パワーも無い!スピードも無い!波紋もそれほど走ってない!そんな幽波紋使いが箱庭に来てしまった件について 作:BサインからCサイン
しかし久しぶりの投稿で誤って内容が途中のまま投稿してしまい申し訳ない。
そんな大変お待たせしました次話ですどうぞ。
――――――翌日の箱庭二一〇五三八〇外門、ペリベッド通り・噴水広場前。
久遠飛鳥、春日部耀、ジン=ラッセル、逆廻十六夜、黒ウサギ、そして僕こと如城輝之助はギフトゲームの舞台、"フォレス・ガロ"の居住区画へ向かっていた。
その道中、"六本傷"の旗が掲げられたカフェテラスを通るところを猫耳のウェイトレスの少女に声をかけられた。
昨日、僕が"ノーネーム"やガスパーと出会ったあのカフェテラスの猫娘である。
「あー!昨日のお客さん!もしかして今から決闘ですか!?」
『ニャアァーォ』
ウェイトレスが僕たちに駆け寄ってきて一礼する。
そのとき耀の猫がウェイトレスに鳴いたが、僕は猫の気持ちがわかる訳じゃあないし、気にすることじゃあないだろう。
「ウチのボスからもエールを頼まれました!"フォレス・ガロ"はこの二一〇五三八外門の区画すべてでやりたい放題だったんでウチのコミュニティも頭にきてたところなんです!二度と不義理なマネができないようにしてやってください!」
「ええ、もちろんそのつもりよ」
「おお!これは心強いお返事!」
苦笑まじりの飛鳥に満面の笑みで返すウェイトレスだが、急に声を潜めてヒソヒソと呟き始める。
「実はみなさんにお話が……"フォレス・ガロ"の連中、領地の舞台区画ではなく、居住区画でゲームを行うらしいんですよ。しかも、傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽりだしてガルド一人で!」
その話に全員が不審と疑問を抱いた。
舞台区画とはコミュニティが保有するギフトゲームを行うための土地であり、居住区画は言わずともがなコミュニティが寝泊まりする土地である。
そんな場所に仲間も部下も連れず一人で決戦に挑むとは…確かにおかしい。昨日、飛鳥のギフトに屈服させられていたガスパーが危機感を感じないとは思えないが……まぁ、気が狂ったのならソレはソレでいいか。
僕としては、ある程度地の理がある居住区画の方が戦い易いからな。
「どんなゲームかはわかりませんが、気を付けてくださいねー!」
情報をくれたウェイトレスに礼を言って、僕たちは"フォレス・ガロ"の居住区画に向かった。
ここまで来るのに長かった。本当に…今度こそ完全に息の根を止めてやるぞガスパー。
【復讐と決着の件について】
「あ!みなさん"フォレス・ガロ"の居住区画が見えてきました!…けれどこれは…」
居住区画に到着した黒ウサギ、そして同様に僕らも目を疑った。
居住区画が怪しげな森に変貌していたからだ。
門にはツタが絡み、鬱葱と生い茂る木々はまるで森そのものだ。
ソレは一度居住区画に来た経験のある僕からすれば、劇的で気味の悪い変化と言えよう。
「………ジャングル?」
「虎の住むコミュニティだし、別におかしくはないだろ」
「いや…おかしい。確かに"フォレス・ガロ"の居住区画には森があったが、これじゃあまるで森そのものだ…なにかが変わったのか?」
「これは……」
ふと気づけばジンが木々の一つに手を触れて、何かを考えている。
よく見ると木はまるで生物のように脈をうち、肌を通して胎動のようなモノを感じさせた。
そしてジンは確信を得たように呟いた。
「やっぱり――――"鬼化"している…?」
「おい、ここに"契約書類"が貼ってあるぞ」
『ギフトゲーム名 "ハンティング"
・プレイヤー一覧 久遠 飛鳥
春日部 耀
如城 輝之助
ジン=ラッセル
・クリア条件 ホストの本拠地に潜むガルド=ガスパーの討伐。
・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は"契約"によってガルド=ガスパーを傷つけることは不可能。
・敗北条件 降参かプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、"ノーネーム"はギフトゲームに参加します。
"フォレス・ガロ"印』
「ガルドの身をクリア条件に……指定武具で打倒!?これはマズいです!」
「?このゲームはそんなに危険なの?」
"契約書類"の内容を確認したとたん悲鳴のような声をあげた黒ウサギに、飛鳥が心配そうに尋ねた。
「いえ、ゲームそのものは単純です。ですが問題はこのルール…このルールでは飛鳥さんのギフトで操ることも、耀さんのギフトで傷つけることができなくなってしまうのです…!」
「…どういうこと?」
「…簡単に言えば、ガスパーへのギフトでの直接攻撃ができなくなったってことだ」
いまいち理解していない様子の飛鳥に補足を入れる。
彼女はなるほどと呟き、黒ウサギも頷きながら僕の説明に補足を入れる。
「ギフトゲームの参加者はそのルールを守らなければいけません。ガルドは"恩恵"ではなく"契約"によって自分の命を賭けることで、たとえ神格でも手を出せないほどに身を守っているのです!」
「なるほどな。敵は命がけで五分に持ち込んだわけか…お嬢様たちのギフトが通じないとなると、ギフトを自由に使えるのは輝之助だけってことか」
「いや、指定武具とある以上僕のギフトも直接的な攻撃じゃあ通じないだろう。そう期待されても困るが…まぁ、力を合わせれば勝てないゲームじゃあないだろう」
「あっさり言ってくれるわね……条件はかなり厳しいわよ」
飛鳥は厳しい顔で"契約書類"を覗き込む。
自分から挑んだ手前、責任を感じているのだろう。
それを見て、黒ウサギが彼女の手を握って励ました。
「だ、大丈夫ですよ!"契約書類"に『指定』武具と書いてある以上、最低でもなんらかのヒントが隠されているはずです。もし無ければガルドはルール違反、その場で"フォレス・ガロ"の敗北は決定です!この黒ウサギがいる限り、いかなる反則もさせません!」
「うん、大丈夫。黒ウサギもこう言ってるし、私も頑張る」
「……そうね。むしろハンデがあった方が、あの外道のプライドを打ち砕くのには丁度いいわ」
愛嬌たっぷりに励ます黒ウサギとやる気を見せる耀の激に、飛鳥も奮起する。
ギフトに頼るところが大きい者にはかなり厳しいと言えるこのルールだが…"そんなこと"で勝利を諦めてはいけない。
それに、わざわざ敵が自分の命を勝利条件にしてくれたのだ…こんな機会が訪れるのはもうないだろう。
絶対に
瞬間、太い蔦が門に絡まって退路を塞いだ。恐らく門の開閉がゲーム開始の合図だったんだろう。これで完全に後戻りはできなくなった、というわけだ。
辺りを見渡す。
"フォレス・ガロ"の居住区は光を遮るほどの密度の木々が立ち並び、とても人が住める場所ではないことがわかる。
街路と思われるレンガの並びは下から迫り上がる巨大な根によってバラバラに分かれ、もはや人が通れるような道ではなくなっている。
これではどこから奇襲を仕掛けてくるのか分からない。
飛鳥とジンは緊張した面持ちで周囲を警戒している。
そこで、耀が助言をした。
「大丈夫。近くには誰もいない。匂いでわかる」
「あら、もしかして犬にも友達が?」
「うん。二十匹くらい」
昨日、"サウザンドアイズ"でわかったことだが……彼女のギフトは獣の友人と同じ力を得ることらしい。
つまりそういった友達を作れば作るほどより強力になっていくギフトであり、その保有者である耀も無限に進化を続けていくことになる。
犬だけで20匹以上友達がいるというのなら相当なモノだが、他にもきっといっぱいいるのだろう。だとすれば、彼女の身体能力がずば抜けて高いのにも納得できる。
「耀さん、敵の詳しい位置はわかりますか?」
「それはわからない。でも風下にいるのに匂いがないのだから、何処かの家に潜んでいる可能性は高いと思う」
「ではまず外から探しましょう」
「いや、その必要は無い」
散策を始めようとする三人を言葉で止める。三人の目が僕に向けられた。
飛鳥は"ギフトカードから取り出した多めの砂と小石を地面にぶちまけている"僕を怪訝そうに見ながら問う。
「…何をしているのかしら?それに、さっきの言葉はどういうこと?」
「わざわざガスパーを探しにいく必要は無い、ってことだ。そんな方法よりも、僕の
飛鳥の問いに答えながら、右手をぶちまけた砂の上に重ねる。
これで準備は整った……僕は力を込めながら、その能力の名を呼ぶ。
「〈
瞬間、僕の右手から紫色の茨の形をしたスタンド、〈ハーミット・パープル〉がその姿を現した。
〈ハーミット・パープル〉が砂の上を這う。それに合わせ、砂と小石がまるで意志を持ったように動いていく。
「こ、これは…!」
「砂の粒が勝手に集まって…地図の形になってるっ!?」
一人でに動く砂と小石に、三人の表情が驚愕に変わる。
スタンドはスタンド使いにしか見えない…だが、見えていなくても並大抵の人間は驚くだろう。
"砂が一人でに動き、地図の形になっていく"のだから。
「もしかしてこの地図は…」
「そう、"フォレス・ガロ"の居住区一帯の地図だ。砂を使って、"念写"して作った」
〈ハーミット・パープル〉の持つ能力の一つ、それが"念写"である。
本来、念写を行うにはカメラが必要なのだが…いまのように、小物を使って地図を作れたり、他にもテレビを使った"念聴"など…非常に索敵探査に優れたスタンドだ。
僕は地図を指で指しながら三人に能力の説明を加える。
「いま僕たちはココにいる…」
居住区の通路にある四つの小石を指さす。
そして今度は本拠付近にある、ゆっくり動く小さな小石を指で指した。
「この小石がガスパーだ……いま、本拠の中に入った。位置からして二階のあたりか…ということは」
「そこにガスパーがいるんだね」
「そうだ。あとは指定武具さえ見つけれればいいんだが……僕の〈ハーミット・パープル〉はあまり細かいモノまで念写することはできない。残念だが、これが限界だ」
「いえ、大金星ですよ!それに、敵が本拠から動かないということは、指定武具も近くにあるはずです…ソレを手に入れれば、勝利は目の前です!」
「なら、ここに居続ける理由は無いわね。早く本拠へ向かいましょう」
飛鳥の言葉に頷き、僕たちは本拠の館に向かい始めた。
道中に見かける木々は、侵入を阻むかのように道を浸食していたりと、まるで命じられたように絡み合っていた。
「見て、館まで飲み込まれているわよ」
"フォレス・ガロ"の本拠に着いた。
虎の紋様が施されていた扉は無残に切り刻まれ、窓ガラスは砕け散っている。
豪華な外見は見る影もなく、塗装もツタに蝕まれ剥ぎ取られていた。
「やっぱりガルドは二階に居た。入っても大丈夫」
「…そうみたいだな」
グリフォンの力を使い、空から館内部の様子を確認してきた耀が言う。
僕自身も〈ハーミット・パープル〉でガスパーの位置を把握しているが、念のためって奴だ。どんな罠があるとも限らないからな。
それを確認して館の中に入るが……やはり、内装も酷いモノだった。
贅を尽くして作らせたであろう家具は打倒されて散在しているし壁や床も傷だらけ、薄暗くてよく見えないが血のシミのような痕もいくつかある。
「妙だ…奴はいったい何を考えているんだ?」
「やっぱり違和感あるよね」
「ああ、なんていうか"奴らしくない"んだ。自分に有利な舞台をセッティングした癖に罠は無いし、森の中で奇襲をかけてくる訳でもない…二階にいる意味だってサッパリだ。まぁ指定武具が壁に固定されている物だったりするなら別だろうが…」
「落ち着いて。ここで考えても仕方がないわ。まずは一階から散策して指定武具を見つけましょう?」
「まぁそうだな。まず指定武具を見つけることが最優先だ…だが一階を探す必要は無いと思う」
「何故ですか?」
「わかるんだよ。二階から動かないってのに態々指定武具を一階に置く必要はない、奴の心には"臆病さ"が潜んでいる。自分を殺せる手段を敢えて一つに絞ったなら、それを守ってるだろうさ」
その理由を尋ねてくるジンに答えを返す。まぁ"勘"なんだがな。直感って奴さ。
だがこの直感には確信を持っているので、僕はさっさと二階へ行こうと三人を促す。
「待ってちょうだい。」
「ん…?」
しかし飛鳥に呼び止められてしまう。
上で何が起こるか分からない以上、退路を守る為にも二階へ上がる者と階下に残る者の二手に分かれた方がいいということだった。
なるほど一理ある…だが僕は一階で待っているなんてことはごめんだ。ガスパーを殺すのは僕がやらなくてはならないのだから。
そしてお互いの"恩恵"や戦力について---勿論すべてを明かしはしなかったが---を話し合った結果、僕と飛鳥が二階へ上がり耀とジンが一階で退路を守ることとなった。
「じゃあ行こうか。それの使い時は任せる」
「ええ。任されたわ。」
そして僕らは静かに階段を上がりだした。
「ギ…GEEEEYAAAAaaaa!!!」
「
二階に上がった先の扉を開くと、言葉を失い虎の怪物と化したガスパーが目にも留まらぬ突進を仕掛けてきた。
反射的に、肉を取り込む不定形のスライムのようなスタンド〈イエローテンパランス〉を僕らの防御壁として出現させ突進を受け止める。
このスタンドは肉と同化しているのでスタンド使い以外にも視認できるという特徴の他に、直接触ると触れた部位に食いつき吸収しはじめる"攻撃する防御壁"としての性質があるが、ギフトゲームのルールに守られているガスパーには効果が無い。
「飛鳥ッ、指定武具はどこかにないか!?」
「…有った!ガスパーの背後に十字剣が見えたわ!」
「でかしたぞ!こいつは僕が抑えておく、剣を回収してくれるかッ?」
「わかったわ。けど、無茶は駄目よ!」
突然目の前に現れた防御壁に一瞬驚いたようだが、すぐに持ち直して彼女は回収に動き出した。
よし、ルール上、スタンドの防御壁でガスパーを拘束することはできない。
だが僕は防御するだけだ、飛鳥の盾役になって指定武具を回収するまでの時間稼ぎを行うことにはなんの問題もない。
本能的に剣を奪取されまいと背後に振り向くガスパーの前に、スタンドを全身に纏い滑るように回り込み道をふさいでやる。
「ルールに守られてさえなければ、物理攻撃しかできないだろうお前をじわじわ食ってやることができたんだがな…。だが問題はない、よくわからん姿に成っているようだがお前の攻撃手段が力技しかない以上〈イエローテンパランス〉を突破することはできない!!」
「GEEEYAAAAAッ!!」
しかし無駄だ。このスタンドは全身に纏えば物理攻撃にはほぼ無敵。このスタンドの本来の使用者であるラバーソールや、その強さを味わった空条承太郎ですら「弱点は無い」と豪語する防御力なのだ。
攻撃はできずとも時間稼ぎをするくらいはわけがない…そしてその隙に飛鳥が十字剣の回収し終えたのを流し目で確認する。
「取った!輝之助くん、手筈通りにいくわよ!」
「わかったッ。〈イエローテンパランス〉解除だ!」
スタンドを解除し防御壁がなくなると、すぐにガスパーがパワー全開で突進を仕掛けようと溜めの姿勢に入る。
だが怪物になった今のお前は察する知性が無いんだろうな…僕らは既に準備を終えている。だからこそスタンド能力を解除したのだ。
「今よ、
「GEEEEYAAAAAaaaaッ!!!」
飛鳥が体前に構えたギフトカードから頑丈な大繩が何本も飛び出し、彼女の言葉通りにガスパーを拘束する。
(話じゃあ聞いていたがこれが!久遠飛鳥の"恩恵"!人を操る力の発展形…"ギフトを支配するギフト"!人や生物じゃあなく、無機物や"恩恵"その物を支配できるってわけかッ)
(やっぱり凄い利便性だわ。ギフトカードを介して物を自在に取り出し、収納できる力…これが輝之助くんの"恩恵"!)
ルール上、あらゆるギフトによる直接攻撃はガスパーに対し無意味と化す。
しかし間接的な物であればどうだろうか?攻撃にギフトが関わらなければどうだろうか?
どんなルールにも穴というものは存在する。僕のスタンド〈エニグマ〉で紙化し所持していた大繩を飛鳥のギフトカードに収納させ、飛鳥の"恩恵"で意のままに操らせガスパーの拘束を可能にしたのだ。
結果!ガスパーの動きは著しく鈍った!
「とはいえただの太い縄、持って数秒…引き千切られるその前にッ」
「わかってるわ!」
「逃げるんだよォ!飛鳥ーッ」
「…ええっ!?」
←to be continued
〈イエローテンパランス〉
【第三部 スターダストクルセイダース】に登場
【破壊力-D/スピード-C/射程距離-E/持続力-A/精密動作性-E/成長性-D】
相手に同化し、肉を取り込む不定形のスライムのようなスタンド。
肉と同化しているので一般人の眼に見えるし触れもする。
直接触ると触れた部位に食いつき吸収しだす「攻撃する防御壁」としての性質も持ち、食った対象のエネルギーを取り込んでパワーアップする。
しかし相手がギフトゲームのルールで身を守っていた為にその攻撃性は発揮されなかった。
この作品のスタンドは初登場で本来の能力が発揮しないことが多い気がする。
輝之助「反省も後悔もしていない」正座中
飛鳥「黙りなさい!」説教中
耀「ギフトゲーム、一話じゃ終わらなかったね」
次回【復讐と決着の件について②】