パワーも無い!スピードも無い!波紋もそれほど走ってない!そんな幽波紋使いが箱庭に来てしまった件について   作:BサインからCサイン

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感想がごっそり減っちゃったなー……安西先生…感想が、欲しいです。
なんでかな、ジョジョ成分が足りなかったのかな?
よし、ならば増やすのみである。


スタンド使いが生きるために脱獄する件について

過去世界中で発生した脱獄、それは1800年代から無くならない、囚人の最後の抵抗。日本人の中でも刑務所から脱獄した囚人は少なくはない、日本の脱獄王と呼ばれた白鳥 由栄や脱獄魔で知られた西川 寅吉も、脱獄こそ成功してはいるがすぐに捕まってしまっている。

 

それだけ脱獄というのは難しいのだ。脱獄するのはなんのためか?生きるためだ、自由を手に入れるためだ、そのためには脱獄し尚且つ捕まらずに安全地帯に逃げることが絶対だ。

 

僕は脱獄しなくてはならない。生きるために、生き延びるために、こんなところで終わってたまるものか、スタンドなんておもしろいモノを手に入れたのに、異世界にも来たのにこんなところでゲームオーバーなんてたまったもんじゃあない。

 

だが…僕は本当にこの屋敷から無事に脱出することができるのか?子供たち全員を、連れ出すことができるのだろうか。牢屋に残った子供が逃げるには、僕らの内誰かがコミュニティまで逃げ延びなくてはならない。

 

いや、できるかできないかじゃあない。やるしかないのだ、それ以外に、生き延びるすべはない。

 

 

 

 

【スタンド使いが生きるために脱獄する件について】

 

 

 

 

「うおおあああッー!」

「タコスッ!?」

「ハァハァ……よし、死んじゃあいないな……」

「…おお!ホントに瞬間移動した」

「周りに人はいない?っていうかその人は大丈夫なの……?」

「ああ、命までは失っていないと思う、気絶しているだけだ。さあ、早くここを出るぞ」

 

側近の男を気絶させロロ、ハリー、リータの三人と部屋を出た。ここは側近の男の私室のようだ…だが、窓から見えた景色からしてここは二階、ならまずは下に降りる階段を探さなくては。

 

「!ちょっと待って!」

「どうした?」

「匂いがする…誰かこっちに来るよ!」

「なんだって!?か、隠れないと!」

「いや、近くにそんなところはない。……僕に任せろ、〈エコーズ ACT1〉」

 

〈エコーズ ACT1〉を曲がり角の向こうに向かわせる。そこには笑談しながら歩いてくる二人組の姿があった。〈ACT1〉じゃあ撃退させることはできないな…せめた〈ACT2〉がいればよかったんだが……だが問題はない。〈エコーズ ACT1〉はファイルした紙を開き、男たちの周りに水が音も無くしたたる。そして、

 

「男二人ならコイツで……いけ、〈サバイバー〉」

 

薄い紐の円盤のようなスタンドが、床を這って男たちの足元に移動していく。

 

「はぁ…最近ガルド様、人使い荒いんだよなぁ。今日だって、やっと外から帰ってきたじゃんかオレら」

「あぁわかるわかる、昨日なんか風呂の途中で呼び出されたんだぜオレ、おかげで風邪気味で……ヘクシュッ!」

「おわっ、きったねぇな~…服がオマエのくしゃみで汚れたじゃねぇか」

「おっと悪ィ、つい口を押えるのを忘れてたぜ」

「気をつけてくれよなァ~~、これから外に出るってのに、着替えは部屋まで戻らないとないんだからよー」

 

そういうと、男は軽いノリでもう一人をドツいた。すると、ドツかれた男の笑顔が止まり、不満そうな顔になる。

 

「なぁ…なんでドツくんだ? 今オレあやまったじゃん、わざとクシャミしたわけじゃないしさあ」

「そう?オレいまドツいた?」

 

クシャミをした男は、ドツいてきた男に向かって強くドツき返した。するとドツき返された男の方がさらに強く。その様子をいつのまにか一緒に見ていた三人が、

 

「ねぇ、あの人たちどうしちゃったの?」

「それにあのマットみたいなのなに…?これも輝之助のギフトなの?」

「ああ、能力名は〈サバイバー〉という…三人とも、もっと僕から離れてくれ、近くにいると君たちまで()()なるぞ」

 

そう言うとササーっと僕から離れていく三人から、意識を〈エコーズ〉に戻すと、男たちに先ほどのような明るい雰囲気はなく、イライラした雰囲気が立ち込めていた。どうやらデキアガッタらしい。

 

「なんなんだよォ――― オレいまそんなに強くやったか?」

「なんだこの野郎ッ!」

「てめーこそそんな強くドツきやがってよォ――ッ」

「野郎ッ」

「てめーッ」

 

とうとう喧嘩が始まった。ドガッ、ガス、ボコ、バキッと、一切の容赦も相手に対する考慮もない本気の殴り合いだ、殴られた箇所からは抉られたように血が飛び出した。

 

これが能力〈サバイバー〉 だ。【第六部 ストーンオーシャン】に登場したが最も『弱い』能力を持つスタンドである。〈サバイバー〉の能力、それは『周囲の生物を無差別に怒らせ、凶暴かつ好戦的にする』というモノだ。凶暴化した奴は一時的に自己の潜在能力を限界まで引き出され、超人的な戦闘力を持ち、さらに痛みに対して多少鈍感になる。

 

「わかったッ!やめろッ! やめろって!ストップ!ストップ! あやまるよゴメン、着替えがないんならオレのを貸すよ!それでいいだろ?だからケンカはやめようぜ!」

「どうしたっていうんだよォォォ~~~落ちつけって…ムシの居所が悪いのかい?友達だろ?オレたち」

 

言葉とは裏腹に、見ていて気持ちがいいほどの右ストレートが互いの顔面に直撃した。

 

「いいパンチしてるぜッ!この野郎ッ!」

「かかってきやがれッ!」

 

どんどん喧嘩は危険な方向へと発展していく、もう、子供たちには見せたくないほど生々しい傷跡が殴られた箇所についている。…獣人の体力がどれほどのモノかはわからないが、恐らくもうすぐ力尽きるはず……それを待つのだ。

数秒後、男たちが倒れ込むのを確認して〈サバイバー〉を解除する。

 

「よし、男たちが来た方へ行ってみよう。外から帰ってきたと言っていたしな、恐らく向こうに階段があるはずだ」

「うん!」

「ねぇ輝之助…この人たちすっごく殴り合っていたけど、誰か来たりしないよね?」

「…早く行こう!」

「あ、誤魔化した」

 

そんなの考慮していない。

しょうがないだろう、他に対処できるスタンドがいなかったんだ。

 

 

 

 

少し走った先にあった階段、そこからは正面の入り口であろう扉が見えた。辺りを確認しても、誰かがいる気配はしなかった。あと少し―――――その場にいた全員がそう確信した。

 

「で、出口だ!これで出られるッ」

「やったあ!助かったんだね!」

「うん!早く行こうっ!」

 

歓喜の声をあげると、三人は一斉に扉に向かって走り出した。僕もあとに続こうとしたが……ふと違和感を感じた。

 

「―――――……?」

 

階段を降りている途中で感じたソレは、すぐにわかった、。二階の部屋から男がこちらを見ている。僕たちが逃げ出そうとしていることに気づいた男は、

 

「きさまら、いつのまに脱走をッ!」

「!?気づかれたかッ」

「絶対に逃がすわけにはいかないッ!」

 

僕はすぐにスタンドを出現させる。三人はまだ兵士の存在に気づいていない、僕が対処するしかない!〈エニグマ〉を出現させた僕は階段の方に移動し、胸ポケットから取り出した紙を開いた。その中からは一丁のショットガンが飛び出す、僕はそれを構え、安全装置を外した。

 

「なっ…!?(銃器だとッ!?なぜ子供がそんなものをッ!?いや戸惑っている場合ではない、殺られるッ)」

 

銃口を向けられた兵士は『ほんの一瞬』身体が硬直したが、咄嗟に身構え、『目を瞑り』防御の体制にだる。だが、それを僕と〈エニグマ〉は見逃さなかった。

 

「『目を瞑ったな』!それがオマエの恐怖のサインだッ、エニグマァァァーッ!!」

「!?お、俺の身体がっ、紙にっ!?うおおおおおおおっ」

 

恐怖のサインを見つけたとき、〈エニグマ〉は絶対無敵の攻撃を完了とするのだ。ビビった男の身体が、エッシャーの「昼と夜」のように〈エニグマ〉の身体と重ね合っていき、最後には一枚の紙となった。

 

紙が自動的に折りたたまれ床にポトリと落ちると、なぜか乾いた笑いがこみ上げてきた。

 

「…ハ、ハハハッ、やってやったぜ!あいつ、モデルガンに騙されやがった!」

 

僕はこれまで、〈エニグマ〉を生物以外に使ったことはなかった。箱庭にきてからも、ギフトゲームにこそ参加したが、戦闘みたいなことはまだしたことがなかった。『勝利』という二文字は、僕に多大な興奮を与えた。

 

「輝之助ー?どうしたの、早く出ようよ!」

「よしっ、鍵が開いた!さっきの男たちからもらっといて正解だったぜ!」

 

紙を拾いポケットの中に入れると、いつの間にか三人は扉を開けてもう外へと出ようとしていた。階段の下から見えた景色に、まるでモナリザやミロのビーナスを見たような感動を覚えた。

 

「ああ!いまそっちに行く―――――――」

 

自分も早くここから出よう。そう思って走り出したとき、ゾクリ、と嫌な寒気が突然襲った。

 

「…………」

「…………」

 

立ち止まってしまうほど、かつてない寒気だった。ケツの穴に氷柱を突っ込まれた気分だ…!視線だけで僕を震え上がらせるほどの殺気が、僕を貫いている。それは、階段の上から……

 

「どこに行くんだ、小僧」

「―――――――――ッ」

 

階段の上から、ガルド=ガスパーが僕たちを見下ろしていた。

 

「みんなッ、逃げろォォォ――――ッ!!」

 

死ぬ。そう思った。今まで出会ったどの危険な体験をも超えている凄味を感じた、エンジン音だけ聞いてブルドーザーだと認識できるようにわかった。逃げなければ、死ぬ――――――その一言が僕の脳裏を過ぎった。扉に向かって走り出す僕を追って、ガスパーも姿を虎の獣へと変化させ、走り出した。

 

「え!?」

「が、ガルド=ガスパー!?」

「なんでここにッ」

「なんでもいいッ、早く逃げろーッ!」

 

ガスパーが追ってきたことに気づき、三人も一目散に走り出す。しかし所詮子供の脚力では、短時間でそう遠くへは逃げられない。少しでも時間を稼ごうと、僕は開いた扉を急いで閉めたがそれも簡単に突破された。虎に姿を変えたガスパーは、その腕の一振りで扉を容易にぶち壊した。

 

(オイオイオイオイオイ――――――マズイぞ!虎の速さはおよそ時速50~60キロ、このままじゃあすぐに追いつかれるじゃあないかッ!せっかくここまできたっていうのに!!)

 

走りながら輝之助は絶望した。外に出ることには成功したが、すぐに追いつかれてしまった。

 

「逃げられると思ったかッ!小僧ッ」

 

ガスパーの鋭い爪が、僕に向かって振り下ろされる。

 

「ッ―――エニグマアアアアーッ!!僕の踏み台になれェーッ」

 

咄嗟のことだった。足元にスタンドを出現させ、跳び箱の坂のように踏み台にすることで、ガスパーの腕を跳んで避けたのだ。

 

「僕は生きるッ、なにがなんでも生きるッ!」

 

この屋敷の周りは森になっていてここからは街は見えない。だが、それでも僕は走った。そのあとを追おうと同じように走り出すガスパー、だが奴は突然とその巨体を横転させた。

 

「ぬぅ…これは油ッ!忌々しいガキが、姑息な手を……」

(他の兵を呼んでいる暇は…ないな。あいつらは絶対に生かすわけにはいかんッ!早く、俺自身の手で始末せねばならん!それにあのガキは、なかなか強力なギフトを持っているようだしな)

 

世界一危険な鬼ごっこが始まった。捕まれば、死ぬ。

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ……みんなは、無事か……?」

 

あれから、かなりの時間を走った気がする。いや、もしかしたらまだ一分も経っていないかもしれない…ファイルした油や鋭利なモノを走りながら撒いたのが功をそうしたのか、あれからガスパーには一度も会っていない。会いたくもない。仲間を呼びに屋敷に戻ったのか、それとも諦めたのか…いや、そんなことはどうでもいい。あいつがどんな行動に出ようと、僕にある選択肢は逃げることだけなのだから。

 

ガサッ

 

「!だ、誰だッ!?」

 

咄嗟に身構える。が、茂みから出てきたのは僕のよく知った少年だった。

 

「ま、待って!僕だよ……」

「ハリー!逃げ切ったのか?…リータと、ロロは……?」

「ゴメン、わからない…途中ではぐれてしまったんだ」

「そうか……でもよかったよ無事で」

「ありがとう…どうする?あの二人を探しに行くかい?」

「そんなの……」

 

当たり前じゃあないか、と言おうとしたが、声が出ない。本当は行きたくない、またあいつと出会うかもしれないのに、危険を冒したくない。できることならこのまま、二人で森を逃げ出したかった。でもそしたら、ロロとリータは無事では済まないかもしれない。自分の中の良心と恐怖心がぐちゃぐちゃになって、そこから先が言えなかった……。そのときだった。

 

「うおわああああああッ!!」

「!いまのはッ」

「リータの悲鳴だッ!なにかあったんだッ、助けに行くよ輝之助!」

「あ、ああ!」

 

突如森に響いたリータの悲鳴。僕とハリーは急いで悲鳴がした方へと走る。そこには、震えながら座り込んでいるリータと、彼に鋭い爪を向けるガスパーの姿があった。

 

「リータッ」

「!ガスパーまでッ、やっぱりか……!」

「くそッ、いま行くぞ――――――」

「待てッ、どうやって助けるつもりだ!キミじゃあ奴に敵わないのは知っているだろうッ!?」

「だからって…リータを放って逃げるなんて僕にはできない!」

「あれは罠だ!どうしてガスパーがすぐにリータを殺さないと思う?僕らを誘き寄せるためだ、ここで姿を現したら奴の思うツボだ、この状況で助けに行くなんてバカのすることだ!」

「だからってリータを見捨てるのかい!?」

「違うッ!三人とも全滅する危険を冒すことがまずいんだッ!僕たちの内、一人でもコミュニティにまで逃げ切ることができればそれでいいんだッ!!」

「拒否するよ!見て…ガスパーとリータの距離はそこまで近くない、ひょっとしたら助けられるかもしれないんだ!」

「確かにあるかもしれないなぁ!でもそれはどれだけ確率だ?一割もないような賭けに出る必要はないッ!失敗すればキミも死ぬんだぞッ!?」

「…でも、それでも!助かるかもしれないという可能性が1%でもあるなら…!助けないわけにはいかないだろう、ワナだと分かっていてもッ!!」

「おい、ハリーッ!?くそッ」

 

僕の手を振りきってハリーは二人のところへ飛び出してしまった。僕は悔しくて唇を強く噛んだ。どうして行くんだ?助けられるわけがないだろう!キミはともかく、僕だって無理だ!未だに僕が使えるスタンド能力は破壊力がDも無いんだぞ!それに、リータが時間をかせいでくれている間に逃げれば、逃げ切れる確率だってあがるのに……だが、

 

「ハリー、キミ…ちょっぴりカッコイイじゃあないか」

 

 

 

 

 

 

 

「くるな…お、俺のそばによ…寄るなっ!」

「クク……どうした、そんなに怖がらなくもいいじゃあないか?ん?」

「ヒィ……!」

 

ガルド=ガスパーは、その気になれば自分にとってちっぽけな子供など簡単に始末することができた。人と虎と悪魔から霊格を得たワータイガー、猫科とはいえその五感は人間を遥かに超えている。それほど離れていなければ、匂いを辿って探すことも可能だったのだ。

だがそれでは幾分か時間がかかってしまう、たとえ三人を殺したとしても、一人に逃げられてしまえば意味がない。だからガスパーは、子供の悲鳴を使って他の子供を誘き寄せる作戦にでた。一対四の状況だったとしても、確実に皆殺しにする自信があるからだ。

 

「さて…そろそろキサマを殺すか。どうするかなァ?この爪で三枚に下ろすのもいいなァ、それともひと思いに丸呑みしてやろうか…」

「う、ううう……!」

「決めたぞ…キサマの内臓を抉り取って殺してやるッ!」

「やめろォォォ――――――ッ!!」

 

ガスパーがその腕を振り下ろそうとした瞬間、その背後からハリーが飛び出した。しかし、ガスパーもハリーが飛び出してくるのには気づいていた。ハリーはガスパー目掛けて、尖った石を投げつけたが、それをガスパーは腕一本で弾く。

 

「フン!やはり来たか、所詮キサマらはこの俺にとってとるにたらん存在よッ!まんまと罠にかかってくれたなッ!わかるぞッ、残りのガキ共もこっちに向かって来ているのがな!フフフ…来るがいいッ、キサマらはチェスや将棋でいう『詰み(チェックメイト)』にはまったのだッ!」

 

自身の勝利を確信し、ガスパーはリータに向かってその鋭い爪を突き刺そうとした。

 

が、その瞬間、どこからか飛んできた『透明な物体』がガスパー顔に直撃した。それは運良く彼の眼を傷つけ、リータに振り下ろした爪は彼の横スレスレを切り裂いた。

 

「ぐうおおああああああ―――――ッ!!目がッ、目があああああああ!!」

「もいっぱあああああつッ!!」

「うぐおお!?」

「!輝之助ェッ!!」

 

『透明な物体』を投げたのは輝之助だった、〈アクトン・ベイビー〉が透明化させた石が、ガスパーに直撃したのだ。そして、二発目の石が膝に当たり、ガスパーは体制を崩した。

喜ぶよりも先に、輝之助とハリーはリータの下へ駆け寄った。

 

「大丈夫かリータ、奴が立ち上がる前にここから離れるぞッ」

「…この状況で助けに行く奴は、バカなんじゃないの?」

「そんなこと言ってる場合か!それに、頭の良い奴=バカじゃないとは限らないんだぜ?」

「そっか…ありがとう、確かに君がいなかったら死んでいたかもしれない……。リータ、立てる?」

「あ、ああ…なんとか……助かったぜ、二人とも」

 

三人は再び走り出した、ガスパーは眼を抑えながら立ち上がったが、そのころには三人の姿はもう見えなくなっていた。

 

「…あ、あのクソガキどもがァ…!絶対にぶっ殺してやるぞォォォーッ!!kUAAAAAAA――――――ッ」

 

ガスパーは身体を虎に変化させ、同じように森の中を走り出した……辺りは輝之助の撒いた油の匂いでいっぱいだ…匂いで探すことは難しい、そう考えたガスパーは手あたりしだいに走り出した。

 

「見つけたぞォ!ガキィッ!」

「ひッ!こ、こないで!?」

 

走り続けたガスパーは見つけたのは、少年ではなく少女だった。リータの悲鳴を聞いてから駆け付けるのに遅れたロロは、単独行動だったのである。だがそんなことはガスパーには関係ない、どちらにしろ殺すことには関係ないのだから。

 

「喰らえッ―――――――うぼァ!?」

 

ロロへ向かって急加速しようとしたガスパーは、こけた。前足でバナナを踏みつけたのである、ただし折り紙で折ったバナナだが。

 

「〈ペーパー・ムーン・キング〉ッ!いまだ、やれッリータ!!」

「オラァッ!」

「ぐふぉ……ッ!?」

「どうだッ!辛子入りのコショウは痛いだろう!?」

 

折った折り紙にそのモデルと同じ性質を持たせるスタンド、〈ペーパー・ムーン・キング〉のバナナを踏みつけ、お約束のように見事に足を滑らせたガスパー。そこを狙って、茂みに隠れていたリータが(エニグマでファイルした)調味料の粉末をガスパーの顔めがけて投げつける。

 

「よしッ、今の内にコイツから離れるぞ!!」

「ロロも速く!」

「うん!あたしたちの作戦勝ちね!」

「勝ちとか言ってる場合か!?」

 

そう、いままでの流れはすべて彼らの作戦だったのである。

 

輝之助たちとロロは既に〈タトゥーユー!〉の瞬間移動によって合流していたのである。だがこのままではいずれ追いつかれてしまうと判断した彼は、ガスパーを罠に填める作戦へでたのだ。パワーやスピードこそないが、搦手を得意とする自分のスタンドなら、罠に填めることは容易だと輝之助は考えた。

 

そこで、まだ単独行動だとガスパーが疑わないロロを囮役としたののである。

 

「フゥーッ、フーッ!!チクショォ…あのガキどもめェ!俺をコケにしやがってッ!ナメやがって……!!」

(ガスパー!怒り狂うのかァ~?どんどん怒りやがれッ!俺はもっと頭にきてるんだッ!オマエが誘拐なんてしてくれたせいで、オチオチ安心してもいられねェッ!!)

 

作戦はまだ終わってはいない。輝之助たちは逃げるフリをして、近くの茂みに隠れていた。ガスパーがこけた近くの木に待機しているハリーは、鉄製のスコップを振りかぶりながら木から飛び降りた。ガスパーの顔面に叩き付ける思いで―――――――だが、

 

「調子にのるなよガキィ!!」

「うわあああああ!!」

「ハリーッ!」

「しまったッ!チクショーッ!バレていた!」

 

ガスパーは眼を見開き、ハリーの身体を手で受け止めた。身体を締められるハリーは苦しそうに呻き声をあげている。輝之助たちは慌てて飛び出し、ハリーの救援にでようとする。

 

「キサマら…よくも俺をコケにしてくれたなァ、俺に殺されるだけのガキ風情がよくもここまで…」

(ハ、ハリーッ、やばい!ハリーがやられるッ!奴の爪に切り裂かれるッ!)

「よくも!このクソガキがッ!俺をコケにしてくれたなァああっ――――――ッ!」

「!?」

 

輝之助は、ガスパーが腕を振りかぶったとき、爪でハリーの身体を切り裂くと思った…だが、ガスパーはなぜかハリーを『殴り飛ばした』のだ。殴られたハリーは勢いのままに木に叩き付けられた。

 

「うぐっぅ…!」

「"フォレス・ガロ"のリーダーであるこの俺にッ!ちょっとでも勝てると思ったのか――――ッ!蹴り殺してやるッ!このド畜生がァ――――――――ッ」

「!?(虎化も解いた……だと!?)」

「ハリーッ!!」

 

信じられない、そう思った輝之助は正しい。なぜならガスパーは、自身の能力を下げて人型に姿を戻したのだ。殺すなら、虎の姿になってその爪で切り裂く方が早いはずなのに…完全にプッツンしてしまっている。ガスパーは人型の状態で、ハリーを蹴りつけ始めた。

 

「が…ぐっ……!」

「爪で切り裂くのは一瞬だッ!それでは俺の怒りがおさまらんッ!キサマらが悪いんだッ!キサマがッ、俺を怒らせたのはキサマらだッ!キサマらが悪いんだッ!思い知れッ!どうだッ!思い知れッ!どうだッ!どうだッ!」

「や、やめろ…」

 

輝之助は屋敷のときとは別の意味で、ガスパーに恐怖した。

 

(このガルド=ガスパー、()()()じゃ()()()()……異常だッ!自分が上だと信じてやまないプッツン野郎だッ、子供に翻弄されて怒っているのか!こいつの精神は暗黒空間だッ、こいつの心がバリバリ裂ける、ドス黒いクレバスだッ!)

「どうだッ!どうだッ!どうだァァァ―――――――ッ」

「やめろォォ――――ッガルド=ガスパー!」

 

血まみれになっていく仲間の姿に、輝之助はガスパーに向かってファイルした硬球ボールを投げつけた。するとガスパーは蹴りをやめ、輝之助に向き直る。

 

「ハァァ―――――ッけりをつけてやる!」

「リータ!ロロ!僕が時間をかせぐッ、その間にハリーを助けろッ!」

「おう!輝之助は!?」

「そんなことは後で考えろ!!このままじゃあ死ぬぞッ」

 

ハリーを救出しようと走る二人を、ガスパーはもちろん許そうとはしない。二人に向けて蹴りを繰り出そうとするガスパー、だがそれは輝之助が投げた物体によって防がれた。投げられた物体を避けるため、蹴りを踏みとどまり腕で弾くガスパー。物体はただの硬球ボールだったが、その間に二人はハリーを連れて逃げ出すことができた。

 

「……なめるなよクソガキ、まさかキサマ一人で俺を相手できるとでも思っているのか?」

「…………」

 

輝之助は、自分でも今の行動が信じられなかった。彼は聖人君子でもヒーローでもないし、それ相応の力があるわけでもない、箱庭の住人からすれば「ちょっと不思議な力を持った子供」程度の存在だろうとも多少自覚していた。だが、三人を見捨てて逃げることは考えられなかった。

 

「一度怒ったおかげか冷静になってきてな…。思えばキサマは他のガキとはどうも違う感じがしたんだ。牢屋でのキサマの態度、まるで「なにか奥の手をもっている」といったようだった…気に食わなかったぜ」

「…脱獄してから、僕は命だけはツイてる…この勢いで生き残ったら…その時は…みんなで美味しい食事でも食べようかなぁぁ。ククク…ハハ…とか言ったりして…ハハ」

 

達観したような台詞とは裏腹に、輝之助は力強くガスパーを睨みつけ、対峙した。輝之助はポケットに手を入れ、ガスパーは姿を再度虎へと変化させる。

 

「行くぜガスパーッ〈ペーパー・ムーン・キング〉ッ!」

「来やがれクソガキィィーッ!」

 

〈ペーパー・ムーン・キング〉は【第八部 ジョジョリオン】に登場したスタンド!その能力は、折った折り紙に本物同様の性質を持たせる、輝之助は手裏剣をガスパーに向けて投げつけた。ガスパーはその爪で手裏剣を弾く、だが彼はその巨体ゆえすべて弾ききることはできない、弾けなかった二つが彼の身体を切り裂く。

 

「KUAAA!無駄だァァーッ!」

「ぐうあああああああッ!!」

 

だがガスパーはもろともせず、輝之助の腹目がけて突きを繰り出した。爪は輝之助の腹部へと突き刺さり、そのまま身体は空中に投げ出される。

 

「ぐほァ…!(ファイルしたジャンプを腹に仕込んでいなかったら即死だった!しかしなんてパワーだ…しかも虎のくせに、二本足で立ってんじゃあないぞ!)」

 

二本足で立つ、それが普通の虎と霊格を持つワータイガーの違いであった。輝之助はガスパーのギフトは虎になることだと思っていたが、それは違う。ガスパーは人と虎と悪魔から霊格を得たワータイガーなのだ、知覚も、筋力も虎よりも圧倒的に上なのだ。

 

「猿が人間に追いつけるかーッ!お前はこの俺にとってのモンキーなんだよガキィ―――――ッ!!」

「ッ、信念さえあれば人間に不可能は無い!人間は成長するのだ!オマエの言う猿なんかじゃあないッ!」

 

輝之助は再び手裏剣を投げつけた、だがガスパーは弾くのではなく、ワザと腕で防御した。無駄なモーションを作らず、そのまま彼を仕留めるために。

 

「無駄無駄無駄無駄ァッ!なまっちょろいぞ!そんな攻撃が効くものか、死ねいッ!」

 

ガスパーが輝之助に向かって防御に使った腕をそのまま繰り出そうとする。この状況、輝之助はガスパーの真上それも空中にいる、身動きは一切できないまさに絶対絶命。だが、そんな圧倒的ピンチに対し輝之助は不敵に笑った。そしてそれと同時に、ガスパーの身体に異変が起こった。

 

「!――――――う、動かんッ、なぜか身体が動かんッ!?」

「かかったなアホが!これが作戦だったんだよォーッ!〈ファン・ファン・ファン〉によって、オマエの腕の動きは制限されているんだ!そしてこのナイフで、切り裂いてやるッ!」

「ギィヤアアァァァァ―――――ッ!!」

 

〈ファン・ファン・ファン〉は〈ペーパー・ムーン・キング〉と同じく【第八部 ジョジョリオン】に登場するスタンド、その能力は『真上』に立つ事で他者の四肢の動きを支配すること。傷を付けた四肢には血が固まって『印』がつき、本体の任意で操ることもできるのだ。

 

手裏剣でつけた傷は二つ、両腕から出た血は『印』となってガスパーにつけられている。そして空中に放り投げられたことで輝之助は真上に、ガスパー真下という位置関係になった。ガスパーの両腕はいま、〈ファン・ファン・ファン〉の能力の支配下にあり動かすことができない。

 

動きが止まった物ほど狙いやすいものはない、輝之助はガスパーに向かってナイフを突き刺す、ナイフは重力の流れにそって輝之助が降下していくのに合わせて一直線にガスパーの身体を切り裂いていく。

 

「ぐほおおああああ……ハァハァハァ…やってくれたなガキィ!」

「くっ、ダメだ!ナイフじゃあ深いダメージは与えられないッ!」

「カエルの小便よりも…下衆な!下衆なナイフなぞをよくも!よくもこの俺に!いい気になるなよ!KUAAAッ!―――――」

「うおおああああああッ!」

 

ガスパーは怒りの形相で跳び出した。自分に向かってくる獣の姿に、輝之助は密に後悔した。油断した、自分にできることを最大限に活かして賭けにでた結果、最大のチャンスを失ってしまった。もうガスパーの攻撃を防ぐ方法はない、〈ファン・ファン・ファン〉は真上でなければ能力が使用できない。

 

迫りくる死に、輝之助は眼を閉じた。

 

「―――――――………?」

 

ふと違和感を感じた、攻撃がいつまで経ってもやってこないのだ。眼を開くと、そこには誰もいない。どこに行ったのか?輝之助は一度考え……考えの末、最悪の答えに辿り着いた。

 

「まさかアイツ…ロロたちの方に……!?」

 

輝之助は走りだした、冷や汗を流しながら、その予感が外れていることを信じて。

 

 

 

←to be Continued

 

 




〈サバイバー〉
【第六部 ストーンオーシャン】に登場。
【破壊力-E/スピード-E/射程距離-E/持続力-C/精密動作性-E/成長性-E】
紐でできた小型の円盤のようなスタンド。能力は脳内の電気信号に影響を与える事で、人間の闘争本能を極限まで引き出し、怒らせ、凶暴かつ好戦的にする。
またスタンド自体に破壊力は無いものの、敵味方関係なく乱闘を引き起こす特性から「最も弱いが、手に余るスタンド」と評している。


〈ペーパー・ムーン・キング〉
【第八部 ジョジョリオン】に登場。
【破壊力-E/スピード-E/射程距離-C/持続力-C/精密動作性-B/成長性-E】
折り紙を操り、その折り紙に触れた人間に人相やデザインなどの区別をつかなくさせる能力。折った折り紙はモデル同様の性質を持つ(蝉なら空を飛び、蛙なら跳ねるなど)。
物理的な破壊はできないスタンドだが、相手に与える精神的なダメージは歴代スタンドの中でもトップクラスのえげつない能力といえる。だが精神攻撃を使うのはいったいいつになるだろうか。


〈ファン・ファン・ファン〉
【第八部 ジョジョリオン】に登場。
【破壊力-E/スピード-E/射程距離-D/持続力-A/精密動作性-E/成長性-E】
両手両足に傷を負った人間の真上に立つことでその四肢のコントロールを『支配』することができる能力である。傷を負わせた箇所から出血した血は固まり『印』となり、任意で操れる。
ただし四肢に傷をつけても真上にいなければ支配下に置くことができない。かなり扱いづらい能力であり、スタンドの戦闘能力も皆無といっていい。



リータ「クソォ…あいつ、子供相手に罪悪感てのが無いのか?」

輝之助「ああ、ああいうタイプは悪事を犯すことに何らためらいを持たないからな(それに〈錠前〉を使っても反応が無いし…)」

ロロ「最低だよね!」

ハリー「『悪』とは自分自身のためだけに、弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!」

「「「……どうした?」」」

ハリー「……なんか変な電波を拾った」

次回【暗闇の荒野に進むべき道を切り開く件について】


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