はスマイル。可愛い笑顔で返してあげる。龍園くんは今、見極めている筈だ。私のどこにそんな自信があるのかと。
私の予想では今回の攻撃はただのジャブ。本気の攻めの前のお試しのようなものだと思っている。
上手くいけばそれでいいが、上手くいかなくてもそれはそれでいい。私達Bクラスの対応、動きを情報として仕入れることだって目的のひとつだ。やり返してくるならやり返してくると分かった上で次の作戦を立てる。私ならそうする。
もしそうじゃないとしたら……それならそれで構わない。やり合うだけだ。中間試験も差し迫っていることだし、それと絡めて罠でも張れば1人くらいは
そしておそらくそうはならない。龍園くんが本当に頭が回るなら、ここで安易に私達と殺し合う決断をすることはない筈だ。
それにさっきクラスの支配は盤石だと龍園くんは言ってたけど、私はそうは思わない。この場で恐怖の色を覗かせるクラスメイト達を見れば分かる。まだクラスメイトの信頼を完璧に獲得していない今の段階なら刺せる。
「……なるほどな」
私の問いかけに対し、ようやく声を出した龍園くんは未だこちらを睨みつけている。狙いを看破した訳ではないだろう。だが、自軍の状況と敵の状況を照らし合わせて思考した。
だが舐められる訳にはいかない。暴君とはいえ王は王。自身に付き従う家臣達に王らしい強気な姿を見せる必要がある。だから──
「お前が何を企んでいるか知らねぇが……それを確かめるためにやってみるのもありかもな」
龍園くんが、半ばそれを肯定するような言葉を口にする。
その言葉は半ば本気であるだろう。やってみるのもそれはそれであり。だが、出血のリスクは伴う。目の前の私との舌戦でそうなる可能性もあるだろうと思考する。
そしてその可能性を考え覚悟した上で、やり合うことも選択肢の
「……そっか。龍園くんが覚悟した上でそう判断するならしょうがないね」
「ああ。こっちは引く気はない。やるってんなら相手になってやる」
脅し。こっちも覚悟するが、やるならお前たちも覚悟しろ。その時は必ず殺してやるという強い敵意が私を貫く。
そうして互いの実力をある程度理解し、互いが互いの喉元にナイフを突きつけた状態。群衆もそれをしっかりと理解した──そういう時だからこそ
「……うん、わかった。それならさ、ちょっと提案なんだけど──」
「……何だ? 聞くだけは聞いてやる」
私は指を立てて提案する。首を傾げ、可愛く。なんてことないことのように──
「このままじゃ互いにリスクが高いし……どうせやるならお互いに──他のクラスを標的にしない?」
「! ……ほう?」
暴君の表情が興味のものへと変化したのを見て、私はこの企みが上手くいくことを感じ取った。
麗ちゃんの表情の変化と雰囲気やCVはリコリコの千束みたいなイメージ。
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