里見メディカルセンターに用事が無くなった影響で活動範囲から西側が外れ原作の序盤イベントと致命的にすれ違い続ける久遠はさておき、帆奈ちゃんたちゲーム配信勢の下には神浜市における魔女の増加と市外における魔女の減少とが情報として寄せられていました。
この配信、ロールプレイのフレーバーという体でゲーム中の正式名ではなく俗称として使われている魔法少女と魔女について設定や妄想に見せかけたリアル情報を垂れ流しているため、視聴者に魔法少女が紛れ込んでいるのです。
配信で取り扱うネットゲームはVRという敷居の高さがあるのでプレイヤーの魔法少女率こそ低いですが、配信やアーカイブにコメントを残していく魔法少女はそれなりに増えており、各地の状況について情報網が出来上がりつつあります。
ついでに謎の夢やら幻影やらで神浜市に来れば魔法少女は救われると告げられるオカルトじみた現象であったり、神浜市内で活動する怪しい黒ローブ集団の目撃例であったり、どうにもおかしな流れが生まれていると見ざるを得ない情報も上がってきます。
さすがにこれは放置できないと考えた配信面子は配信中に調査を宣言しました。範囲は神浜市内にとどまりますが。
そして寄せられた情報から導かれる各地のグリーフシード不足とその先にある魔女化や共食い、原因と思われる神浜市への復讐という一連の予測されるに流れについて帆奈ちゃんとみことちゃんから報告を上げられた久遠は、視聴者プレゼントとして綺麗な細工の置物の配布を決定しました。
これにより、魔法少女の口コミで視聴者が増えてランキングに乗り、一般人の視聴者も増えて投げ銭も増えたのでいい感じに黒字化したのだとか。
この辺りになるとマギウスの翼にも動画の存在が広まって、羽根のまとめ役をしているみふゆさん経由でマギウスのお三方の耳にも入りました。
早速動画を視聴した三人でしたが、開幕のプレゼント企画で山盛りになったグリーフシードが映った瞬間に揃ってお茶を吹き出しました。しかも社長の好意でそれを配ることが決まったと言っているのを聞いて更にせき込みました。弱い魔女しか孵らない特別製という説明には最早言葉も出ません。
久遠は公私の混同を避ける意味で見舞いの際は実際に取引のあるねむちゃん相手でさえ仕事関係の話題を出さなかったため、ねむちゃんと灯花ちゃんは社長が久遠だとは気付きませんでしたが、興味は持ったのでネットでパパっと調べることにしました。
そしてホームページの取締役挨拶を開いてめっちゃ知ってる顔と名前が出てきたので二名同時に頭を抱えました。
しかも配信されている動画の内容はゲームをプレイしながらの雑談ですが、ゲームも雑談も随所に固有名詞を変えた魔法少女あるあるをぶち込まれていたり、ストレートな地元ディスりに余念がなかったりして、的確にマギウスの妨害をしています。
堪え性のなさに定評のある灯花ちゃんが発狂するのを横目に、ねむちゃんは久遠の評価を上方修正しながら微妙に興奮しつつ動画のシリーズをモチーフにしたウワサを具現化しようと考え始め、アリナは動画内で交わされているマジカルきりんの議論に対して同意や反論を書き込んでいました。マギウスは今日も平和です(背景のイブから目を背けつつ)。
魔女の減少は神浜市以外の場所――つまりは見滝原市でも起きていますので、魔法少女になったまどかちゃんは久遠に相談を持ちかけていました。具体的には魔法少女仲間の強化依頼です。
まどかちゃんのためなら一肌も二肌も脱ぐことをためらわない久遠でしたが、さすがに施術後の人間関係に影響が出ないか心配ではあるので、即答はできませんでした。普段の自分を省みろという女神たちの声は残念ながら届きません。
ですが驚くべきことに本人たちの意思は確認済らしく、久遠の返事次第ではすぐに集まれるとの回答が返ってきました。どうやって説得したのかは気になりましたが、言及するのは女々しかろうと思った久遠はならば是非もなしと立ち上がりました。
こうして、言い回しを気にしなかったばっかりに久遠は一対一の連戦ではなく多対一の同時戦闘を強いられることになりました。が、現場に集まって自己紹介をしたタイミングで魔女の気配に気がついたため、ゾロゾロ結界内に赴いてお菓子の魔女を巻き込んでずっこんばっこん大騒ぎになりました。円環の理にいる百江なぎさが出番を取られたと嘆いたかどうかは、女神たちしかご存知ありません。
また、相談時には神浜市誘致キャンペーンの件も伝えられましたが、久遠は不思議だねと感想をこぼすにとどまりました。暗示の魔法が通る程度の耐性なので、ういちゃん関連の記憶も失っているようです。
この各地で起きている魔女の減少に関して有識者であるまどかちゃんに屈したキュゥべえ略してめんたいこの見解は、魔女は理性が欠けて好き勝手に動くので興味を引く何かを用意すれば誘導できるだろうというものでした。
そしてその目的を考えるに、魔女を一ヶ所に集めて連戦させることで精神的に追い詰めて魔女化しやすい環境を作りつつ、魔女がいなくなった土地で魔法少女同士の争いを激化させて精神的に不安定な環境を作り出し魔女化を促進させるという、両面作戦なのではないかとのことでした。
犯人候補は当然宇宙の片隅でエントロピーを叫ぶ獣です。リンクを切られるタイミングがもう少し遅ければ真犯人に近づけたのでしょうが、たらればでしかありませんでした。
このめんたいこ、初対面時に久遠からは一般営業職員だと認識されていたので排除されかけましたが、まどかちゃんの取り成しがあったため許されました。
しかしそうなると、姿も言葉も分からないのは不便だと考えるのが常道です。久遠は方法を考えた末に、某作品の摂食交配を模すという考えへと辿り着きました。
どこかのアンケートでは自己処理の手段としてそういう回答も一定数いましたし、そうでなくとも男女の行為で順番によってはそうなることもあります。などと覚悟を完了させたのですが、まどかちゃんからストップがかかりました。その瞳からは、ハイライトが消えていて……。
これは必要なことであり決して無駄撃ちではないと弁明するシーンはめんたいこから修羅場だと称される程に緊迫していたのは内緒です。女神たちも唐突なサスペンス及び直後の濡れ場にはワクワクドキドキを隠せませんでした。
何とか無事に自己改造を済ませた久遠は、特異個体を視覚と聴覚とで認識することができるようになりました。
そして毒を食らわば皿までと、感情に目覚めためんたいこの強化にまで走ったのです。説得は済んでいるので、今回はまどかちゃんも止めません。その悲壮な決意を感じ取った女神たちは、自然と敬礼の形を取っていました。
生殖行為で快楽を得る生物は人間や一部の限られた哺乳類だけだという研究結果があるそうですが、果たしてめんたいこは慣れない感情に振り回されていました。というか、感情を精神疾患扱いしているインキュベーターですが、会話で驚いたり称賛したりしているので十分に感情的なんですよね。それは交渉を円滑化するための擬態だと言われればそれまでではあるのですが。
そんなこんなで性別も不確かなめんたいこは名前の最後がこで終わるからというなんとも言いがたい理由で名実ともに肉体を改造されました。小さなキュゥべえの例や、子宮のメタファーとされる説があるので、仕方ないね。
見滝原市でそんな一大スペクタクルが繰り広げられた次の週、前の週の時点でたまにはまどかちゃんが訪ねるのもありなのでは、ということでやって来ました神浜市。引率者マミさんと愉快な仲間たち総勢五名によるカチコミです。
人数が増えているのは行方不明扱いだったので戸籍が残っていた元お菓子の魔女が含まれているから……ではなく、電車の中でばったり遭遇してそのまま合流した生まれも育ちも風見野市かつてはマミさんとちょっとだけいい感じだったけれども不幸な出来事から喧嘩別れしてしまい時々情報交換するくらいの仲に落ち着いたという経歴を持つ魔法少女、佐倉杏子が追加されたからです。
彼女の縄張りである風見野市も魔女不足のあおりを受けていたため、他の地域もそうなのか確認するべく見滝原市に赴いたのですが、その際にマミさんから神浜市の話を聞かされたので早速やって来たのでした。
本来ならば単独行動を好む杏子ちゃんではありましたが、慣れない土地であるところに案内人がつくという話や、マミさんの実力が気配一つ取っても目に見えて高くなって気持ちにも余裕が見えていたので秘密を探りたい狙いなどがあったため、団体行動を良しとしたのです。
なお、案内人がパッと見は一般人な上に言い訳不可能なくらい少年だったので、杏子ちゃんがマミさん一行に常識を説くという根っこにある人の良さを隠せない一幕があり、ほっこりした見滝原組はツンデレ少女を受け入れています。
久遠が身柄を引き取ったなぎさちゃんが寝坊しているので、まずは中央区のマンションに向かうべく電車を乗り継いだ一同。ですが、途中で魔女の気配を感じ取ったため、ダイナミック途中下車を敢行しました。久遠はまどかちゃんに抱っこされての下車となりました。
お邪魔した結界内ですが、複数の魔女が争っている不可思議な場面に遭遇したため、魔法少女たちはそれぞれ担当を決めると変身して立ち向かいました。強化を受けた見滝原組はあっさり風味でしたが、杏子ちゃんは未強化な上にくじ運が良いのか悪いのか比較的強めの魔女と当たったので少々苦戦しました。
そんなことになったら当然ソウルジェムに穢れが溜まりますので、浄化の売り込みが始まります。半信半疑な杏子ちゃんを見滝原勢が揃って宥めすかし、そしてお試しコースを了承した杏子ちゃんは最後までノンストップでした。ちなみに、オホ声派でした。
フレイム属性の魔法少女は鳴き方が特徴的だと女神たちの間では専らの噂です。知らぬ間に犠牲となっていた胡桃まなかもメスガキムーブからの即堕ちでオホっていましたので間違いないのでしょう。当時の現場には双葉さなもいたのですが、透明だったので気付かれませんでした。
腰を抜かした杏子ちゃんを休ませるためにも中央区のマンションに向かった一同ですが、実は強化の途中で到着が遅かったからと迎えに来たマンション組が合流していました。今の今まで実際に出会う機会のなかったまどかちゃんと帆奈ちゃんとの間で一悶着あるかという女神たちの期待とは裏腹に、視線を合わせた二者は無言でがっちりと握手して魂で理解し合っていました。多くは語らない様子にプロ同士のオタクを見た、と後にさやかちゃんは語ったそうな。
そして道中で世間話から身の上話になり、杏子ちゃんが住所不定無職だと発覚したため、マンションの一室を貸すことになりました。普段は寄り付かなくてもいいので、お帰りを言ってもらえる場所があることを覚えていて欲しい……というハートフルお節介にそっぽ向く杏子ちゃんでしたが、周りの目は温かかったのでした。なお、後日連れ子を抱えて本格的に住み着く模様。
こうして江田島平八相当の戦力を何人も抱えている中央区は追加でまた一人、戦力も性格の癖も強い魔法少女を迎えたのでした。
一応の顔役であるみやこ先輩の胃が心配になりますが、強化済な上に不定期で強化されるので一向に調子を崩す気配はありません。ちょっとだけ心配になって未来を覗いたイろはちゃんが思わず表情を崩してうわぁ……と絶句したので、きっと色々とお察しな状況になったんじゃないでしょうか。未来はきっと変えられるので頑張って欲しいと願い空を見上げるイろはちゃんの無駄にシリアスな横顔を見ながらのお別れです。それでは、次週をお楽しみ下さい。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。