パワーも無い!スピードも無い!波紋もそれほど走ってない!そんな幽波紋使いが箱庭に来てしまった件について 作:BサインからCサイン
「猿が人間に追いつけるかーッ!お前はこの俺にとってのモンキーなんだよガキィ―――――ッ!!」
輝之助の渾身のナイフを受けたガルド=ガスパーは尚、冷静だった。
目の前の少年は異質だった。複数の"恩恵"を持ち、自分たちが脅しても立ち向かい抗う、あろうことか逃走まで計らい…現にさきほどまで逃げられていた。
だがそれでも、ガスパーは自分の方が圧倒的に上だという自信があった。それは自分がいつでも『殺れる』ということによる余裕、
「無駄無駄無駄無駄ァッ!なまっちょろいぞ!そんな攻撃が効くものか、死ねいッ!」
これまでの戦闘で幾つかわかったことがあった。それは、輝之助には自分を殺す手段が無いということだ。思い返せば輝之助はガスパーに一度も殺害に匹敵する一撃を与えることができていない。逃げるか、撒くか、この二つしか彼は行っていない。
「カエルの小便よりも…下衆な!下衆なナイフなぞをよくも!よくもこの俺に!いい気になるなよ!KUAAAッ!―――――」
「うおおああああああッ!」
そしていま、自分と対面した彼はどうだ?複数のギフトを駆使して立ち向かっては来たが、それは傷を負わせる程度の虫の抵抗、自分の身体を切りつけたナイフも最後の切り札だったようだが、それも自分には通用しない。
それがわかったこの瞬間、ガスパーの脳に一つの筋が浮かんだ。
(……このガキ、殺すには惜しい)
複数の強力なギフト保持者、まだ子供が故これから伸びる可能性は高い。ならば、自分のコミュニティに引き込んでしまえばいい。そうすれば"フォレス・ガロ"は更に戦力を強化し、この外門一帯を支配することもできるだろう、それだけの能力が輝之助にはある。
ガスパーはトドメの爪を振り下ろすのを止め、三人の少年少女が逃げ出した方へと向かって走り出した。そして数分後、ガスパーと少年少女たちは再会する、輝之助がそこに辿り着くのもさほど遠くはなかった。
「ガスパー…キサマァァーッ」
「待ちくたびれたぜ、クソガキ」
【暗闇の荒野に進むべき道を切り開く件について】
スタンドを駆使して三人の居場所になんとか先回りをしようと駆け走った輝之助、だがそこにあったのは最悪の光景。血に濡れて負傷している三人の仲間と、その中心に立つガスパーの姿だった。
「なにをやってんだぁぁあああああ!」
「わかんねーか?痛みつけてんだよ」
「てめぇええええええええ!」
「て…きちゃ、ダメだ…」
倒れている仲間の声も聴かず、輝之助はガスパーに向かって走り出した、スタンドでコイツをいますぐに殺してやる…!いますぐにだッ。…だが、どうやって?現時点で自分の最高戦力である〈エニグマ〉でファイルしたモノでは奴を殺せない、『恐怖のサイン』もまだ見つけていない。〈エコーズ〉の音文字で奴を苦しめるか?だがその瞬間、自分は奴に切り裂かれて死ぬだろう……
「ちくしょおおおおあああああああ!!」
「そーゆーのをなあ~、ただのやけくそと言うのだ!」
なにもせず真っ直ぐ突っ込んでくる彼はまさに絶好の的、強烈な蹴りが身体を襲ったと気づいた頃には、木に叩きつけられていた。虎へ姿を変えていないガスパーでも簡単に蹴り飛ばせるくらい、彼は弱っていたのだ、身体的にも、精神的にも。
「かはッ……!ゴホォォ…ッ!」
「フン、まだ生きはあるようだな。ま!それほど力も込めていないしな」
「ぐっ…?……」
呼吸が苦しくなってきた、さっきまで耐えることができていた痛みが急にぶり返し、意識も朦朧とし始めていた。限界は、密室に流れ込む水のように、彼の身体を襲っていたのだ。
「さて、再起不能といったところか」
「う、ううう……」
「その身体ではもはやキサマに俺を殺すことはできん…当然逃げることもな。「キサマらガキ共の牢破り」はキサマを殺して全滅の最後というわけだな……」
「うううう……」
「…痛いのは怖いか?死ぬのは嫌か?なら、取引をしよう」
「うう……と、り…引、だと?」
輝之助は意識を振り絞り、ガスパーの話に耳を傾ける。二人の距離五メートルといったところでガスパーは立ち止まり、演説者のようにたんたんと話す。
「そうだ!キサマの持つ"恩恵"…我がコミュニティのために使う気はないか?」
「な、なに…!?」
「なあ、人間はなんのために生きるのか考えたことはあるかね?『人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる』名声を手に入れたり、人を支配したり、金儲けをするのも安心するためだ。結婚したり、友人を作ったりするのも安心するためだ。人のために役立つとか、愛と平和のためだとか、すべて自分を安心させるためだ。安心を求めるこそ、人間の目的だ。
そこでだ…俺に仕えることになんの不安感がある?この2105380外門の三分の二は俺の支配下だ、俺に仕えるだけで、簡単に安心を手に入れることができるぞ」
「…………」
「いまのキサマのように、死を覚悟してまで俺に立ち向かう方が不安ではないかね?俺から見てキサマは優れたギフト保持者だ…殺すのは惜しい。脱走するなんてやめて、我がコミュニティの同士に加わらないか?そうだ…キサマが望むのなら、捕らえた他のガキ共も助けてやろう」
「ッ!」
「さあどうする?早く答えないと、助かる前にくたばっちまうかもなァ~」
「…約束してくれるのか?僕がオマエに従えば……本当に僕の、僕らの『命』は、助けてくれるのか?」
ガスパーはニタァ~、と歪んだ笑みを浮かべると、
「ああ、約束するよ。キサマが我がコミュニティの同士として、その力を俺のために奮ってくれるのなら!キサマの命も、そこのガキ共も、まだ地下牢にいるガキ共も助けてやろう!ギブアンドテイクさ、キサマは安心することができ、ガキ共も助かる…良い条件だろう?」
「確かに…悪くない、いや、最良の条件だ…僕がオマエに仕えるだけで、みんなの命も助かるんなら、こんなに良い条件はない――――――」
「そうだろう」
「だが断る」
「――――なに?」
ガスパーは目を見開いた。輝之助は腕と脚に力を入れ、ゆっくりと立ち上がる。
「この如城 輝之助が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思っている奴に「NO」と断ってやることだ…」
(………なんだ?)
立ち上がるボロボロの少年は、間違いなく弱っているはずだ。牢屋に閉じ込めてから食事は与えていない、走り続けて体力は0に近いはず、自分が与えたダメージは見てわかるほど痛々しく、バランスを失った体操選手のようにすぐにでも倒れてしまいそうだった。
(なのになんだ、このガキから感じる『凄み』は…!?)
「ガキだからってナメてんじゃあないぞッ!オマエみたいなが畑にすてられカビがはえて、ハエもたからねーカボチャみてえにくさりきってやがる根性のゲス野郎がッ!約束を守る保障なんてどこにもねーじゃあねぇかッ!!」
「…ッ!このガキィ、適当な事言って俺を怒らせるなよォ~!」
苛立たしげに眉をヒクつかせるガスパーだったが、輝之助の言う通りだった。この取引が成立する保障は、どこにもないのだ。実際、ガスパーは輝之助が取引を承諾したあと、「他の子供はコミュニティに帰した」と言い、腹心の部下に証拠が残らないように子供たちを始末し、輝之助を縛りつけいいように利用するつもりだったのだから。
輝之助は完全に立ち上がり、ガスパーを睨み付けた。
「ムカついてんのはコッチの方だ!どうして一瞬でもオマエを提案を呑もうとした自分に反吐が出るッ!ますます『ムカっ腹』が立って来たぞ…なんで殺人鬼の外道野郎のために僕がビクビク後悔して『お願い神様助けて』って感じに逃げ回らなくっちゃあならないんだ?逆なんじゃあないか?どうして、ここから無事に帰れるのなら『下痢腹かかえて公衆トイレ捜しているほうがズッと幸せ』って願わなければいけないんだ……?違うんじゃあないか?」
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ガスパーにはわからない、自分にとってちっぽけな存在の利用するにしか値しない子供から、尻込みするほどの凄みが出ているのか。だが、これだけはわかった。
「このガキ…キレてやがるッ!」
「脅えて逃げ回るのはガスパーッ!オマエの方だァ――――――ッ!!」
輝之助から、スタンドの像が出現する。それは頭部や両腕に無数のネジが刺さった亜人、その能力名を、
「〈ナット・キング・コール〉ッ」
〈ナット・キング・コール〉の能力、それはスタンドが持つ長さ10cm、直径1cm程度のネジとナット。それをガスパー目掛けて投げつける。スタンドから離れたネジとナットは実体化し、ガスパーにも見えるようになり、一直線に飛んでいく。
「―――!(ヤバイッ、なにがどうかは知らんが、コイツを喰らうのはヤバイッ!)
獣の本能というべき直感が、ガスパーに防御させた。だが、〈ナット・キング・コール〉の前には無意味だ。弾いたはずの『ネジ』が、ガスパーの手首に突き刺さる。ガスパーは驚愕するが、不思議と痛みは無い、なんだコレは?と確認しようとナットを回し、ネジを取り外そうとして―――――
彼の手首がポトリと落ちた。
「なっ―――これはァーッ!?てめェ俺に、なにをしたァーッ!」
「ぐうっ…!オラァッ!」
自分の手が腕から外れるという謎の現象にパニックに陥り、もう片方の手で輝之助を押さえつけるガスパー。だが輝之助はそれに屈しない、素早くその手に向かってネジを数本突き刺し、ナットを回す――――――ガスパーの手が、バラバラになって外れた。
「!な、なにィ――――ッ!??お、俺の手がァアアアーッ!?」
〈ナット・キング・コール〉は『ネジ』と『ナット』を生み出し、対象に透過させるように取り付けさらに『ナット』を回し外すことで対象を分解することができる。それが能力。そしてそのパワーもいままのスタンドより強力、押さつける手が無くなったガスパーを蹴りつけ、輝之助から離れさせた。
「グッ…キサマァ…!」
「よかったな。手、戻ってるじゃあないか」
「ハッ!」
蹴り上げられた体勢だったガスパーだったが、起き上がった輝之助に言われてようやく気づく、自分の手が左右逆になっていることに。わけがわからないとばかりに焦るガスパーだが、輝之助は無視してガスパーに近づいていく。
「て、テメェなにしやがった!?くるんじゃねェーッ!」
「くるなと言われて、来ない奴がいるか?」
射程距離に入った瞬間、再び〈ナット・キング・コール〉蹴りがガスパーに放たれる。見えない蹴りは防御することなく放たれる。
「ゴハッ!な…なんだこのパワーは…!いったい、キサマのギフトはなんなんだああああ!?」
輝之助指さしながら喚き散らすガスパー。それもそうだろう、彼からしてみれば距離が離れているのにも関わらず攻撃されているのだから、理解不能の状況に置かれた彼が冷静に思考することはできない。
「『幽波紋』それが僕の持つ"恩恵"の名前だ。ただのそれしか言わない、以上で終わりだ、
「スタンド…だと?」
ガスパーはその名から能力の秘密を探し出そうとする――――コイツを倒すには能力を明かす必要がある、このままでは恐らく…!――――だが、答えは出ない。ヒントが少なすぎるからだ、なにも無い場所から道具を自由に出し、動きを止め、折り紙に意志を与え、ネジを打ち込み分解する。このような多様な種類を同時に持つギフトを、ガスパーは知らないからだ。
じりじりと距離をとろうとするガスパー、逆に距離をつめようと近づいていく輝之助。ガスパーはしかけることができない、射程距離に入れば、こちらの攻撃が届く前に輝之助の『スタンド』が牙を向くからだ。
(このままではマズイ!ここから走ってコミュニティにまで戻るのは簡単だ、だがいまはほとんどが留守になっているッ、応援をよんでも数で攻めることはできん!どうする……?)
「なんだなんだなんだぁ?さっきまで僕たちを追い掛け回していたくせに、今度は逃げるのか…?逃げられると思うなよ――――ここから先は、僕の世界だ」
歩きながら、輝之助は手に持ったネジを口に咥えると、フゥーッと息を吹き込んだ。するとネジは風船のように膨らみ、それを彼はひねりバルーンアートの犬の形に変えていく。一つ完成させると、同じように二つ目を作り出す。
「風船?なにをしているんだ…」
「オマエがそうやって僕から逃げるなら、〈チューブラー・ベルズ〉のバブル犬はオマエを追っていくぞ」
『ウウウ~~~ッ』『ウウウウ~~ッ』
〈チューブラー・ベルズ〉の能力、それは息を吹き込んだ金属を風船状に膨らませ、バルーンアート化して操る。そしてバルーンアート化した動物は意志を持ち、その動物の習性を持つ。『ネジ』から生まれたバブル犬は、ガスパーの臭いを覚え、敵だと判断する。
「な…な、なんだコレは!?」
「〈チューブラー・ベルズ〉、奴に向かって噛みつけ!」
意志は持ったバブル犬がガスパーに向かって駆け出す。ガスパーはそれを腕で薙ぎ払い防御するが、バブル犬にダメージは無い。バブル犬は喰らい付くようにガスパーの腕に噛み付き、腕の皮膚を破って体内に侵入しようとする。
「うおおおおおッ!な、なんだァ!?俺の肉の下に入ってくるゥゥゥ!腕のないぶにいるって
咄嗟にバブル犬を掴んで引きずり出そうとするも、ゴムのように伸びるだけで抜ける気配はない、バブル犬はドンドン体内を上っていき――――破裂した。バブル犬ごとガスパーの右腕が、内側から『ネジ』で貫かれた、ネジが刺さったという痛みはない、だが〈チューブラー・ベルズ〉が体内に潜り、破裂したという鋭い痛みが彼の右腕を襲った。
「あああああああああああッ!!」
「痛いか?安心しろ、痛みで逝っちまわないようにあえて『ネジ』を使ったんだ。死ぬことはないだろう…だが次はこの釘を、オマエの脚に打ち込んでやる…」
「くっ……!」
「いままでオマエが殺してきた子供たちの分、僕たちの分…償わせてやる」
「ま…まさかキサマ、これから俺を殺すんじゃねーだろうな!?そりゃあ確かに俺は呪われた罪人だ!いままで何度も他のコミュニティのガキ共を攫って勢力を拡大してきた!そのガキ共はもうこの世にはいねー!殺したからな!しかし箱庭の法律が俺を死刑にしようが、キサマが俺を裁く権利はねーぜ!もし俺を殺したら俺と同じ呪われた魂になるぜェッ!――――――ぐぅ!?」
引き攣った笑いを浮かべ、壊れたようにペラペラと話すガスパーに向かって、輝之助はスタンドで蹴りを入れた。ガスパーの身体が地面を転がった。
「うるさいぞッ、人を気安く指さしてがなりたてるんじゃあないッ!情けない命乞いはやめたらどうだ?」
「……………ッ」
ガスパーは横へ飛ぶと、そこで倒れていたリータの身体を無造作に引き寄せた。そう、ガスパーは輝之助を挑発させることであえて怪しまれることなく倒れていたリータに近づき、人質として利用したのだ。ガスパーはリータの頭を左腕の右手でわし掴む。
「よーし動いてみろッ!こいつの頭が砕け散るぞッ!」
「な…!?リータッ!」
「まァたまたまた形勢逆転だなガキィッ!おっと、動くんじゃないぞ!コイツはまだ生きている、だがもしキサマがほんな数センチでも近づいたら、コイツの頭蓋骨は落とした卵みてーになるぜッ!」
「き、キサマァ…!堕ちるとこまで堕ちるクズがッ!」
「生死のかかった状況で、卑怯も汚いもあるわきゃねーだろうがッ!クク…動くなよォ~絶対に動くなよォ~!」
ガスパーはリータの頭をゆっくり地面に降ろすと、今度は脚でリータを踏みつけた。脚の力は加減されているようで、リータの苦しそうなうめき声が聞こえた、だがほんのちょっとでも力を込めるだけで、彼の身体はぷちっとハエのように潰されてしまうだろう。ガスパーは手頃な大きさの石を拾い、
「キサマのギフト…その射程距離はおよそ五メートルくらいってところか?恐らく五メートル以上近づかなければ発動できんのだろう?そうだろう?なら…こうやって距離をとったまま攻撃すりゃあいいんだよなァ――――ッ!?」
「…その石をぶつけるつもりか?攻撃をしない僕に向かって」
「ああその通りだ。攻撃なんて考えるなよ…そんなことをすればコイツがどうなるか、わかっているんだろう?ちなみに、避けるのもダメだ!ちょっとでも動いたらコイツの命はねーぜェーッ!」
ガスパーは石を、思い切り投げつけた。ガスパーの豪腕から投げられる石は、一直線に輝之助へと向かっていく。だが、人質がいる限り輝之助は避けることができない。
石はプロ野球選手の投げるストレートの如く輝之助に飛んで行き――――――
「勝ったッ!『勝者』はこの俺だッ!依然変わりなく―――――うっ?」
ガスパーに直撃した。
「な…なに?俺に、石が…石が、なあんだってえええええええ!?」
「攻撃しないと言ったのに…スマン、ありゃウソだった。でもまあなんの警戒もしてこなかったオマエが悪いし、『反撃』してはいけないなんて言ってないし、それに僕は一歩も動いていない。なぁ、そうだろう?」
『オマエガ投ゲタ『石』ハ、俺タチが蹴リ反シタンダッ』
『狙イドウリダッ!膝二ブチ当テテヤッタゼェーッ!』
『ザマーミロダッ!』
『無茶ダヨォー!石を撥ネ返スナンテモウヤダヨォーッ』
「…ありがとう〈セックス・ピストルズ〉。後で好きなモン好きなだけ食べさせてあげよう」
ガスパーが投げた石がガスパーの膝に直撃し、ガスパーは脚の激痛でバランスを崩し倒れこむ。その隙を突いて、リータをガスパーから輝之助は遠ざけた。
なぜガスパーが投げた石が、ガスパーに直撃したのか?
それは輝之助の傍に浮いている6体の妖精のようなスタンド〈セックス・ピストルズ〉の能力――――弾丸を6人のチームワークで自由自在に操る能力で石を跳ね返したのだ。
だが〈セックス・ピストルズ〉が操れるのは弾丸程の大きさの物体までだ。ガスパーが投げた石を跳ね返し操ることはできない…そこに別のスタンド〈ナット・キング・コール〉が関わってくる。輝之助に石が当たる前に、その石を〈セックス・ピストルズ〉で操ったのだ。
…だが本来、〈セックス・ピストルズ〉は弾丸を操るパワーしかない。
しかしッ、プッツンした輝之助に比例するように〈セックス・ピストルズ〉のパワーも一時的に跳ね上がっているのだ!
「さて…人質なんか捕って僕を脅してくれたわけだが、用意はできたか?」
「よ、用意だと…?」
「そうだ、オマエがこの世に生まれて来たことを後悔する用意を…!」
輝之助は鉛の塊を口に咥え、〈チューブラー・ベルズ〉で膨らませ小さな風船を作った。そう、弾丸とさほど変わりない大きさの風船を。風船は金属の強度とゴムのような弾力を持つ、バブル弾丸となった。
「〈セックス・ピストルズ〉ッ!!」
『イクゼェ―――――ッ』
『キャモオオオ―――――ン!』
『パスパスパース!』
『タタミカケロォ――――ッ!』
『『『『『『イイイ―――――ッハァアアア―――――ッ!!』』』』』』
〈セックス・ピストルズ〉が巧みなチームワークで飛び回りバブル弾丸を蹴りながら方向を操作する。そしてその弾丸は
「ぐゥッ、UOOOOOOOッ!?」
ガスパーの左胸をぶち抜いた。そしてバブル弾丸はガスパーの体内に食い込んだ状態で、破裂した。釘がガスパーの左胸を貫き、その身体がグラリ…と倒れこんだ。
『『『『『『ヤッタァ――――――ッ』』』』』』
『『ウシッ』』
『『ウシッ』』
『てい!』
『うえええ~ん』
はしゃぐ〈セックス・ピストルズ〉を尻目に、輝之助は三人の下へ向かう。血は流れているし負傷している箇所が多く危ないが、いまからコミュニティまで急げばなんとか間に合うかもしれない。三人を背負い歩き出そうとする輝之助の腕を、掴んだ者がいた。
「…ぇ…すけ…」
「……リータ?」
「俺は…置いていってくれ」
「…は?なに言ってるんだよ、もう終わったんだ、勝ったんだ、僕たちを追ってくる奴はいないしちょっと歩けばコミュニティに付くんだぜ?ふざけてる場合じゃあ」
「無理だ、すっげーいてぇんだ。身体はマトモに動かねえし、もう眠たくてしょうがないんだ…」
輝之助は、自分の腕を掴むリータの手が異常に冷たいことに気づいた。それどころか、腕を掴む力を感じない、掴むというよりも乗っけている。そしてその体勢だからこそ見えた、リータの背中の深い傷を。
リータは気づいていた、自分自身のことは自分でわかっている、もう自分の命は少ないと。そして自分と同じく負傷した輝之助が、三人をも背負ってコミュニティまでたどり着けるのかという不安もあった。
「ハリーと、ロロを頼む…俺はもう持たない」
「……モタナイ?まさかオマエ…その傷」
「ハリーとロロの傷は、そこまで深くない。二人なら、助かる…早く連れて行ってくれ」
「…なぜだ?頑張ったじゃあないか、なのになんでこんなところで諦めるんだ!?助かるんだぞ!?こんなゴールの一歩手前のところで、力尽きるんじゃあないぞッ!」
「―――――頼んだ」
その言葉を最後にして、リータは力尽きた。輝之助に添えられた手は滑るように落ち、身体は二度と動かない。最後に脈を確認して、輝之助は立ち上がる。
「頼んだ…だと?たかが十年ちょっとしか生きていないくせに……ありがとう、リータ。二人を守ってくれて、二人は必ずコミュニティに連れて帰る」
輝之助は〈エニグマ〉でリータをファイルする。〈エニグマ〉は『生き物では無い』なら無条件で紙にファイルできるスタンド…死体なら、ファイルできるのだ。
「だが…君をここで一人にはしない、君も一緒だ」
紙をポケットにしまい、輝之助は歩き出した。
「……ぃ…しょぅ、が…」
←to be Continued
〈ナット・キング・コール〉
【第八部 ジョジョリオン】に登場。
【破壊力-C/スピード-D/射程距離-C/持続力-A/精密動作性-E/成長性-A】
対象にネジとナットを取り付け、それを外す事で分解する。『ネジ』と『ナット』を生み出し、対象に透過させるように取り付けたあと『ナット』を回すことで対象を分解させる。
この『ネジ』と『ナット』はスタンドから離れると実体化するのでスタンド使いじゃあなくても視認可能、さらに取り付け時または分解時に出血や痛みはない。能力が解除されると、分解後の対象同士が組み合わさり、パーツ化(変形)も解除される。
一方原作では、女性の服を分解するという不健全な使われ方をしていたりする。
〈チューブラー・ベルズ〉
【第七部 SBR】に登場。
【破壊力-D/スピード-D/射程距離-D/持続力-A/精密動作性-E/成長性-B】
スタンドの像はなく、能力は本体が息を吹き込んだ金属を風船状に膨らませ、バルーンアート化して操る。金属の強度とゴムのような弾力を持った風船で動物型のバルーンアートを作る事で、自律性とその動物の習性を持たせる事ができる。するとその風船は動き出し、標的の匂いに反応して攻撃を仕掛ける自動追尾型のスタンドとなる(動物以外の
風船は割れると元の金属に戻るため、この力を利用して攻撃することができる。ゴム風船の状態であるため狭い隙間でもなんなく通り抜けることができ、体内に入り込めば自力で取り出すことは不可能。
〈セックス・ピストルズ〉
【破壊力-E/スピード-C/射程距離-弾丸の届く距離まで/持続力-A/精密動作性-A/成長性-B】
それぞれが意思を持っていてNo.1~3と5~7の番号が振られている6人一組でNo.4はいない。チームワークで弾丸を自由自在に操ることが可能、その弾丸に敵味方の任意は無く、 例え落ちてきた石や撃たれた弾丸でも操れる。
一体一体に個性があり、No.1が落ち着いた性格のリーダー格、No.2が明るいお調子者、No.3が暴れん坊ないじめっ子、No.5が泣き虫で気弱ないじめられっ子、No.6がクールながらも熱血漢な二枚目、No.7がしっかり者のサブリーダー、といった具合である。
ちなみに人扱いしないといじけたり働かなくなったりもする。
輝之助「一人、失ってしまったが…脱出することはできた。…だが、どうすればいいんだ僕は」
???「…………」
次回【進むべき道の件について】