シンビオートに寄生されたけど、意外とへいきだった 作:たるたるそーす
しばらくして落ち着いた後、俺たちは研究所から離れた所にある、洒落た雰囲気のカフェで話すことになった。
「改めて、俺はエディだ。記者をやってる」
「ナナセです。大学生です。よろしくお願いします」
という感じで軽い自己紹介を終え、お互いの事を話していった。
「それで、いったい何があったんだ?」
と聞かれたので、電話の後のことから、今までの経緯を話す。
するとエディさんは開いた口が塞がらなかった。無理もない。まさか俺もあんな事になるとは思わなかった…
今度は逆に、
「エディさんはどうして研究所に?」
『そうだな。なぜいいとこ取りだけしたんだ?』
悪態をつくブラストを咎めながら聞く。
「あの前に電話をかけてただろう?でも途中から声が聞こえなくなったからな。おかしいと思って、ヴェノムに位置情報を辿ってもらったんだ。それで、あそこに辿り着いた。途中で電源が切られていたから探すのに苦労して、着いた時にはもうほぼ終わっていたが…」
と申し訳なさそうに言うエディさんに、助けに来てくれた感謝をしっかりとする。今度はナナセに
「そういえばナナセのシンビオートはどんな奴なんだ?なんか音を出していたが」
俺がそう聞くと、
『エコーだ。エコーと呼べ』
とナナセの後ろから少し顔を出してそう言った。
「エコーはすごく耳が良くて、超音波とかを出すことができるんだって」
ざっくりとした説明だった。するとエディさんが心配そうに
「ナナセは大丈夫なのか?その…エコーが人を食べたり…とか?」
そう聞いたが、エコーが
『オレはオヤジ殿達と違って、少量のアドレナリンで生きていけるからな〜。後はドーパミンもオレはイケる。オレ的には音楽を聞いた時にでるやつが1番ウマい』
と言ったのを聞いて安心していたが、
「じゃあ、人の頭を食べたがる怪物はヴェノムだけか?」
肩を落とし、すごくがっかりしていた。
するとエコーがおちゃらけた口調でこう言った。
『別にオレだって人を食べても良いんだぜ〜?』
「だーめ、そんなことしたら私の体から出ていってもらうから!」
『そんなこと言うなよ〜冗談だろ〜』
そんなやりとりをしている2人を見ながら、俺は研究所を脱出してすぐの事を思い出す。
実はあの後、ナナセにシンビオートの危険さを教え、取り除こうと思ったのだが、エコーはもちろん、なんと、ナナセからも反対されてしまった。
エコーはナナセと相性が良かったらしく、ナナセをえらく気に入っており、ナナセは
「だって、これでワタルと一緒になったんでしょ?これでワタルと同じ景色が見れるかもしれないし……それに、この子、私とワタルの子みたいなものだから…」
と、ちょっとヤバい目をしながらとんでもなく恐ろしいことを言っていた。
確かに俺の血から生まれたものだが……。
ちなみにその時に俺とブラストの出会いなども詳しく話しておいたのだが、「なんで私に相談しなかったの!」と泣きながら怒られた。
そんな事を思い出しているとヴェノムが顔を出し、
『やっぱり、コイツも変な奴だな。まともなのは俺だけか』
そう言うと、ナナセの背中から青い触手が伸びて、
『なんだ?やんのか?黒いの!』
とエコーが煽りはじめる。すると、
「エコー?」
ナナセが笑顔で言う。もちろん目は笑っていない。
それを聞いたエコーはすぐにナナセの体に戻り、
『わ、悪かった……』
と謝っていた。
『エディ、今の目を見たか?あれは何人かやっている目だった』
「ああ、ナナセは怒らせちゃいけないな…」
ヴェノムとエディさんはナナセの圧に恐怖しているようだった。
俺たちはその光景を見て思わず笑ってしまった。
それを見たナナセは
「ちょっとワタル!ブラスト!笑ってる場合じゃないんだけど」
と俺の腕を掴みながら言う。
「ははは、そうだな」
『ふっ、悪かったな』
と言いながらも、やはり面白い。
そうして、俺たちはしばらく会話を楽しんだ。
その後、俺たちはナナセの家に向かい、無事だと言う事を報告しにいった。
ナナセの両親は俺のことを相当心配していたらしく、俺を見た瞬間抱きしめてきた。
久々の家族の温もりというものを感じて、少し泣きそうになったのは内緒だ。
だが、ナナセは俺が連れ去られた事を聞いた後、無断で研究所に来ていたそうで、両親に叱られていた。
ちなみにナナセはエコーの事を家族に隠すことにしたそうだ。彼女が決めた事だし、俺はその事には口を挟まなかった。また、これを機に一人暮らしを始めてみるとも言っていた。
そして、ナナセの父親はあの夜の事が相当頭に来ていたらしく、バックラーを乗っ取り、父親の会社が直々に運営しようとしているらしい。バックラー全体が悪いわけではないのだが、これでより良くなっていくのなら、それでいいはずだ。
そしてその数日後、エディさんはナナセにも連絡先を渡し、一足先に日本を飛び立っていった。
どうやら、バックラーの傭兵相手に暴れた際に、日本の警察にも目をつけられたらしい。
また、バックラーの事を匿名で記事にするようで、以前話していた南国にでも行き、そこで記事を書くのだろう。
そんな風に考えていると約束の時間が来た。俺は今日アメリカに帰る予定なのだが、ナナセが空港まで見送りに来てくれるというのだ。
「ナナセ、わざわざありがとな。しかも夜に」
「ううん、全然大丈夫だよ。それより、もう帰るんだね……寂しくなるよ。せっかく会えたのにな〜」
ナナセが悲しげに言う。
「ああ、でもまた会いに来るさ。その時はナナセの歌を聞かせてくれないか?」
ナナセは一瞬キョトンとしたが、すぐに笑顔になった。
「もちろん!今度は私がワタルに会いに行くから!」
「ああ、待ってるよ。…ちょっと展望デッキの方で夜景でも見ないか?」
ナナセが首を傾げる。
「え?別に良いけど……」
急にこんな提案をした俺にナナセは不思議そうな顔をしていたが、2人で展望台に向かった。
「綺麗だね〜こんな所があったなんて知らなかった。私達以外誰もいないみたいだけど、貸し切り状態じゃん。なんか得した気分かも。あ、ワタル、あれ見て、滑走路がすごく鮮やかだよ。まるで光の絨毯だね」
そう言ってナナセが微笑む。
「本当だ。この景色をナナセと見れて良かったよ。ずっと覚えておきたいくらいだ。ところでナナセ、俺、君に伝えないといけない事があるんだけど、聞いてくれないか?」
ナナセはこちらを向いて少し驚いた顔をしたが、すぐにいつもの顔に戻った。
「何?改まって。なんでも聞くよ?」
少し緊張してきた。深呼吸をして心を落ち着かせる。そして言った。
「ナナセ、好きだ。付き合ってくれ」
「……え!?それってどういう意味の好き、かな……?」
ナナセは少し戸惑いながら訊いてきた。
「恋愛対象として、好きなんだよ。ナナセといると楽しい。ナナセと一緒にいると、安心できる。それにナナセの歌声を聞いてると元気になるんだ。だから、その……俺と、結婚を前提にお付き合いしてくれないか?」
ナナセはしばらく呆然としていたが、やがて口を開いた。
「……嬉しい。凄く。だって、ワタルの事が好きだったから。私もワタルと一緒だと凄く楽しくて、ワタルといると凄く幸せになれるの。ワタルの事が大好き。愛してる。だから…こちらこそよろしくお願いします」
というか、私、あの時にもう告白みたい事言っちゃってたしね。
と加えて言い、ナナセは目に涙を浮かべていた。
俺はナナセを抱き寄せた。ナナセは驚いていたが、受け入れてくれた。
そのままキスをした。ナナセの唇はとても柔らかくて温かかった。
しばらくして、俺たちはお互いの気持ちを伝え合った事でより一層距離が縮まった気がした。すると、今まで空気を読んで静かにしていたシンビオート達が
『よくやった!ワタル!俺の言った通りだったろう!!』
『ナナセ〜良かったな〜!!』
と俺たちを祝福してくれた。しかし、幸せな時間ももう終わりのようで、飛行機の出発時刻が近づいてきていた。
「もしかして、もう時間?」
ナナセが時計を見てそう言う。
「ああ、そうみたいだ。そろそろ行くよ」
するとナナセが抱きついてくる。
「ナナセ、どうしたんだ?」
「んー、もう少しだけこうしてたいなって思って……」
そう言って、ナナセは顔を赤らめながら上目遣いで見つめてくる。
可愛いすぎるだろ。このまま連れ去りたいくらいだ。
そんな衝動に駆られそうになるが、なんとか堪えて、
「わかった。でも、そろそろ行かないと…」
と言うと、
「うん……そうだね。じゃあ、最後にもう一回だけしていい?私からしたいの!」
と言ってきた。断る理由なんてない。
なので、
「分かったよ、ナナセ」
と答える。すると、ナナセは目を瞑ってキスしてきた。
彼女の柔らかい唇の感触を感じつつ、ナナセの体温を感じる。
そして、ナナセが舌を入れてきたので、それに応えるようにこちらも絡める。そのまましばらくお互いに求め合い、やがてゆっくりと離れる。名残惜しさはあったが、いつまでもこうしているわけにはいかない。
俺はナナセに軽く口づけをして、それから言った。
「ナナセ、また会いに来るから。今度はもっと長く一緒に居よう。だから待っていてくれ」
ナナセは俺の言葉を聞いて嬉しそうな表情を浮かべた。
「ありがとう、ワタル。ずっと待っているから。それと、私の方からも会いに行くから!絶対だよ?」
と彼女は答えた。
「ああ、約束する。必ずまた来るから。それまで元気でな。愛しているよ、ナナセ」
そう言って、彼女を抱きしめる。
「私も。大好き。また会おうね、ワタル」
ナナセも抱き返してくる。
それから、シンビオート達も
『じゃあな!オヤジ殿!!今度会う時はオレの方が強くなってるかもな!!』
『はっ、寝言は寝て言え!………またな、クソガキ!!』
と言って挨拶を交わしていた。
それから俺は飛行機の搭乗ゲートに向かう。
その途中で後ろを振り向くと、そこには笑顔のナナセがいた。
彼女と目が合うと、ナナセは小さく手を振ってくれたので、それに応えてから前を向いて歩き出す。こうして、俺たちは別れたのだった。
機内で俺は自分の唇を指でなぞり、ナナセの温もりを思い出しながら、これからの事に思いを馳せる。色々なことがあったが、もうこれ以上事件に巻き込まれることは避けたいものだ。そんな事を考えていると、
『ワタル、いくらナナセが恋人になってくれて、キスが良かったからって、流石に何度もそれをするのはキモいぞ』
とブラストに言われ、普通に傷ついた。
それから俺たちはいつもの日常に戻った。
犯罪者を倒したり、仕事をこなした後、犯罪者を捕まえたり、ナナセと電話したり、犯罪者をボコしたり……そんな毎日を続け、年が明ける。
2018年
それは俺たちにとって………いや全人類、全宇宙にとっての、さらなる悲劇の幕開けだった。
次回からインフィニティウォーいけそうです!
ただナナセはしばらく出てこなくなるかも…
引き続きよろしくお願いします!!