アルまど様「干渉できない特殊な宇宙が増えてたので見てみたら自分が犯されてた」   作:夜月工房

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アルまど様リターンズ……ではないけれども

 ちょっとした事故で元の並行宇宙から切り捨てられ、次元宇宙(リリなの世界)の仲間入りをしてしまい、しかしながら無事に管理外世界の座を勝ち取ったパウチュウさん。

 同時にそれは次元犯罪者の暗躍を見逃す危険性を孕んでいるのですが、なんと魔法少女を増やしては堕としたい獣(キュゥべえ)が警備の役割を担っていました……牧場に不法侵入してきた者を追い払うという至極当然な行為なので、意外でも何でもありませんね。

 

 そんなわけで大きくは変わらない日々を過ごしていますが、久遠は最近になって知った宇宙の意思から譲渡された能力(チート)について検証していました。

 魂に関する適性以外は一般人の領域にしかない久遠には扱いの難しいものだとわかりましたが、諦める理由にはならないと寝ても覚めても思考し試行する毎日。

 

 そんな熱意が奇跡を起こ(やらか)しました。

 

 ある朝、久遠が目覚めると、目の前でまどかちゃんと良く似た神々しい少女が神秘的な雰囲気を台無しにするレベルの興奮した様子で見下ろしていました。

 そう、アルまど様です(ドキュメンタリー番組のナレーション風)。

 厳密には元の並行宇宙で叛逆の物語(裂けちゃう)が起きた拍子に零れた一欠片が、寝落ちした久遠の暴発させた能力で何かこう上手い具合に召喚された感じです。某型が地球の衛星な感じの運命における神霊が従者になったのが一番近くて通じる説明でしょうか。

 残念なことに、寝起きの久遠は頭が働かず何が起きたのか予想も上手くできません。が、面影はあっても知らない女の子が息を荒げ頬を上気させながら四つん這いの格好で覆い被さっている事態は割とアウトなのではないでしょうか。

 変に刺激してはならないと慎重に、けれども第一印象は大事なので大胆に。覚悟を決めた久遠は、おはようございますと無難な挨拶から始めたのでした。少女がまどかちゃんに似ているのは見た目だけではなく、纏っている肉食獣(覇王)の気配もであったことが決め手です。ヘタレとか言ってはなりません。

 

 さて、挨拶をきっかけに少女は我に返ったらしく、慌てて体を起こすと挨拶を返しました。そのまま弁明を始めようとする気配があったのですが、頭を下げた視線の先にちっちゃくたって一人前な朝の生理現象(エレクチオン)を発見してしまい、驚き慌てながら飛び退いてベッドから落ちました。まるでコントのようです。

 余りにもスムーズな流れで視界から消えた少女に困惑する久遠でしたが、同時に怪我はないか心配になり確認の言葉をかけます。不審者への対応にしてはゆるゆるですが、寝起きなのとまどかちゃんに似た相手なのが警戒心を鎮めていたのでした。

 言い忘れましたが、普段は管理人室に入り浸りな帆奈ちゃんとみことちゃんは、仕事(ネトゲ)稼ぎ時(キャンペーン)を理由に自室で泊まり込み合宿していたため不在です。これが遊ぶための言い訳ではなく配信用動画の撮影というガチの業務なのですから、何と言えばいいのやら。なお、夜更かししても魔法少女(回復魔法)特性(応用)でお肌に問題は起きません。

 

 そんな(とんだ)ファーストコンタクトではありましたが、今日は平日です。つまり学校があるため朝の準備をしなければならず、少女に構っていられません。

 軽い情報交換の結果、少女が別世界の鹿目まどかであると確認できたので、久遠は割と辛い人生を歩んでいる通称アルまどちゃん(アナザールートまどか)鹿目知久氏(まどかパパ)直伝の料理を振る舞いました。泣かれました。そら(二度と食べられないと思っていた味に再会できたら)、そう(涙も溢れる)よ。

 しかし直伝ではありますが本物には及ばない料理でこれだけの水遁(はんのう)です。久遠は鹿目家へ連れて行った方が良いのか悩みました。

 あの家の人間ならばアルまどちゃんを見ても変に取り乱したりせずに、まどかちゃんには違いないとしっかり受け入れてくれるに違いありません。最近になって空気を勢い良く蹴ることで一瞬だけ足場を発生させ空中散歩できるようになったまどかちゃんのご家族ですから、多少の不思議は呑み込んでしまう圧倒的な懐の広さが確約されています。

 とりあえず組織を束ねる立場でもある久遠は報連相が大事だとアルまどちゃんの写真を撮らせてもらい、まどかちゃんへとメッセージを送りました。

 

 アルまどちゃんのことは心配ですし、どう足掻いても原因が自分にあることを察している久遠としては学校を休んで世話をしたかったのですが、気丈にもアルまどちゃんから学校にはちゃんと通うべきだと切り出してきました。触りだけですが生い立ちを聞いているので言葉の重みが違います……重みという言葉を浮かべた瞬間に反応があったので久遠は戦慄を隠せませんでした。

 ならばせめてもの暇潰しにと久遠はPCを立ち上げ、自社製作のネットゲーム(キュゥべえバスターズ)を起動しました。VRゲーム初体験なアルまどちゃんが感動の声を上げた直後に始まったオープニングムービーとタイトル画面(巨大キュゥべえと立ち向かう魔法少女たち)を見てなぁにこれぇと言ってしまったのは聞かなかったことにするのが一番でしょう。

 

 とりあえずお昼ご飯はマンションの一部を開放し症状が軽くなった引きこもりーズ(魔女から戻った少女たち)のリハビリ場所となっている社員食堂にデリバリーを頼んでおき、久遠は登校しました。

 ですが、気になるのは誤魔化せません。学校でも珍しい失敗(ポカ)を連続してしまいました。そのおかげで結ばれた縁もあったので、痛し痒しな一日だったと言えるでしょう。

 

 学校を終え帰宅した久遠が見たもの、それは真剣な表情でキーボードとマウスを操りネトゲの攻略wikiを見詰めながらブツブツ独り言を呟いておるアルまどちゃんの姿でした。とりあえず元気そうなので安堵した久遠の取った選択肢はもたろん『そっとしておこう』です。新たな戦場(タイムセール)が待っているのだ。

 

 で、戦利品を両手に買い物から帰って来た久遠は、帆奈ちゃんに(アルまどちゃんについて)詰め寄られました。アルまどちゃんに(鏡の魔女の結界について)も詰め寄られました。みことちゃんも詰め寄ってきましたが場の空気に流されただけに感じたので頭を撫でて退散させました。

 

 そうして説明タイムです。夕食の席を兼任して鍋を囲んでいるのでシリアスさんは空気を読んでクールに去っていきました。悪いな、この鍋四人用なんだ。

 とりあえず無駄だと知りつつもアルまどちゃん召喚に関して予想を交えながら無罪を主張しましたが、裁判官(帆奈ちゃん)有罪判決(ギルティ)を言い渡しました。残当。

 また、鏡の魔女の結界が敷地内に堂々とあることに関して事実上の無力化をされていると説明しましたが、円環の理(アルまどちゃん)としては救済欲が止まらないご様子。別世界の本人(みことちゃん)から和解までの経緯(フォローの言葉)を聞かされたことで、混乱しつつもどうにか納得し(受け止め)たようでした。

 

 その後は和気あいあいとした雑談タイムになりました。途中で鍋の締めを雑炊にするかラーメンにするかで戦争が起きる一幕もありましたが、最終的にうどんになりました。

 そしてアルまどちゃんの今後ですが、久遠が能力を制御できていない以上は元の並行宇宙に帰すこともできそうになく、そもそも叛逆の物語が起きたのでアルまどちゃんの帰る場所がどうなっているのか不明な感じです。ワルプルギスの廻天に期待しましょう。

 よって、しばらくはパウチュウさんで過ごしてもらうしかありません。住む場所はマンションの一室を提供しましたが、なんとなく管理人室に入り浸りな未来が見えています。

 アルまどちゃんとしては元の宇宙で起きた事件は気になりますが、魔法少女の範疇に収まるまで弱体化している現状では打つ手が見つかりません。強いて言うならのぞき見していた強化を試すくらいだと自分から切り出してきましたが。口では最後の手段的な感じで乗り気ではない風ですが、言いながらチラチラこちらの様子をうかがったり頻りに指を組み替えたり期待を隠せていませんでした。 初対面からしてアレな感じ(野獣の眼光)だったので、久遠は察してしまいました。そんな久遠の表情から帆奈ちゃんとみことちゃんも察しました。

 そうして察したお姉さん二名はお仕事があるからと自室へと戻って行きました。せめて暗示の魔法を、という久遠の呟きを背後に受けながら。

 ちなみに、鏡の魔女の結界を通じて宇宙を繋ぐ案も出ましたが、アルまどちゃんの居場所は魔女の存在しない……むしろできなくなった宇宙であるため、ほぼ不可能だと却下されました。

 

 ついでに、久遠の推測である睡眠中に(寝惚けて)チート能力が暴発した(行使された)現象に関して、再び起きる可能性があることから誰かに押し付ける方向で話がまとまりました。

 本命はアルまどちゃん。使いこなせたら自力で帰還できると思われますし、今回の事故(叛逆の物語)と似た事態が起きないよう再発防止策としても使えるはずです。

 対抗馬はめんたいこ。感情に目覚めてはいますが感性は人間と少しずれたというか擦れたものを持っており、淡々とした大人の対応が期待できます。人外由来の知識や処理能力的に習熟も早いと思われます。

 大穴でまどかちゃん。永遠に閉じた二人だけの世界とか作りそうなので心配の種が尽きないのですが、基本的に自己犠牲精神と責任感は健在なので決して投げ出すことはしないでしょう。裏を返せばアルまどちゃんを見ても分かるように、多少やりすぎる可能性も高いのですが。どうせ無理をするなら耐えられる(壊れない)ように強くする理論を適用する形です。

 とはいえ、他所の宇宙はともかくパウチュウさんのまどかちゃんはしっかりと他の人に頼ることのできる()さを持っているので、下手な力を与えない方が良いと考えられました。

 

 と、一通り考えてはみたのですが、押し付けるにもある程度は使いこなせなければならず現状では取らぬ狸の皮算用でしかありません。語感だけならとある魔術(科学)禁書目録(超電磁砲)みたいですよね。

 そんなわけで久遠の特訓はしばらく続くのでした。

 そしてその日の夜はとってもバーニングだったのです。ほぼソウルジェムなのに(存在)の格が違って干渉が難しく苦労した、とは久遠の談。レア度が高いので覚醒素材が重い現象の互換なのでしょう。

 強化効率も渋いため回数をこなす必要がありそうですが、久遠の体は未だに一つしかないので期間も長く見る必要がありました。

 なお、予めまどかちゃんという同じ体を持つ相手や、先日の魔導師(リリなの)組で応用できる経験を積んでいたので、行為(バトル)そのものは全く問題ありませんでした。

 他には、干渉の難易度が高いおかげでチートの扱いがちょっぴり上手くなったのは嬉しい誤算だったと言えるでしょう。

 アルまどちゃんはアルまどちゃんで見るのとヤるのとでは勝手が違って苦労した模様。別の意味で裂けちゃうと叫んだりもしましたが、次の日になっても元気ハツラツです。本懐(しょじょ)遂げ(捨て)たのですから気分もウキウキです。なお本体。

 

 

 

 後日、まどかちゃんから許可を得ていたのでアルまどちゃんを鹿目家へ連れて行きました。

 おおよそ久遠の予想通りに受け入れられてあったけぇ空気が流れていましたが、アルまどちゃんはまどかちゃんの実力が現状の(弱体化した)アルまどちゃんを余裕で超えていたことを知って相当に驚く一幕もありました。

 その時点では久遠が行う魔法少女の強化について知識も経験も持っていたので、アルまどちゃんはそこへ辿り着くまでの道程(時期や回数)想像(計算)して色んな意味で負けたと思ったそうな。

 鹿目家の皆さんはアルまどちゃんを引き取る選択肢を提示してきましたが、久遠としては自分に原因があるため責任を取るつもりでした。

 とはいえ、一番大事なのはやはり本()の意思。

 そんなわけで確認をしたところ、アルまどちゃんは久遠の世話になる方を選びました。自分の知る鹿目家と比較してしまうのが嫌だという健気な理由を口にしていましたが、詢子(ママ)さんから目的(スケベ)を指摘されて物凄い目を泳がせていたのがとても印象的です。まどかちゃんの目が()かったのは見なかったことにしましょう。週末の予定がまるまるまどかちゃんのご機嫌取りで埋まった瞬間だったことを付け加えておきます。でも今回はのめり込み過ぎずにご飯はアルまどちゃん含めた家族みんなで揃って食べました。その際アルまどちゃんの涙腺が崩壊していたのは言うまでもないでしょう。

 

 そうして戻って来た日常。地味に神浜市の魔法少女界隈ではチームみかづき荘が快進撃を続けていました。記憶ミュージアム(第六章)キレーションランド(第七章)が終わり、魔法少女の真実やワルプルギスの夜についての情報がマギウスからもたらされ、それが十七夜さん経由で久遠にも伝わります。

 自慢気に語った魔法少女の真実(今更過ぎる話)で空気が白けた時の灯花ちゃん(おガキ様)の様子は実に見物だったと語った十七夜さんは清々しさに満ちていました。

 さて、そんな情報を得てしまった確信犯的愉快犯(マンション組)が取る行動はどのようなものになるでしょうか。もちろん配信です。

 ついでに本物(災害)が来てしまっては用意していた『被災してボロボロになったゲーム内のタウンを復興させるイベント』が不謹慎扱いされることが予測され中止せざるを得なくなってしまうため、スタッフには死んでもらい(改変して開始を前倒しし)ました。

 万感の恨みを込めて復興素材を落とすエネミーの特徴をマギウスに寄せてもらったのは内緒です。まぁ、汎用モブ(キュゥべえ)に帽子を被せて配色と属性を合わせただけなので大した手間で()()ありません。ありがとうスタッフ、フォーエバースタッフ。許さんぞマギウスという自称一般人スタッフの血を吐くような台詞は聞かなかったことにするぞスタッフ。

 なんだかんだで灯花ちゃんのスペックは高いのでクラッキングしても返り討ちにされそうであり、本来なら仕事があるだろうとそれとなく諦める方向に誘導するべきですが、チートで因果律を操作する練習に使った方が愉しそうだと久遠が判断してしまったので仕方ありません。灯花ちゃん(メスガキ)の絶望泣き顔からしか摂取できない栄養素が世の中にはあるのです。

 もはやデスマーチなのかデスマッチなのか分からなくなりそうな表情で働く皆さんには、お詫びとして以前から陳情の上(やりた)がっていた開発二部(メタネタ)を許可したので、辞表を叩き付けられる事態は回避できました。が、こんなこともあろうかと用意していたらしく復興イベントより先にこっそり実装しやがったので、趣味人しかいない現場の恐ろしさを味わいました。

 ちなみに、早速配信で帆奈ちゃんたちが先行プレイした結果、MUGENの論外トーナメントに迷い込んだカンフーマンの気持ちを味わえたと大()評でした。そしてその動画のコメント欄は中央区の日常であるという内容で溢れていたのです……。

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