記憶を失った少女が、ホロライブに関わって変わる話 作:ほがみ(Hogami)⛩
アクエリアスのそばを通り過ぎてみんなは紗の元へと急ぐ
この先はもう一本道。突き当たりまで走り抜けた
突き当たりのドアをハッキングして開けると、その部屋は学校の体育館ほどの広さのある実験室だった
青と黒の色合い。そして正面奥に佇む青白いカプセルの中には紗が瞳を閉じて居た
その目の前に、白い白衣を着た男が何かを操作している
男は振り向かずにスバル達に声をかけた
「―開演に間に合ったみたいですね」
スバル「お前がアルヴィース・ヘレシーか?」
スバルがそう問うと男は振り向いて、手を広げて口を開いた
男の姿は約175cmほど。白い白衣を身にまとっており、中はよれたシャツのようなもの。頭は白髪のもじゃもじゃ頭で、目は隠れてしまっている
アルヴィース「いかにも。私こそがアルヴィース・ヘレシー。あなた達が戦ってきた新人類の創造主です。どうでしたか?実に良かったでしょう?」
ラプラス『よかねぇよ。紗を返してもらうぞ』
ラプラスがコココロからそう言うと、アルヴィースはフッと鼻で笑った
アルヴィース「返してもらう?あれは元々私が創り出したもの。返すも何も無いでしょう?」
こより『…なんでホムンクルスを作った?』
アルヴィース「―これはこれは…こより君じゃないか。久しいねぇ。君が私の論文をみて感動したと言ってくれた時は私も嬉しかったな。君なら私の気持ちをわかってくれると思ってたのだけど」
こより『答えて!なぜ色んな人種のホムンクルスを量産して海外に派遣しようとしてるのか。なぜ紗を作ったのか!』
こよりが強くそう言うとアルヴィースはつまらなそうに答えた
―世界を変えるためだと。今の人間を一掃して新たな人間による統治を始めるためだと
アルヴィース「今の人間ははっきり言ってクソだ。平気で他人のモノを奪い、気に入らなければ戦争する。他人の評価すらも嫉妬、自分の手柄に仕立てあげようとする。他人の家に入り込んではここは我が家だと言わんばかりに声を荒らげる―――そんな人間は要らんだろ?」
カリオペ「全ての人間がそうじゃない」
アルヴィース「確かに――とでも言うと思ったか?人間誰しも闘争心を持っている。その時点で同じなんだよ。私は無関係です―で自分一人だけ助かろうと必死じゃないか
だから私は新たなる人類を作った。新たなる人類でこの世界を正す!」
ライブラが言ってたように、現代の人類に絶望したから、ホムンクルスで世界を変えようとしている
旧人類を滅ぼし、新人類で新たに構成する世界を作ろうとしているのだ
アルヴィース「そのために礎となるのが彼女―第12の命パイシーだ」
ルイ「紗が産まれるまでにキャンサーやヴァーゴ。ライブラなどの命が育まれたって。その人達じゃダメなの?」
アルヴィース「彼女が産まれるまでのホムンクルスには旧人類の欠点が多かった。それでは完璧な新人類とは言えない。旧人類を凌駕する能力が必要。圧倒的な力でねじ伏せるのが最善策。
しかし、ホムンクルスには欠点が多く圧倒的な力はなかった。でも一人一人の力はあった
ならば、それまで生まれた11の命を全て合わせて、1人の完璧な人間を作ればいいとな」
そうして生まれた12番目の紗
確かに紗は驚くほどに完璧な人間だった。言われたことは完璧にこなせるし、周りへの配慮も完璧。本当に欠点が無いと言える人だった
だが気になるのは残られた11の命。出会ったのは、スコーピオとヴァーゴ。キャンサーにライブラ。そしてアクエリアスのみだ
まだ出会ってないホムンクルスはどうなってしまったのだろうか
こより『それまで育まれて来たホムンクルスは―』
アルヴィース「旧人類の心を持ったホムンクルスを私が生かしておくと思うか?私は彼らの取捨選択を行い、有益な者は残し、不要なものは抹殺した!
そして今度は人々の取捨選択を行い、新人類の世界を作る!ノアの方舟のようにな!」
不気味に笑うアルヴィース。彼はどこか狂ってしまっている
その話を聞いて沙花叉は顔を引き攣らせて言葉を発した
沙花叉「貴方…残忍な性格してるね」
アルヴィース「そうかい。そいつは褒め言葉だ。目には目を歯には歯をと言う通り、私は人々からの仕打ちを返しているだけだ
さて…パイシーを探してるんだったよな?丁度今【完成】したところだ。返してやるよッ!」
そう言って思いっきり目の前のボタンを叩く
するとゴゴゴゴと機会が作動し、カプセルから紗が出てきた
そのままアルヴィースの目の前までその足で歩いていくが…
―しかしなんだか様子がおかしい。機械みたいな白い服を着用しており、目は虚ろ。呼びかけにも応じないようにその場に立っているだけだった
ラプラス『おい!紗!紗ってば!』
アルヴィース「無駄だ。パイシーとお前たちとの記憶を全て消去した。こいつは…お前たちが知っているパイシーじゃない。新たなる人類の始まりの一人!Eveとなったんだよ!」
スバル「そんな…もうとっくに…紗!あたしだよ!スバルだよ!ねぇ!覚えてないの…?」
前に出たスバルの悲観な呼び掛けにも一切動じることはなく、その場に立ち尽くす紗。もう全て忘れてしまったのだろうか
アルヴィース「行けEve。侵入者を排除しろ!」
紗?「…理解」
ダッと紗は地面を割る勢いで踏み込み、いちばん前に出たスバルに殴りかかろうと距離を詰めた
振りかぶる紗。その拳がスバルに届くかと思われたその時、いろはがその間に入って攻撃を受け止めた。しかしその勢いは殺せずに、そのままスバルと後方の壁まで突き飛ばされてしまった
いろは「いてて…スバル先輩、大丈夫でござるか…?」
スバル「ゴホッゴホッ…だ、大丈夫…」
いろは「なかなかの威力でござるな…これが紗の本当の力でござるか…」
次々に紗は攻撃を仕掛けて来る
みんなは武器を構えて戦闘態勢に入るものの、攻撃に迷いが見える
それもそのはずいつも過ごしてきた仲間に刃を向けることは出来ない。でも紗は絶えず攻撃してくる
沙花叉「紗!ちょ―!」
紗?「………」
沙花叉「思い出してよ!沙花叉との記憶を!一緒にお風呂入ったじゃん!」
沙花叉は紗からの体術を上手いこと逃しながら対話をする
しかし紗は何も反応を示さなかった
どうにかして紗を―と思った矢先、油断した沙花叉は腹部に紗からの一撃を貰ってしまった
苦しそうにお腹を抑える沙花叉に駆け寄るルイ。そんなルイも紗の事を心配そうに見る
ゆっくりと歩きながらルイたちの方に迫ってくる紗。そんな紗にぼたんは鉄の雨を降らせた。だがしかし、機械のような服の部分はことごとく弾かれ、顔など皮膚に当たったとしても、すぐに銃弾がその傷口から出てきて、みるみるうちに傷口が塞がってしまう
ぼたん「銃効かない。再生能力はものすごく高い…うわ…ゾンビよりも強いじゃん!」
紗?「―――」
少し退くぼたんに紗は腕から血の刃を飛ばした
その攻撃はアクエリアスとよく似ていて―というよりそのまんまだ
カリオペ(…紗ちゃんには悪いけど、アレ使うしかないかな!)
カリオペは死神としての力を解放し、自身の大鎌にその力を込めた
そしてぼたんに攻撃することに夢中になっている紗の懐に息を殺して駆け寄った
―不意打ちを。と思ったが、突如紗は信じられない速度でカリオペの接近に気づき、攻撃対象を変更してきた
カリオペ「くっ…失礼します。紗ちゃん!」
紗の攻撃を受けながらも、シュッと一振大鎌を紗へとその刃を滑らせた
死神の力が具現化した黒い煙が立ち込み、紗はその煙に包まれる
カリオペが使った技は、以前飲み会で潰れてるのをカリオペがやったと勘違いしたシオンに使った技と同様のものだ。
一時的にその魂を体から分離させ、相手を戦闘不能にできる。死神技というやつだ
だがしかし、カリオペは刈り取ったはずの紗の魂が手の中にないことに気づいた
カリオペ「what…?―oh!」
一瞬の隙を疲れてカリオペは紗から一撃を貰ってしまう
それと相まって死神の力を使った反動で動くことがままならない
その光景を見ていたアルヴィースは不気味に笑いながら口を開いた
アルヴィース「死神として魂を刈ろうとしたのかもしれないけどね、そいつは新しい人類なんだよ!今までとは違う!魂という無駄な存在を消去した人間だ!私の命令を聞く傀儡さ!素晴らしいだろう?
さぁ、Eveよ。そいつを殺せっ!」
紗?「…理解」
カリオペの元に冷たい鋼の拳を握って歩く紗
満足に動けないカリオペは、痛みを抑えながら目を細めて紗を見上げる
紗は冷たい目線のままカリオペにその拳を振るうか―と思われたその時、その拳を。その身体を、後ろから羽交い締めにして必死に止める姿があった
スバル「…もうやめよう!」
紗?「…離しなさい。私はこの人を殺す命令を受けまし―」
スバル「―いいんだよ。あいつの言いなりにならなくても!紗は紗なんだもん。たとえ記憶を失ったって、スバルたちを忘れたって―紗は大切な家族だよ…」
紗?「…家族。私に家族なんて居ない。あるのは命令のみ」
スバルはこれでもかと言うくらいの力で、カリオペに攻撃しようとする紗を必死に抑えながら話を続ける
スバル「ならスバルが紗の家族になる!紗の姉ちゃんになる!かぁちゃんや、ラプラスたちも同じ!ホロライブっていう大きな家族に!
だから……」
紗?「―――」
スバルの必死な呼び声に紗の心の音が響いた音がした