次の日。僕は退院した。あれからオルコットさん…セシリアさんから色々1組のことについて、聞かされた。
1組のクラス代表は一夏君に決まったらしい。理由としては、これから色々イベントや活動を通してより良い経験を積んで欲しいとの事だった。
それにセシリアさんが辞退した事が大きな決め手となった。そんな事もあり今日からやっと登校できる。ジャージ姿でいつも通り中庭に向かうと、既に剣道の竹刀を2本用意されている。
「おはようございます。織斑先生」
「おはよう、天道。病み上がりで悪いが早速行くぞ」
「は、はい!」
そう言って、織斑先生との朝の特訓が始まった。けど、今日はいつもと違っていた。それは、僕が素振りを終えた時だった。
「よし、今日はより実践的な事をしよう」
「えっと…」
そう言うと、織斑先生はもう一本の竹刀を構えて、僕と対峙した。すると……
「どこからでも打ち込んで来い。なに、遠慮はいらんぞ」
「わ、わかりました!それじゃあ…でりゃゃゃ!」
僕は真正面から打ち込んで行く。結果は惨敗した。そりゃそうだ。一朝一夕しかやっていない剣道で勝てるわけがない。
「天道。中々に筋が良くなってきたぞ」
「えっと…そうでしょうか?」
「ああ、あまり実感が湧かないようだが、着実に良くなっている。いずれは、織斑を超えるかもしれんぞ」
「そうですか……それなら、頑張ってみようかな」
「うむ。それまで、付き合うから。頑張れよ」
そう言って、織斑先生は僕の頭を優しく撫でた。誰かに撫でられるなんて、子供頃以来だったから、少しだけ恥ずかしい思いをしてしまった。
「あ!」
「おっと、済まない」
「いえ、大丈夫です///」
「そ、そうか///」
突然の織斑先生の行動にびっくりしたけど、少しだけ幸せな気分になった。けど、その場面を陰から見ていた人がいた。
「ぐぬぬぬ…せっかく歩さんと、朝食を食べようと思いましたのに…織斑先生と一緒だなんて、聞いておりませんわ!」
その後はテントに戻って、朝食を食べようと思ったけど時間もあまりなかったので、携帯食料で済ませてしまった。本当は皆と一緒に食べればいいのだけれどね。
そんな事を思っていると、続々とクラスメイト達が集まってきた。
「お、歩!元気になったんだな!」
「一夏君…うん、何とかね」
「良かったぜ。歩が居ないと寂しいからな」
「一夏君…ありがとう」
「おはよう…お、天道じゃないか。元気になったのか?」
「篠ノ之さん。うん、おかげさまでね」
「そうか、良かった」
そう言って、篠ノ之さんと一夏君は自分の席に着いた。僕も席に着こうとしたら、突然横から抱きつかれた。誰かと思ったら…
「おはようございますわ!歩さん!」
「お、おはようございます。セシリアさん」
「まぁ!セシリアさんだなんて他人行儀な挨拶はよしてくださいまし。
「えっと…あはは…」
クラスメイト達が見ている中でセシリアさんに抱きつかれ、僕はちょっと困惑している。以前の僕であれば、不幸が移るから早く退くように言っていた。けど、セシリアさんに言っても聞く耳もたないだろう。
「えっと…セシリアさん。その…僕と居ると不幸な目にあいますよ」
「心配いりませんわ!私はそんな運命にあいませんから」
「けど「それに」それに?」
「こうやって、元気な歩さんに会えた事が私にとっての一番の幸福ですわ///」
「セシリアさん…ありがとうございます」
感動に浸っていると、後ろから「コツン」と何かで叩かれた音がした。見てみると、
「お前たち…今はSHRの時間だと思うが…どういうことか説明してもらおうか」
「ひっ!お、織斑先生…」
「天道。お前がちゃんと言わないから、オルコットが暴走したんだぞ」
「す、すいませんでした…」
「!ま、まぁ今回は許してやる///次回からは気を付けるようにな」
「は、はい…」
織斑先生に怒られてしまったなぁ。弱い自分を克服しようと思ったのに…これじゃあ、強い自分になるためには、まだまだかかるかもしれな……
時刻はお昼休み。僕は例のごとく、購買部で買ってきたパンを持って屋上に向かっている。最近購買部のおばちゃんに会う頻度が、高くなったせいか顔を見るたびに僕が欲しいパンを出してくれるようになって来た。
そして、屋上に着いていつもの場所でパンを食べ始める。今日は1人だから、気兼ねなく食べれる。良かった。
「はむ…うん、美味い。やっぱり焼きそばパンは最強だよね」
そんな事を言いながらご飯を食べ終わる。そろそろ5月になろうとしているので、心地よい風が吹いている。このままでは眠ってしまうかもしれない。
「ダメだダメだ。こんな所で寝てしまったら、授業をサボる事になる」
そう言って、僕は両方の頬をつねって眠気を覚ました。そして、教室へと戻った。
教室に戻ると、次の時間は第一アリーナで実習だった。なので僕と一夏君は急いでアリーナ横にある、更衣室に行かないといけない。
男子生徒2人だけなのに、100人はゆうに使えるくらいの広さなので申し訳なさがあるけど、仕方ないよね。そう言っている間に僕と一夏君はISスーツに着替えた。
グラウンドには、既に他のクラスメイト達が居る。けど…皆綺麗だな。ISスーツは機能性を高めるために、薄手の生地を使っている。それ故にボディーラインがくっきりと見えてしまう。
うう…みんな美人だから、直視しないようにしているけど…
「あら?歩さんお顔が赤くなっていますわよ。熱でもあるのですか?」
「!」
そんな事を思っていると、僕の目の前にセシリアさんが現れた。くっきりとしたまつ毛。サファイアブルーを思わせるような目。ロングカールが似合うブロンドヘア。そして、誰もが羨むようなスタイル抜群の持ち主。
クラス代表決定戦の時は無我夢中だったから、こんなにも近くで見つめられると緊張しちゃう。
「だ、大丈夫、大丈夫!ちょっと驚いただけだから…」
「?」
当の本人は分かっていないようだけど…そんな事をしていると織斑先生から、指示があった。どうやらセシリアさん、一夏君、僕の3人でIS展開、飛行訓練を行うらしい。
「ではこれより、ISを使った授業を開始する。先ずは、専用機持ちに実践してもらう。オルコット、織斑、天道前に出ろ」
『はい!』
「では、ISの展開を行う。先ずはオルコットから」
「はい。歩さん見ていてくださいまし♪」
「はい」
そう言って、セシリアさんは左耳に付いている、青いイヤーカフスを叩いた。すると即座にIS【ブルー・ティアーズ】が装備されて空中に浮遊していた。その展開時間を山田先生が計測していた。
「オルコットさんは0.5秒でした」
「まずまずだな。もっと精進するように」
「はい!」
「次は織斑!」
「は、はい!」
一夏君は緊張した様子で右手にはめているIS【白式】の待機状態である白いガレットを握った。しかし、何故かいっこうに展開されない。
「どうした!早くしろ」
「は、はい!っく…来い!白式」
そう言って、【白式】が展開された。しかし、この結果に織斑先生はどうも納得がいかないようだ。
「織斑君は2秒でした」
「馬鹿者!そんなんでは相手は待ってくれんぞ」
「すみません…」
「まぁいい。最後は天道だ」
「は、はい!」
そう言って、僕はあのクラス代表決定戦後に、学園の訓練機である【打鉄】を使っている。理由としては、僕に専用機は早いと思ったからだ。セシリアさんや一夏君みたいに、大きな事をしていないし、代表候補生じゃないからね。
だから、腕に巻かれている黒いチョーカーが【打鉄】の待機状態らしい。それに触れると粒子の束が僕の周りに集まり【打鉄】を展開していた。
そして展開時間に周りの反応はびっくりした。
「凄いです!天道君のタイム0.5秒でした」
『え~~!』
「…そうか。一般生徒では上出来だ。皆も天道を見習う様に」
織斑先生が褒めてくれるのは意外だった。まぁ代表候補生のセシリアさんと、同じタイムだったのは、僕も嬉しかった。
そんな事も束の間。織斑先生は飛翔訓練を僕達にする様に言って来た。
「では、3人とも飛べ!」
そう言って、僕達3人は空高く飛んでいった。飛翔した順番は上からセシリアさん、僕と一夏君は一緒だった。この結果にグラウンドにいた織斑先生からは、辛辣な言葉が届いた。
『どうした織斑!スペック上ではお前のISが高いんだぞ!』
「そんな事言ったってなぁ…何だよ前方に円錐があるイメージって」
「イメージは所詮イメージですわ。自分で詮索するのが効果的でしてよ」
「そう言ってもなぁ~。なぁ歩はどうして上手く飛べるんだ?」
「僕?僕は…なんとなくかなぁ」
『ええええ!』
この答えに一夏君もセシリアさんも驚いていた。僕としては、教科書を勉強していた内容を自分なりに、イメージした結果なんだけどね。
そう言って、アリーナを数周飛んでいる間に織斑先生から次の指示が飛んできた。
『それでは今度は着地をしてみろ。3人とも地面から10㎝の所で止まるようにしてみろ。先ずはオルコットからだ』
そう言って、僕は待機していた。先ずはセシリアさんから先に行くようだ。それを僕と一夏君は見ているしかなかった。
「それでは、お先に失礼しますね」
「おう!頑張れよセシリア!」
「頑張ってくださいね」
「はい♪」
そして【ブルー・ティアーズ】を飛ばして地面に向かって行った。もう少しで地面に到達するタイミングで逆噴射をかけてちょうど10㎝の位置で止まって見せた。
セシリアさんは余裕があるのだろうか、こちらに向かって投げキッスをするくらいだった。僕には到底出来ない芸当だ。そんな事を考えていると今度は一夏君が行くようだ。
「よし!俺も!」
「頑張って…」
一夏君はそう言って、地面に向かって行った。大丈夫かなぁ?
「…あれ、どうやって止めればいいんだ!うぁ~!」
ドゴーン!!
地上10㎝で止まるはずが、逆噴射のタイミングを見誤って地面に大きなクレーターを作ってしまった。
「馬鹿者!大穴を空けてどうする!」
「すみません…」
「授業が終わるまでに元に戻しておくんだぞ」
「え~」
最後に僕の番となった。一夏君の様にいかない様にしないと…けど、失敗するのが怖いなぁ。そんな時織斑先生から
『天道。難しいかと思うが、頑張ってやってみるんだ。お前なら出来るはずだ』
「けど…もし、失敗したら…」
『なに、大丈夫だ。例え失敗しても、私は決して笑ったりはしない。約束しよう』
「……わかりました」
そう言って僕は
「行きますーー!」
僕は、【打鉄】のバーニアを蒸かして地面目がけて行った。ハイパーセンサーには『目標地点まであと90㎝…80㎝』と表情されている。
この数値が30cmになったら逆噴射をする!そう思っていた。けど、一向に止まる気配がない。
けど、失敗を恐れずに行くしかない!!
「うぉぉぉぉぉー!」
あと50㎝…30㎝…20㎝ここで静止!止まれーーー!
【打鉄】のバーニアを何とか上手く制御して止めることが出来た。途中で怖くて、目をつむってしまったけど、目を開けて見ると……地上5㎝の所をホバリングしていた。
数秒間ホバリングして、地面に降り立つとさっきまでの緊張からか、その場に膝から崩れ落ちてしまった。あはは…カッコ悪いな
「はぁ、はぁ、はぁ~おっと…」
ドサッ!
「天道!大丈夫か?」
「織斑先生…大丈夫ですよ。ちょっと緊張が解けちゃったので…」
「天道…よく頑張ったな」
「えへへ///成功して良かったです」
「!」
そう言ったら、織斑先生は何故か顔を真っ赤にして、背けてしまった。あれ?僕なんかやっちゃったかな?
「歩さん――!」
「ぐぇ!」
「歩さん!大丈夫でしたか!?何処かお怪我はございませんか!?痛い所はございか!?あ!オルコット家専属の医者をお呼びいたしますわ!」
「セ、セシリアさん!大丈夫だから、心配しなくてもいいですよ」
「本当でございますか?」
「うん。…それと、そろそろ離してもらうと嬉しいかな?///」
「?」
セシリアさんは自身の状況が分かっていないらしい。僕を助ける為とはいえ、これ以上身体を密着させるのはよろしくないと思った。
だって、女の子特有のいい匂いや柔らかい物が、僕を包んでいるような感覚に陥ってしまう。それに、僕といると不幸になってしまう事を一番恐れている。
けど、そう言ってもセシリアさんからは、一向に退く気配が見受けられない。
「えっと…僕と居ると不幸になるかもしれませんから…」
「あら、その事でしたら問題ありませんわ」
「どうしてですか?」
「私は…運命に抗って見せますわ!例え歩さんと一緒になって不幸が移ったとしても、それを乗り越えて見せますわ!」
おお~!とクラスメイトが声を出す中で、セシリアさんはそっと耳打ちをしてくるのであった。
「ですから、これからもずっとお傍でいますからね。歩さん///」
「えっと…よ、よろしくお願いします?」
「はい///」
こうして、初めてのISを使った授業は終わった。なお、一夏君は自身が開けた大穴を泣きながら埋めていた。
放課後。一組の面々は食堂に集まって準備を進めている。一夏君がクラス代表になったお祝いをするのだという。僕が休んでいた為に開始が遅れたらしい。
『織斑君クラス代表おめでとう!!』
「はぁ…ありがとうございます?」
「もっと喜びなよ~これから頑張ってもらうんだかね」
そして、食堂を貸し切って早速クラスメイト達に囲まれている一夏君を尻目に僕は、1人ジュースを飲んでいた。率先してパーティーに参加するタイプじゃないからね。
そんな風に思っていると人混みをかき分けてこちらに来るのが人いた。セシリアさんと篠ノ之さんのようだ。
「あれ?どうしたんですか」
「それは、こちらのセリフですわ!どうして歩さんがこんな隅っこにいるのですか」
「そうだぞ。天道もクラス代表決定戦に参加したんだからな」
「でも、僕が行ったら迷惑なんじゃないですか?」
「そこは、
「あはは…」
そう言って、僕も皆の輪に加わることが出来た。改めて皆と仲良く出来た気がする。自己紹介の時に“僕に近づかないほうがいいですよ”と言っていた自分を殴りたい気分だった。
そんな感じでしばらく談笑していると、丸眼鏡にショートカット。高級そうな一眼レフカメラを肩に担いで、腕には『新聞部』の腕章をしてリボンの色が黄色なので、二年生らしい。
因みに色によって学年が変わる。一年なら青。二年なら黄色。三年なら赤色。そんな女子生徒が一夏君とセシリアさんの間に入って来た。
「初めまして。私は黛薫子と言います。これが名刺です」
「えっと…IS学園新聞部。副部長黛薫子。それで、その新聞部さんが俺達にどんな用があるんですか?」
「はい!学年内で有名な男性操縦者がクラス代表になったとの連絡を受けてインタビューさせてもらうと思いまして!」
「ああ、それで…俺は大丈夫ですよ。セシリアは?」
「わたくしも問題ありませんわ」
「それじゃあ先ずは、織斑君!ズバリ「クラス代表になって一言」お願いします」
「えっと…頑張ります?」
「え~そこはもっと『俺に触るとやけどするぜ』とかないの?」
「自分不器用ですから…」
「まぁいいや。適当に捏造しておくから」
だったら聞かない方が良かったんじゃないのと僕は思ってしまった。そんな風に思っていると、今度はセシリアさんにインタビューをするのであった。
「続いてセシリアちゃんよろしく~!」
「えっと…わたくしが代表「長くなりそうだからいいや」ちょっと待ってくださる!」
そんなセシリアさんの言い分に、飽きたのか黛さんは一夏君とセシリアさんの写真を撮ろうとしていた。
「それじゃあ2人の写真撮るからもっと寄って~はいチーズ!」
パシャ!
黛さんがシャッターを押す瞬間に、クラスメイト達が入り込みさながらクラス写真見たくなった。
「あれ?もう一人の男性操縦者は?」
黛さんが撮った写真を眺めていると僕の姿が写っていないのだ。いつもこうだ。普通に1人だけだったら、まともに写るんだけど大勢の人に居ると、霞んでしまう。だから、写真を撮る時は基本自撮り棒を使っている。
「えっと…僕の事は気にしないでください」
「いいえ!いけませんわ!歩さんの写真が撮れないのでは、このクラスにいる意味がありませんもの!」
「セシリアさん流石にそれは言い過ぎ…」
「ですから、歩さん!ツーショット写真を撮りましょう!」
「どうしてその話しになるんですか!?」
セシリアさんの突然の提案で困惑している。けど、この人は何が何でも、やってのける人だ。逆らわない方がいいだろう。
「では、僭越ながら私が最初ということで…よろしいですね歩さん?」
「は、はい…」
そう言って、セシリアさんは自然と腕を絡んできた。なんか昨日よりも距離が近くなっているのは気のせいかな?
その後も一夏君やクラスメイト達と一緒に、写真を撮った。流石にセシリアさん程近くまで来た子はいなかったけど、僕にとっては嬉しい出来事だった。
そして、パーティーも終わってテントに戻ろうとした瞬間であった。突然セシリアさんに手を掴まれて、何処かに連れ去られた。
「さて、そろそろ帰ろうか「歩さん」セシリアさん?」
「その…ちょっと来てくださいまし」
「えっと…僕はそろそろ戻ろないと……」
「ふ、2人だけで…お話しをさせて欲しいのです」
「セシリアさん……分りました」
そう言って、僕とセシリアさんは、クラス代表決定戦が行なわれた第三アリーナに来た。今は誰もいない2人だけの世界のようだ。
「突然お誘いして申し訳ございませんわ」
「いいよ。どうせ帰ってもすぐ寝るだけだったから……それで、話しって?」
「……歩さんに伝えておきたい事があります。それは…私のご両親の事ですわ」
そう言って、セシリアさんは話し始めた。
「
確かにセシリアさんは貴族の出身だって前に聞いたことがある。
「一方で父は…婿養子でしたので、母とは立場が弱くいつも卑屈になっていました。そんな父に対し、強い憤りを覚えていましたわ。そんな2人と数十人のメイド達に囲まれて何不自由のない暮らしをして来ました。あの時までは……」
そこで、セシリアさんが暗い顔をし始めた。どうやら訳ありな様子だ。
「それは…滅多に合わない両親が揃って出かけた時に…ロンドンで列車事故が起きてしまい。2人は……帰らぬ人となりましたわ」
「……」
「その頃からですわ…オルコット家で運営していた経営が悪化してしまって……流石に倒産とまで行きませんでしたが、オルコット家の財産目的や私の事を目的とした輩が現れて」
「……」
「唯一の幼馴染で、メイド長をしているチェルシーだけは最後まで私を見捨てませんでしたわ。ですから、私はオルコット家再建の為IS適性を受け「A」判定とイギリス代表候補生の地位を得ましたの。
そして、【ブルー・ティアーズ】の更なる技術向上を行う為IS学園へ入学したのですわ」
「……」
「これが、私の全てですわ」
「セシリアさん…」
正直言って、どうやって声をかければいいか分からなかった。けど、かけるとすればあれしかないと思った。
「セシリアさんは…凄いよ」
「え?」
「だってさ、僕と同い年くらいで色んな事から逃げずに戦って来たんでしょ。それは、単純なことじゃない。色んな失敗もして来たと思う。けど、それから逃げることなく、やって来たのは凄いと思う」
「歩さん?」
「僕はね…親に捨てられたんだ」
「え?」
セシリアさんが自分の事を話したんだ。今度は僕の番だと思い話し始めた。
「僕の両親はね…僕が生まれた時から僕の目の前から消えていたんだ」
「……」
「お互いが浮気をしていたらしくてね、僕を生んで直ぐに祖母に預けて蒸発していった。今更探そうとも思わないよ」
「歩さん…」
「そんな事からかな。僕が不幸体質だと思ったのは…だから、色んな事から逃げてきた。人間関係や社会から……」
「…」
「だけどね、セシリアさんと一夏君に出会ってから考え方を変えたんだ」
「考え方を変えた?」
「うん。これからは逃げるだけじゃなくて、ちゃんと立ち向かうって決めたんだ。だから…」
そう言って、僕はセシリアさんに向き合った。その時の彼女の顔は、教室で会った時よりも綺麗な顔をしていた。
「いつか、いつになるか分からないけど、ちゃんとセシリアさんと勝負して…勝ちたい!」
「歩さん………分りました。このセシリア・オルコット。何時でも歩さんからの挑戦お待ちしておりますわ!」
そう言って、セシリアさんは握手を求めてきた。それに応じる形で、僕も握手をした。
「それじゃあ、帰りましょうか」
「はい///」
いつか、セシリアさんに勝って不幸体質を脱却したい。そんな事を想いつつ、僕達は帰って
行くのであった。
時同じくして、IS学園の正門前に1人の少女が現れた。長い髪をツインテールにし、小柄な体格に八重歯。肩だしIS制服を纏った女子生徒にはボストンバッグ1つと言う女の子にしては余りにも荷物が少ない様子の子だった。
「ここがIS学園ね。待ってなさいよ一夏!」
彼女の名前は凰 鈴音。中国の代表候補生でどうやら一夏君と関係がありそうだ…