シンビオートに寄生されたけど、意外とへいきだった   作:たるたるそーす

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映画の[ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ]でヴェノムが"赤いやつはやばい!“と言っていたのが、もしも鬼強シンビオートでそいつが地球にいたら?と妄想して書いちゃいました。独自設定多めですがよろしくお願いします!




日常

 

『おい、ワタル。起きろ、朝だぞ』

 

頭の中でノイズの混じったような低い声が響く。俺は眠い目を擦って起きる。

 

「おはよう、ブラスト」

 

俺の体内に住んでいる"お友達"が話しかけてきた。

こいつはシンビオートと呼ばれる、地球外の寄生生物だ。名前はブラスト。

ひょんな事から俺に寄生することになって、たまに喧嘩しながらも仲良く共生している。

 

『ああ、起きたか。早く支度しろよ。今日はセールなんだからな。お前が好きなチョコレートが安く買えるんだぜ?』

 

「確かにチョコレートは好きだけど、ブラストのためでもあるんだからな?チョコレートがないと生きていけないんだから。」

 

『正確にはチョコに含まれるフェネチルアミンだがな。お前がアドレナリンをドバドバ出すのが嫌だって言うから、我慢してやってるんだ。感謝しろ。』

 

シンビオートは宿主のアドレナリンを餌にする。これを通常は闘争や逃避時の血流から摂取しており、アドレナリンは人間の脳に存在する神経伝達物質・フェネルチルアミンという化学物質からも安定供給されている。これはシンビオートが宿主の脳に深く食い込む理由だとされているが、この化学物質フェネチルアミンはチョコレートからも抽出することができる。まぁ、こいつは特殊で、他の方法でも生きる事ができる。

 

「はいはい、ありがとうありがとう。でもアレでも生きていけるんだろ?」

 

『アレでもいいが、毎日チョコとアレじゃ飽きてくる。』

 

支度をしてからバイクを走らせ、目的のスーパーについた。駐車場では、すでにたくさんの車が止まっていた。端っこのスペースにバイクをとめ、店内に入ると、多くの客がいた。どうやらこの時間が一番混むらしい。

 

『さっさと行くぞ!』

 

「おい!走らせるなって!」

 

急かすように、身体を操り、俺を無理矢理引っ張って進んでいく。そして、野菜コーナーに着いた。そこには、キャベツやニンジン、玉ねぎなどが山積みになっていた。

 

『どれにするんだ?』

 

俺はカートを押しながら、商品を見ていく。

 

「そうだなぁ・・・」

 

『早く決めろよ』

 

「わかっているって・・・」

 

側から見たら1人で喋っているヤバい奴だが、一応、口に出さずとも話す事はできる。しかし、結構集中してないと出来ず、余程切羽詰まった状況じゃないと疲れてしまう。なので人の多いところでは携帯を耳に当てながらカモフラージュしている。そのまま会話を続け、買い物をする。

 

『だいぶ買ったな。』

 

「ああ、久々の買い出しだったしね。さあ、次の店行こうか」

 

『次の店はタイムセールだ。少し急ぐぞ』

 

「分かったよ、じゃあ近道しなきゃな。」

 

そういって人通りの少ない閑静な道にバイクを走らせ店に向かっていると、路地裏で女性が大柄な男3人に車に無理矢理押し込められ、そのままスピードをあげていった。

 

『おい、見たな?』

 

「はぁ…ああ、見たよ。こんな事になるなら近道しなきゃ良かったな…おっと、それはあの女性に悪いか。」

 

『まあ、いいじゃねえか。久々に楽しめそうだ』

 

バイクのスピードを上げ、車を追っていく。一定の距離を保ちながら尾行していくと、車は廃工場についた。バレないようにバイクを少し離れた場所にとめる。中に入ると先程の女性が2人の男に囲まれていた。

 

「いやっ!やめて!」

 

「へへっ、いいじゃねぇか。その反応そそるなぁ!」

 

「おい、やめとけ。その女を傷物にしたらボスが怒るぞ。」

 

「なんだよ、ちょっとくらいいいじゃねぇか。生きてりゃこいつの親父から金は貰えんだ。楽しもうぜぇ?」

 

男は女性の服を脱がそうとしていた。

 

「おい、俺とも楽しもうぜ」

 

声をかけると、男の1人が振り向いた。

 

「ああ?なんだガキ。俺らは今忙しいんだよ。どっかいけや。さもないと痛い目にあうぞ?」

 

そう言って、銃を突きつけてきた。しかし、俺達は怯まなかった。

 

「その女性から手を離せ」

 

すると、男達は大笑いした。

 

「ぎゃははは!こいつ頭おかしいんじゃねえのか!?この状況わかってんのかなぁ~?」

 

それを一切気にせず、女性に語りかける。

 

「大丈夫ですか?怪我はありませんね。良かったです。それじゃあ、目をつぶってそこを動かないでください。絶対に、ね?」

 

女性は言われた通りに目をギュッと瞑る。それを確認した後、

 

「ほら、ブラスト出番だぞ」

 

と呟くと、粘り気のある赤いなにかが身体にまとわりついていき、大柄な筋骨隆々の男性のようなシルエットになる。

表面は紅く金属のように照り輝いており、頭部には目のような白い部分が5つ、金剛夜叉明王のように並んでいる。口は大きく開かれ、鋭い牙がいくつも並んでいる。それを見た男たちは

 

「な、なんだよコイツ!?化け物じゃねぇか!?」

 

「くそっ!いいから撃てよ!」

 

何発も弾丸が発射されるが、シンビオートは弾力ある変形自在の形質のため、全て体を通り抜けたり、衝撃を吸収し、銃弾が俺に届く前に止める。

 

『おい、それで終わりか?久々の出番なんだ、もっと楽しませてくれよ?』

 

「ひっ、ひぃっ、なんで銃が効かねえんだよぉ!!!」

 

『はぁ、本当にそれだけか?じゃあ次は俺の番だ。』

 

ブラストは心底残念そうに、無造作に腕を振り、男を吹き飛ばす。そのまま壁に突き刺さり、動かなくなる。

 

(おい、大丈夫なんだろうな?死んでないよな?)

 

『ああ、大丈夫だ。俺は手加減が上手いんだ。命は奪ってねぇ…重要な骨が逝ったかもしれねぇが』

 

(おい!マジで頼むぞ!)

 

『ははは!冗談だ!』

 

ブラストに改めて手加減するように頼んでいると、

 

「何1人でしゃべってんだ!この化け物野ろ『ほい、いっちょ上がり〜』

 

また1人壁に突き刺さった。

 

『んじゃ、もう変わるか?』

 

とブラストが聞いてくるが

 

(いや、まだ1人いたはず、それにあいつらに仲間がいないとも限らないし…)

 

そう言いかけた時、業火が俺たちを襲った。

シンビオートは宿主に超人的な腕力や身体能力を与え、体組織をツルのように伸ばし攻撃に使ったり盾を形成する。 また、シンビオートは形状変化の能力の応用により、宿主の望む服装に変化するもできる。だが、そんなシンビオートにも弱点がある。

その1つは"炎"だ。有機生命体に好んで融合するため、火に弱いのは当然かもしれないが。

 

「は、ははは、や、やったぞ!化け物め!証拠を消すために持っていたものだったがこんなとこで役に立つとはな!」

 

男は火炎放射器を持っており、放火する機会を部屋の外から伺っていたようだった。

 

「こんな事になるとは思わなかったが、女が生きてるならかまわん!ほら、こっちへ来い!」

 

女性を無理矢理立たせ、連れて行こうとした時だった。

さっき炎が弱点と言ったが、それはあくまで普通のシンビオートだ。普通のシンビオートなんているのかって感じだが、ブラストはさらに普通じゃない。

 

『ああぁぁ〜この炎マジぃなぁ〜。家のコンロの火の方がまだ美味いぞ…。』

 

身体が燃えがっているが気にせずブラストは男に近づく。

 

「な、なんで生きてる!?燃やしたはずだぞ!?」

 

『ん?あぁ〜、俺は熱を吸収して養分にできんだ。他の奴なら今ので死んだかもしれんが、残念だったなぁ?』

 

そう。ブラストは炎を取り込み、自分の糧とする事ができる。それがこいつの特殊なポイントだ。もちろん、吸収した炎を放出することも。

 

『今の炎不味かったからな、ちょっと返すわ』

 

と告げ、自身の体細胞を男の方に飛ばし、触手を生やして女性をこちらに寄せる。体細胞が男の前に飛んでいったと同時にそれは爆発を起こした。ブラストは吸収した熱を爆破という形で出すことも可能だ。

 

「ぎゃああああぁぁ!!!」

 

男は突然目の前で爆破が起こり、断末魔の叫び声を上げる。

 

(おい!大丈夫なのか!アレ!)

 

『ああ、大丈夫だ。火力は抑えてある、せいぜい気絶するくらいに、な。少しハゲるくらいだろ。命は奪わない、それがワタルとのルールだもんな。』

 

俺がブラストに寄生され、能力の凶暴さに気付いたため、俺はこいつとの間にルールを作った。そのルールの内の1つは人を殺さない、というものだった。一度でも人を殺してしまうと、殺すという選択肢が生活に紛れ込んでしまう、とは誰の言葉だったか…。とにかく俺は力に身を任せることなく、人を殺さない事を誓った。元々ブラストが俺に協力的だったのもあり、すんなりと決まった。

 

だが、その代わり、事件を見かけたらすぐに首を突っ込む、というルールを設けてきた。その時は快く了承したが、こういう事になるといつも後悔している。そんな事を思っていると、女性と目が合った。女性は俺達に恐怖しているようだった。

 

(しまった…、だから目をつぶってるように言ったのに…)

 

『まあ、しょうがねぇさ。行くぞ』

 

そのまま帰ろうとすると、

 

「あの!ありがとうございました!」

 

恐怖で体が震えていたが、しっかりとこちらを見つめお礼を言ってきた。

 

『1人で帰れるか?』

 

「だ、大丈夫です!お父さんに電話するので!でも本当にありがとうございました!」

 

『ああ、今度は金持ちの親父さんとやらに護衛をつけてもらいな。じゃあな』

 

一応周りを警戒し、問題ないようだったのでその場を去った。

廃工場をでて、バイクを走らせながら

 

「はぁ、タイムセールもう間に合わねえよなぁ…?」

 

『ああ、丁度今終わった。』

 

「はぁ?マジかぁ…まぁ、しゃあないか…」

 

『でも善良な一般市民を救ったんだ、誇れる事だぞ!』

 

「だけどなぁ、あの女性、アイツに似てたんだよ。ああ、くそっ思い出しちまうっ」

 

『ああ、ワタルのオサナナナジミか!』

 

「幼馴染な、そんなどっかの虫みたいな言い方すんな」

 

くだらない会話をしながら自宅へ帰り、テレビをつけると、ビルが爆発する映像や、街が宙に浮いている映像などが映し出されていた。

 

『ワオ、こりゃすげぇな!エイリアンみたいな奴も出てきたぞ!』

 

「お前も似たようなもんだろ、しっかし、ソコヴィア協定ねぇ?こんなもんに意味があるのかぁ?」

 

『まあ、いいんじゃないか?俺達には関係ないだろ。それよりデカい仕事が入ってきたんだろ?俺も手伝うからすぐ終わらせるぞ。』

 

「ああ、それもそうだな」

 

この時の俺達はまだ、これから激動の渦にのみ込まれることを知らなかった。

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