「やぁ! 僕の名前はパスファインダー! 機種は移動ロボット型汎用作業機、
――誰だこいつ。
初めて出会ったとき、最初に抱いた感想はこのたった5文字に集約されていた。
なんかよく分からん人影が校門の前にいたかと思えば、こちらを見るなり大げさな仕草で手を振りながら近づいてきて早々、そんな挨拶をしてきたのである。
しかも接近してきたことでその姿が分かったのだが……明らかに人間じゃない。というかこいつが自称したように完全にロボット、もしくはオートマタだ。
まず目を引くのは胴体のど真ん中にはめ込まれているモニター(なぜか笑顔が写っている)。
最近のオートマタと比べて大分細身でありながら、そのクレーンを人型にしたような姿は数世代前の機体のように古めかしい(旧型機か?)。
背中にはやたらゴツいタンクがあり、そこから左腕にかけてワイヤーが伸びている(ワイヤーの太さとタンクの大きさからして……50メートルはありそうだ)。
ワイヤーの先にはフックがあり、おそらくグラップリング用なのだろう(何のための?)。
両手にはやたら大きい袋を持っており、こいつの大袈裟な動きに連動するようにガチャガチャと音を立てている(音からして金属でできている何か。推定銃)
明らかに普通じゃない来訪者を前にして、私は完全に不意を突かれていた。
「……何の用」
しかし、すぐさま現実に戻った私は、いつでも射撃できるように背中にかけてあった愛銃に手をかけつつ、警戒心と敵意をにじませた声色で問いかけた。
相変わらず底冷えするような声色だと思いながら問いかけられたロボット……自称パスファインダーを見やる。
するとそいつはモニターの笑顔をカラフルに点滅させながら言った。
「うんうん! 話を聞いてくれる優しいお友達に会えて僕はうれしいよ!」
「どこが!?」
言うに事を欠いて、こいつ私に向かって優しい!? 明らかに拒絶されてるのになんなんだこいつ!? 思考回路がバグってるんじゃないか!?
そんなポンコツロボットは、とてもうれしそうに私の手を握ってぶんぶんと振ってくる……って、勢いが強すぎる! こいつ挨拶と見せかけて腕を引きちぎりに来てるんじゃないか!?
そして何より、こいつ「普通に」喋った!
オートマタでもここまで流暢にしゃべれるのは早々いないっていうのに……!
そんなツッコミが頭の中で流れていくが、とりあえずはこのよく分からんバグったロボットをどうにかしなければ……!
「おっと、そうだった! 名前を聞くのを忘れてたね! ネームデータがないと君を何て呼べばいいのか分からないしさ!」
「誰が言うか……!」
もういい、この距離感バグりロボットをとっととぶっ壊す……!
そう思って銃を抜こうとする……その時だった。
「あ! ホシノちゃんがロボットと遊んでる!」
おそらくこの場に一番来てほしくなかった人が来た。
「ユメ先輩! 下がっててください! こいつっ、こんなところに一体だけで何しに来たかわかりません! だから――!」
私を除けば唯一と言ってもいい、この学校に残った生徒の一人「ユメ先輩」を下げようとする。
先輩がいなくなってしまっては、この学校が……!
と、思っていた。
「ユメ? おぉ! 君がユメっていう人か! マスターが言っていた人だ!」
「あら? 君は……博士ちゃんが作ってたマーヴィン? あら~! いらっしゃ~い!」
「……へ?」
先輩がまるで既知に出会ったかのように駆け寄っていき、ロボットと手をつないでピョンピョンと飛び跳ねる。
訳が分からない……! ユメ先輩とこいつには何の関係が……!
そんな私を置き去りに、一人と一体は和気あいあいと話し始めた。
「マスターから聞いてるよ! 非常にうざったらしくて騒々しくて愉快な人物だって!」
「うぐぅ! 酷いな博士ちゃんは! 私はいつも引きこもってて運動しない博士ちゃんを遊びに誘ってたのに!」
「そうなのかい? マスターのことは記録データでしか知らないからね! あ、これはお土産さ!」
「わぁ! ありがとうね! えっと……名前は何かしら?」
「僕かい? 僕の名前は――」
「ちょっと待ってください!」
思わず二人の会話を遮ってしまった。
いくらなんでもこっちの持つ情報が少なすぎるのに、二人は無視して話しだすもんだから余計に混乱しだしてしまう。
なんだこの仲の良さは……なんだこの溶け込み具合は……言動からして初対面のはずなのに!
「まぁまぁ、とりあえずはみんなで自己紹介しましょ! ほらホシノちゃん、御挨拶!」
「う、うぐぅ……た、小鳥遊、ホシノ……です……」
「君はホシノっていうんだね! それじゃあ僕も名前を言おうかな!」
この時の私は思いもしなかった。
こんなポンコツロボットが、私達にとって大切なものになることに。
「僕の名前はパスファインダー!」