パワーも無い!スピードも無い!波紋もそれほど走ってない!そんな幽波紋使いが箱庭に来てしまった件について 作:BサインからCサイン
あれから、僕はコミュニティ"アシャンティ"を脱退した。
コミュニティに帰った僕は急いで大人たちに未だ囚われているマリたちを救出するように言った。大人たちは話を理解するとすぐにコミュニティを飛び出し、僕たちは医務室に運ばれた。
僕は『ああ、これでマリたちは助かるんだ』と心から安堵した。自分たちのした事は無駄じゃあなかったんだと…
しかし、帰ってきた大人たちはボロボロだった、大人たちにどうしたのか?と聞くと「ガルド=ガスパーが生きている」と言った。大人たちはガスパーたちの反撃に遭い、さらにギフトゲームまで仕掛けられてしまったのだ。
僕の〈チューブラー・ベルズ〉のバブル弾丸は確かに奴の心臓に命中したはずだ、生きているなんておかしい…なんて、僕が考えていたのはそんなことじゃあなかった。
みんなを巻き込んではいけない。
ガスパーのギフトゲームは一対一ではなくコミュニティそのものを賭けた壮大なギフトゲーム、それはコミュニティの全同士が争うモノだ。しかしこちらは半分以上が負傷したのに対して向こうはガスパーは除いた全員が無傷の状態、勝てるはずがない。
僕はすぐにリーダーに呼び出された、オマエはコミュニティから去れと言われた。
リーダーはマリたちがすでに殺されていると思っていた。
『いままで奴らに囚われた子供たちがすでに殺されているなら自分たちの子供も…ならばせめて、残ったオマエだけでも死なせるわけにはいかない。ガスパーは怒りが収まるようにオマエを痛みつけ、殺すだろう。そんなことは絶対にさせるわけにはいかない、ギフトゲームが始まる前に早くこのコミュニティから離れるんだ』
それを理解して僕はコミュニティを去った、ほとぼりが冷めるまで僕は街に戻れない。ここら一帯のコミュニティはほとんどが"フォレス・ガロ"の傘下だからだ。
僕はこの街を去る、でもコミュニティのみんなをアイツのイイようにさせ続けることだけはどうしても我慢ならない。いつか、絶対に助け出してみせる。だからその日まで
アリーヴぇデルチ(さよならだ)
【進むべき道の件について】
それはお昼時の出来事。
その時間はとある名無しのコミュニティが問題児を呼び出したり、カフェがちょうど空く時間帯だったり、商店がもっとも賑わう時間で…そして、ある男は一冊の『本』を手にしながら大通りを歩いていた。
「………」
肌が黒く白髪の男だった、20~30ほどの年齢だろうか引き締まった肉体にインドア風な服装はミスマッチしている。
男は本に集中しているためかまったく周りを注意しようとしない、もちろんそんな状態で歩いたらどうなるかは誰でもわかるだろう、犬でもわかる。
「っ………」
「うおっ…オイ、気をつけろよ!」
前を歩いていた歩行人と男がぶつかった、歩行人は自分とぶつかった男に文句を言うが男はなにくわぬ顔で再び歩き出す。まるでこのワンシーンがなかったように。
「聞いてんのかテメー…ぶつかったのに謝りもしねぇのか?」
「……すまなかったな」
「あっ!?おい!」
ぶつかった相手につけられた因縁などまるで眼中に無い、男はガシッと掴まれた肩を片手で振り下ろすと横目でチラリと歩行人を見るとスタスタと歩き出す。男にとって心底どーでもよかったのだろう、ただしぶつかられた歩行人からしたらそうはいかない。
「テメーナメてんのか!?人にぶつかったら誠意こめてゴメンなさいって親に教えてもらわなかったのかドサンピンがァーッ!」
腹を立てた歩行人は後ろから男に殴りかかった。
男はその腕を片手で受け止めるとなめらかな動きで回転させ地面に組み伏せた、力を込めて立ち上がろうとしても男は岩のようにピクリともしなかった。
「クソっ離しやがれテメーッ!?」
「…なぜ殴りかかったのか、理解できないな」
男はフン、と鼻を鳴らすと歩行人の上から退く。
「確かに余所見でぶつかってしまったのは悪い、だが俺は謝ったしそれでいいじゃあないか。互いに怪我もないし…それとも君はぶつかった者に対して一々土下座でもさせたいのか?君がやっていることはおもちゃを取られた幼児と同じだ…実にくだらない。俺は急いでるんだ、それじゃあな」
「!?(なんで…お、おれの足が…立てねぇんだ!?抑えつけられているわけでもねーのに……)ま、待ちやがれチクショーッ!」
後ろで相手はまだなにか叫んでいたが、男は気にする価値など無いと意識から外した。男の目的地はもう目の前…"六本傷"の旗が掲げられたカフェに到着した男は一つのテーブルに本から眼を移した・
「居た…!やはり『本』の予言通りッ」
ジン=ラッセルは内心ヒヤヒヤしていた。
彼のコミュニティは3年前、ある魔王に挑まれた『ギフトゲーム』と呼ばれるゲームに敗北し、名も旗も多くの仲間たちも奪われ残るは子供たちだけ、という逆境の真っ只中にあった。そして彼自身も十一歳でリーダーである。
このままでは彼のコミュニティ"ノーネーム"は腐りきってしまう、そこで彼は異世界から強力なギフト保持者を箱庭へ呼び出したのである。
名無しの自分らに協力してくれるかどうかは別として、ギフト保持者がもし味方になってくれるのであれば自分たちのコミュニティも復興できる、そう思ったのだ。
しかしその内の一人は「世界の果てを見てくる」と行ってしまい、自分たちを支えてくれる存在である黒ウサギは彼を探しに跳んでいってしまった。本来は黒ウサギと自分で三人を案内する予定だったのが大幅に狂い、ジンは少女二人と箱庭のカフェテリアに来ていた。
世間話交じりに二人のギフトに関して質問を続けていたジンだったが、その途中で見知らぬ男が側に立っていることに気づき一旦そちらに眼を向けた。
「あの、なにかようでしょうか?」
「いえ、さきほど来店したんですが生憎満席で…よろしければ相席願えませんか?」
柔らかい物腰の男だった。ジンにとっては今は大事な話の真っ最中なのでお引取り願いたかったが、さすがに面と向かい合って嫌ですと言うのは気が引けたので了承した。二人の少女も別に構わないらしい。
男は店員にコーヒーを一つ頼むと、愛想笑いをジンたちに向け
「いやぁすみません、折角のティータイムを邪魔してしまって」
「別に構わないわ。ですが、同席するのなら名を名乗るのが礼儀ではなくて?」
「これは失礼しました。俺は宮本 輝之助、コミュニティには所属しておりません。貴方方は?」
宮本の言葉にジンは疑問を頭に浮かべた。箱庭でコミュニティの所属は絶対である、自分たちのような名も旗も無いコミュニティならともかく、所属していないとはどういうことなのだろうか?
「僕はジン=ラッセルです、そしてこちらが…」
「春日部 耀」
「久遠 飛鳥よ。ところで、箱庭では生活するにあたって必ずコミュニティに所属しなくてはいけないのではなかったかしら?」
「ええ、その通りなのですが…恥ずかしながら、以前所属していたコミュニティを追い出されてしまいまして、いまは各地を巡りながら引き取ってくれるコミュニティを探している身なのです。そういえば、貴方方のコミュニティの名は?」
「ぼ、僕たちの名は…その…」
ジンは焦った、ここで答えてしまうことはできない、答えれば自分のコミュニティが名無しであることがバレてしまうからだ。そうなれば、二人の少女は自分たちに協力などしてはくれないだろう。
ジンが言葉を詰まらせ、三人が不審に思っていると、そこに新たな介入者が入ってきた。
「おやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ"名無しの権兵衛"のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」
品の無い上品ぶった声、四人が眼を向けた先には2mを超えた巨体をピチピチのタキシードで包んだ男がいた。だがその異常なところはその『手』だ。白いグローブは左右反対―――いや、『手』そのものが左右反対だった。
ジンはその男の煽りのある声につい反応してしまう。
「僕らのコミュニティは"ノーネーム"です。"フォレス・ガロ"のガルド=ガスパー」
「黙れこの名無しが。聞けば新しい人材を呼び寄せたそうじゃないか……」
ジンとガスパーが非友好的に話す中、耀は隣に座る宮本をチラリと見た。ほんの一瞬だけ、彼の眼にドス黒い炎が見えた気がした。
「ハイ、ちょっとストップ」
険悪な二人を遮るように飛鳥は手を上げた。
「事情はよくわからないけど、貴方達二人の仲が悪いことは承知したわ。それを踏まえたうえで質問したいのだけど……ねえジン君。ガルドさんが指摘している私達のコミュニティの状況というモノを説明していただけるかしら」
「あっ……そ、それは…」
「それについては私が説明しましょう」
うろたえるジンに変わって、ガスパーが名乗り出た。
ガスパーは箱庭に関わる名と旗について、ジンのコミュニティ"ノーネーム"の惨状とどうしてそうなったのか?それに『魔王』となる存在が関わっていることを説明した。
反応は皆様々、ジンは苦虫を潰したような顔を俯かせ、飛鳥はなるほどといった顔で紅茶を嗜みながら、耀は無表情のまま静かに、宮本はジンのコミュニティに少し興味を持った。
「……そう、事情はわかったわ。それでガルドさんは、どうして私達にそんな話を丁寧に話してくれるのかしら?」
「簡単です、単刀直入に言いますが…黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」
「な、なにを言い出すんですかガルド=ガスパー!?」
ジンは怒りテーブルを叩いて抗議するが、ガスパーはそれを一睨みで言い返した。
「黙れジン=ラッセル。そもそもテメーが名と旗を新しく改めてりゃあ最低限の人材はコミュニティに残っていたはず、それをキサマの我が侭でコミュニティを追い込んでおいていまさら新しい人材集めか?なにも知らない相手なら隠し通せるとでも思ったのかァ?」
「う、ううう……」
ジンは反論することができない。ガスパーの言っている言葉は強ち嘘ではないからだ、彼の中では二人の少女に対する後ろめたさと申し訳なさが濁りだしていた。
「………」
「どうでしょうかレディ達、返事はすぐにとはいいませんが、一度自分達を呼び出したコミュニティと我"フォレス・ガロ"のコミュニティを視察し、十分に検討してから考えてみては?」
飛鳥はティーカップを音を立てずに置くとフゥーっと息を吐いた。
「なるほど、確かにジン君のコミュニティより貴方のコミュニティの方がより安心できて、苦労することも少ないでしょうね」
「!?」
「フフ、そうでしょう」
「でも断る」
…は?とジンとガスパーは飛鳥の顔を窺う。
「断る、と言っているのよ。私達はジン君のコミュニティで間に合っているもの…春日部さんはいまの話をどう思う?」
「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」
「あら意外、じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?」
「…うん、飛鳥は私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」
照れくさそうに笑って頷く耀、彼女の膝に座る三毛猫も嬉しそうに鳴いた。
二人のリーダーをそっちのけで盛り上がる飛鳥と耀、ガスパーは顔を引きつらせるが、なんとか咳をして取り繕う。
「し、失礼ですが理由を聞いても?」
「だから間に合ってるのよ、春日部さんは聞いての通り友達を作りに来ただけだから、ジン君でもガルドさんでもどちらでも構わない。そうよね?」
「うん」
「そして私は…裕福だった家、約束された将来、おおよそ人が望みうる人生のすべてを支払ってこの箱庭に来たのよ。それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端に加えてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら。だとしたら身の長を知ったうえで出直してほしいところよ、このエセ虎紳士」
堂々と言い切る飛鳥。ガスパーは怒りで肩を震わせながら抑えつつ、今度は宮本の反応を窺った。
「そ、それで貴方はどうなのでしょうかジェントルマン。先ほどの話からすれば貴方もコミュニティには所属していないご様子、よろしければ我コミュニティに……」
「だが断る、俺はオマエのような奴のコミュニティなんかに所属するつもりはミジンコほどもないぜ」
宮本はそれだけ言うと、開いた口がふさがらないままのジンに向き直った。
「ジン=ラッセル殿」
「…はっ、はい!?」
「よかったら俺をあなたのコミュニティに加わらせてもらいたい。一度はコミュニティを追い出された身だが…」
「え!?い、いいんですか?僕のコミュニティは…」
「ちょっと待てッ!俺よりもこの名無しを選ぶだとッ!?……ハッ」
とうとう怒りに堪えられなくなったガスパーは乱暴な口調で怒鳴り立ち上がった。そのせいで周囲の視線が集まった。
「…失礼、ですがなぜ貴方はなぜ私のコミュニティよりも"ノーネーム"を選ぶのでしょうか」
「…ハァ―――――やれやれだ、まだわからないのか?ガルド=ガスパー、
「なッ!(なぜコイツがそれを!?)な、なにを言っているのか私にはさっぱり――」
「
ガチンッ!と不自然な形で勢いよくガスパーの口が閉ざされた。
「いま話しているのは彼で、貴方じゃないわ。
飛鳥の言葉に力が宿り、今度は椅子にヒビが入るほど勢いよく座り込む。
飛鳥には生まれた時から人を支配するギフトがある。しかし飛鳥はそれをあまりよく思ってはおらず、人に対して使うことを躊躇う。だがガスパーに遠慮をする必要は無いと判断し、無理矢理その口を閉ざさせた。
パニックに陥るガスパーの様子に、ふと雰囲気がおかしいと気づいた店員が駆け寄ってくる。
「ちょ、ちょっとお客さん!店内でのモメゴトは控えてください!」
「ちょうどいいわ。猫の店員さんも第三者として聞いていって欲しいの。面白い話が聞けるはずよ―――それで、話の続きを聞かせてもらえるかしら。輝之助さん?」
「ええ、話ましょう。このガルド=ガスパーが犯した罪と、残虐非道な悪行をね――」
「…以上が、話のすべてです、よーくわかりましたか?」
「ええ、よくわかったわ。…コイツが絵に書いたような外道だってことは」
店内は完全に凍りついていた。話を聞いていたジンたちも、聞き耳を立てていた近くの席の客も、呼びかけに反応していた他の客も、宮本が話す真実に呆然としている。
「ガスパーを殺したいほど憎む者は多くいます。しかし絶対に行動を起こす者はいません、もうこの世にはいない人質に手を出させないために」
「そう。…ねえジン君、ところで今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるかしら?」
ジンはハッと我に返り、慌てて答えた。
「厳しいです、彼がやっている事は違法な事ばかりですが…裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえばそれまでです」
外に出てしまえば彼がいままで築き上げてきたモノはすべて失われるだろう。それもある意味で裁かれるとは言えるが、それでは飛鳥が…ガスパーにすべてを奪われてきた人達が我慢できない。
久遠 飛鳥は財閥の令嬢だった。実家の屋敷と女子寮でしか生活してことの無いほぼ箱入りの一人娘だ。しかし、そんな彼女でも吐き気のする『悪』はわかる。『悪』とは自分自身のためだけに、弱者を利用し踏みつける者だというのが彼女の考えだ。
ましてや子供を人質にとる大人たちを利用する。ガスパーは大変許せない存在だった、そのため裁くことができないというのは非常に残念だった。
「…そう、なら仕方ないわ」
パチン、と苛立たしげに指が鳴らされたのを合図に、ガルドは体の自由を取り戻す。激昂し、雄叫びを上げながら体を虎の獣人へと変貌させたガルドは怒り任せにその腕をテーブルに向けて振り下ろそうとした。
「――――――ゥグエッ!?」
―――が、それは適わなかった。勢いよく振り下ろされようとしたガスパーの腕が、空中でピタリと止まっている。このままテーブルが壊れされると思っていた飛鳥も、思わず伏せたジンも、もしもの時のために腰を上げていた耀もこれには驚いた。しかし
「やれやれ、物を壊したら器物破損だということくらいも知らなかったのか?これ以上自分の罪を増やすのは止めたらどうだ」
この出来事の張本人である宮本は、不適に笑っていた。
「か…体がっ動かん…ッ!?」
飛鳥の時とは違う、内側から動きを止められたような感覚がガスパーを襲う。
「〈アクア・ネックレス〉。オマエの動きは完全に封じた、俺が能力を解除するまでオマエは絶対に動けない」
なぜ自分の体が動かないのか、ガスパーは理解することができない。いまの彼の体は錆びた機械のように唸り声をあげるだけでまったく動かない。
その様子を面白そうに、宮本は歪んだ笑みを浮かべる。そしてカカトを振り上げ、頭部に勢いよく落とした。ズシン…!と今度は床に倒れたまま動けなくなる。
「さて、コイツをどうする?誰か意見ある奴はいるか?」
「そうね……ねぇ、ガルドさん。このまま痛みつけて裁かれるまで動けないほど再起不能してあげることと、箱庭の外に放り出すことと、どれがいいかしら?あと、尻尾巻いて貴方自ら外に逃げ出すという選択肢もあるわ」
飛鳥はその姿に少し機嫌を良くし、ガスパーの顎を持ち上げると悪戯っぽい笑顔で話しを切り出す。
「だけどね。私は貴方のコミュニティが瓦解する程度のことでは満足できないの。貴方のような外道は野鳥に食べられて道端に放置されたカボチャみたいにズタボロになって、己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ――――そこでみんなに提案なのだけど」
飛鳥はガルドを指差し、見下し、突きつけるように告げる。
「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の"フォレス・ガロ"の存続と"ノーネーム"の誇りと魂を賭けて、ね」
日が暮れた頃、三人は新たな同士、宮本を連れて噴水広場で残りの二人と合流した。世界の果てまで飛び出した逆廻 十六夜と、彼を追って跳び出した黒ウサギである。
三人から話を聞いた黒ウサギはウサ耳を逆立てて怒り出した。怒り狂う黒ウサギとボケをかます三人を、十六夜はニヤニヤしながら止める。
「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど!"契約書類"を見てください!このゲームで得られるモノは自己満足だけなんですよ?」
「"参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する"―――確かに自己満足だな」
「でしょう?それに時間さえかければ彼らの罪は必ず暴かれます!」
「あのね、黒ウサギ。私は『あの外道がコミュニティを解散した』という『結果』なんてどうでもいいの。大切なのは『過程』なのよ、ガスパーの傘下になってしまった人達も、外道が正式に裁かれた方がいいと思っているはずよ」
譲る気は無い、と言い張る飛鳥に黒ウサギはウサ耳をへにょりと曲げ、諦めたように頷いた。
「はあ~仕方の無い人達デス。まあ腹正しいのは黒ウサギも同じですし、"フォレス・ガロ"程度なら十六夜さんが一人いれば楽勝でしょう」
「なに言ってんだよ、俺は参加しねぇぞ」
「……え?」
「当たり前よ、貴方なんて参加させないわ」
フン、と鼻を鳴らす二人に黒ウサギは慌てて食ってかかる。
「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」
「そういうことじゃねえよ黒ウサギ。この喧嘩はコイツらが売って奴らが買ったんだ、俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」
「あら、分かってるじゃない」
「…もう好きにしてください」
「おう!輝之助もそれでいいよな」
ずーっと振り回されっぱなしで疲れた黒ウサギはこれ以上反論しようとはせず、ガックリと肩を落とした。
十六夜は蚊帳の外で本を読んでいた宮本に訊ねる。
「俺もギフトゲームに出られるならそれで構いません」
「ヤハハ!そう堅苦しくなんなよ、今日からおまえ同じコミュニティなんだぜ?仲良くしようじゃねーか」
「そ、そうですよ!前のコミュニティを追い出されたのは真に残念でしょうけど、これから頑張りましょう!」
「…そうですね。よろしく頼む」
笑いながら腕を宮本にまわして無理矢理肩を組む十六夜。少女たちはそれを見て「これが男子のノリなのかしら?」「さあ?」という会話をしていた。
「ところでよ輝之助。なんで
「…………」
言われてみればそうだ、と全員が思った。ガスパーの傘下の者は喋ったりすることはできない。ならば彼がなぜそのことを知っているのか?それもこれほど詳しく…
「でき過ぎてるんだよ。お嬢様の話通りなら、偶然で片付けるにゃ不自然過ぎる」
「……思い過ごしじゃあないのか」
「俺の予想なんだが…おまえは始めから目的があって俺達に近づいてきたんじゃねえか?たとえば、"ノーネーム"に加入する事とかな」
「…なにが言いたい?」
ギロリと十六夜を横目で睨む宮本、十六夜は悪い笑みを浮かべ話を続けた。
「これは俺の予想なんだが…おまえは"フォレス・ガロ"の関係者、もしくはコミュニティを脱退してきた奴なんじゃないか?」
「…答える必要は無い」
「ああ、プライバシーの尊重は大事だしな。だが、そんな怪しい奴をコミュニティに加入させるわけにはいかない…そう思わないか?」
「………チッ」
観念し諦めたように舌打ちをする宮本。疑いの視線に耐えられなかったのか、それともコミュニティにどうしても加入する必要があるのか、はたまたその両方か。それはまだ誰にも分からないが、宮本は重苦しく口を開いた。
「…半分正解で半分間違いだ」
「なに…?」
「
突然、宮本の顔が図工の粘土のように変化していく。その気持ち悪さに黒ウサギはビビッてしまったが、仕方無いだろう。グニャリグニャリと、今度は顔だけでなく身体まで変化していき、姿を変えた。
「そしてこれが僕の本来の姿だ」
凄まじい変化だった。170あった身長は耀と同じくらいにまで縮み、引き締まった筋肉は多少緩くなり顔も身長に相応しい童顔になった。全員が驚愕する中、十六夜は少年に問うた。
「おまえは誰だ?」
「僕の名前は如城 輝之助。"フォレス・ガロ"に捕らえられた内の生き残りさ」
少年―――――輝之助はそう応えた。
←to be Continued
〈アクア・ネックレス〉
【第四部 ダイヤモンドは砕けない】に登場。
【破壊力-C/スピード-C/射程距離-A/持続力-A/精密動作性-C/成長性-E】
水分に混ざり相手の体内に進入して攻撃するスタンド。雨や水蒸気にも同化することが可能。簡単なものになら姿を変えることも出来る。大きさは同化した水の容量に比例する。
人間に取り憑いて操ることも出来る。
十六夜「八話目でやっと出番かよ」
輝之助「メメタァ…」
十六夜「これでも原作主人公だぜ俺は、後書きでメタ発言するくらい許してくれてもいいだろ」
輝之助「そういう問題かァ?」
次回【箱庭の魔王の件について】