パワーも無い!スピードも無い!波紋もそれほど走ってない!そんな幽波紋使いが箱庭に来てしまった件について   作:BサインからCサイン

9 / 11
箱庭の魔王の件について

いつからか、と聴かれればそれはきっと『あの日』からなんだろう。

 

僕は強い力を求めるようになった。それは昔みたいなモノじゃあなくて、誰かにぶつけるためだけの力だった。復讐するというためだけのドス黒い塊。僕はそれを止めることはできず、ただただ怒りを忘れないように修行に明け暮れた。

 

街の誰の眼にも入らないようにひっそりと生活し、どうしても必要なときは〈クヌム神〉で変装して街を歩いた。そうして修行を続けてきた。

だが、どうしても避けては通れない道もあった。法である。

 

"コミュニティに属さぬ者は三十日以内の猶予が与えられる"

 

この法の大事な点は逆に言えば、三十日以内になんらかのコミュニティに属さないといけないという所だ。

だから僕は街から離れた森中の小さなコミュニティに表面上だけ加入していた。

寝床を提供してもらう代わりに、アレコレを手伝うといったギブアンドテイクの関係だが、小さなコミュニティは僕の事情に納得してそこに住ませてくれたのだ。

 

そうして半年ほど経った頃。ソレはちょうど御昼時に起きた出来事だった。

 

余談だが、僕が箱庭で格別に好きだったのがマリが教えてくれたイタリアン・コーヒーだった。コールタールみたいに真っ黒でドロドロで、同じ量の砂糖を入れて飲む。これをダブルで飲むと、今までの疲れが全部吹っ飛んで、驚くほどの元気が体の芯から湧いてくる。信じられないくらいいい香りで、もっと頑張ろうと前に歩いていける気持ちになる。まさに大地の恵みだ。

 

そう、丁度僕がイタリアン・コーヒーを飲んでいる時だった。たまたま能力を使用したままだった〈トト神〉が予知を始めたのだ。内容は『立ち寄った喫茶店でガスパーと名無しがギフトゲームをする』――――大分簡略しているが――――だった。

 

これを見て僕はうっかりコーヒーを零してしまいそうになった。予知を見るとガスパーに会える千載一遇の大チャンスのように見えるが、ギフトゲームをするのは"名無し"のコミュニティであり僕じゃあない。

 

しかも予知の絵には這い蹲っているガスパーを踏みつける少女が描かれていた。これはガスパーよりも少女の力量が上、という解釈で間違いはない。つまり、もしこのまま名無しとガスパーのギフトゲームが行われてしまったら"名無し"が勝ってしまうかもしれないということなのだ。

 

ならばどうするか?

簡単だ。その"名無し"に僕が入ればいいのだ。

僕は小さなコミュニティの人たちと別れ、予知が指す喫茶店に向かった。

 

にしてもこのコミュニティ…本当に"ノーネーム"なのか?人員や人脈が割に合わない気がするが―――――いや、そんなことはどうでもいい。

僕は別に、このコミュニティに長居する必要はないのだから。

 

 

 

 

【箱庭の魔王の件について】

 

 

 

 

結局その場はもう日が暮れてしまうということで、黒ウサギがギフト鑑定をすることを提案し"サウザントアイズ"まで向かうこととなった。ギフト鑑定の必要の無いジンと輝之助は先にコミュニティに帰ってもよかったのだが、三人のギフト内容に興味があって着いて行くことになった。

 

途中で"サウザントアイズ"についての説明や三人の季節の価値観が違うなどして黒ウサギが解説していた。箱庭の事に関しては輝之助もだいたい把握ているので話はうわのそらだった。

 

"サウザントアイズ"の商店に着くと、既に割烹着を着た店員が看板を降ろそうとしていた。慌てて黒ウサギが止めにかかるも一言で却下されてしまった。どうしてものかと慌てて思考する黒ウサギの下に、天からの救いがかかった。

 

「イイイ───ッハァアアア───ッ久しぶりだの黒ウサギィィィ──ッ!」

「し、白夜叉様!?どうしてあなたがここにってきゃああああああ」

 

突如店内からロケットのように飛び出してきた着物姿の白髪の少女に抱きつかれ、向こう側の水路に勢いよく飛んでいく黒ウサギ。

その様子に店員は頭を抱え、十六夜はヤハハと笑い、他の者は呆気にとられる。

 

この白髪の少女こそが、"サウザンドアイズ"の幹部の一人、白き夜の魔王と云われる白夜叉である。…その張本人は黒ウサギに抱きついたまま乳房を揉みしだき、ポイッと投げ捨てられているが、確かに彼女は箱庭の魔王なのだ。

 

「フホホ!やっぱり黒ウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」

「ちょ…白夜叉様!ちょッと離れてくだ…さいッ!」

 

その後、十分にセクハ…もとい少々過激なスキンシップを終えた白夜叉に一同は香の焚かれたやや広い和室に通された。なぜか白夜叉の肌が潤っていたが、一同は気のせいだろうと決め込んだ。

 

「改めて自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、3345外門に本拠を構えている"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

「はいはい、御世話になっております」

 

投げやりな言葉で返す黒ウサギ、さすがに御世話になっている者に対する返事では無い。

 

白夜叉の話は続き、箱庭を構成する外門のこと、十六夜が遭遇したと言う蛇神のような"世界の果て"に棲まう強力なギフトを持ったものたちのことについて話してくれた。箱庭と外門の図を見てバームクーヘンだと盛り上がったりもしたが、その描写は割合割合。

 

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

「知り合いも何も、あれに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

 

小さい胸を張り、豪快に笑う白夜叉。一方それを聞いた問題児たちは物騒に眼を光らせた。黒ウサギは嫌な予感を感じた。

 

「へえ、じゃあおまえはあのヘビよりも強いのいか?」

「当然だ。私は東側の"階層支配者(フロアマスター)"だぞ、この東側の4行以下にあたるコミュニティにでは並ぶ者などいない最強の主催者なのだからの」

「あら…フフ、それじゃあ貴女を倒せば私達のコミュニティは東側で最強という事になるのかしら?」

「あ、飛鳥さん!?十六夜さんに耀さんもどうして目を輝かせているのですかッ!?」

「よいよい黒ウサギ、私も遊び相手には常に飢えている。だがそのまえに、

一つ問おう────おんしらが望むのは『挑戦』か、もしくは『決闘』か?」

 

瞬間、世界が一変する。

無数の未知なる光景が脳裏を掠めて行き、やがて白い雪原と凍る湖畔、そして水平に太陽が廻る世界に辿り着く。記憶に無い場所が流転を繰り返し、足元から四人を飲み込んでいく。

 

「…なッ……!?」

 

四人は絶句する。ハッとして気づいた時には、自分達は完全なる別世界に居た。

そこは白い雪原と凍る湖畔、そして水平に太陽が廻る世界。思わず息を呑む四人。

遠く薄命の空にある星は只一つ。緩やかに世界を水平に廻る、白い太陽のみ。

 

(な、なんだコレは!夢とか幻覚とかそんなチャチなモンじゃあないッ!?まるで星を…世界を一つ創り出したみたいだ…ッ!!僕は決闘なんて受けるつもりは無いが…他の三人がどういう判断をするかは眼に見えている)

 

唖然と立ち竦む四人に、今一度白夜叉は問いかける。

 

「いま一度名乗り直し、問おうかの。私は"白き夜の魔王"───太陽と白夜の星霊

白夜叉。おんしらが望むのは試練への『挑戦』か?それとも対等な『決闘』か?」

 

少女の容姿から感じる圧倒的な凄み、まるで冷凍庫の中に放り込まれたような感覚を四人は感じた。これほど大きなフィールドを自分が持つゲーム盤の一つと言い放つ、そんな相手といきなり戦おうとするほど他三人も無鉄砲ではなかったらしく、そうそうに降参した。

 

「も、もう!お互いに相手を選んでください!"階層支配者"に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う"階層支配者"なんて冗談だとしても笑えませんッ」

 

怒る黒ウサギを流して、悪戯っぽく笑う白夜叉。彼女にしても、ほんのお遊びのつもりだったのだろう。それはそれで舐められたように感じた十六夜たちは少し機嫌を悪くするのだが。

 

その後、白夜叉が呼び寄せたグリフォン相手に一行のギフトゲームが始まった。

 

『ギフトゲーム名 "鷲獅子の手綱"

 

プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

        久遠 飛鳥

        春日部 耀

        如城 輝之助

 

クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 

クリア方法 "力""知恵""勇気"のいずれかでグリフォンに認められる。

 

敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなかった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

"サウザントアイズ"印』

 

〝契約書類〟を読み終わるや否や、瞳を輝かせた耀が勢い良く立候補し、始めから参加するつもりの無い輝之助はさておき、異論の無い十六夜たちは先手を譲った。

 

(グリフォン…鷲の頭と翼と獅子の身体を持つ幻獣。見るのは初めてだが、耀のような少女がグリフォンのスピードに耐えられる事ができるのか…?)

 

人間が空を飛べるのは飛行機等の航空機に乗っているからだ。精密な機内に居ることで空気抵抗を避け安全に飛ぶことができる。車が時速120キロで走っても乗用車の身に何も無いのは風を受け流すボディーがあるからこそ。

 

だがこの場合、耀が乗るのはグリフォンの背であり強力な圧力から身を守るすべは無い。推測だがグリフォンは飛行速度最速のハリオアマツバメよりも速い。そんな生物の背に乗って飛べば振り落とされるもしくはミンチとなるだろう。

 

もしなにかあれば助けれるようにしてやるか、と考えていた輝之助だが。結果は耀の勝利でギフトゲームは終わった。

 

耀は誇りと命を賭けてグリフォンに真っ向から勝負を挑み、本気で山脈の空を駆けるグリフォンの手綱を最後まで離さなかった。更にはクリアしたと同時に落下したものの、グリフォンが持っていたギフトを操って空を舞い、着地して見せたのだった。

 

どうやら耀のギフトは他生物の特徴を手に入れる類のモノのようだ。彼女の父親が創ったギフトだそうだが、それだとしたらどうしてグリフォンの飛行速度に耐え切ることができたのかという疑問も浮かんだが、話に付いていけなくなりそうだったので後で考えることにした。

 

 

「それで?コレは結局どんな力を持ったギフトなんだ?」

「それは分からん。いま分かっとるのは異種族との会話ができるのと、友になった種から特有のギフトをもらえるということぐらいだ。それ以上は上層の鑑定士でなければ不可能だろう」

「え?白夜叉様でも鑑定できないのですか?今日は十六夜さん達のギフト鑑定をお願いしたかったのですけど」

「ゲッ…───よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

気まずそうに苦笑する白夜叉だったが─────もともと断る気は無かったのだろう─────手を丸め双眼鏡のようにして四人の顔を見る。

 

「…ふんふむ。四人ともに素質が高いのは分かるが、これではなんとも言えんな。おんしらはギフトの力をどの程度に把握している?」

「企業秘密」

「右に同じ」

「以下同文」

「想像にお任せしよう」

「うぉぃ!?いや、まあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それでは話は進まんぞ?」

「別に鑑定なんていらねえ。生憎、人に値札貼られるのは趣味じゃない」

 

ハッキリ拒絶する十六夜の言葉に問題児全員が同意した。

それに頭を抱えた白夜叉だが、突如妙案が浮かんだようにニヤリと笑った。

 

「ま、なんにせよ私が与えた試練をクリアしたおんしらには"恩恵"を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティの復興祝いには丁度良い」

 

白夜叉がパンパンと拍手を打つと、三人の眼前に光輝く三枚のギフトカードが現れた。

 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム"正体不明(コード・アンノウン)"

 

ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム"威光"

 

パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム"生命の目録(ゲノム・ツリー)" "ノーフォーマー"

 

「ギフトカード!」

「お中元?」

「お歳暮?」

「お年玉?」

「違いますッ!!」

 

問題児たちの悪ノリにツッコミを入れる黒ウサギ。あーもう!と項垂れる黒ウサギを他所に三人は物珍しそうにそれぞれのギフトカードを見つめている。

 

「我ら双女神の紋のように本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは"ノーネーム"だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」

 

一息ついて。

 

「そのギフトカードは正式名称を"ラプラスの紙片"、即ち全知の一端だ。そこにはおんしらの魂と繋がった"恩恵"の名称───ギフトネームが刻まれておる。その名は見れば、おおまかなギフトの正体は分かるのだ」

「へぇ?じゃあ俺のはレアケースなわけだな」

「なに…?────"正体不明"だと?いやそんな馬鹿な…全知である"ラプラスの紙片"がエラーを起こすなど…」

「なんにせよ。鑑定できなかったってことだろ?俺にはありがたいぜ」

 

十六夜は白夜叉からギフトカードを取り返しポケットにしまい込んだ。白夜叉はギフトカードを取られた後も納得がいかないように思考を巡らせ、十六夜は『ギフトを無効化する』類のギフトなのでは?と言う結論に辿り着いたが、切り捨てた。

 

黒ウサギから聞いた話では、十六夜は蛇神を拳で倒したと聴いた。

蛇神を倒すほどの強大な力と"ラプラスの紙片"の無効化、この二つの力を同時に宿すギフトは大きく矛盾しているのだ。これならば"ラプラスの紙片"に異常があったというほうが納得がいく。

 

そうして少しの間考えていた白夜叉だったが、どうにも答えがでないので考えるのを止めた。そしてそこで新たな疑問が出てくる。

 

「そういえば、おんしのギフトはどのようなものなのだ?"ラプラスの紙片"が適用されなかったのだ。既に持っておるのだろう…?ギフトカードを」

「ええ。見ますか?見えたら、の話ですが…」

 

輝之助はポケットから『白が入り混じった黒色のギフトカード』を取り出し、全員に見せる。白いキャンパスを黒い絵具で塗りつぶしたようなギフトカードは、誰がどう見ても文字が書いてあるようには見えなかった。

 

しかし、ソコにはちゃんと輝之助のギフトが載っている。

ただその数が常人より圧倒的に多く、カード内に書ききれないというだけなのだ。

そしてその中身がギフトでもなんでもない家具や道具ばかりで詰まっていると知っているのは本人だけだろう。

 

「ふむ…まぁ読めぬなら読めぬでよい。そこの小僧と同じく、すぐに解明できるわけではないだろうからの。ところでだが…」

 

白夜叉は輝之助の方を向き直り、口を開いた。

 

「おんし……何者だ?」

 

疑い。その二文字がハッキリと読み取れる目を白夜叉は輝之助に向けていた。

 

「…質問の意味がわかりませんね」

「とぼけなくともよい。おんしが小僧たちと違い、箱庭に召喚された訳ではないことくらいわかっておる。ギフトカードを持っておることが何よりの証拠だ」

 

白夜叉は輝之助を疑っていた。

彼は十六夜、飛鳥、耀たちのように今日箱庭に召喚された訳ではない。ならば必然と輝之助は箱庭の住人ということになる。

箱庭の住人が"名無し"に加入したいと思うのか?アンケートをとれば100人中100人がNoと答えるだろう。

 

「おんしはなぜ黒ウサギたちの"ノーネーム"に加入したのだ?他に加入するコミュニティは幾らでもあるというのに…おんしの所属していたコミュニティもな」

「白夜叉様には言ってなかったですね。実は俺、以前所属していたコミュニティをとある事情で脱退したんですよ。そこでちょうど見かけたのが、ココだったわけです。"フォレス・ガロ"にも勧誘こそされましたが、あんな所に所属する気はないのでね」

「そうかそうか。つまりおんしは『所属するコミュニティを探していたところにちょうど居たから"ノーネーム"に加入することにした』というところか……そうだ!」

 

白夜叉はワザとらしくポンと手をうつ。

 

「それならばおんし、所属するコミュニティはどこでもいいのだろう?なら"サウザンドアイズ"に来ればよいではないか」

「白夜叉様っ!?」

 

黒ウサギの信じられないという叫びを白夜叉は手で制した。

 

「そう怒るな黒ウサギ。こやつは『所属できるのならばどこでもいい』と言っておるのだ。ちょうど人手が足りないと思っていたころだしの。ならば"サウザンドアイズ"に居た方がこやつのためになるというものだ」

「そ、それは……」

 

涙目になる黒ウサギに白夜叉は内心が痛んだ。

しかし、彼女とて引き下がるわけにはいかないのだ。

正体のわからない相手を、自分が可愛がってきた黒ウサギの下へそのまま送るわけにもいかないのである。万が一、彼が悪事を企み"ノーネーム"を利用するために加入しようと思っているのなら、この場で処罰を下さねばならない。

 

一方輝之助は苦い表情を浮かべた。

確かに、自分の言い分では白夜叉の言う通りということになる。が、そんなことは輝之助は思っていないが、本心を打ち明ける訳にはいかないのだ。

だがもう既に彼は白夜叉の言葉巧みに追い詰められている…どうやってやりすごせばいいのかと脳内で考えている。

 

そして輝之助は諦めたように、口を開いた。

 

「……降参だ。『僕』の負けだ…だからその話は無しにしてくれないか?」

 

あからさまに態度が変わった輝之助に全員が大小あれ驚いた。

特にカフェで輝之助と出会って会話も一番多い飛鳥と耀が一番驚愕している。

 

「それはなんとも言えん。そうするかどうかはおんし次第だぞ?」

「…どうしても僕を"ノーネーム"に加入させたくない、ということか」

「当たり前だ。宛先も中身もわからない宅配物をそのまま開ける馬鹿がおるか?」

「……確かにその通りだ。だが僕にも事情というモノがある。いまは誰にも言えない事情がね…だから頼む―――――」

 

輝之助は白夜叉の目を見て、訴える。

白夜叉はその言葉に数秒考え、返答を出した。

 

 

 

 

 

 

その後、一同は白夜叉に店前まで見送られ一礼した。

 

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むのだもの」

「ああ。吐いた唾飲み込むなんて格好つかねぇからな」

「フッ、よかろう。楽しみにするがいいぞ」

 

そこで白夜叉はところで、と言葉を付け加えて真剣な表情で黒ウサギたちを見た。

 

「いまさらだが一つ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているのか?」

「ああ。名前とか旗の話か?」

「無論。そして旗を取り返すために、魔王と戦わねばならんことも?」

「ええ、聞いているわ」

「……では、おんしらはすべてを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

「そうよ。打倒魔王なんてカッコイイじゃない」

「カッコイイで済む話ではないのだがの…まあ、コミュニティに帰れば魔王がどういうものかおんしらにも分かるであろう。それでも魔王と戦うというのならば止めん……だが───」

 

白夜叉は力無き者の末路を哀れむように、過去の悲劇を思い返すかのように、憂いの表情で、 飛鳥と耀に突き付けた。

 

「そこの小娘二人。魔王と戦う前に、様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。そこの小僧共はともかく、おんしら二人の力では魔王のゲームを生き残れん」

「……ご忠告ありがとう。肝に銘じておくわ」

「それで良い。年長者の言う事は素直に聞いておいて間違いは無いぞ。…それとおんし、先ほど約束はしっかり守れよ?」

「当然だ」

 

輝之助の出した提案は『"フォレス・ガロ"のギフトゲームが終わったらすべて事情を話す。だからそれまでは待ってほしい』というものだった。その間絶対に"ノーネーム"に被害をもたらすことはしないし、事情を話した後で自分をどうするかは四人に任せるとまで誓ったので、白夜叉と黒ウサギたちは提案を呑んだのだ。

 

「もし僕が"ノーネーム"を裏切って自分の利益のためだとかに利用したら、そのときは煮るなり焼くなり好きにするがいいさ」

「その言葉、しかと覚えておけよ?」

 

会話を交わえるなかで、輝之助は絶対に約束を破らないという確固たる自信があった。

白夜叉もそんな彼は約束を破るような男ではないのだろうなと、心で感じ取っていた。

 

その結果が訪れるのは、明日の事になる。

 

 

 

←to be Continued

 

 

 




〈クヌム神〉
【第三部 スターダストウルセイダース】に登場。
【破壊力-E/スピード-E/射程距離-E/持続力-A/精密動作性-E/成長性-E】
本体が自分の顔や姿を変えるスタンドで、スタンドの像は持たない。
顔のみでなく、身長、体重、体臭、声までも真似できる。ただし人間にしかなれない。髪の毛を変化させて帽子に変えることもできる。
ただし中身は全く変わらないため、他人になりきるには本体の努力が必要。




十六夜「ようやく次回で黒ウサギのコミュニティに行けるな」

黒ウサギ「NO!黒ウサギはコミュニティのリーダーではないのですから、ジン坊ちゃん率いるコミュニティと言ってもらわないと」

飛鳥「そんなことより、これから私たちが暮らすコミュニティがどんな風なのか気になるわ」


輝之助「…誰か最初の十六夜のメタ発現に気づいてくれ」


次回【"ノーネーム"本拠の実態の件について】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。