記憶を失った少女が、ホロライブに関わって変わる話 作:ほがみ(Hogami)⛩
いろいろあって心に来てました
西暦1XXX年 欧州某国
人々の声が燦燦とした町の裏路地にひっそりと佇む古びた廃ビル
そこにはこの地を影から支配するギャングの姿があった
10年ほど前から活動しているギャングは、恐喝・強盗と金になることならなんでもござれな組織
漂う普通でない匂いが充満する廃ビル内の一室にて、その廃ビルに似つかない派手なネックレスをかけた葉巻を口に加える男が足をテーブルの上に置いてふぅーと息を漏らしながら天井を見上げていた
「恐怖という力で俺たちはこの地区を支配した。もうすぐ全てが完了する…」
不敵に笑う男は先方からの連絡を今か今かと待っていた
もうじき出来上がる新薬は、恐怖の感情を尊敬へと変えてしまう物。それが完成すれば手中は我が手に
これまで幾度もの犠牲を出した。だがそれも全て来る新時代のため
「…危険を犯すものが勝利する―――」
その時部屋の扉がノックされた
招集もかけていない。なにか急用なのだろうか。一応のため武装しておくかと銃を片手に入れと声を出す
ギィ…とひらかれるトビラ。その先にいた者が隙間から徐々に現れる
そいつは男が心から信頼していた幹部の1人だった
「どうした?急用か?」
「………」
「???」
扉を開けたまま立ち尽くす者に男は投げかけるも応答は無い
もう一度おい!と強く声を荒らげると、いきなり立ち尽くしていた男が顔からバタッと倒れ、その背中には黒いナイフが突き刺さっていた
じわじわと滲み出る血が部屋の中に広がる
血なまぐさい臭いが漂う中、男は現状を理解した
―ここは誰かに襲撃されていると
急いで逃げようと重要なものを手に窓に手をかけた時―引き違いになっている窓の間にナイフが後ろから飛んできた
逃げることが出来なくなり恐怖を感じる男が後ろを振り向くと、部屋の入口に誰かが立っていることに気がついた
「…逃がさない」
黒と白の仮面をつけ、黒いコートのフードを被った女性は男に向かってそう言った
血か模様か、白いシャツのようなものが赤く染るその服を揺らしながらカツン…カツン…と男との距離を縮めて行く
「お、お前は何者なんだ!!!」
男は叫ぶも女性は声を返さない
それどころか足元に居る男の背中のナイフを回収する
ぽたぽたとナイフの刃を沿って血が垂れ、地面を染める。それと同時に男の心の恐怖がさらに震え、侵入してきた女性から退きたい気持ちが足に伝わった
シュッ――と風きり音が耳に伝わったと同時に後ろの窓ガラスが砕け散り、首元にかけていた派手なネックレスがジャラジャラ音を立てて地面へと落ちていった
「な、なぜこんなことをする!!!俺はお前に何もしてないはずだ―――」
「―何も?」
「へ…?」
「私は貴方に何もされてない。だけど私はあなた達を殺す。それが任務だから」
女性は淡々と口を開き問に答えた
男は必死にこの惨状から逃げる選択肢を幾千考えながら言葉を考えているうち、目の前に立っている女性の正体が見えてきた
「お前まさか鷹の目の――――」
そう言った瞬間、男の意識がプツッと途切れた
数分後、男たちの廃ビルに地元警察が立ち入り、数多い死体と数々の武器やらなんやらを見つけ、このモノたちがギャングであったのだろうと結論づけた
しかし誰が殺したのかは未だ不明で、警察の見解では、仲間割れだということだが、地元民からは
高い塔の上で、ラジオをカチッと消してあの後の話を聞く
街は以前に比べて活気だっているように見える
―プルルルルと私の連絡用端末に電話がかかってきたのを確認し、電話に出ると、向こうの声は聞き馴染みのある声だった
『始末御苦労。これでこの街も平和が訪れた』
「んな御託はいいから、早く報酬。私も予定が詰まってるから」
『さすがジャックザリッパー。噂には聞いていたが…恐れ入った。報酬は本日18時に振り込んでおく。確認したらそれで契約は満了だ』
もし振り込まれてなかったら―と脅してみるも、相手方は重々承知しているとのことだった
振り込まれてなかったら契約通りに。と言って電話を切ってポケットにしまい込み、街の景色を塔の縁に座って街を眺めた
―掃除屋、暗殺者として旅立って早10年。今や身長も髪も以前とは見違えるほどに変わってしまった
以前はholoXで2番目に小さかったのだが、今は170近くまで成長した
しかしそれのせいでかつての服はキツキツになり、今や適当なコートで身を包んでいる
「…今頃何してるかな。みんな」
ポケットからみんなから貰った手紙を取り出して感傷に浸ると、頭に楽しかった日々が泡のように浮かんできた
しかしそれはほとんど覚えていない。全てがモヤがかかったように思い出せなくなってきていた
今、何をしているのかは分からない。遠く離れたこの地には彼女達の声は届いてこないのだから
「住んでる世界が違うから仕方ないけど…少し寂しいな…」
そうつぶやく私の傍にフワァァーという音と共に時計のような紋様が浮かび上がってきて、そこから1人の女性が姿を現した
金髪でシャーロック・ホームズのような服装をした女性は、座り込んでいる私の後ろに立った
「もう次の依頼?」
「ええ。貴女にとっておきのが」
「…目標は」
淡々と仕事のことについて話をする
しかし返ってきた言葉は、いつもとは違っていた
「目標はとある人の護衛」
「護衛?なんかいつもと違うじゃん」
「そうね。だけどこれ以上にないほど大切な依頼」
「護衛する人の時代と名前は?」
そう言うと金髪の女性は見透かしたように笑い、私に詳しいことを教えてくれる
彼女の力でその時代に飛び、そこで受けた依頼を達成する
それが私達―始末屋の仕事。私と彼女。掃除屋として活動していた時に偶然出会った仕事仲間は、今回の仕事について話してくれた
「時代は2025年。守るべき人の名前は―【絹織 紗】」
「!!!!」
懐かしい人の名前に驚いた
かつて所属していたholoXの付き人。仕事が出来て信頼できる。優しくてなんでも出来る。誰しもが彼女を慕った
様々な記憶が思い出される。さっきよりも鮮明に
みんなの笑い声。微笑み。すべてが一斉に鮮明に思い出されてきた
高鳴る気持ちを抑えられない
いつぶりだろうか。こんなにも気持ちが高鳴るのは
「私にとっても、貴女にとっても大切な人の依頼――受けてくれるでしょ?」
その問いに返答はいらない
そして準備も必要ない
私は急いで立ち上がって彼女に視線を送る
早くそこに送れと言わんばかりに、その視線に力を籠める
「焦らないで。ちゃんと送るから。数十年ぶりに出会うんだから無理は無いのはわかってるけど、禁則事項は守ってね」
「わかってる。むやみに接触しない。正体をばらさない。遵守する」
「なら行ってらっしゃい。ジェーン」
そう言って見送る彼女をヨコに私は先へと進む
体がふわりと舞い上がり、あたり1面白に包まれる。これから時空を超えるのだ
しかし時空移動は幾度も経験したはずなのに、なんだか落ち着かない。向かう先の時代のせいか、それとも私の心のせいなのか
自然に頬が緩んだまま目的の時代に足を踏み入れた
懐かしい夜の東京の匂い・景色はあの頃を思い出させる
降り立った場所はなんの縁か、かつての仕事場所に近かった
「…せっかくだから歩いて見るか…」
コツコツと足音を鳴らして私は思い出に浸りながら歩く
秘密結社のインターンとして活動した日々。アイドルとしてステージに立った日々。それらを繋いだ日常の日々
全てが今や懐かしく思えてくる
「―わっ!」
微笑みながら歩いていた私は私は突然誰かにぶつかってしまった
下を向けばそこに居たのは小柄な少女。髪を束ね、買い物袋を抱えたまま私の胸元に飛び込んでいた
ごめんねと言って離す私に少女は私も前を見てませんでしたから…と申し訳なさそうに答えた
(…この時代の人達に深く関わってはいけない。早く立ち去ろう―)
そう思ったのは良かったのだが、少女は私の胸元を見てもう一度すみませんッ!と頭を下げたのだった
なぜ謝られたのか分からずにいると、少女は説明してくれた
化粧が私の白い服に付いてしまったらしい。たかが安物の服だ。汚れる仕事だし―大丈夫だと言ったのにも関わらず、少女はなにかお詫びを…と言って聞かなかった
その時、偶然にも私のお腹が鳴り響いてしまった
少女はお詫びとして綺麗にするのと夜ご飯をご馳走します!と私の手を掴んでこっちですーと引っ張られた
(…懐かしいな…昔はこんなことばっかりだった)
私が懐かしんでいるうちに、少女が住んでいるという家に着いたようだ
ガチャっとドアを開ける
何も変哲のない一室。人ひとりが暮らすには十分すぎる大きさの部屋だった
少女は服を洗うので脱いでくださいと言う。初対面のはずだが、何故かこの子は躊躇いがない。なれているのだろうか
「…わかった。けど脱ぐまでこっちを見ないで」
「え、あ、はい。」
少女が壁を向いたのを確認して私は服を脱いだ
肌にはこれまでつけてきた傷が癒えずに跡になって残っている。こんなか弱い少女にそんなものを見せる訳には行かないのだ
脱ぎ終わったと指示すると、目の前にあるシャツを着用していて下さい。と言われた
サイズが合わないのでは…と思っていたものの、着用してみればぴったりなサイズだった
話を聞けば最近同じ身長程の友人が来てたそうで、これはその人のものだという
「綺麗な銀髪…普段から出さないんですか?」
「…仕事柄見せれない」
「そうなんですね…。でもこの家なら構わずに出してくださいね!」
洗濯をしに行く少女は座って待っていてと言い去っていった
私は中に入り込み、コートを壁に近いハンガーラックにかけ、テーブルの横に座ろうとすると、その上には何やら手紙があった
まだ書き記されて間もないのように辺りに広がる文房具。消しカスの量からみてまだ書き悩んでいるようだ
そんなことを思っていると、少女が戻ってきて今度は料理を始めた
テキパキと焼き物や味噌汁を作る様は懐かしさを感じる
「…昔は毎日作ってもらってたな。テーブルを6人で囲んで……」
思い出したいのに思い出せない
大切な記憶なのに、今となっては…
「はい、お待ちどうさま」
「――――」
目の前に出される豪華な料理
和食の定番である鮭の切り身と豆腐の味噌汁。暖かい湯気は私の顔を濡らし、空へと消えていく
いただきますと手を合わせて鮭を切り離して口に運ぶ
するとブワッと世界が彩るように変わり、目の前に暖かく光が現れた
その光から懐かしい声が聞こえてくる
『ちゃんとご飯食べるでござるよ―』
『ライブがあったら引っ張ってでも連れてくから―』
『離れてもいつまでも頼ってね―』
『holoXは5文字だろ?吾輩達5人だからholoXなんだ―』
「………」
自然と涙が流れ、机を濡らす
それを見た少女は私のことを抱きしめ、大丈夫だよと慰め始めた
少しした後、少女は今自分がしていることに気づいてごめんなさい!と後ずさりしたのだが、とても心地よかった
「遠くに行っちゃう友人に似ていたのでつい…」
「…あの手紙はその人に宛てた物?」
「ええはい…恥ずかしながら書いても書いても上手くいかなくて―」
「なら取り繕わずに本心を書いた方がいい。
そう言うと彼女はニコッと笑ってはいと答えた
そして初めての人にアドバイス貰うなんてなんか変ですねとえへへと微笑む
その優しさゆえに誰かに騙されてしまうこともあるだろう。
「そういえば名前聞いてなかったですね!私は絹織紗と申します」
「紗―いい名前ね。私はさk―…ジェーン・ドゥ。ここから遠く離れた国から来たの」
「遠い国から…ふわぁ〜あ!ごめんなさい。なんだか眠く…て……」
そう言った瞬間、彼女はコロンっと寝てしまった
それもそのはず。私が予め設置していた催眠のお香が効いたからだ。どんな人でも本心で話せるようになり、そして快適な睡眠を得る
いつぞやの世界で手に入れた1級品だ
私は彼女を抱えあげベッドに寝せる。今日は金曜日のようで、シフト表を確認すると、運良く明日は休みだそうだ
「ありがとう。紗ちゃん」チュッ
すやすやと眠る彼女の額にキスをする
その後は何事も無かったかのように後片付けをし、コートと自分の衣類を持ってその部屋を去った
次の朝
珍しく寝坊をしていた紗が心配になった仲間達が紗の家を訪ねてきていた。そこには銀色の髪の少女も
私は安心した。彼女には沙花叉クロヱがいる。彼女であれば大抵の危機は乗り越えられるだろうと
ならば私は影で支えよう。彼女が護りたいと思った全てを
私はジェーン・ドゥ。
かつてインターンとしてholoXに所属していた掃除屋。
いまは彼女を支える影なる月
「サカマタは永遠に、貴女の味方だよ」
そう言い残し、私は仮面をつけて彼女の前から去った
調子に乗っていっぱい書いちゃいました
いつか別枠でサカマタことジェーン・ドゥの話でも書きたいですね
次の舞台に行く期間は…
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