最弱の第一席 作:かすてらもちぱん
パラパラと大理石の欠片が舞い、荘厳な玉座の間に撒き散らされていた。
その爆発の中心地点で停止しているのは鎧を纏った金髪の女――リザカルデ。苦虫を噛み潰した様な表情と、地面に剣を叩き付けた姿勢で止まっている様子は、いつも猪突猛進な彼女からは想像出来ないほど暗い印象を受けた。
何度か辺りを見渡してから、今代の『魔王』は声を彼女へかける。
「今のは想定外なんだが……聞こうか。どうだった?
「……忌々しいですが、流石は三代前から王に仕える者。確かに斬れた筈の距離だったのですが、どんな手品を使ったのか……申し訳ありません。逃げられました……」
一瞬の嘆息が部屋に満ちる。それはちょっとした期待が裏切られた負の感情なだけに、リザカルデに焦りを与えた。
「し、しかし! これから私が精進すればやがてこの刃を
「――いい。リザカルデ。そもそも彼女は国という括りなら本来は仲間だ。それに君に失望してはいないよ。
それよりも君程の者の一撃が完全に避けられるとは……特異魔術かな?」
「ふむ……そのような気配はありませんでしたな」
特異魔術。誰しもが使えるが誰しもが使えない魔術。そのように形容される、『異端』とも呼べる物の存在を魔王は口ずさむ。
その疑問に答えたのは咄嗟に口を開こうとしたリザカルデでではなく、今まで姿の見えなかった右手側に控えていた老齢の男性だ。
そして魔王が自身に意識を向けるのを感じると、長い白ひげを撫でながら老人は不思議そうに首を傾げる。
「私に言えることはこれ以上ありませんな。
……しかし、もし違うとなればリザカルデ殿は魔術など関係無しに今の一撃を避けられたと言うことで?」
「なら可能性は1つ。貴様が感知出来ない程の魔術だった、と言うことだな」
吐き捨てるようにリザカルデはいった。そのまま剣をしまい、カツカツと元の位置へと足を進める。
「それならそれで、これから見聞を増やし魔導の真髄へ近づける道筋が見えてくるというもの……やはり
仮にも敵だ。その筆頭と話したいなどという呑気な台詞に、元々荒ぶっていたリザカルデが鋭い目を向ける。だがどうやら老人は本気のようだった。それを軽く受け流すと、そして魔王へと目を向ける。
意思のこもった視線を受け、魔王は言葉を吐き出す。その声には幾分かの疲れが見てとれた。
「果たして一席は信用出来るか……それについてはかなり怪しいと言わざるを得ない。出来れば私達の計画に支障が出るようなことは避けたい。
勿論、
「……敬わりました」
肩を落としながらも従順に魔王に従う老人に、リザカルデは軽く声をかける。
「そもそもあの女がそんな大層な知識を持っている訳がない。そして、特異魔術ならそもそも貴様にとって調べる価値もない……そうだろう?」
「おや、リザカルデ殿がそのような慰めを仰るとは……この老骨には身に染みますな」
老人はリザカルデに向かい穏やかに笑う。それを受け、ふんと鼻を鳴らすとリザカルデは魔王の前へと進む。
だが魔王は気にかかることがあったのか、2人を見据え軽く眉を潜めた。
「リザカルデ、あまり一席を侮るのはいけないよ。少なくとも彼女は六百年は生きている化け物だ。我々魔族の平均寿命が二百と考えるとあり得ない数字だよ。
そしてあの外見……確実に
二つの視線が魔王を射抜く。
魔王は、リザカルデの刃がその首にかかろうとする瞬間の
「……最悪の場合を考えて行動する。まだ私達の陣営は厚くない。これからは
私達に怠慢は許されないんだ。経済も回さなければいけないし……大臣達へは私自らが話をつけるから、君達にはそれぞれの派閥の対応を頼むよ――分かったね?」
「「はっ!」」
そして、二つの鋭い声が玉座の間に大きく響いた。
一応ですが、この作品はリメイク?版です。