シンビオートに寄生されたけど、意外とへいきだった 作:たるたるそーす
車に乗せられ、俺は彼らに連れて行かれることになった。車が走り出して数分後、車内では俺に対する尋問がはじまると思っていたのだが、予想に反して何もしてこない。
思わず俺から話しかけてしまった。
「おい、せっかく俺を捕まえたのに何も聞かないのか?」
「所長からは無傷で連れて来いとしか言われてないからな」
リーダーらしき男はそう言う。しかし、どう考えてもおかしい。
俺を捕らえたら何か聞いてくるはずだろう。
「ああ?データの窃盗とやらの件はいいのか?」
「お前が我が社を調べている事は知っていたからな、適当な理由をつけてついて来させてきたまでだ」
目的を聞くためにもあえて挑発してみることにした。
「そんな事俺に言っても良いのか?あんたらを倒して、今すぐここから逃げてもいいんだぜ?」
「その時は研究所に連絡がいき、さっきの奴らを殺すだけだ。拘束はしないが、妙な真似はするなよ」
やはりそうきたか……まあ、想定内だが。
「それは困ったなぁ。じゃあどうすればいいんだ?」
「お前には所長の研究を手伝ってもらう。いや、お前たち、と言った方がいいか」
「っ……!?」
『なんだと?』
こいつ…俺がシンビオートと共生している事を知ってるのか…?案外まずいことになりそうだな…。そう考えていると研究所に車が着き、車から降ろされて歩かされる。
「さあ、着いたぞ。お前には所長にあってもらう。行くぞ」
そう言われて連れていかれたのは研究室だった。
そこは2年前の場所とそっくりで、いやでもあの時のことを思い出してしまう。
中に入るとそこには白衣を着た男が立っていた。
「ようこそ。私はここの所長を務めているカラン・ガードナーだ。よろしく。早速だが、君たちには私の研究を手伝ってもらう」
こいつが親父の研究所の所長か……今すぐあの事について聞きたかったが、ぐっと堪える。
「研究?いきなり連れてきて何を言ってるんだ。それに、アンタには俺が複数人に見えてるのか?」
眼科にかかった方がいいぞ。と付け加えてそう言うと、
「とぼけなくてもいい。君がシンビオートに寄生されている事は知っている。私はあの時に見ていたからな。君がイマミヤ君と戦っていたのを。いや、親子である君もイマミヤだったか」
俺たちはコイツに見られていたのか…どうやらもう隠す必要はなさそうだ。そして、俺があの事件からずっと聞きたかったことを聞く。
「ああ、そうだ。俺はシンビオートと共生してる。ただ、アンタに聞きたいことがある。本当にアンタは親父に劇薬を投与して、シンビオートを無理矢理寄生させたのか?」
するとカラン・ガードナーはニヤリと笑みを浮かべた。そして、
「誰から聞いたのかは知らないが、その通りだ。彼は計画に反対したのでね。身をもって私の計画の素晴らしさを知ってもらおうと思ったんだ。人体実験の第一号として、ね」
と言い、さらに続けて言った。
「彼は私の想像以上の逸材だったよ!薬物を投与したとはいえ、あそこまで動けるとは思えなかった。ただ、それ以上の天才が現れた…それが君だ。君はシンビオートと正に一心同体だった。もう少し君たちの戦いを見ていたかったが、部下が独断で自爆スイッチを押してしまってね。逃げる羽目になった。もちろんその部下は始末したが」
こいつが親父にシンビオートを……こいつがいなければ……
『ワタル、落ち着け。怒りに呑まれるな』
ブラストに俺の感情が伝わっていたようで、そう言われる。少し冷静になり、
「…今更何で俺を呼んだんだ」
怒りを抑えてそう聞くと、
「ずっと君を探してはいたんだ。君が日本にいると思ってここで研究もしていたしね。だが、見つからなかった。そこで日本国内をくまなく監視する事にしたんだ。そしたら先日、君が空港から出てきた。すぐさま君を捕まえ、研究の協力を願おうと思ったんだ」
こいつは俺を実験動物か何かと勘違いしているのか?
「さっきから言ってる研究って具体的には何をしてるんだ」
「おや?興味が出てきたのかい?私はね、シンビオートを使って人類を進化させようと思ってるんだ。シンビオートを使えば人間は更なる高みへと到達する。これが成功したら、一人一人が強くなり、アベンジャーズなんていらなくなる。例えばこの私がそうだ。私はあの研究所の爆発の前、イマミヤの血液を採取していてね。試しにそれを打ってみたんだ。すると、頭の中から私以外の声が聞こえてきたんだ。」
そこで、カラン・ガードナーは俺の方に手を向けて、見覚えのある、ウネウネした触手のようなものを見せつけてくる。
「し、シンビオート…だと…!?」
「そう、私もシンビオートと共生する事になったんだ。まあ、最初は戸惑ったが、今では私の良きパートナーだよ。このシンビオートを私はクワッシュと呼んでいる。いい名前だろう?」
(まさかコイツもシンビオートに寄生されているなんて……)
『まずい事になったな。絶対に力を持たせちゃいけないイカれ野郎に力が渡っちまった』
俺の中でそんなやり取りをしていると、カランは続けて、
「私はこの力の素晴らしさに気づいた。そして、これを全人類に適合させ、進化に導こうとね。そこで、私の血を使う事にした。犯罪者達に私の血を流し、シンビオートに適応するか実験したんだ。だが結果は失敗ばかり。だから君にも手伝って欲しいんだ。君たちの血なら適合させられるかもしれない!」
「このイカれ野郎が!アンタのやってることは間違っている!」
「それは違うな。私は正しいことをしている。君は私に協力するべきだ。大丈夫、何も怖がらなくていい。全ては上手くいく。君が協力してくれれば、世界は進化するのだよ!」
血走った目をしてそう言ってくる。本当に狂っている。
『もういいだろ、コイツをぶん殴ろう』
(そうだな。コイツに手加減はいらないぞ)
そう言って動き出そうとした時、
「おっと、君が私を攻撃するのならあの人達は死ぬかもしれないが、いいのかな?」
くっ……そうだった、今はナナセ達を人質に取られている。下手に動くと彼女達を危険な目にあわせてしまう。そう思い、渋々引き下がる。
「今日はもう遅い。実験は明日から始めるとしよう。ワタル君を連れて行きたまえ。おっと、待て。もしかしたら、彼が人質を無視して逃げるかもしれない」
そう言ってカランは自動車のスマートキーのようなものを俺の耳元に向けてくる。そして、スイッチを入れると、超音波のようなものが発される。
キィィィィィィィィィン
『ぐああぁぁぁ!!!』
「ぐぅっ!!!」
俺は身体がまったく動かなくなり、ブラストも不快な音波に苦しんでいる。
「これはスターク社が開発した神経麻痺を誘発する装置でね。それを少し改良して、対象を気絶、シンビオートにも効くようにさせてもらったんだ。ほら…連れて…行きたま……」
薄れゆく意識の中、カランの声がそう聞こえた。
目が覚めると、そこは見覚えのない部屋だった。手足は縛られていて動けなかった。
「くそっ、どうすればいいんだ…」
『どうする?拘束は簡単にとけそうだぞ』
「いや、ここで逃げたらナナセ達が危ない」
『…八方塞がりだな』
「……」
俺たちはその後も必死に考えたが、いい案は出なかった。そして、カランが研究員と傭兵を引き連れてやってきた。
「やあ、お目覚めかな?早速だが君の血をもらうとしよう。ほら、始めてくれ」
そう言って研究員に指示を出し、俺に注射針を刺してくる。
「やめろっ…くっ……」
俺は抵抗しようとしたが、拘束されていて動けず、そのまま血を抜き取られてしまった。結構な量の血液を採取され、少し眩暈がする。
「悪いね、だが、貴重なサンプルなんだ。遠慮なく大量にとらせてもらったよ。ではこの血液を適当な犯罪者に……」
「所長!報告が!」
傭兵が慌てて部屋に入ってきて、カランの言葉を遮り何か耳打ちする。そして、俺の方を見てニヤリと笑う。
「ほぉ…そうか。分かった、お前はここに案内して来い。…ワタル君、君は随分と愛されてるようだね。今、君の彼女がここに来たそうだ」
「彼女だと…?」
俺は少し動揺しながら言う。まさか、アイツじゃないだろうな……。
「ああ…確か、ナナセ、と言ったかな?」
嫌な予感が的中してしまったようだ。
「な、ナナセが何でここに…」
「大方、君を心配して、直接乗り込んできたんだろう。中々大胆じゃないか」
カランはいやらしい笑みを浮かべていた。
「お前ら、ナナセに何かしたらタダじゃおかないからな!!」
俺がそう言って睨みつけると、所長は鼻で笑った。
「ふん、君はもう少し状況を考えた方がいいんじゃないか? 自分がどういう立場だったか、忘れたのか?」
そうだった。今俺はこいつの手の上で転がされてる、ただのモルモットに等しい。
「まあいい。ただ、私は良いことを思いついた…!君の血液を彼女に流し込んでみよう、とね」
なっ!? 何言ってんだこいつ!!
「そしたらどうなると思うかね?犯罪者達は血液を流し込んだ途端、絶命していったが…果たして彼女はどうなるか…?」
「てめぇ…!!!」
『ナナセに手を出したら俺たちはお前をぶちのめすぞ!』
ブラストも怒りのあまり俺の身体から出てそう言う。
「君がワタル君に寄生してるシンビオートか…中々興味深い顔をしているなぁ」
カランがブラストを舐め回すように観察していると、部屋のドアが開き、傭兵と共に会いたかったが会いたくない人物が入ってきた。
「ちょっと!ここに本当にワタルがいるの!?ワタルに何かあったら絶対許さないから……ワタル!?大丈夫!?」
ナナセは俺を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
「ナナセ……」
「良かったっ!!無事だったのね!!本当に心配したんだから…」
涙交じりの声でそう言われるも、俺はナナセに、
「今すぐ来た道を戻れ!早く逃げろ!!」
と促すも、カランはそれを許してくれなかった。
「おっと、悪いね。君にも実験に参加してもらうよ」
と言いながら、注射器をナナセの首筋に当てた。
『「やめろぉっ!!」』
思わず叫んだ俺達の意思に反して、注射針はどんどん肌に吸い込まれていく。そして、血液がナナセの体内に流れ込んでいった。すると、彼女の体がビクビクと震え、痙攣し始めた。同時にアメーバのようなものが身体をところどころ覆っていく。
しばらくその状態が続いたが、ピタッと痙攣も止み、なにも起こらなくなった。
「ナ、ナナセ…?おい…嘘…だろ…?」
すると、カランはつまらなそうに
「はぁ…天才の彼女といえども、彼女にその才能はなかったか」
と吐き捨てるように言った。
それを聞いた俺たちの中で何かがプツンと切れた。
俺の身体をブラストが覆い、拘束を破る。そして、怒りに任せて拳を握りしめ、全力で地面を殴る………
その瞬間、大爆発が起こった。
ちょっと短めかもしれません。
引き続きよろしくお願いします!!