ようこそアイドル至上主義の教室へ   作:黒岩

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アイドルはコンプライアンスを守る

 試験開始から6日も経てば殆どの人がパートナーを確定させていた。

 特に私が率いるAクラスは32人が前日までにパートナーを決めていて、今日中には全員申請を終わらせてパートナーを確定させるつもりだ。

 事前にパートナーを組むことを了承してもらった生徒に今日までは敢えて保留にしておくように頼んでおいたからね。そして他のクラスの生徒が交渉してくるようならどんな内容だったか教えてもらえるように頼んでおいた。

 こうすることで一応他のクラスが何をしようとしてるか分かるからね。それに加えて一気にパートナーを決めることで目眩ましにもなる。

 OAA上で誰とパートナーを組んだかは記載されないとはいえ、前日にパートナーを組んでいない生徒を照合すればある程度は把握出来る。

 なので出来れば誰と繋がりを持っているかを隠すためにやったことだけど、正直龍園くんや有栖ちゃんは2年Aクラスが1年生のどのクラスの生徒と多く組んでいるかは把握してるだろう。

 というかそれくらいは分かってて貰わないと張り合いがないよね。

 因みに答えとしては1番多いのが1年Cクラス。学力D以下のペナルティを受ける可能性のある生徒や学力Cの中間層も含めて半数は1年Cクラスの生徒とパートナーを組んでいる。

 その次に1年Aクラスだね。こっちも学力が低めの生徒を数人助けているし、逆に助けても貰ってる。石上くんとの交渉のおかげだけど、こっちの繋がりは完全に秘密だ。表向きには高橋くんや個々の生徒に交渉して頼んだことになってる。

 そして1年Bクラスは本当に2、3人程度。更に1年Dクラスの生徒とは全く組んでいない。

 というわけで私率いる2年Aクラスは早々にこの試験で上がりを決め込んだわけだけど、それは試験をクリア出来るというだけで上位を狙えるという意味ではない。

 学力の低い生徒は1年の学力の高い生徒と。学力の高い生徒は1年の学力の低い生徒と組むようにしててバランスを取ってるからどうしたって平均的な点数しか取れないからね。

 それでも学力のアベレージは2年の中で2番目に高いから可能性はなくもないけど有栖ちゃんの2年Cクラスはポイントを使ってかなりの学力の高い1年生を確保してるから多分有栖ちゃんには勝てないね。

 龍園くんの2年Bクラスも有栖ちゃんに張り合うほどじゃないとはいえそこそこに学力の高い生徒を確保している。1年Dクラス以外の学力B以上の生徒の半分は有栖ちゃんが。3割ちょっとが龍園くん。残りの数人が私ってところだね。

 ただ学力C+やB-の生徒も含めるとやっぱり有栖ちゃんと龍園くんのクラスが多いからやっぱこの2つのクラスには勝てないかな。別にいいけどね。クラスポイントの50とか30くらいならくれてあげよう。

 なら私たちの競う相手は2年Dクラスになるわけだけど、残ってる1年生の多くは1年Dクラスであるため必然的に組む相手はそこになる。

 ただ色々と策略が動いてるみたいで未だパートナーを殆ど確定させてないみたいだけど。鈴音ちゃんも苦労してそうだね。

 まあでも最近は2年Dクラスも学力を高めてるし、1年Dクラスにも学力の高い生徒はそれなりにいる。なので最下位を取る可能性もまあまああるかな。

 後問題があるとすれば個人の報酬とペナルティ。報酬の方は上位でも10万とか1万くらいだからお小遣い程度だけどペナルティの方はやりがいがあるよね。

 特に綾小路くんの退学を狙う1年生にとってはこの試験はかなりチャンスだ。

 この数日間で入手した情報によるとそろそろ仕掛けてもおかしくはない。特に1年Dクラスの宝泉くんと七瀬ちゃん辺りはね。

 でもかといっていつ仕掛けるか分からない以上は仕掛けるところを見ることは出来そうにない。

 もっとも繋がりがあれば別だけどね。今みたいに。

 

「やっほー。宇都宮くんに椿ちゃん」

 

「南雲先輩……お疲れ様です」

 

「……どうも」

 

 今日は土曜日。私は昼にケヤキモールのお店で昼食も兼ねて2人の1年生と合流した。

 因みにお店は教職員とか敷地内に住む大人がよく使うちょっとお高めのお店。個室もあって内緒話には最適なんだよね。カラオケボックスも私のアジトの1つだけどそっちは学生の出入りも多いし、龍園くんなんかもよく使ってるからね。鉢合わせると気まずいから今回はやめておいた。

 ああそうだ。紹介が遅れたね。待ち合わせしていたのは1年Cクラスの宇都宮陸くんと椿桜子ちゃん。

 宇都宮くんの方は交流会で出会って連絡先を交換。椿ちゃんの方は……宇都宮くん経由で知り合ったというか、会うことになったというか。

 まあ端的に言うと宇都宮くんが椿ちゃんに綾小路くんの試験のことを教えたみたいなんだけど、椿ちゃんはそれをやろうと宇都宮くんに提案し、宇都宮くんの方はそれを嫌がった。再三の説得も行われてその際に宇都宮くんが私の名前を出したことで椿ちゃんは私のことをあんまり信用しないように──言ってるかどうかは実際のところは分かんないけど警戒して、協力するならするでいいけど自分も会わせてってことで宇都宮くんと一緒に椿ちゃんと会ったのが一昨日の出来事。

 そして今日は答え合わせの日だ。

 

「お疲れお疲れー。それで、どうだった?」

 

「……駄目でした。先ほどパートナーを組んでもらえないかと声を掛けたんですが警戒しているのか、他のクラスの生徒と交渉中だと言われて」

 

 私が席について注文を済ませて聞いてみると宇都宮くんはその結果を報告する。

 予めチャットで失敗したことは聞いたけど綾小路くんとこっちの椿ちゃんがパートナーを組み、わざと椿ちゃんが0点を取って退学させる作戦は未然に防がれたってことだね。

 何故か退学しても構わないという椿ちゃんの捨て身の作戦だったけどこれで失敗したってことだ。はー良かった良かった。私はどっちにも退学してほしくないからね。

 

「そっかー。やっぱそうなるよね。あれで綾小路くんは警戒心高いし自分から声を掛けてくる相手とはい組みましょうとはならないと思ってたよ」

 

「そう、ですね。失敗しました。これで──」

 

 と宇都宮くんが少しほっとしたように失敗したことを受け入れ言葉を続けようとした時。

 

「──南雲先輩が綾小路先輩に告げ口したんじゃないんですか?」

 

「……椿?」

 

 突然椿ちゃんが私を真っ直ぐに見てそんなことを言ってくるもんだから宇都宮くんは頭に疑問符を浮かべていた。私は驚いてないけどね。そう考えるのも別におかしなことじゃないし。

 

「何を言ってるんだ椿。南雲先輩が告げ口した? そんなはずがないだろう」

 

「宇都宮くんは信用しすぎ。南雲先輩は綾小路くんと友達で退学してほしくない側なんでしょ? それなら綾小路くんに私たちの作戦や他の1年生のことを伝えていてもおかしくない」

 

「それはそうかもしれないが……だが他言は禁じられている。生徒会長や理事長代理がいる場でそう言っていた。それを反故にするのは……」

 

「必要ならするよ。別に破ったって何のペナルティもないんでしょ? 試験を与えてきた生徒会長は先輩のお兄さんなんだから」

 

「いや、だが……」

 

 椿ちゃんの鋭い指摘に宇都宮くんが擁護しようとして言葉を迷わせる。ふむふむ。宇都宮くんは結構私のことを信用してくれてるみたいだね。で、反対に椿ちゃんは結構警戒してると。しかも結構頭が回る。OAA上だと目立った能力のない平均以下の生徒だけどやっぱ椿ちゃんは優秀だね。よしよし、ここは先輩として温かく受け止めてあげますか。

 

「いいよ宇都宮くん」

 

「南雲先輩。ですが……」

 

「まあまあ。疑うのも無理はないからね。幾ら私が1年Cクラスの学力の低い生徒を優先的にすくい上げたからといっても、それとこれとは別の話。本質的に綾小路くん側に立ってる私はその試験において信用出来ない。そう言いたいんだよね椿ちゃん?」

 

「それもそうですけど上級生で関係のないように見えてこの学校じゃどんな企みに利用されるか分かりませんよね? なので警戒するのは当然のことじゃないですか?」

 

「それも一理あるね。でもこの学校じゃ他のクラスの生徒は上級生も含めて協力出来る側面もあるよ。1年生同士の競争において私と友誼を結んでおくのは悪いことじゃないし、私も同じことが言える。そこは理解してるかな?」

 

「それは理解はしてますけど結局のところ信頼出来るかどうかは別の話です。私たち1年生に綾小路くんを退学させる試験が与えられたように、2年生や3年生に1年生を退学させるような試験が密かに与えられていてもおかしくない」

 

「椿。それは……」

 

「もしそうだとしたらそうじゃないと分かるまでは話を完全に鵜呑みにするわけにもいかない。違いますか?」

 

 へえ……? なるほどなるほど。面白い考えだ。

 確かに上級生から特定の生徒を退学させろなんて胡乱な試験が言い渡されてる以上、同じことが他にないとは言い切れない。

 そして疑いを晴らすことも難しい。それはいわゆる悪魔の証明だからね。やってないよと口で言うことは簡単だが証拠はなく、信用してもらうには手間がかかる。

 そしてこれを聞かせること自体が椿ちゃんの目的かな? 疑念の種さえ植え付けとけば宇都宮くんも完全に私を信頼しきることもなくなるだろうしね。

 さて、どうしようかなぁ。向こうも私と喧嘩したいわけじゃなくて良い感じに疑問を呈したかっただけ。なのでこっちも良い感じに信頼は出来なくても信用出来る取引相手だと示してあげるのがお互いにとって都合が良い。

 となると……ま、とりあえず理解ってもらおうかな。

 

「なるほどね。うんうん、確かにその心構えは大事。椿ちゃんの言うことも間違いじゃないよ。綾小路くんに対して試験のことを漏らしたりはしてないけどね」

 

「だけどその言葉が信用出来るかどうかは分からない」

 

「うーん。どうしたら理解ってくれるかなぁ……あ、そうだ。それなら私が綾小路くんに抱いてる解釈を教えてあげるよ」

 

「解釈?」

 

「そう解釈。私としては綾小路くんは友達だし退学してほしくないけど、1年生にあっさり退学させられるような綾小路くんは綾小路くんじゃないっていうかね? 有り体に言うと幻滅しちゃうかもしれないっていうか、出来れば自力で跳ね除けるところが見たいんだよねー」

 

「……つまり解釈不一致だと?」

 

「そうそう。だから私が試験のことをあっさり綾小路くんに伝えるのは私にとっても都合が悪いんだよ。他言もペナルティはないとはいえ禁止されてるし、メリットがないんだよね」

 

 私は私の綾小路くんへの解釈を伝えてそれをするメリットがないことを伝える。

 実際これは本当のことだ。綾小路くんに退学してほしくはないけど、あっさり退学してしまうならそれはそれ。残念ではあるけど仕方のないことでもある。理解したい相手であり学びを得ることが出来る相手であるからこそ、出来れば綾小路くんにも試練を与えたいのだ。その対応を見ることで私もより綾小路くんを理解出来るし学ぶことが出来る。

 

「それに私にとっては1年生に信頼出来る協力者を作っておくことが大事だからね。こんなつまらない告げ口なんかで信頼を損なうようなことはしないよ。そもそも私ってかなり口が硬いからね。アイドルとしてコンプライアンスや守秘義務はちゃんと遵守するんだから」

 

 私の下位互換の桔梗ちゃんじゃあるまいし、人の秘密を他人に簡単に告げ口するようなことはしない。

 まあ全くしないとは残念ながら言い切れないけど、隠している嘘や秘密は本人に直接伝えるのが私のやり方だ。

 信頼して話した秘密を他人に言いふらすより、話した覚えもないのに何故か知ってる秘密の方が相手からしたら畏怖に値するし、崇めるに値する。好きか嫌いのどっちによるかはさておき、理解してくれた相手に人は夢中になるからね。

 逆に理解出来ない相手にも好奇心が湧いたり夢中になったりすることもあるけど、その塩梅が真髄というか。私が綾小路くんのことを気になってるように。皆がアイドルの私を好きになってるように程よいミステリアスさや底知れなさも興味を惹かせるスパイスの1つ……とまあそんな私の持論を語ったところで目の前の椿ちゃんのこともちゃんと見てあげる。

 この子もこの子で中々複雑そうなんだよねー。少なくとも表面上ぱっと見ただけじゃ理解してあげられないくらいには。

 

「……確かに、嘘は言ってないように見えるけど」

 

「でしょ? 椿ちゃんなら理解ってくれると思ってたよ」

 

「だけど本当のことを言ってるとも限らない。そもそも南雲先輩はよく理解らないし」

 

「……散々疑ってそれか。すみません南雲先輩。その、椿は少し変わっていて」

 

「あはは、全然いいよ。警戒心が強いのはこの学校じゃ長所だからね」

 

 宇都宮くんが椿ちゃんの言葉を聞いて呆れ返る。私も笑ってそれを許したが、内心では感心していた。

 どうやら椿ちゃんは洞察力に自信がある様子。それだけに私のことも見抜けると思ってたみたいだけどね。なまじ洞察力があるせいで余計に私のことが理解出来ないらしい。見抜ける自信があるからこそ、見抜けなかった時に興味が湧くし警戒もする。うんうん。私が1年の時に綾小路くんに感じたものと同じだ。ちょっとだけ昔の私を見てるようで微笑ましいね。うん、結構気に入ったかも椿ちゃん。

 今後は宇都宮くんとセットで目をかけてあげようかな。

 私は懐から取り出した端末からとある画面を開いて宇都宮くんと椿ちゃんに差し出す。

 

「それじゃそんな警戒心の強い頭の良い椿ちゃんと私と仲良くしてくれる宇都宮くんにより信頼してもらうためにもとっておきの情報をプレゼントしようかな」

 

「とっておきの情報……ですか?」

 

「……これは?」

 

次に行われる1年生の特別試験の内容。これ、教えてあげるから私と協力関係を結ばない?

 

「なっ……!?」

 

「っ……本当に言ってる……?」

 

 私が告げた衝撃的な言葉とその取引材料となる情報を見て宇都宮くんだけでなく椿ちゃんも驚愕する。

 冷静であるように努めてるみたいだけど面白いように感情が動いたね。私が差し出した端末の画面をまじまじと見てその内容が本物であるかどうかを確認しようとした。それが数秒。そして宇都宮くんが画面をスライドして内容を更に読み進めようとしたところで私は手袋をつけていた手で端末を取り上げる。

 

「はい。試し読みはここまでー」

 

「っ……南雲先輩、これをどこで入手したんですか……?」

 

「んーさて、どうだろうねー。とりあえずこれは私の携帯端末じゃないとだけは言っておくよ」

 

「生徒会の権限……? いや、それでも特別試験の内容。それも他学年のものまでリークされるとは思えない。なら……もしかして学校職員……教師や敷地内の大人から? それならありえるけどだとしてもどうやって……?」

 

 宇都宮くんが素直に動揺し、椿ちゃんはぶつぶつと小さい独り言を呟きながらこれを入手した経緯を考察している。私は耳が良いからなんとか少し聞き取れたけど、椿ちゃんの考察は結構良い線言ってるね。

 

「ある伝手から手に入れてねー。せっかくだから有望な1年生に教えてあげようと思って。これがあれば次の特別試験で優位に立てるよね」

 

「それは、そう、ですが……こんなものを手に入れてしまっていいんですか?」

 

「それにこの内容が本物である証拠はない。これが本物だって分かるのは……」

 

「うん。だから取引するのは実際に試験の説明があってからでいいよ。ただこれは本当に本物だから取り扱いには注意ね。もし他言したら結構大事になるからさ」

 

 私がそのリスクを暗に告げてあげると2人はそれを理解したのか険しい顔つきになる。考えているのだろう。これが露見した際のリスクを。

 ただ特別試験の内容がバレたとしても責任を負うのはリークした側になる。学校側の秘匿事項を生徒に伝えるのはその内容にもよるが場合によっては一発で懲戒免職になりかねない。特別試験の内容にもなるとアウトかな。

 とはいえ試験によっては生徒会の特権で事前にある程度内容を把握してる場合もあるんだけど、今見せたこれはまだ1年生の生徒会役員にも伝えられてないもの。そもそも1年生の一学期に行われる特別試験の内容を伝えられることはない。

 なのでこれは生徒会の特権で手に入れたものではないことは明白。なので私がこれをどこで手に入れたのかという話にはなるし、どんなペナルティを受けるのかと想像させることにもなる。

 あるいはこれを握ったことで私に対して少なからず弱味になると考えるかもしれないし、大事になると匂わせたことでその可能性も分かりやすく提示してあげたけど、生憎とそうはならない。

 大事になるのはこれをリークした大人だ。その大人とも私は何の関係もないし、あってもその大人が自主的かつ勝手に私に教えたこと。クラスを勝たせるために内部情報をリークしまくっているということで私の責任は問われない。

 万が一に私に辿り着いて関与してることを説明したとしても証明は出来ないし、仮に証明されたとしてもペナルティは大したものにならない。学校側が秘匿している情報を生徒に伝えた場合の事例は過去の生徒会の記録にもあるけどそのほぼ全てが大人側が不正をしたとして責任を問うもので生徒側は巻き込まれた側となる。

 そりゃ生徒が何をしてきても教えちゃ駄目って言ってるんだからそれを破る方が悪いよねって話だ。暴力を振るって聞き出したとかならともかく、それ以外でペナルティが与えられることはない。

 とはいえ気を付けてはいるけどね。そのために私の端末を使うんじゃなくて端末を関係ない大人から借りてきたわけだし、指紋がつかないように手袋もつけた。

 それに億が一を考えてプロテクトポイントも保持してるのでどうなろうとも私は安全だ。

 なので安心して私がリスクを負ったとして取引材料として提示することが出来る。実際は大してリスクは負っていない。

 負ってるのは私に理解されて秘密をバラしてしまう悪い大人だけだ。

 これだから悪いことはしちゃいけないんだけど、感情ってのはどうにも御し難いよね。幾ら過去の私怨や私に抜けられちゃ困るとはいえこんなことまでしちゃうんだからさ。

 

「理解ってるとは思うけど仮に露見しても教えられただけの宇都宮くんたちがペナルティを与えられることはないから安心していいよ。過去の生徒会の記録でもそんな事例は1つも確認されてないからね」

 

「……なら単純にこれがあれば……事前に戦略を立てることが出来ると……」

 

「試験の内容にもよるけど有利になるのは間違いない。それに、生徒側へ通達されるルールじゃない教師側に通達された内容だとすれば、禁止事項や想定されるクリアの方法なんかも載ってるかもしれないし、有利どころか一歩も二歩も先に行ける」

 

 そのメリットを宇都宮くんや椿ちゃんは理解する。特に椿ちゃんはさすがだね。もうそこまで考えを巡らせている。

 

「それでどうする? 私に協力してくれるならこれもあげるし、今後も何かと便宜を図ってあげなくもないけど?」

 

「……どうする椿」

 

「クラスのためを思うなら受けた方がいいと思うよ。だけど……その協力の内容が気になる。一体どんなことを私たちに頼むつもりなのか。それを聞いてからじゃないと受けるのは危険かも」

 

「ご尤もだけどそんな心配しなくていいよ。頼むのはこの次の次の特別試験での協力──ううん、一時的かつ限定的な助力だからさ」

 

「次の次の……特別試験」

 

「……どこまで把握してるのか知らないですけど、その特別試験の詳細ももしかして教えてもらえるんですか?」

 

「うーん。詳細は契約を結んでからかな。大雑把には教えてあげられるけどね。当然他言無用の約束を守るなら、だけどね。あくまで教えたのは私じゃなくて匿名の誰かさんってことで」

 

「……わかりました。ならそれを教えてもらえます?」

 

「オッケー。それじゃ1度しか見せないからちゃんと確認してね」

 

 私の想定する状況を考えるならここで1年生をある程度味方にしておくのは必要なこと。

 何しろ幾ら私が敷地内の大人や教師をある程度情報源としてコントロールしているとはいえ、それをそこまで持っていくことは出来ない。

 何しろこの次の特別試験の舞台は1年の時に行ったものと似ている。

 

『次に行われる特別試験は──全学年合同で行われる無人島サバイバルだよ』

 

 私は携帯の画面に打ち込んだ文字を見せる形で2人にそれを教えてあげる。2人を信用させるために。

 そう。私の相手は2年生だけじゃなく1年生や3年生。

 学年全体を支配する雅兄率いる3年生に、一部怪しい生徒がいる1年生。後は2年生の中でも競い合うことになる。

 それらを全部倒そうと思うなら味方は幾らいてもいいからね。そのためにも今のうちからしっかり準備しておかないと。

 

 そうして私は程なくして2人から返事を受け、その日は帰宅してパートナーを決める。

 次の日にはAクラスの全員が。そして殆どのクラスがパートナーを決める中、私は後に綾小路くんが左手を怪我したことを知ってその過程を想像して楽しみながら試験に臨むのだった。

 

 ──あ、因みに私のパートナーは1年Aクラスの高橋くんで2人の個人結果は上位30%。

 クラス毎の結果は大方の予想通り1位、2年Cクラス。2位、2年Bクラス。3位が2年Dクラスで4位が2年Aクラスだった。うわー最下位だー。残念だなー。

 

 そして退学者は1人も出ることはなく無事に試験を終え、私の点数はオール90点の学年2位。有栖ちゃんには僅かに及ばなかったけど十分な成績だね。これで学力もA+かその直前くらいには届くかなー。また皆驚いてくれそうだね。

 

 ただ私の何倍もびっくりなのは数学で満点を取った綾小路くんだろう。

 

 OAAによる各生徒の結果を見て頭の中の情報を更新しながら私は満足気に内心頷いた。今度綾小路くんに勉強も教えてもらおうかなーとそんなことを考えたりして。




ということで色々と布石を張ったところで1巻部分は終わりです。次回からは無人島試験の準備をします。各クラスがどこと協力してどんなグループを組むのかって感じですね。ただ先に堀北とか南雲兄との絡みかなって。お楽しみに。

パートナー筆記試験 1位Cクラス 2位Bクラス 3位Dクラス 4位Aクラス
南雲クラス(Aクラス):1247
龍園クラス(Bクラス):716
坂柳クラス(Cクラス):657
堀北クラス(Dクラス):539

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
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