記憶を失った少女が、ホロライブに関わって変わる話   作:ほがみ(Hogami)⛩

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記録:初めての仕事

紗「よいしょ…よいしょ…」

 

少女こと紗は一生懸命その体を使って大きな段ボールをとある部屋の中から出したり…入れたり…出したり…している。これが彼女にとって初めての仕事だ

Holoxに入団したということで、紗はHoloxの付き人という肩書を手に入れ、今こうやって汚部y――こほん、きたn…こほん。散らかっている部屋を掃除しているというわけだ

―それにしてもこの部屋はきたn…散らかっている。ゴミの山をかき分ければ、そこには飲みかけのペットボトルや、食べかけ(賞味期限切れ)のお菓子などたくさん出てくる。この部屋は某掃除屋でインターンの部屋だが、掃除屋なのにこんなに汚くていいのかと

 

しまった。汚いと言ってしまった

その瞬間―――

 

沙花叉「汚くなぁぁぁぁぁい!!!!!」

 

この部屋をここまで汚くした張本人が怒号を上げて部屋に入ってきた

叫ぶと共に崩れるゴミの山。その様に本人も反省したのか「やっぱりちょっと汚いかも」と呟く

 

紗「ちょっとどころじゃないです。結構汚n…散らかってます。どうして掃除しなかったんですか」

沙花叉「だってだって…掃除しようと思ったらお酒が出てきて…熟成ものだと思って飲んだら日が過ぎてた」

紗「汚部屋から出てきたお酒とかヤバイもんに決まってるでしょうよ!今後は定期的に掃除してください!」

沙花叉「はぅ…」

 

沙花叉は少ししょんぼりしながら部屋を後にする。大事な仕事があるのだとか

紗はふぅと頑張るためのため息をついてよしっと気合を入れて掃除を再開する。かなり大変な仕事であるが、苦ではない。むしろ汚いのが消えていって楽しいと感じるくらいだ

何故なら稀に沙花叉の本当の趣味の物があったりするからだ。具体的に言うと、ホロライブ所属の先輩のグッズや好きなアニメの本。人の趣味を模索するのは気が引けるが…

そう思ってゴミの山をかき分けて分別しつつ段ボールに入れていると…新聞紙にくるまれた気になるものが埋まっていた

 

かき分けてその新聞紙を解放すると、それは赤い"ナニカ"がこびりついたナイフであった

紗は高鳴る心臓を押さえつける――これはなにか。もしかしたらこれは血ではないか。これを見ているのを沙花叉に知られたら…どうなってしまうか

 

ドクンドクンと煩いほどに鳴り響く心臓を止めたのは沙花叉の声であった

―今聞きたくなかった声。いつもなら笑顔で振り向けるのに、この時は振り向くことができない

 

沙花叉「ちぇ…あのチビ総帥、自分も掃除できないくせに「手伝わせてんじゃねぇ」ってよく言うわ――あれ?紗ちゃんなにしてるの?」

紗「さ、沙花叉さん…」

 

ぽぇ?という顔で紗の背に近づく沙花叉。それと来てほしくない紗

これはなにかと聞くべきか、聞かずに隠すべきか――紗の心はその選択肢で支配される。それ以外何も考えられなくなる。だが考えている間に沙花叉は近づいてくる

 

恐怖。あのぽぇ?という顔ですら怖さを感じる。そして――沙花叉は紗の方に手を置いた

 

沙花叉「紗ちゃん?どうかし…」

紗「あ――」

 

―終わった。私の新たな人生はここで終了したのだ

紗は覚悟する。沙花叉は紗の手にあるナイフを直視した。その瞬間、沙花叉は叫びをあげた

 

沙花叉「あぁぁぁぁ!!!!!!なんでここにあるのぉぉぉ?!?!」

 

叫んだ沙花叉は紗からナイフを取り上げ、近くにあった新聞紙で再び包んだ

獲物を狩るシャチのように荒い息遣いをしながら沙花叉はナイフが包まれた新聞紙を見ている

 

紗「さ…沙花叉…さん?」

沙花叉「ふぅふぅ――まさかここにあるとは思ってもなかった…まさか"トマト殺害事件"のナイフがここいあるなんて…」

紗「と、トマト殺害事件…?」

 

恐怖しながら紗は質問をした

すると、沙花叉はいつもと変わらない笑顔でそのナイフについて説明を始めた

―あのナイフは沙花叉の天敵、トマトを殺害したナイフであり、もう廃棄したものだと思っていた代物らしい。つまりは紗の早とちりである。秘密結社だから殺害もする仕事もあると思った紗の憶測が飛び交った結果であった

なんだ恐怖して損した―と一息紗はつく

 

沙花叉「怖がらせてごめんね~♪今度はちゃんと廃棄してくるから~!」

 

そういって部屋を出ていく沙花叉

紗は少し休憩してから部屋の掃除を開始しようと休憩を始めたのだった

 

 

 

 

 

一方の沙花叉は紗から見えない場所に行き、新聞紙を解放する

 

沙花叉「………見られちゃった」

 

一言呟く沙花叉の目には少しばかりの哀愁が漂う

これで彼女からも恐怖の対象とみられてしまっただろうか。咄嗟についたトマト殺害事件という嘘。彼女に怪しまれてないだろうか。そんな思いを募らせながら沙花叉はナイフを見た

そしてナイフに映った少女の顔は大粒の雫を溜めて、今にも零れそうになっていた

 

沙花叉(いやだよ…紗ちゃんともっと仲良くしたいよ…嫌われたくないよ…)

 

赤く染まったナイフに大粒の涙が落ち、そしてナイフから落ちる雫は静かに床を赤く染める

ー今まで"自分の本当の姿"を知られたくないから元気に魅せて過ごしてきたのに、それが一瞬にして壊れそうになる。大丈夫、落ち着こうと自分を抑える

いつも通り過ごせば大丈夫。きっと彼女は自分をわかってくれる。でもわたしは恐怖の対象、だけど本当は…

 

紗「沙花叉さん」

沙花叉「ほぇ…?」

 

紗の声が聞こえた沙花叉は涙目のまま、紗の方へ顔を向ける

一瞬目と目が合い、二人は見つめ合う。一瞬であったはずなのに沙花叉には三十秒ほどの長い時間に感じた。先ほどのことがあるからか、何処か緊張している感じすらある。もし嫌いと言われたらどうしよう…もう会わないでと言われたらどうしようかと考えていた時、先に声を出したのは、紗であった

 

紗「ごめんなさい…」

沙花叉「え…?なに…?」

紗「沙花叉さんがそこまでトマトが嫌いだなんて知りませんでした…私があのナイフを見つけなければ…」

沙花叉「ぷっ………」

 

沙花叉は予想しなかった紗のセリフに失笑してしまった

この子はそういう子であったことを思い出す。誰かを恐れることはなく、ひたすらに頑張るこの子を前にした沙花叉は、自分が考えたことなど些細なことあったのだと考えることができた

 

紗「な、なんで笑ったの?!」

沙花叉「いやぁ~別に~♪」

 

紗は訳も分からないまま沙花叉に手を引かれてその場を後にする

これからもこの子と一緒に、秘密結社Holoxのメンバーとして、私の――沙花叉クロヱの物語を紡ごう




ちょいとシリアスっぽくなりましたが、沙花叉には"そういう"過去があってもいいんじゃないかって思った妄想ですのでお気になさらず(?)

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