ようこそアイドル至上主義の教室へ   作:黒岩

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クイズ番組は立ち回りが難しい

 7月20日──遂にあの無人島伝説が復活する……!! 

 

 グループ数は史上最多の159組。参加人数はなんと459人! 

 高度育成高等学校に通う全学年の生徒たちによる無人島サバイバル試験! 基本移動に着順報酬といった体力を求められるものから多伎に渡るジャンルの課題の数々! 

 それに加え生徒たちに配られたランダムなカードが勝敗の鍵を握る! 

 

 下位5グループは退学! 下位3グループはクラスポイントを徴収! 3位はクラスポイント100に31万プライベートポイント! 2位はクラスポイント200にプライベートポイント56万! 

 そして1位はクラスポイント300に106万プライベートポイント! 更に1プロテクトポイントー! 

 

 まさに勝てば天国! 負ければ地獄! 

 さあ! この無人島サバイバル特別試験で映えある優勝を勝ち取るのは一体誰なのかー!? 

 

「そして今……! 南雲麗率いるグループが無人島に降り立ったー!」

 

「あなた……何を言ってるの?」

 

「ちょっと昔やってた番組のナレーションを思い浮かべてテンション上げてみたんだよ。須藤くんも見たことない?」

 

「あ、あー……そういや昔やってたな」

 

「私も無人島ロケはやったことあるからね。初日だし、最初は楽しくのんびり行こっか。どうせ最初の着順ボーナスは得られないだろうし」

 

「それはそうね。最初に降り立った1年生に今から追いつこうとすれば相当体力を消耗する。競争するのは得策じゃないわ」

 

「最初の指定エリアはB9か……あの見える浜辺の反対側か。もう何人かあっち側にいやがんな」

 

 ……と、そんなわけで遂に無人島試験が開幕し、私は同じグループの鈴音ちゃんと須藤くんと一緒に無人島に降り立った。

 スタート地点は港のあるD9。初日は指定エリアはランダムにならないので必ず近辺になる。

 だけど最初に降り立ったのは1年生からだからね。最初の着順ボーナスを取るには全力疾走しても厳しい。同じようにスタートダッシュする1年生には追いつけない。

 なので2年も3年も最初はのんびり。それぞれが指定されたエリアに歩いて向かっていく。私たちの最初の指定エリアのB9は港を挟んで反対側。最初の指定エリアとしては1番遠いのかな? でも途中までは平坦な浜辺を進めるから楽だね。

 同じ方向に進んでる人としては……

 

「ほら、行くわよアルベルト」

 

 浜辺を進む人の中に他の生徒と比べても大きいため目立つアルベルトくんと彼に荷物を持たせて引き連れている真鍋ちゃんの姿があった。へぇー面白いグループだね。真鍋ちゃんはBクラスで結構孤立してるって話だったけどアルベルトくんと組んだんだ。

 まあ多分アルベルトくんは心優しいから孤立してるのを見かねて声をかけて組んであげたのかもしれない。

 だけど真鍋ちゃんはアルベルトくんに自分の分の荷物を持たせてる。うーん、さすが真鍋ちゃん。人を使う才能がある意味である。まあアルベルトくんも苦じゃなさそうだからいいけど。

 

 とはいえ私たちも人のことはあまり言えないね。荷物の配分としては男子で力持ちの須藤くんに負担してもらってるわけだし。でも私はちゃんと声をかけておく。

 

「須藤くん荷物は大丈夫?」

 

「ああ、元々そんなに多くないしな。これなら全然余裕だぜ」

 

「そっか。ありがとねー。キツくなってきたら言ってね」

 

「おう」

 

 バックパックを背負っている須藤くんを気遣っておく。私たちのグループが事前に購入したのはそれぞれの『モバイルバッテリー』に『懐中電灯』。私と鈴音ちゃんが寝る用の『2人用テント』に須藤くんが使う『1人用テント』。後は『水2リットル』を3本に『水500ml』も3本。『ライター』に『鍋』に『紙皿』と『紙コップセット』に『鍋』に『まな板』に『包丁』。『塩』に『油』と『携帯食』を20食分に『トランシーバー』。それと『釣り竿』に、私用の秘密のものを幾つか。

 3人グループだと最初に使えるポイントは1万5000にもなるし共用で使えるものも考えると結構ポイントには余裕がある上、他のグループから譲渡してもらうものもあるから荷物はそこまで必要ない。

 とはいえ無人島では何が起こるか分からないし、食糧や水はいつどこで不足してしまうか分からないし念のために持っていくことにした。釣り竿とかはそれ用だね。暇な時に魚でも釣れればいいなーって。3日目までは3人を食わせなきゃならないし、それ以降はそれ以上になる可能性もある。課題の配分も分からない現状では持てるものは持っていた方がいい。いらなくなったら他のグループに譲渡すればいいだけだしね。

 そして細かいものは須藤くんに持ってもらってる。さすがに2リットルの水なんかは全部1人にもたせると6キロにもなって負担になるので1人ずつ分散した方がいいからそうしてるけどね。トランシーバーはちなみに私用。他のグループと綿密に連絡を取り合うためのものだね。

 

「まあ4日目まではのんびり……と言いたいけどね。楽しみつつ焦らず、順調に得点を重ねていこっか」

 

「そうね。得点の平均化は大グループを作る上で厄介なものだし。単独の神崎くんもそれほど多くの得点を稼ぐのは難しいでしょうから」

 

「かなり気合を入れてたみたいだからそれなりには稼いでくるとは思うけどね。帆波ちゃんのところも頑張るだろうけどやっぱり私たちが稼ぎ頭だからさ。須藤くんも頼りにしてるよ?」

 

「ああ、任せてくれ。体力系は全部1位を取ってみせるぜ」

 

 4日目に大グループを組むにあたってはまず得点の平均化を考えておく必要がある。あまり心配はしてないけどどっかのグループの得点が伸びなかったらリスタートする得点も低くなっちゃうしね。それなりには稼いでおきたい。

 そして須藤くんは運動系で1位を取ると拳を作って気合を入れてるけど実際に須藤くんの運動能力は学年どころか学校全体でもトップクラス。高円寺くんや綾小路くんみたいな規格外が相手でなければ1位を取る公算は高いし、最低でも表彰台には上がってくれるだろう。

 その代わりに学力系は最近頑張ってるとはいえ弱いけどそこは鈴音ちゃんと私がいるしね。仮に平均点で競う試験が来ても私と鈴音ちゃんで問題ないし、身体能力系でも同じ。須藤くんだけじゃなくて私もかなり自信はあるし、鈴音ちゃんも女子としては私に次ぐトップクラス。

 そしてその他に関しては……ま、何が出るか分からないとはいえ問題ないかな。むしろそういう部分こそ私の独壇場みたいなものだし。

 

 ただそれでもライバルは多いし、慢心はしないようにしないと。ってことで私は鈴音ちゃんと須藤くんと共に最初の指定エリアに向かった。

 

 

 

 

 

 私たちの最初の指定エリアのB9には1時間も経たずに辿り着いた。

 

「これで3点、と」

 

「分かってはいたけどやっぱり人数が多い方が有利な試験ね。こうして指定エリアを踏み続けるだけで得点を重ねることができる」

 

「3人なら3点……6人、いや7人だと毎回7点か……それで1日に4回で28点も手に入んのか」

 

「そうね。単独グループにはそれだけでかなりの差が出来てしまう。それを思うと高円寺くんが1位を取るのはかなり難しいはずよ」

 

 B9の森の中で私たちは試験についてのことを話しながら小休止する。体力に問題はそりゃないけど別に動く必要もないからね。

 そして基本移動で3点を得たことをタブレットで確認。1年生が4人グループを組めるから4点を得たグループ。着順報酬で10点か5点か3点を得た人が12テーブル分。それぞれ36グループいるから順位としてはまだ真ん中ぐらいかな。

 だけど単独グループや2人グループよりはやはり3人の方が有利。須藤くんが計算したように大グループを作ればかなりの得点を稼げる。

 6人や7人のグループに単独で勝つのは並大抵のことじゃないと鈴音ちゃんが呟くのも無理もない。普通の生徒じゃ無理だろうね。

 ただ高円寺くんだからなぁ。身体スペックは綾小路くん並かそれ以上の可能性だってある。そこから考える高円寺くんの得点ペースに関しての計算は……まあまだ最初だから後回しにするとしてと。そろそろ次のことを考えようか。

 

「もうすぐ10時ね」

 

「課題が解放される時間だな」

 

「次にエリアを指定されるのは午後1時だし、近いものを受けに行こうか。競争率はめちゃくちゃ高いだろうけどね」

 

 私たちはそれぞれタブレット上の地図を開いて見つめる。初日の10時から課題が解放される。つまりここからが試験が実質始まると言ってもいい。

 どれくらい、そしてどんな課題が出るかはまだ分からないけど最初に指定される12テーブルのうちの指定エリアが11の内、B9は数としてはかなり少ない。東方向の方が人は多そうだったからね。

 そう考えると課題の数も少ないかな……? なーんてメタ読みも働くけど不確実なので当てにはならない。なので10時になって表示される課題をすぐに確認した。

 

「お、来たぜ!」

 

「近くに課題があるわね。これは……釣りね。昨日の例題にも出た課題と殆ど同じみたいだけど」

 

「はい、みんな走ってー。すぐに行くよー」

 

 そして私は地図上に現れた課題のうち、B9の南西。岬の部分に課題があることを確認してすぐに2人を促す。

 その内容は釣り。分類はその他でエントリー時間は90分。2人グループ以上の参加で8グループ締め切りで大きい魚を釣ったら勝利。1位は15点だ。その上で釣った魚はそのまま得られることが記載されている。

 

 なのですぐに走っていけばB9の岩場に教員が立っていた。確か……1年Dクラス担任の司馬先生だね。見れば生徒の数は数人いるけどまだ定員っぽくはない。なので走りながらすぐに伝えた。

 

「すみませーん。課題のエントリー希望でーす!」

 

「南雲か。エントリー枠はまだ空いている。参加人数は2人以上だ。誰と誰が参加する?」

 

「須藤くんと鈴音ちゃんどっちが出たい? あ、1人は私ね」

 

「どうするよ鈴音。やっぱ俺が出るか? 大物を釣るってんなら力がある方がいいだろうしよ」

 

「……そうね。なら須藤くんにお願いするわ」

 

「よっしゃ任せとけ。えっと、じゃあ俺と南雲で」

 

「タブレットを操作してエントリーを済ませるといい」

 

 司馬先生からそう言われたので素早く私と須藤くんは操作を済ませる。そうして何とかエントリーできたので司馬先生から指定の釣り竿を渡された。スタート前に買ったものよりも少し上等だね。

 

 そしてそれから5分も経たず、次々と生徒がやってきてエントリーを済ませていき、エントリー時間の90分も待たずに課題が始まった。見たところ目立った生徒はいないみたいだね。とはいえ私は知ってる人ばかりなので軽くみんなと笑顔で挨拶するけど。

 

「何とか滑り込めたねー」

 

「勢いで付いてきたけれど……1位を取れるとは限らない種目で1位を取らなきゃあまり意味のない課題に参加するのは中々リスキーね」

 

「まあね。でも2位3位には何もないとはいえ、1位を取れば15点も得られるし、ついでに今日のお昼もゲットできる。そもそも他の課題にエントリーできるかも分からないし、参加しといて損はないんじゃないかな。──ってことで大物が釣れるように頑張ろうね! 須藤くん!」

 

「おう! やるぜ南雲!」

 

 私は須藤くんと一緒に気合いを入れて課題に挑む。時間は1時間。岩場というか磯辺みたいな場所の縁に立って私は早速渡された餌を取り付けてキャストする。須藤くんもそれを見て同じようにした。少し興味深そうだ。

 

「南雲は釣り慣れてんのか?」

 

「番組で何度かやったからねー。猟師さんに魚の捌き方含めて教えてもらってるからお昼は期待してていいよ」

 

「マジかよ。南雲はほんと何でもできんだな……」

 

「学んだことや教えてもらったことくらいだけどねー。お、早速ヒーット!」

 

 須藤くんに感心されること少し。早速食いついたので私はリールを引く。足場に気をつけないとね。一応安全な場所をチョイスしたつもりだけど。

 

「こりゃなんだ?」

 

「カサゴだね。煮付けが定番だけど塩焼きも美味しいよ」

 

 魚の説明を須藤くんにしてあげるとまた感心したあと、俺も負けてられねぇなと言って須藤くんも釣りに中心する。それから少しして今度は須藤くんもヒットしてたし他の参加者も色々と釣ってるところをちらほら。釣りの課題が出るだけあって結構良い場所みたいだね。

 

 ただ1位を取るとなると釣りの場合は運が絡むからなー。お、また釣れた。とはいえ言ったようにお昼ご飯にはなるし損はない。それにこういう時に持ってるのがアイドルの私だからね。

 

「──ん! これは結構デカいかも……!」

 

「うおっ!? めちゃくちゃ引いてんぞ! 大丈夫か南雲!?」

 

「須藤くんちょっと手伝ってー!」

 

「わかった!」

 

 そうして釣りを続けること30分。私の竿にかなりの反応があったので須藤くんに手伝ってもらって頑張って引く。私1人でも引けるけどこういう時は手伝ってもらった方が連帯感があって楽しいからね。グループの結束を高めるために今回は特に友情と努力と勝利を大事にしていこう。

 

「取ったどー!! でかーい!!」

 

「うお、マジでデケェな! これは何の魚だ?」

 

「チヌ。いわゆるクロダイだね。60センチは超えてるかな?」

 

「刺し身とかにしたら美味そうだな!」

 

「寄生虫いたら大変だから全部塩焼きにするけどね」

 

 そうして釣れたのはチヌ。いわゆるクロダイだった。大きさは65センチくらいかな? かなりの大物だね。これくらいになると大きすぎてちょっと調理が大変だ。刺し身も美味しいけどアニサキスとかいたら試験終わっちゃうし後でリリースしようかな。下処理に水を使うから3人分の昼食にはもう多すぎるし。それか他の人にあげようかな。

 

 ただこの大きさだと1位を取るには十分。他の人のもたまに見てるけどここまで大きいのは釣れてないっぽいし。

 

「時間だ。全員釣りを中止するように。今の時点で釣れた魚で判定を行う」

 

 そしてそれからまたしばらく。釣りを続けていたけどそれ以上の大物は釣れずに時間終了を司馬先生が告げたのでバケツを持って集まる。私の釣ったチヌはデカすぎて司馬先生の隣に置かれたクーラーボックスに預けてたんだけどね。

 それから全員で1番大きい魚を提出してざっと測定する。ただ、メジャーを持っていた司馬先生のそれが使われることはなかった。並べてみただけで一目瞭然だったから。

 

「1位は南雲・須藤ペアだ。1位報酬の15点が与えられる。それと参加者は釣った魚をそのまま持っていっても構わない」

 

 そのまま1位を取ったことを告げられると他の参加者はがっかり……といってもそこまで落ち込むこともなく敗北を受け入れる。そして須藤くんは腕を振り上げた。

 

「よっしゃー! やったぜ南雲! 鈴音!」

 

「本当に1位を取ってくるなんて……運が良かったわね」

 

「ほんとにね。さーて、それじゃ早速昼食にしよっか。鈴音ちゃん手伝って。須藤くんはちょっと待っててねー」

 

「ええ」

 

「おお、鯛か……あんま食べたことねぇから楽しみだぜ。しかも南雲と鈴音の手料理で……」

 

「とりあえずチヌはリリースして、と」

 

「って食べねぇのかよ!?」

 

「いやーちょっと釣りすぎちゃったからね。下処理も大変だから残念だけど食べないかな」

 

「そうね。きちんと調理して食べるとなると下処理で水も使うことになるし」

 

「そ、そうか……」

 

 すごく残念そうな須藤くんを尻目に調理を開始する。いやーごめんねー。もっと余裕があったらちゃんと調理するんだけどね。まだ序盤だから今回はカサゴとかの小ぶりな魚を鈴音ちゃんと一緒に調理して塩焼きにして食べることにした。調味料とか持ってる哲也くんとかと合流してれば煮付けつかも良かったかもだけどね。

 そうして魚を食べつつ私たちは課題で15点をゲットした。

 

 

 

 

 

 昼食を食べ終えてからの午後1時。次の指定エリアは真上のB8だったため、すぐに移動したけどさすがに着順ボーナスは得られずに更に3点。

 ただ体力にはまだまだかなり余裕があったため、B7の砂浜に出た『立ち幅跳び』の課題に私は須藤くんを走らせた。参加人数は1人だし、運が良ければ参加できるだろう。須藤くんも一旦荷物を私たちに預けてタブレットのみを持って全力疾走する。あの脚力ならまた1位は取れそうかな? 取ればまた10点。2位でも5点。3位なら3点は得られるし、1日分の食料を3位まで貰える。

 

「これで須藤くんが1位を取れば10点得て31点。次の指定エリアも踏めばまた3点手に入るし初日の滑り出しとしては順調だね」

 

「少なくとも同じテーブルか東側に来ているグループの中では上位かもしれないわね。釣りの15点以上の課題は今のところ出ていないわけだし」

 

「学力テストの課題は大体1位でも5点のものばかりだからね。身体能力系はまちまち。その他もさっき出てた『火起こし』みたいな面白いのが多いけど得点は高いのもあれば低いけど代わりの報酬が面白かったりするし」

 

 私と鈴音ちゃんはB8からB7へと続く砂浜をゆっくりと歩きながらタブレットを確認し、課題を確認する。今のところ近くに受けれそうな課題はない。D7まで行けば課題はあるけどさすがに間に合わないだろう。まだ生徒の多くは南側に固まってるし競争率は高い。そう考えるとこうして課題を2つも拾えた私たちは運が良い方だろうね。

 そして鈴音ちゃんはまだ課題に参加出来てない。だからといって焦っている感じはないけどね。

 

「よう、麗。鈴音」

 

「っと。誰かと思えば龍園くんと葛城くんじゃん。どうしたの? 課題でも受けに来た?」

 

 ──なんて考えながら歩いてると背後から声を掛けられる。聞き覚えのある声だなぁと思いながら振り返るとそこには相変わらずの不敵な笑みを浮かべる龍園くんと真面目な葛城くんが立っていたので質問をする。進行方向的に課題でも受けに来たのかなと思ったんだけど図星のようで隠すことなく龍園くんは認めた。

 

「ああ。だが少し遅かったみたいだな。遠くでサルがサルらしく跳んでるところが見えやがる」

 

 確かに須藤くんが課題に参加しているところが見える。サルっていうのは可哀想だけど実際身体能力はかなり高いんだよねぇ。悪口だけど龍園くんのボキャブラリーからすれば褒め言葉の類なのかもしれない。

 

「もしかしてあなた達の指定エリアもB8だったの?」

 

「いや、俺たちの指定エリアは隣のC8だった。早めに到着して時間が余っていたところ課題が出現したので参加できるかと思ってな」

 

「同じテーブルじゃなくて助かったな。同じなら得点の奪い合いになって無駄に体力を消費することになってただろうぜ」

 

「それを言うなら助かったのはあなた達の方じゃないかしら」

 

「クク、半分はまあそうだな。この試験は自分たちで這い上がる必要のある試験だ。俺とお前たちのテーブルが同じになると着順報酬や課題の取り合いになって互いに得点が伸び悩む。そうなると他の奴らに出し抜かれちまうからな」

 

 鈴音ちゃんの指摘を龍園くんはあっさりと同じテーブルじゃなかったのはラッキーだと認めてみせる。

 まあ実際のところ強力なライバルが同じテーブルにいたりすると龍園くんの言う通り得点の奪い合いになって面倒ではあるんだよね。この辺りは運が絡むとはいえ、今のところは同じテーブルに目立った相手は見られないから良かった。まあ誰かいたらそれはそれで回避する方法もあるとはいえいないことに越したことはない。

 

「それじゃあな」

 

「あれ、もう行くの? お喋り好きの龍園くんらしくないね?」

 

「ここには課題を受けに来た。それが受けられないとなるとじっとしている暇はない。今からならD7やC6に出た課題に間に合う可能性もあるからな」

 

「そういうことだ。お前らはそこでサルのショーでも見ながらじっとしてろ」

 

 最後まで龍園くんらしい煽りだね。それだけ言うと龍園くんは葛城くんを引き連れて森の中に消えていった。うーん、流石は龍園くんに葛城くん。判断に迷いがないね。

 

「彼は相変わらずのようね」

 

「まあそうだけど葛城くんもいるし結構要注意だよ。課題や着順ボーナスも確実に稼いでくるんじゃないかな」

 

「……確かにどこかのグループと合流するようなら厄介かもしれないわね」

 

 龍園くんはあれで運動能力も高いし、何より執念が凄まじい。葛城くんも学力は学年で上位かつ体力も平均よりは上。そして何よりあの龍園くんに意見できる参謀だ。どの課題に向かうべきか。指定エリアをどこまで追ってどこで頑張るべきかの判断が出来るし、いざ頑張るとなると龍園くんと同じく葛城くんも執念を見せるだろう。伊達にクラス移動したわけじゃない。勝つためには適切な判断もそうだが執念が勝敗を分けることだってあるのだ。

 今は2人グループだし指定エリア報酬は2点ずつだけどこれが5人6人になるとまた話は変わってくるし。

 

「おーし! やったぜ鈴音! 南雲! 得点に肉ゲットだ!」

 

「お、さっすがー。これで10点。おまけに夕飯も心配いらないね」

 

「そうね、よくやったわ須藤くん。……さて、なら私たちも移動しましょう。B5に水が手に入る『現代文テスト』の課題がちょうど出たわ」

 

「いいねー。せっかくだし走る? こっから大体600メートルくらいかな? それくらいなら走れるでしょ? 初日だし」

 

「ええ、問題ないわ」

 

「須藤くんもいけるよね?」

 

「次はB5のここまで走るんだな。いいぜ」

 

「よしよし。それじゃレッツゴー!」

 

 それから帰ってきた須藤くんを迎えた私たちは次にB5に出現した『現代文テスト』に参加し、そこで鈴音ちゃんが1位を取って5点と2リットルの飲料水をゲット。

 その後、午後3時の指定エリアとしてB6に向かい、運良く着順報酬の2位をゲットして更に5点。到着ボーナスで3点。そこからは課題も出たけどエントリー出来ず。そのままB6でキャンプをして休むことになった。初日の得点の内訳は到着ボーナス9点。着順ボーナス5点。課題30点の計44点。初日にしてはかなりの好スタートを切ることに成功した。

 

 

 

 

 

 無人島生活2日目──朝、起床した私は伸びをして身体を起こす。

 

「はーい鈴音ちゃん起きてー。須藤くんも」

 

「……ええ。すぐに起きるわ」

 

「っ……ああ。もう朝か」

 

 時刻は朝の6時。もうちょっと寝かしといてあげてもいいけどストレッチをして朝食の携帯食を食べて軽く身支度したり色々やってるとすぐに7時になるからね。今日からは通常通り朝の7時から指定エリアが通達されるし1日に1回全エリアからランダムにエリアも指定される。課題も7時から出るしね。余裕を持って準備をしておくのが大事だ。

 

 幸いにも鈴音ちゃんも須藤くんも目覚めは悪い方じゃないのか数分もすればしっかりと目を覚ましてくれる。うんうん、2人とも体力もあるし良い感じだね。

 

「おはよー。今日からは通常通りだから2人とも気合い入れて行こうねー」

 

「もちろん分かっているわ」

 

「おう。体調も体力もバッチリだぜ」

 

「今日からは指定エリアもランダムが出てくるからね。いきなり島の反対側とかにならないように祈りながら皆でタブレット見よっか」

 

 2人とも体調は問題なさそうだね。それを確認しながら7時になるのを待ってタブレットを確認する。

 そして最初の指定エリアは……。

 

「わーお。E9。いきなりランダムに指定されたね」

 

「スタート地点の隣ね。……まあいけない距離ではないかしら」

 

「ってことは戻んのか。別にいいけど結構振り回されんだな。山の反対側とかじゃなくて良かったけどよ」

 

 その通りだね。日の内に1回だけランダムに指定されるエリアが島の中央にある山の反対側とかになると時間内にたどり着くには相当な無理をしないといけない。山を越えるにしても迂回するにしてもかなりの体力を消耗するし、距離によっては時間内に辿り着けない可能性だってある。

 そうなる場合はエリアが告知された段階でスルーを決めることも大事なんだけど、今回はE9。スタート地点だったD9の隣のエリアで私たちがキャンプを張っているB6の森の中からそこまで遠いわけではない。

 

「課題も幾つか出てるね。んー、C6に『競争』の課題が出てるしここに寄ってみてからE9に向かおっか。課題が出たらその都度確認しつつ判断して進む感じでね」

 

「競争ね。これからあまり時間をかけずに済むし問題はないわね」

 

「うし。そんじゃ行くか」

 

 私はタブレットを素早く確認して2人に指示を出して歩き始める。体力面においてなんだかんだ須藤くんは言わずもがな、鈴音ちゃんも悪くはない。2人の様子を確認しつつ私がペースを決めてるけど思ったよりはちゃんと付いてきてくれるしね。

 その証拠にC6にあった『競争』の課題には2位で間に合ったことで得点2と1.5リットルの水をゲットした。更に得点と必要不可欠な水をゲットした後はそのままCのラインを南下して一旦スタート地点へ。そこで軽く節約のために水を飲んでからE9に時間内に到着したが、他のグループはまだ辿り着けていないのか着順報酬の2位を獲得で5点を得るとE10に出た身体能力の課題に須藤くんを出して1位を獲得して10点を更にゲットし、午前9時の指定エリアとしてF9が通達されてたのでそっちに移動。着順報酬は課題で時間を取られてたため得られなかったけど到着ボーナスで更に3点追加し、一度昼食休憩。課題で得た食材で食事を取り、午後1時の指定エリアはG8だったのでそちらに移動。到着ボーナスをまた3点得たところで。

 

「──さっきいたF9のところでクイズだって。参加はグループ単位だってさ」

 

「クイズか。俺はあんま知識はねぇから力になれるか微妙だけどよ。南雲と鈴音ならいけそうだな」

 

「問題に依るとは思うけれど……距離も近いし行くことには賛成よ」

 

「まあ私がいるから問題ないよ。それじゃ急ごっか」

 

 午後1時半になって課題が出現してその中にクイズがあったため私はそっちに行くことを提案し、仲間の承諾を得ると同時に移動する。まークイズ番組にも私は出てたし知識の幅という意味じゃ負けない自身があるからね。

 

 それこそ綾小路くんとかクイズ番組とかクイズゲームに出るような問題には弱そうだよね──なんて考えてると。

 

「あっれー。綾小路くんじゃーん」

 

 課題のあるF9に移動したところでそこに見覚えのある後ろ姿を幾つか発見する。その中でも1番声の掛けがいのある相手──綾小路くんに私は声をかけた。

 すると綾小路くんは振り返る。相変わらず表情というか内心が読めない顔でね。そんな綾小路くんにまずは鈴音ちゃんが声をかけた。

 

「綾小路くんたちもこの課題に参加するのね」

 

「ああ。これで残り1組になるな」

 

「綾小路か……結構手強そうだな。さすがに南雲と鈴音には敵わねぇ……よな?」

 

 よな? と言われても綾小路くんも困るだろう。どうやら須藤くんは須藤くんで綾小路くんに一目置いてるらしいね。2年生になってからかな? ちょっとそういう節がある。数学のテスト満点以外にも色々あったっぽいからね。

 

「そういう須藤たちは順調なのか?」

 

「順調も順調。初日から課題でも着順でも得点取りまくりだぜ!」

 

「まー私たちは1位狙ってるからねー。結構頑張らせてもらってるよ。鈴音ちゃんも須藤くんもかなり頼りになってるし」

 

「昨日はいきなり俺と南雲で釣りで1位を取ったりしたんだぜ。こんなでけぇ魚釣ってよ」

 

 須藤くんが腕を広げて綾小路くんたちに自慢する。微笑ましいけど須藤くん、それは盛りすぎ。それだと1メートル以上どころか下手したら2メートル近くあるって。綾小路くんも真面目に考察しちゃうじゃん。面白いからあえて言わないけどさ。

 と、そんな風に話で盛り上がってるとだ。同じように集まってきているグループがもう1つ、自然な様子で会話に参加してくる。

 

「いやいや健、そりゃ嘘だろ。磯釣りでそんなデカい魚釣れたことなんてねぇって!」

 

「いや、確かにこんくらいデカく見えたんだって。なんつったっけな……鯛? 南雲、昨日釣ったの魚って鯛だったよな?」

 

「チヌ。クロダイだね。ちなみに大きさは66センチだからそこまでじゃないけど結構大物だったね。盛り上がるのも無理ない大きさでしょ?」

 

「へぇーそりゃすげぇ。麗ちゃんって釣りも出来んだ」

 

「寛治くんもアウトドア得意なんだよね。もしかしてもう釣ったりした? 釣り竿持ってるみたいだし。さつきちゃんどう?」

 

「いやそれが池の奴、飯の調達は任せろって言う割にはまだ1回も釣ってないんだよね」

 

「そりゃ指定エリアとか課題のせいだって。まあこの後いっぱい釣ってやるから見てろよ」

 

「あんまり期待しすぎると姫野さんもまた呆れちゃうんじゃない?」

 

「いやいや大丈夫だって。だよな?」

 

「……まあ……アウトドアが得意なのは確かみたいだし普通に釣ってくれるんならありがたいけどね」

 

「そんじゃやっぱ釣るしかねぇな」

 

 ──と、会話で一通り盛り上がりつつそのもう1つのグループを私は改めて観察する。集まってきてたのはDクラスの池寛治くん、篠原さつきちゃん、そしてAクラスの私の友達で側近、姫野ユキちゃんのグループだ。

 

 まあこのグループがどうして出来たのかは色々あるけど……簡単に言えば調整とか色んな出来事の結果だね。前々から私は寛治くんの恋愛相談を受けてたので一先ず調子に乗らせないようにしながらとりあえずさつきちゃんを今回のグループの試験で誘いたいって言ってたんで誘うように背中を押してあげて、その後ででも2人だと不安だっていう相談も来てたんでだったらということでユキちゃんを貸してあげた。ユキちゃんはなんだかんだ学力も向上してるし、平均よりは能力は上。下位グループに名前を連ねない程度には頑張れるでしょうってことで役目を与えてあげたんだよね。

 

 ただそれでも大変そうではある。今も私に若干不満そうな視線を向けてきてるし。察するに思ったよりも寛治くんとさつきちゃんの雰囲気が悪くなくて、そのせいで逆に気を使うってことかな? でも2人とも普通に接してくれてるっぽいけどね。まあユキちゃんはそれはそれで気疲れするタイプだからどっちにしろなんだろうけど。でも単独だと厳しいし、そこは我慢してもらうしかないよね。

 

 なんでユキちゃんのグループは置いておくとして……もう1つ気になる相手もいる。

 私は綾小路くんの斜め後ろにいる見覚えのある1年生に視線を向けた。ちゃんと友好的に笑顔でね。私はまず綾小路くんを手招きしてこっそり尋ねる。

 

「なんだ?」

 

「綾小路くん、もしかしてあの1年の娘……七瀬ちゃんと一緒に行動してるの?」

 

「え? そうなのか? 綾小路?」

 

 話が聞こえていた須藤くんや鈴音ちゃんも私の質問を聞いて反応して近寄ってくる。それに対して綾小路くんは少しだが沈黙したが、ほんの1秒ほど。すぐに答えを返してくる。

 

「ああ。同行したいって言われてな。どうやら同じテーブルのようだ」

 

「はあ? 同じテーブルだからってなんだよ。それってまたお前のこと──」

 

「何かを企んでる可能性は? 同じテーブルだからといって1年生と一緒に行動する意義は薄いと思うのだけど」

 

 んん? 今ちょっと須藤くんが言いかけて鈴音ちゃんが差し止めたね。須藤くんも少しはっとして黙ったし、誤魔化すのは上手いけど私には通用しないよ? 察するに、3人の間で知ってる何かがあったんだね? 

 ってことは綾小路くんに対する試験のこと。それも七瀬ちゃんが関係してる。……となるとまあ予想はつかないこともない。宝泉くん絡みかな。

 まあそうじゃないとしてもだ。少なくとも綾小路くんに何かしようとしていたこと。退学試験のことは薄々2人も知ってるか、それに類することはあったんだね。また1つ良いことを教えてもらった。

 

「そうかも知れないが気にしないでくれ。今のところは何もないからな」

 

「そう……なら良いのだけど単独でリタイアするようなことになれば退学は免れない。気をつけて」

 

「ああ」

 

 そして綾小路くんは無難な返しをするし鈴音ちゃんも当然の心配をして話を終わらせたけど……鈴音ちゃんも綾小路くんに詳細を知りたいって顔に書いてあるね。で、綾小路くんは綾小路くんだから何考えてるか分からないと……。

 うーん、これはどう見るべきかな。少なくとも今のところは問題ない、ってのは真実っぽいけどね。

 

「七瀬ちゃんだよね」

 

「そうです南雲先輩」

 

「ふーん」

 

 ただ私にしてみると──七瀬ちゃんってすっごい隠し事満載っぽくて怪しいんだよね。

 なので改めて観察してみるけど……さすがに隠し事の詳細までは見るだけじゃ見抜けない。人の秘密を見抜くにはもうちょっと情報が必要だし、質問で揺さぶりをかけたりしないとだけどこの場じゃ不自然だし、あえて今じゃなくてもいいんだよね。

 

「──七瀬ちゃんもクイズ出るんだよね。一緒に頑張ろうねー」

 

「はい。胸を借りさせていただきます」

 

 なので私は可愛い後輩に頼れる先輩として声をかけておくに留める。

 情報収集の段階で敢えて追い詰める必要はないからね。とりあえず綾小路くんと一緒に行動するみたいだし、七瀬ちゃんについては他と同じく徐々に理解させてもらおうかな。

 

 

 

 

 

「綾小路くんも出るんなら勝負だねー」

 

「まあそうだな」

 

 無人島試験が始まって2日目の午後1時半過ぎ。

 オレは途中、同じテーブルだからと合流を望んできた七瀬と共にF8の課題『クイズ』にエントリーした。

 すると同じく課題に参加した池、篠原、姫野のグループが合流し、その次に南雲、堀北、須藤のグループまでやってきたことで会話が盛り上がる。

 今回、2年AクラスとDクラスは同盟を組んでいるからな。南雲も人気者だし須藤と池も仲の良い友人。堀北もリーダーとして認められてきていることもあり、和やかな雰囲気だ。

 

 だがそんな中で、ほんの少しだが南雲は七瀬に対して観察するような視線を送っていた。

 一歩距離を詰めて近い距離で七瀬の顔をまっすぐに見つめる南雲。それは以前、1年時の時にオレが南雲から受けたものだ。

 

 南雲は人間への理解が深く、洞察力も高い。そんな南雲から見て、七瀬は一体どう見えたのか。その答えは分からないが、南雲の中でもちょっとした結論は出ているのか、特に何か言うこともせずに南雲は七瀬に先輩として激励を送った。その姿は普通の頼れる先輩でしかない。

 

 そしてその後にオレにも声を掛けてきたわけだが……さて、どうするべきか。

 クラスの方針としてDクラスはAクラスと共同戦線を張っている。そして南雲と堀北、須藤のグループは1位を狙っていた。

 そうなると南雲たちに得点を譲っておいた方がクラスの為にはなるだろう。オレとしても得点を稼ぐ必要があるが、南雲たちと被った課題を態々取りに行く必要生も薄い。

 

「本気出してねー綾小路先生♡」

 

 ──と、そんなことを考えていたオレの思考を先回りし、南雲が道を塞いでくる。

 その笑顔はアイドルとして満点の魅力を持っているが、その内側はオレに対する理解を深めようという意思を持っている。

 このクイズにおいてもオレの細かい引き出しを開けて理解度を深める。その余念がないのだろうと、オレは思ったが……。

 

「──なーんて言うと思った? どっちでもいいよ」

 

 そこで南雲は肩を竦めて発言を翻してみせる。

 思わず拍子抜けするような態度だが、南雲は実際どちらでもいいと思っているように見えた。オレが本気を出そうが、手を抜いて得点をこちらに取らせようとしてもどっちでもいいと。

 そう思う理由までは分からないが……。

 

「いや、真面目に課題に取り組ませてもらう。単独で挑むオレには得点を落とす余裕はないからな」

 

「そう? じゃあ頑張ってねー。応援してるよー」

 

 南雲はそう言うとひらひらと手を振って少し距離を取る。そしてオレの顔が見えるような位置のちょうどいい切り株に腰を落ち着けて足を組む。そしてタブレットを右手で持ちながらこっちに視線を送り続けた。

 

 ……よく分からないが課題はもうじき始まる。池たちや七瀬も真剣に臨むだろうしオレもまたタブレットに視線を落とした。そして時間になりクイズジャンルが画面に発表される。

 

『ジャンル・アニメ全般』

 

『第一問・テレビアニメ機動従士ボムダム第十三話のタイトルは次のうちどれ?』

 1・さらばボムダム 2・燃えろボムダム 3・叫べボムダム 4ボムダムの涙

 

「……なんだこれ」

 

「くっ……くくく……!」

 

 オレが思わず呟いた言葉に、何やら抑えるような悪い笑いが少し前から聞こえる。

 その声の持ち主は言わずもがな南雲だ。南雲はジャンルが発表された途端、オレの様子を見ようとオレに視線を向け続けてる。

 

「ジャンルがアニメだと力になれそうにないわね……南雲さん、あなた何を笑っているの?」

 

「悪い。俺も細かいとこまでは分かんねぇわ。一応見たことはあんだけどな……」

 

「ぷっ、くくく……! ああ、いや大丈夫だよ2人とも。私大抵の問題は分かるから」

 

 そう言って南雲は堀北や須藤の代わりにあっさりと回答を終える。そしてオレの方に視線を向け続けた。

 ……どういうことだ……? 最初の態度から察するにまさか最初からどんなジャンルの問題が出るか南雲は知っていたのか? 

 だとしたらどうやって……不正は不可能だろう。クイズのジャンルは複数ある。それならアニメのジャンルが必ず出るとは言い切れないはず。

 いや、そんなことを考えている場合じゃない。オレは真剣に目の前の課題に取り組む。確かに専門外なジャンルだが、4択のクイズである以上全く知らない問題であっても正解する確率は4分の1だ。

 そして問題文を考察すれば多少はその確率も上がる。オレは1つだけ先にボムダムが付いている回答の4を選んだ。しかし……。

 

『正解・2番・燃えろボムダム』

 

「いやー簡単だよねこれは。似た名前の曲も出てるくらいだし。法則が違うからって4番を選ぶとかはないだろうし最悪消去法でもいけそうだよ。ね、須藤くん」

 

「ああ、まあ俺も2か3だと思ったな。どっちも聞いたことあるしよ」

 

「歌詞の中にあるからねー3は。く、くく……」

 

 ……オレはまんまと1番ない回答を選んでしまったらしい。

 しかも南雲からはその思考を読み取られてしまっていた。オレが4を選ぶであろうという思考を完全に理解されてしまっている。南雲に理解されるのも悪くないと思っていたオレだったが、なぜだろう。これに関してはすごく嫌なものを感じてしまう。

 

『第二問・テレビアニメ脱シーチキンの主題歌を歌っているのは、次のうち誰?』

 

「これも簡単だよねー。有名だし」

 

「ああ、これなら俺にも分かるぜ」

 

「……さすがに聞いたことないわ。この中のアーティストだと1人……いえ2グループほどしか聞いたことないわね」

 

 ……堀北ですら2グループは名前は聞いたことはあるのか……。

 回答に出てきた4つの選択肢の1つも知らないオレはただただ当てずっぽうで答えを選んでいくしかない。

 そしてそれで正解を連発できるはずもなく、時間が無為に過ぎ去っていく。時折正面からニヤニヤとこっちを見てくる南雲に笑われながらだ。

 

 そして10分間かけて20問の問題を終え、1位を取ったのは正答率100%の南雲グループ。2位は正答率92%の池グループだった。

 

「難しい問題ばかりでしたね」

 

 オレと同じ正答率の七瀬も冷静にそう感想を述べてくる。

 そしてそんなオレたちに南雲はゆっくりと立ち上がって近づいてきた。そして肩をぽんと叩いてくる。そんな南雲にオレは気になって尋ねてみた。

 

「問題のジャンルがあらかじめ分かっていたのか?」

 

「へ? いや、そんなわけないじゃん」

 

 そんなことを聞かれるとは思っていなかったのか、素直に驚いた表情を見せる南雲。

 だがそれは解せない。なので再度尋ねてみる。

 

「……オレが最初から勝てないことが分かっていたんじゃないのか?」

 

「あー……そういうね。いや2割か多くて3割くらいで負けるとは思ってたけどね」

 

「何故そうなるんですか?」

 

 気になったのか七瀬まで南雲に質問する。その質問に南雲はあっけらかんとした笑顔で答えた。

 

「あはは、まあクイズのジャンルって学問系はそんなに多くないからねー。さっきみたいなアニメ、漫画、ゲームに。芸能。音楽や映画。スポーツだったりグルメ。ライフスタイル……学問系よりこういうジャンルの割合が多いのが定番だけど綾小路くん全部分からないでしょ? なんなら七瀬ちゃんもかな?」

 

「分からないな」

 

「はい。分かりません」

 

「じゃあクイズに勝てる確率は低いよね。昨日帆波ちゃんたちがクイズに挑んだらしくて聞いたんだけど理系学問ってジャンルは出たんだって。ってことは数学とか物理とかで一々分けてこない確率が高いわけだし綾小路くんが答えられるジャンルは全体で精々2、3割くらいなんじゃないかな?」

 

 ……なるほど。そういうことだったのか。

 言われてみれば確かに、学問系以外でオレの持ってる知識は限られている。いや、だがスポーツのルールや歴史は知っているし、音楽についてもそれなりにクラシックの造詣は──

 

「でもスポーツのルールや音楽についてはそれなりに自信はあるのですが……」

 

「いやまあそういう問題も出ないこともないけどさ。じゃあ昨年のメジャーリーグで優勝したチーム知ってる? MVP選手は?」

 

「……わかりません」

 

「去年の年末の歌番組で出てたアーティスト言える?」

 

「……言えません」

 

 ……そうだな、七瀬。オレもわからないし言えない。

 一瞬、オレの思考にやはり七瀬もホワイトルーム生なのか……? という答えが浮かぶがさすがにそんなことで判断を下すわけにはいかない。この学園に入ってきているホワイトルーム生ならしっかりそういうジャンルも学んできているはず。つまり俗世間に疎いホワイトルーム生はオレくらいのものだろう。それはそれで少し情けないが……。

 

「まークイズ王とかがやるレベルのクイズにもなるとさすがにマニアックな知識系も出てくるんだけどね。それで綾小路くん? さっき何か言いかけてたけど何か質問でもある?」

 

「……いや、何でもない」

 

 とりあえず次にクイズの課題が出ても無理に挑戦はしないでおこうとオレは思った。クイズでは南雲どころか池や他のグループ相手にも完全敗北を喫してしまったからな。




2日目クイズ終了時点・南雲麗グループ 得点78点 順位不明

ということで今回はここまで。無人島試験は細かい描写とエリアと得点のあれこれを考えるのがややこしいよねって。

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
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