シンビオートに寄生されたけど、意外とへいきだった 作:たるたるそーす
こういうタイプの人間は、しつこいのだ。しかし、今更断るのもそれはそれで面倒になりそうだ。そのまま喫茶店に入り、人目につきにくいテーブル席に座り、コーヒーを注文する。それから目の前の男に話を聞く。
「俺は今宮 亘。ワタルでいいよ。それでブロックさん、ご用件は?」
「俺もエディでいい。2年前、何があったかを聞かせてくれないか?」
なんとなくその話だと思っていた。
この手の人間に話すと当然だが、どんなことでも必ずと言って良いほど記事にされ、それが世界中に広まるだろう。色々面倒な事になるし、俺も話したくなかったので、適当な理由をつけて断ろうとすると、
「ああ、心配しなくともワタルが嫌だと言った部分はできるだけ記事にはしないから、安心してくれ。もちろん、俺が記事にすべきと思ったことはするがな。この前は言われた事以外を記事にして大変な目にあったんだ。」
そう言って遠い目をしていた。俺はあまり新聞などを読んでいなかったので、なんの事か分からなかった。でも、なぜかこの人に親近感が湧き、少し信じてみようと思った。もちろん嘘の可能性もあるのだが。
「わかったよ」
「それゃ良かった。さっそく聞きたいんだが、ここに見覚えはないか?」
そう言って差し出してきた写真には研究所が写っていた。それを見ると、嫌な記憶が蘇り、思わず顔を顰めてしまう。そこは俺があの事件に巻き込まれ、ブラストと共に生きる事になったきっかけの場所だった。
「おい、大丈夫か?でもそんな顔をするってことはこの研究所を知ってるんだな」
「ああ…俺はここに行った事がある」
「じゃあ、この研究所がどんなところか知ってるか?2年前何があって消滅したんだ?」
「…どうだろうな」
「じゃあ、何でここに行った?」
「それは…親父が勤めてたから…」
「父親が?」
俺は小さく頷く。あの時の光景がフラッシュバックしたが、恐怖で震える手を抑え、拳を強く握った。
『ワタル、大丈夫か?』
「本当に大丈夫か?」
ブラストとエディさんにそう言われ、大丈夫だと答える。
「よし、じゃあ続けるぞ?」
そう言ってエディさんは
「俺も似たような研究所に行ってな、そこでは…そうだな、まぁ、宇宙から来た危険な生物?の研究をしてたんだ。なんだかんだあって今は立ち入り禁止になってるがな。」
そのまま続けて、
「そこのデータを盗…ちょっと見てみたんだが、その危険生物がこの写真の研究所にもいたらしいんだ。それに、ここでは俺が行った研究所よりも先にソイツらを研究してたらしい。だが、ある日本人が立ち入ってから、研究所は消滅し、封鎖。危険生物も行方不明。」
そこで区切り、こちらを見る。
「ここ最近、この町では犯罪者がいつのまにか捕まっていたり、犯行現場で気絶していたりするらしいな?」
「その話と今までの話、なんの関係が?」
俺は内心ドキッとしながらも、質問する。
「その生物はな、寄生して生きていくんだ、人とか動物とかにな。そして、寄生された奴は暴れたい衝動に駆られる。そして、段々と暴力に支配されていく」
『ワタル、どうする?コイツをぶん殴るか?それとも逃げるか?』
ブラストがそう言うも、身体がこわばって動かない。心臓がドクドクと身体中に鳴り響く。
「ワタル、君にもいるんじゃないか?危ないお友達が、身体の中に、な?」
『ちっ!』
そう言ってブラストは俺の身体を無理やり動かし、その場から逃げようとするが、黒い何かが俺の身体にまとわりつき、座らせられる。
「おい、乱暴だぞ!」
『大丈夫だ、それに今ので証明したようなものだろう』
地を這うようなドス黒い声が聞こえたかと思うと、なんと、エディさんの首からブラストと似た黒く、凶暴な顔をした生物がでてきた。
『よぉ、ほら、出てこいよ、俺たちにビビってんのか?』
黒い生物…多分シンビオートであろうそれが俺に、いや、俺の中のブラストに語りかける。ブラストも同じように顔を出し、
『ほぉ、まだ俺以外にも地球に来ていた奴がいたとはなぁ』
「おい、ヴェノム、本当に大丈夫なんだろうな?コイツ目が5つもあるぞ!?」
『エディ、別に目の数で強さは決まらない。コイツがヤバいのは確かだがな』
そう言ってしばらく睨み合っていたが、俺は気になっていた事を聞く。
「なんでエディさんもシンビオートを?」
「ああ、さっき話した研究所で寄生されてな。そこからはコイツに気に入られて成り行きで一緒にいる。それよりそっちはどうやってソイツと?」
『ソイツじゃないブラストだ。そう呼べ』
「分かった、そんなに睨まないでくれ…じゃあどうやってブラストと会ったんだ?」
「ああ…ちょっとここじゃ話ずらいな。俺の家に来てもらっても?」
「ああ、分かった。ほら、お前も睨み合ってないで、行くぞ」
「ブラスト、お前もそんなに威圧するなよ」
『『コイツが先に睨んできたんだ、俺は悪くない』』
愉快な隣人達はそう言ってそれぞれの身体に戻った。約束通り奢ってもらい、喫茶店を出て、自宅にもどる。再びエディさんとテーブルを挟んで向かい合うように座る。
「それで?どうやってブラストと?」
『どうせ、つまらん話だろう』
「ヴェノム、黙ってろ」
「ははは…まぁ、確かに面白くはないだろうな。研究所の件とも関わってるから、少し長くなるけど?」
と聞くと、構わない、と言って頷いていたので、俺は2年前のことを話し始めた。
〜〜〜〜2年前 アメリカ ロサンゼルス郊外〜〜〜〜
「親父のやつ、なんでわざわざ日本から俺を呼び出したんだよ〜!見せたいものがあるとか言ってたけど、全然教えてくれなかったし」
1人でボヤきながら、父の勤めている研究所に向かう。父は界隈では有名な生物学研究者だった。俺は小さい頃に母を交通事故で亡くし、父と2人で暮らしてきた。
しかし、俺が高校に入る頃、アメリカの研究所から父に声がかかり、とある研究に参加できる事となった。父は最初、俺のことを考え、辞退しようとしていたが、研究に参加したがっていたのを俺は知っていたので、一人暮らしを始め、父をアメリカへと見送った。そんな父から連絡が来て、研究を見せてくれることとなった。
「ここが、親父が働いている場所か……」
研究所の外観は白くて大きな建物だ。入口から中に入ると、受付があり、その奥に研究室などがある。廊下は広く、白い壁に囲まれており、天井はガラス張りになっている。
俺は受付を済ませ、エレベーターに乗って上の階に行く。
最上階のフロアに着くと、そこはガラス張りの部屋だった。中には白衣を着た研究員と思しき人たちがいた。その中からどこか頼りなさそうな、けれど優しい目をした男性がこちらに駆けよってくる。親父だった。
「ワタル!元気だったか?」
「ああ、元気だよ。そっちも元気そうで良かったよ、親父」
久しぶりの再会なので、しばらく話し込んでいると、
「そうだ!電話で言ったが、見せたいものがあるんだ!」
そう言って研究室に連れて行かれる。そこには見たこともないアメーバのようなものが厳重なケースの中にいた。
「何だよ、これ?」
と聞くと、
「これは、地球外生命体だ。」
と、親父は答える。
「地球外生命体?どういうことなんだ!?」
すると、
「実は、この生物は地球外から来たものなんだ。隕石にくっついて地球にやってきたようでね。」
と説明する。
「つまり、宇宙人って事なのか……?」
と聞き返すと、
「まあそういうことだね。これを人と呼ぶのかは微妙なとこだけど」
と、説明を続ける。
「そして、コイツらはシンビオートというらしい。生物に寄生して、共生していく。寄生された生物は超人的な能力をもつようになるみたいだ。」
「へぇ、すごいな……でもなんで俺を呼んだんだ?」
「ワタルはデザイナーになりたいんだろ?こういったものを見てインスピレーションを受けられればなって」
「そんな理由で見せていいのかよ?世間に公表してないんだろ?コレ?」
「いいんだよ、僕はここじゃ結構偉い方だからね。少しくらい融通がきくさ。」
「おいおい…」
口ではそう言ったが、こういうのものを見れるのは確かにいい機会かもしれない。
「分かった。じゃあさ、今日は泊まってもいいかな。久しぶりに一緒に飯食おうぜ。しばらくこっちにいるからさ。」
というと、
「もちろんだ!元からそのつもりさ!お前の好きな料理作ろうじゃないか!」
と言ってくれた。
その後は久々の父の料理を楽しみ、懐かしい気持ちになりながら、家族の時間を過ごした。夜になり、俺は父の家の空き部屋で寝ることとなった。
ベッドの上で横になって、今日の出来事を振り返る。シンビオートか……。地球外生命体と言っていたがいったいなんなのだろうか。そんなことを考えているうちに眠りについた。
翌朝、目が覚めると、父はもう仕事に向かうようで、
「ワタル、悪いんだが、今日は実験が長引きそうで遅くなるかもしれない。先にご飯とか食べててくれ!」
そう言って急いで家を飛び出していった。特に予定もないので、そのまま家でダラダラと過ごしているうちに夜となった。
しかし、日が変わりそうな時刻にになっても父は帰って来なかった。
しょうがないのでそのまま寝る事にしたが、翌朝になっても父は帰ってこなかった。
おかしいと思い、父に電話をかけると、すぐに研究所の方にきてほしいと淡々と告げられ、少し不審に思ったが言われた通りにする。
研究所に入ると、先日訪れた時より静かな空気につつまれており、見渡す範囲に人が1人もいなかった。奥に進むと父の姿が見えた。だが、様子がおかしかった。こちらに気づくとゆっくりと近づいてきた。すると、父がいきなり襲いかかってきた。なんとか避けることができたが、明らかに様子が変だった。まるで何かに取り憑かれたように攻撃してきたのだ。
「おい!親父!?どうしたんだよ?何があった!?」
必死に呼びかけるが返事がない。その後も何度も呼び掛けたが無駄に終わった。このままではまずいと思った俺は逃げることにした。
出口の方へ逃げようとしたが、父に立ち塞れ、仕方なく窓から出ようとした時、突然目の前に父が現れた。
そして、俺の腹部を殴った。
「グフッ!」
俺はそのまま吹き飛ばされ、壁を突き破ってどこかの研究室に倒れ込んだ。一瞬意識が飛びそうになるも、なんとか持ち堪えた。
「痛てぇ……クソッ」
俺の身体はもうボロボロだった。
「おい!大丈夫か!?」
誰かが声をかけてきた。どうやら研究員らしい。ここに隠れていたようだ。
「あぁ、何とかな……」
そう言って立ち上がろうとするが、うまく力が入らない……。足が震えて立っているだけでやっとだった…。
「なんで親父が…」
そう呟くと、研究員が
「もしかしてイマミヤの息子か!!…すまない…君の父親はシンビオートに乗っ取られてしまったようだ…」
「シンビオートに…?どういうことだ…?」
「私たちはシンビオートを動物に寄生させる実験をしていたんだが、うまく研究が進まず、それに辛抱ならなくなった所長が人間に寄生させる、なんて言い出したから、イマミヤが反発したんだ。それで所長と揉めて…そのまま無理矢理シンビオートに寄生されて、ああなってしまった…」
「嘘、だろ…?元に戻す方法はないのか…?」
「あのシンビオートは高熱と4000から6000Hzの音に弱い…だからそこを突けばイマミヤを救えるかもしれん…」
そんな事を話していると父がやってきて、研究員を床に向かって殴りつけた。そして俺にも拳を振りかぶっていた時、不意に動きが止まり、
「やめ…ろ…ワタルには手を出すな…」
「親父!」
「はやく…にげろ…!」
そう言って父は俺を突き飛ばした。すると父の身体からシンビオートが飛び出し、床に倒れていた研究員を触手のようなもので刺し殺してしまった。俺は急いでその場から逃げだしたが、その触手につかまれて放り投げられた。再び壁を突き破りながら研究室にたどり着く。背中の方でガラスが割れるような音がして、身体に何かが纏わりついてきたが、俺は意識を保つことができず、そのまま倒れてしまった。
回想編です、次回まで続きます。
ですが次回までちょっと間が空いちゃうかもしれないです。
オリジナル設定、ストーリーが続きますが
引き続きよろしくお願いします!
評価、感想お待ちしております!