みことちゃんが悪夢を見た日、神浜市の魔法少女界隈ではちょっとした事件が起きていました。
東西共に、縄張りを侵犯して来たと自称する魔法少女から襲撃されるというものです。
それだけでも十分に問題ですが、更に問題なのは場所が中立地帯である中央区であったこと。
現場が中央区の魔法少女が縄張りにしていた場所なのかは不明――連日確認しなければわからないことですし、確認のために連日中央区へ侵入するのもほめられたことではありません――ですが、その時は近くに魔法少女の気配がなかったので魔女を野放しにするわけにもいかず狩ろうと試みたそうです。
どうにもここ最近の神浜市は魔女不足らしく、東西それぞれの縄張りだけではグリーフシードの供給が心許ないのだとか。そこで、大きな後ろだてを持たない中央区が標的にされているようなのです。
まぁ、中央区はランダムエンカウントする久遠による浄化と強化が起きるため魔法少女たちはグリーフシードを求める必要性があまりなく、縄張り意識も薄くなっているのでちょうどいいのですが。
もちろん強化済の魔法少女は穢れもたまりにくく、ちょっとやそっとじゃ魔女化したり死亡したりも起きません……魔女不足の原因が一部判明しましたね。魔法少女の真実を知らない当事者たちには辿り着けないものですが。
そう、魔法少女の真実も暴露されているため、魔女に対する憐れみから手を下しにくいと感じる子も少なくないのが中央区の現状だったりします。
中央区から生まれる魔女の数は極端に少なく、区外から迷い込んで来たと考えれば、ある意味では東西からの介入は持ち込んだ面倒の責任を取っているだけと見ることもできるのです。
まぁ、そんな事情は久遠被害者の会でもなければわからないですし、被害に遭った魔法少女は事が事なので言いふらしたりもしませんし、あくまで東西の魔法少女が中央区の縄張りを侵害している問題となっています。
そんな中央区での争いですが、幸いにも死者は出なかったようです。が、縄張りは荒らされていますし、怪我を負った魔法少女は存在します。界隈では元々の確執もあって東西共に緊張が高まり一触即発の状態です。
中央区が表向き私たち被害を受けた弱者なんですぅーみたいな態度をしつつ、内心ではあいつらまだグリーフシード集めてるんだぜと遥か高みから見下ろしているとは思いもしないでしょう。
と、いうわけで中央区は大魔法少女時代が始まって荒くれ共のはびこる世紀末的な感じにギスってるようです。偶然見かけた魔女の結界に居たので襲撃しておいた都ひなの先輩がげんなりしながら教えてくれました。女神たちは今日もご馳走さまでしたと両手を合わせて拝みます。
大変ですねと同情する久遠の慰めを受けて感情が高ぶったのか、暴走しないように中央区の魔法少女を押さえなければならないのが面倒過ぎるとキレ始めたので、後で結果を教えてくれるようにお願いしてその場を去るのでした。
ちなみに、みことちゃんの悪夢は連日続いていました。睡眠中は意識がないので暗示の魔法も効果を発揮せず、変わらずに悪夢を見てしまうということで、割とお手上げな状態です。
夢の内容は相変わらず魔法少女は不幸な存在だと言いたそうな場面の連続ですが、最近になってそんな場面が幾つも映るモニターが並ぶ空間で自分の姿をした相手から延々と説得のような叱責のようなものをされるようにもなったそうで、みことちゃんは自分が心の奥底ではこんなにも呪いを振り撒こうとしているのかと怯えました。
が、大抵は朝御飯を食べると機嫌が復活します。美味しいは正義。ここのみことちゃんは一日三食、朝からしっかり、もやし以外も食べられるのです。
朝の準備に項目が追加されたので、時間が掛かるようにはなりましたが、些細な問題でしょう。これには夢の中のみことちゃんもご立腹。
後日、みやこ先輩から事態の経過を聞きました。東西共に割と喧嘩腰で、まとめ役も勢力の手綱を握れていない話を聞いて、久遠は規模の大きくなった組織のデメリットに改めて恐怖するのでした。なお、一部では事件の起きた時間帯にちゃんとしたアリバイがある魔法少女がチラホラ確認されたため、幻覚や変身といった固有魔法の魔法少女が疑われており、西側劣勢なのだそう。
念のため西の魔法少女に連絡を取ったら、大丈夫と自信たっぷりな一言を返されました。理由がやちよだから、なので信頼の厚さに久遠は感心しました。ですが、かなえちゃんのソウルジェムの強化具合はそこそこ止まりなので、近い内に襲撃しようと久遠は心に決めたのでした。
そんなある日、見つけた魔女の結界に飛び込んだ久遠は既知のモブ魔法少女と出会いました。が、言動はおかしいし強さも久遠の襲撃を生き延びたとは思えない程に弱かったので噂の偽物と断定、即浄化しました。
すると、なんということでしょう。匠の技で相手の姿が消えてしまいました。負け惜しみの捨て台詞を残していった様はまさに三下のやられ役でした。
これは面妖なとすぐさま撤退して身内の魔法少女にSNSで連絡。これがきっかけで、互いに面識を持ちキャラを把握する事により本物偽物の判断を付けられると判明しました。東西が歩み寄る建て前が生まれたというわけです。
もしもこのときに久遠がコピーされていたら鏡の魔女の結界はエロトラップダンジョンへと変貌を遂げるところだったのでは、と女神たちは話をしていましたが、下手をすると触れたら即魔女化するデストラップの溢れる地獄になっていた可能性に気づいてしまい、恐怖に体を震わせるのでした。
しかし、その間も新たな事件は次々と起こり、東西の緊張は更に高まっていました。そんな中でも中央区の魔法少女は基本的にお手付きなので余裕があり、他区の魔法少女に襲われても上手にやられた振りをしたり逃げたり逃げた先で不意討ちして返り討ちにしたりと余裕を持って過ごしていましたが。
そんなこんなで情報が集まり、魔女による仕業だと判断した有志による討伐作戦が実施される運びとなりました。みかづき荘と十七夜さんですね。
この頃になると、みことちゃんの悪夢も内容が進んでおり、夢の中で話しかけてくるみことちゃんが別世界の数奇な運命を辿った自分であると判明していました。
そしてその日、夢の中のみことちゃんが自分の思い通りにならないこの世界のみことちゃんに対して抱く負の感情のまま、力尽くで取り込もうと魔女化して襲いかかりました。
が、マンション組はハイパーつよつよ魔法少女なので、成れの果てを問題なくボコボコにしてしまいました。始まる前から第二部完です。
そして魔法少女姿に戻った自分が驚き戸惑いつつも嘆く中、みことちゃんは別世界の自分が歩んだ道程を聞かされて自分が幸運に恵まれたことを噛み締めながら、別世界の自分をそっと抱き締めて、耳たぶをはむはむぺろぺろしました。
可愛らしい悲鳴が上がり、混乱しながらの質問が飛びましたが、みことちゃんは止まりません。別世界の自分が知らない扉を開いてあげるべく、しっかり機能するけど未発掘だった性感帯を次々と刺激していきます。
そっち方面の耐性を持たないせいで別世界のみことちゃんはなすがまま。すっかり蕩かされてしまいました。感情が溢れたのも一度や二度ではありません。本当ならもっとすごいんだけど、と名残惜しそうなみことちゃんでしたが、別世界のみことちゃんは既に限界を突破してとっくの昔に意識はお空の上です。
そんな姿を見ながら、聞こえていないのを承知の上で、みことちゃんは奇跡も、魔法も、あるんだよと希望の言葉を送りました。
自分を相手にするという珍しいシチュエーションを堪能できたと両手を合わせて感謝の気持ちを捧げる女神二柱の横で、ひっそり参戦していた元ネタが照れていました。
唯一の差は運だったという、ある意味で残酷過ぎる事実は別世界のみことちゃんに対するトドメになったのか、別世界のみことちゃんはそのあられもない姿を薄れさせ、やがて消えていきました。この日を境に、みことちゃんが同じ内容の悪夢を見ることはなくなります。
そして翌朝、朝の挨拶を交わす際に涙を流していると指摘されたみことちゃんは、夢の内容を語り、お礼の言葉と共に笑顔を浮かべるのでした。めでたしめでたし……嬉し泣きと笑顔のコンボにムラっと来た帆奈ちゃんがみことちゃんを押し倒したり、悪夢と戦闘の影響を久遠に浄化されたりしていますが、綺麗に終わりたいので見なかったことにします。
みことちゃんが夢の中で鏡の魔女を倒した日は、チームみかづき荘with助っ人の討ち入り決行日でもありました。今までの証言と状況証拠から、事件は中央区の結界内で起きていたことが判明しており、今回の討ち入りで実際に結界内部の偽物を確認できたことから襲撃事件の黒幕だろうと判明したのでした。
ですが、この時点で既に第二部後半に近い強さを持つ鏡の魔女が展開する結界は、進行するにも一苦労。そのため、仕方なく撤退をして情報を広めることになったそうです。中央区の権利についても改めて協定が結ばれ、事件は……少なくとも魔法少女の襲撃と中央区への侵害に関しては一応の解決を見たのです。
事件が一段落してしばし、みことちゃんが悪夢の中で討伐したにも関わらず未だに中央区に鏡の魔女の結界があることを不思議に思ったマンション組は突撃をかましました。すると、驚くべきことに魔女は全力で逃げ出してしまいました。おかげでマンション組は侵入地点に取り残されてしまい、一同ポカンとしてしまいました。
みことちゃんにプロファイリングをお願いしたところ、自分の夢に出てきた鏡の魔女とはまた別の個体である可能性が出てきました。鏡の魔女が複数の別世界から手を伸ばしてきている……その事態の深刻さに気付けるイろはちゃんは某叫びの様な表情をしていましたが、アルまど様はむしろ片っ端から久遠に魔法少女まで戻されて瀬奈みことが増えていく事態を予測していました。
逃げるものは追いたくなるのが野生の掟。というわけでマンション組は鏡の魔女を追い回しました。
途中、結界内の風景から鏡に関係していそうなことを帆奈ちゃんが推測し、本人(?)から話を聞いたことのあるみことちゃんが肯定したので、試しに手鏡を取り出したところ、結界は逃げずに引き寄せられてきました。チョロい。
ここで釣り上げても良かったのですが、どうせならと久遠はマンションまで結界を誘導することを提案しました。途中の道……というか街中の窓は鏡面に近い性質を持ちますので難しいのではないかと懸念されましたが、なんとなしにみことちゃんが武器である鏡を見せたところ、普通の鏡と比べてもハッキリわかる程度に食い付きが違いましたので、実行可能だと判断されました。
そうして最終的にマンションの敷地まで誘導し、認識阻害を丹念にかけて人が寄り付かなく――同時に鏡の魔女が移動できる場所を認識できないように――したことで、マンション組を除けば誰にも知られることなく襲撃事件は真の意味で終結したのです。
とはいえ、そんなことを知るよしもない魔法少女たちは鏡の魔女の結界から抜け出してきた魔法少女のコピーを警戒することとなり、すっかり疑心暗鬼に駆られていました。おかげで神浜市ではギスギスが続いています。平和なのは中央区等くらいであり、東西の魔法少女たちは確執を取り除く事が出来ませんでした。
一応、東西それぞれで集団内の結び付きを強めつつ、東西の代表と調停役とで集まって状況報告や意見交換等をする流れが決まってはいました。
そして初回の定例会でひなの先輩がうっかり久遠の情報を漏らし、十七夜さんが社長のことかと反応し、七海やちよさん(18)が何の事かと問い詰めました。
東西の仲を改善したいのに隠し事をするのは外聞が悪く、しかし個人情報であり内容は劇物なため、せめて本人に確認を取って許可を得てからの紹介をすることとなりました。
ちなみに、ここは中央区の一般的な喫茶店です。そう、タイミング良くマンション組がエントリーして来ました。つつじ姉妹も一緒に来店しましたが、座席数の都合で別テーブルにつきました。そして何故かななか組まで一緒でした。こちらも自分たちだけで席にまとまりました。更には団地組まで一緒でした。
魔法少女密度が高過ぎる空間が形成されたことに、定例会組は何事かと軽く引いています。
地味に悪質な地上げ屋の話から広がって一足早い散花愁章の互換イベントが駆け足で同時進行していたのは、女神たちでも予想外なのでした。
帆奈ちゃんの暗躍がなくても飛蝗は原作を沿う様に動き、何人かはその過程で毒牙にかかり、仲間も芋づる式に連鎖しました。おかげで店内の戦力比を取ると大ベテランが一番弱いという有り様です。
昏倒事件も結界の外に抜け出せる特殊なコピー魔法少女が起こしていました。きっと別世界のみことちゃんが張り切ったのでしょうね。鏡の魔女は手下の行う魔法少女のコピーには反対の立場を取っていたはずなのですが、この辺も別世界独自の要因があったのでしょう。
というか、マンション組は気付いていませんが、いつの間にか原作と同じ洋館に鏡の魔女の結界が存在していました。イろはちゃんがFXで有り金全部溶かした人の顔をしています。アルまど様もこれには苦笑せざるを得ません。何しろ、この世界から各種原作世界に飛べる道が確保されたに等しいのですから。アルまど様は新しい円環の理が生まれるための土台が着々と整備されている気配を感じ取っていました。そう、邂逅の時は近い――!
なお、久遠は間接的に地上げ屋を牛耳るついでに政治家の弱味を握ることが出来てホクホクですが、逆に地上げ屋を狙っていたら魔女の話に繋がってしまったのをどうしてこうなったと内心で首を傾げていました。パズルゲームの連鎖みたいに芸術的な流れだったのは確かです。
この時点では魔法少女側と面識を持っていなかったひなの先輩はまた女を引っかけてると嘆息し、十七夜さんが一緒のテーブルに着いた二人は付き合いの長い間柄らしいと一部否定しました。やちみふは久遠の姿を見て小学生社長だと気付きました。魔法少女との関係についてはよくわかりませんでしたが。
そして定例会組に気付いた久遠でしたが、声をかけず会釈をするに留まり、自分たちの用事を済ませていました。バケツプリンとか聞こえましたが気のせいでしょう。某コーヒー店みたいなもはや呪文みたいな名前も聞こえましたが気のせいでしょう。昇天ペガサスMAX盛りパフェとかいうギリギリセウトな名前は聞こえません、聞こえませんったら!
で、運ばれて来た品物に店員以外の目は釘付けです。そしてそんな視線を意に介さず久遠はもっきゅもっきゅとスプーンを動かし続けます。対抗してあやめちゃんが廃刊定年サンデーとかいうセウトな品物を追加発注しましたね。かこちゃんは一人だけラーメンを頼んでいます。団地組ではみとちゃんが流れに身を任せ羽目を外そうとしましたが、他二人から止められていました。
そんな濃い集団に当てられてみふゆさんが追従するべきかとメニューを開きましたが、予想していたやちよさんに閉じられました。英断です。
そして何事もなく各々の注文を完食して、集団は去っていきました。ちなみに週末は欠かさず鹿目家へ帰省するため、本日は平日です。定例会組は自分達の目標が叶っている集団を目にして何とも言えない空気になっていたのでした。
と、いうわけで某日、ひなの先輩に呼び出されノコノコ出向いた所を捕獲された久遠は何故かカラオケの一室に連行されて西の代表へ紹介されました。挨拶もそこそこに、始まるのはいつもの説明です。
かなえちゃんやメルちゃんが存命な現在、やちみふは魔法少女の真実を知りません。故に受けた精神ダメージはそれなりのものになりました。一応、口頭説明であることから目を背ける余地があったので原作よりはマシです。
こうなったら後はお決まりのパターンです。イろはちゃんは寝取られ性癖が目覚めかけているのか普段以上に大興奮。
しかしここでまさかの事態。浄化活動はそのまま執行されましたが、その後に関しては身持ちの堅さを発揮して断りました。これには女神たちもブーイングよりも先に拒否って出来たんだという驚きが出ます。
変身して致して解除すると元通りという説明を聞いても首を縦には振りません。経験者の声を聞いても同様です。しっかり貞操観念が根付いている辺りは流石の年齢だと言うべきなのでしょう。口に出したら全身から槍を生やした輪投げの的にされるのでお口チャック必須です。
そうして西の二人はソウルジェムの浄化を体験したので目的は果たしたと言い、帰っていきました。床に染みが点々と続いているのは見なかったことにしてあげるのが優しさというやつなのでしょう。女神たちは既に別視点を期待して正座待機です。
そして予想通り、その日の二人はとても熱い夜を過ごしました。
帰ってからは自室にこもり一人で何とかしようと努力したものの収まらず、そうこう(致)している内にやちよさんの部屋にみふゆさんが相談するために訪れます。
聞かされた魔法少女の真実を受け止めきれず弱音を吐いて泣き崩れるみふゆさんを、姉さん女房な性格のやちよさんが慰めの言葉をかけようと抱き締めたら、互いの火照ったままの体がそれはもう大げさに反応してしまいました。
片やモデル、片やアリナ・グレイが絶賛するパーフェクトボディの持ち主、同性から見ても魅力的な二者の体は思考をそちら側へそらしていき、自然とそういう流れに繋がったのでした。或いは、魔法少女の真実から一時的に目を背けたかったのかもしれません。
そんな思惑とは関係なくイろはちゃんは熱狂していたのでした。アルまど様は真剣な目で噛み締めるように鑑賞し、こういうのもいいねと何度目になるかわからない感想を抱いておりました。
紹介も無事に済んだと解散の流れになりはしたのですが、久遠は西の代表二人の連絡先を聞き損ねたと凹み、カラオケの時間も余っていたので、ひなの先輩に慰めてもらいました。
今回は代表二人の相手をして終わるだろうと期待していなかった先輩は、普段とは違ったシチュエーションということもあってとても母性的でした。アルまど様的にはこちらもかなりの高得点でしたとさ。