記憶を失った少女が、ホロライブに関わって変わる話 作:ほがみ(Hogami)⛩
紗「…ん」
夕暮れの事務所
オレンジ色の夕日が斜めに窓から差し込んできて部屋を黄色に染める
私は机に伏して寝ていたみたいだが…一体私は何をしていたのだろうか。ひと時の記憶が無い
とりあえず1つづつ思い出してみよう。
紗「たしか私は……普通に出社して…えーちゃんと会話――」
していたはずだった。でもそのえーちゃんはどこにもいない
というより朝からの記憶がほとんど消えている
ガタッと机から立ち上がり、とりあえずえーちゃんを必死になって探す
レコーディング室から編集室、ポル伝のサーカス会場。そしてYAGOOの社長室までくまなく探したが…どこにも人の姿はなかった
不気味なくらいに人の影―いや、存在すら消えたかのような空間が広がっているだけだった
「紗さん?」
背後から突然聞こえたえーちゃんの声に驚き振り向く
立っていたのは、コンタクトをしてリボンを外したえーちゃんの姿であった。珍しいえーちゃんの姿に驚きながら紗は近づいていく
紗「えーちゃん…」
えーちゃん「私はここにいますが?」
紗「よかった…えーちゃんがいてくれ――」
えーちゃん「よくそんなことが言えますね」
紗「…え?」
Aちゃんの発言に驚く
『よくそんなことが言えますね』
その声はとても冷たく、まるで氷の刃が心に刺さっているような感じだった
なんだか怖くなった紗はバクバク鳴り響く心臓を抑えながらえーちゃんに聞き返す
紗「え、えーちゃん…?」
えーちゃん「貴女のせいです。ホロライブが消滅し、Vという存在が消えてしまったのも。貴方から始まった」
紗「そんな…私…」
えーちゃん「ルイさんから優秀な人だと聞いていて採用しましたが…現実はそう甘くなかったですね」
そう言われて私は涙が溢れて零れ落ちる
私がしてしまったことは、ホロライブというブランドを落とし、終わらせてしまうということをしてしまったのだ
…でも…私がしたことって……?
えーちゃん「確かに貴女は優秀だ。でも人の気持ちを察することが出来ない。なぜなら貴女は人じゃないから」
紗「わ、私も人です!みんなと同じ人間――」
「嘘言わないでよ」
突然聞こえた声に反応するかのように振り返ると、そこに居たのはいつもの和服姿の百鬼あやめの姿だった
気がつけばもうそこはホロライブ事務所ではなく、なんだか和風な屋敷の中みたいな場所に変わっており、後ろを振り返ってえーちゃんがいるかと思いきやそこには屋敷が広がるだけだった
あやめ「余は嘘は嫌いだよ。なんで嘘つくの」
紗「嘘じゃ―…」
あやめ「せっかく仲良くなれたのに…紗ちゃんとなら一緒に過ごせると思ったのに!酷いよ!どうして嘘ついたの!!!」
そう言ってあやめは腰の2振りの刀を抜いて紗に向かってきた
紗は気づいたら背中にあった刀を無我夢中で抜き、あやめに対抗する
その刀はどこかで見た事のある緑色の刀―ちゃき丸と銘打たれた刀だった
それをもって必死にあやめからの攻撃を防ぐ
和風な屋敷の中。異質な刀と刀が交わる音が鳴り響く
鍔迫り合いが激しくなりながらも、あやめは紗に問いかけ続けた
あやめ「答えてよ!なんで嘘ついたのかを!」
紗「わ、私は嘘はついてない!あやめちゃんどうしちゃったの?!」
あやめ「余は正常だよ!それよりもなんで人間だって嘘ついていたのかを答えてよ!」
今日に両手の刀を紗に振るうあやめ。紗は傷つけるのだけはしたくないため、できるだけ反撃はせずに避けているも、時折厳しい攻撃が避けることが出来ずに刀がぶつかってしまう
その時、運悪く紗の刀があやめに届いてしまった
紗「ご、ごめん…」
あやめ「―答えてよ…どうして造られた命だって言わなかったの…?」
紗「造られた…命…?」
「そう。貴女は人の手によって造られた人間」
また後ろから聞こえた声に振り向くと、そこに居たのは癒月ちょこだった
部屋はあやめの時同様に変化しており、和風な屋敷から病院のような部屋に変わってしまっていた
紗「ちょこ先生…まさかちょこ先生も―」
ちょこ「そう。私も貴女を憎んでる。まさかこんな子だなんて思ってもいなかった」
紗「そんな、私はただ―」
ちょこ「人の手で造られた命でありながらその手から逃れ、何の因果か私たちの元へとやってきた。その結果、私たちは消えてしまった
貴女は疫病神よ」
そう言われ紗は心が苦しくなり、ちょこ先生から背を向けて逃げてた
―ここはおかしい。みんなおかしくなってしまった
無我夢中で考えながら走っているとまた声が聞こえ始めてきた。「また逃げるのか―」と
気づけばあたりは真夜中ほどに暗くなっており、自分の真上には街頭のようなもので照らされている
またどこかに来てしまったのかと考える紗の目の前に、人がコツコツと足音を響かせながら歩いてきた
そして紗を照らす灯りにその人物は照らされて、その姿が明らかとなる
紗「べ、べーちゃんも…」
べー「そうやって逃げ続けてなんになるっての。結局最後は悲惨な結果になる。所詮ネズミは地下で生きるしか無いんだよ」
冷たく言い放つベールズ。紗と中が良かった分心にくるものがかなりある
紗は強がってかベールズの言葉を否定する
紗「私は逃げてなんかない…」
べー「よく言うよ。新しく生まれた命でありながら旧世代の人間の感情なんか芽生えちゃって。それで実験が苦しくなって逃げ出したんじゃん」
紗「…実験??」
ベールズの口から放たれる謎の言葉
紗はだんだんとベールズと空間の境界線がノイズのようにブレているのに気がついた
べー「アルヴィース博士の心理実験―旧人類と新人類との心理的感情を分析するための実験。その実験中、貴女は逃げ出した。"私"の体を奪って」
徐々にベールズの境界線が崩壊していくのが見える
紗はベールズがベールズでは無いことを理解し、それに問う。お前は誰なのかと
だがそれは答えもせず、自分の話を続けている
?「"私"と貴女はひとつだったのに…貴女がそれを全て奪った!」
紗「……何の話を―」
?「だからこそ"私"は貴女を奪う。そして完全な新しい人類となる―」
紗「――!」
完全に崩壊したベールズの体はバグかのようにノイズを走らせその体が変化する。そしてその変化したあとの姿は、紗がよく知る人物ー否。紗そのものであった
手入れのされていないボサボサで長い髪。光が消えきったその瞳には紗に対する憎しみの色が見えている
?「貴女さえ居なければ…私が世界で初の人物になれたのに!」
そう言って紗(荒)は自分の手から血を流し、それを剣の形固めて武器として振り回してきた
紗は軽めのステップを踏みながらその攻撃を避け、体勢を立て直す
その間も紗(荒)は憎む瞳で紗のことを見続けていた